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「離陸許可」「着陸支障なし」「動詞」「形容詞」
Cleared for takeoff と Clear to land
航空用語でよくつかうこの2つの言葉。
おなじ clear をつかっているけど、微妙に形がちがいます。
cleared for takeoff なのになぜ cleared for landing じゃないのか?
あるいはなぜ clear to takeoff じゃないのか?
clear
大義は「邪魔なものがない (形容詞) 」「邪魔なものを取り除く (動詞) 」です。
動詞のほうはあまり知られていなくて、形容詞の「きれいな」の意味だけ知っている人が多いでしょう。
でも元々は、「邪魔なものを取り除いた」結果、「邪魔なものがない状態」になったのです。
ラテン語は
clārō (動詞) 明るくする。明瞭にする。
clārus (形容詞) 明るい。明瞭な。光っている。聞き取りやすい👂
です。
「明るい」とか「聞き取りやすい」とか、すこし意味がちがいますね。
飛行機の無線チェックでは
“Can you hear me?”
“Clear and Loud.”
と言います。
clear は「はっきりしている」とともにまさに「聞き取りやすい」の意味ですね。
loud は単に音が「大きい」で「うるさい」ではありません。
clean
よく似た単語に clean がありますが語源はゲルマン系でラテン語とはちがいます😮
こちらは古英語の clæne から。
「澄んだ」「不純物のない」「空の」から派生して、同族のドイツ語の klein は「小さい」という意味に変わっています。
ドイツ語で「きれいな」の単語は sauber です。
ただ clæne の意味が「不純物のない」というところから、もとの語源はおなじかもしれません。
こんなにちがうラテン語とゲルマン語でも、ヨーロッパの言葉の親はただ1人。
印欧祖語 (インド・ヨーロッパ祖語) に辿り着きます。
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cleared for takeoff
「clear (動詞) した 離陸を」
こちらの clear は「邪魔なものを取り除く」から「許可する」という意味に変わっています。
だから
「離陸を許可する / した」
という意味です。
cleared for takeoff には英語に必須の主語も動詞もありません。
もとの文章は何でしょう?
You are cleared for takeoff.
「あなたは離陸を許可されている」
あるいは
You have been cleared for takeoff.
「あなたは離陸を許可された」
です。
動詞の受身でつかわれていることに注目しましょう。
Clear to land
「clear (形容詞) な状態である 着陸するのに」
こちらは一般的な clear の意味で「形容詞」として「邪魔なものがない」ということです。
だから「着陸するのに邪魔なものがない」ということです。
これも主語と動詞がありません。
もとの文章はこうです。
It’s clear to land.
「着陸するのに邪魔なものがない状態である」
it って何?
と問われればそれは滑走路です。
だからこうも言えます。
The runway is clear to land.
「滑走路は着陸するのに邪魔なものがない」
→だから「降りてよい」
つまり厳密に言えばこちらは「許可」ではなく単なる「状況説明」のようなものです。
日本語としては
「着陸許可」ではなく
「着陸支障なし」といったところでしょうか。
なぜ「着陸許可」ではなく「着陸支障なし」という状況説明の言い回しになったのかは不明です。
Clear!
clear はもう1つ使いかたがあります。
エンジンをかけるとき「clear!」と叫びます。
おじさんははじめ「プロペラの回りに障害物がないか確認する」作業だと思っていました。
じっさいプロペラの回りに人や物がないことを確認してからエンジンをかけるんだけど教官は外に向かって最大ボリュームで叫びます。
確認するだけなら外に向かって叫ばなくてもいいのに😅
どけ!
じつはこれは形容詞の clear (邪魔なものがない) ではなく、
動詞の clear (邪魔なものを取り除く) の命令形のほうなんです。
平たい言葉で言えば飛行機のまわりにいる人に向かって
「今からプロペラが回るぞ。死にたくなかったらどけ!」
と伝えているんです😄


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