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「輸血」「血液型」「抗原」「抗体」「免疫」
輸血
輸血できる血液型
よくこんな絵を見ます。
AとBがAB型に輸血できるのはなんとなくわかります。
でも、O型はみんなにあげられるのに、だれからももらえません。
反対にAB型の人は、だれからでももらえます。
O型の人かわいそう😥
なんで一方通行なの?
OをAに混ぜてもいいなら、AをOに混ぜてもいいですよね。
同じことです。
AをOに入れてダメなら、OをAに入れてもダメですよね。
血が混ざるのは同じことじゃないですか。
そんなこと知らないし、気にしたこともなく教えてる先生も多いでしょう。
抗原と抗体
ちょっと血液型から離れて、抗原と抗体について説明しましょう。
英語ではantigen (アンティジェン) とantibody (アンティバディ) といいます。
bodyは「体」でそのまんま。
genはローマ字読みだと「ゲン」なので、「原」とおぼえましょう。
ドイツ語では「アンティゲン」と発音します。
-genは「~から生じたもの」という意味なのであながちまちがいでもないです。
「抗原」と訳した人。
なかなかセンスがあります。
原因となるほうを「抗原」といって、それを取っ捕まえて何らかの反応をして体を守るほうを「抗体」といいます。
ウイルス
いまはやりのコロナウイルスをはじめ、むかしからあるインフルエンザウイルス、その他のウイルスには「抗原」という旗印🎌があって、「抗体」はそれを見つけて捕まえます。
血液の凝集作用もこれとまったくおなじです。
わざわざ人に教えるために旗を持っているわけじゃなくて、たまたま持ってる特徴ですね。
この人は左目の下にほくろがあるとか。
鍵と鍵穴🔑
抗原、抗体ということばはわかりにくいので、抗原は「鍵穴」、抗体はそれに合う「鍵」と思えばいいです。
もちろん、逆でもいいです。
要は、鍵と鍵穴が合わないと何も起きないということ。
じっさいにはウイルスや赤血球が鍵穴を持っているわけではなくて、表面にある特徴的な「分子」構造のことです。
ウイルスが体の中にはいってくると体はそのウイルスの特徴に合わせて「抗体」をつくります。
特徴的な鍵穴に合わせて、それに合う鍵をつくるんです。
鍵といっても、鍵を開けるわけではなくて、鍵穴にはまると合体してウイルスを無力化して、白血球やマクロファージに食べてもらうんです。
ブロックまたはパズル
鍵と鍵穴がわかりにくければ、おなじメーカーのブロックまたはパズルといってもいいです。
レゴブロック同士ははまるけど、ちがうメーカーのブロックだとはまらないでしょ。
一口にインフルエンザといってもH3N2型というように種類が毎年変わって、種類が変わると今までの抗体はつかえません。
たった1種類のA型インフルエンザだけでもH1N1からH18N11まで126通りもの型があります!
鍵穴の形が微妙に変わるから、今までの鍵はつかえないんです。
だから、また新しい鍵をつくらなければなりません。
哺乳類と鳥類に感染するウイルスは650種といわれており、おなじインフルエンザでもいくつも種類があってどんどん形が変わっていくので、前もってすべての鍵を用意しておくわけにはいきません。
泥縄
だから、泥縄式だけどウイルスがはいってきて感染して増殖しだしてから、はじめて形を調べてそれに合う鍵をつくるんです。
感染して発症して熱や症状が出てから、抗体をつくることになります。
抗体ができればウイルスをやっつけることができるのです。
免疫
これを免疫といいます。
インフルエンザでもコロナでもふつうの人はこれをやっていて、症状も出なかったり、いつの間にか治ったり、最初からかからない人もいます。
何百万年も人間はこれをやってきたのだから、コロナも恐れることはないんだけど、やたらに騒いでいます。
赤ちゃんとか、年寄りとか、べつの病気で体が弱っている人が、抗体をつくるのに間に合わなくて重症になったり亡くなったりするだけ。
今でもインフルエンザで死んでる人がいるのに、それは報道されません。
日本ではコロナ以前から毎年「ふつうの」肺炎で9万人亡くなっています。
でも、だれも騒ぎません。
ペストも天然痘も乗り越えて、いま地球上には70億人も人間がいるではないですか。
人類が滅亡するとしたらウイルスではなくて、自滅でしょう。
ワクチン
ワクチン (予防接種) は無力化した形だけのウイルスを注射して、抗体をつくらせます。
要するに「鍵穴」の形だけ入れて、「鍵」をつくらせるんです。
けっきょく抗体をつくるのは「人間」です😄
ワクチンは特効薬ではないんですよ。
だけど、ちがう型のインフルエンザが流行るとその抗体はまったく無意味です。
鍵穴に合わないから。
いまの医療事情では1年に1種類のワクチンしかつくれません。
博打です。
当たるも八卦当たらぬも八卦。
しかも毎年、足りないといっています。
かつての新型インフルエンザのときも、ワクチンが足りないといってるうちに終息してしまいましたね。
ワクチンを打つまでもなく、自然に広がったインフルエンザウイルスに感染して各自、抗体をつくったんです。
飛んだお笑い草です。
ウイルスが何百種類いようと、まいとし新しいウイルスが出てこようと、即座にそれに対応する抗体をつくって自分の体を守る人間はすぐれものです!
もちろん人間だけではありません。
ほかの動物もおなじことをやっています。
動物は病院にも行かないし、薬もないし、医者もいないけど自然界で生きているでしょう。
インフルエンザのようにそのつど抗体をつくらなければならないものもあれば、麻疹 (はしか) のようにいちど抗体ができると死ぬまでその抗体を持ちつづけるので2度とその病気にかからないという「終生免疫」もあります。
終生免疫
いちど感染して抗体がつくられるとずっとそれを持ちつづけ、2度とその病気にかからないことを終生免疫といいます。
麻疹 (はしか) や風疹 (三日ばしか) が代表です。
ところが近年、麻疹が流行したことがありました。
2度とかからないはずなのに、2度めの人もいました。
清潔すぎる世の中
終生免疫にはカラクリがあって、つねにそのウイルスにさらされていることが必要です。
以前は感染者がたくさんいたので、ウイルスが侵入してくると抗体を量産します。
しかし、抗体をつくるには材料もエネルギーも要るので、ウイルスがいなくなれば作るのをやめてしまいます。
売れない商品は生産中止になるんですね。
皮肉なことにワクチン予防などで麻疹の患者が減ったことでウイルスに触れる機会が減り、抗体を作らなくなった人がまた感染する羽目になったのです。
コロナウイルスで過剰に人との距離を置くように強制されていますが、無菌室に入れられた人間はとても弱くなってしまいます。
花粉症やアレルギー
花粉症も、花粉はウイルスでも毒でもないんだけど、花粉を「抗原」だと思って「抗体」をつくってしまうんですね。
抗原が抗体にくっつくと、抗体が「ここに異物がいます!」と大声で叫ぶんです。
じっさいには叫ぶのではなく、それを知らせる信号の物質を撒き散らすんです。
すると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンという物質が出てきてきます。
外から「異物」がはいらないように気管支を細くしたり、粘膜を腫らせて鼻の通路も狭くしたりします。
そして鼻水やクシャミを出して、異物を外に排出しようとします。
これが「ほどほど」ならいいのですが、度を越すと完全に気管支がふさがってしまい窒息死してしまいます。
短時間で重篤な症状になり、場合によっては死んでしまうこともあります。
こういうアレルギー症状はとくにアナフィラキシーショックと呼ばれます。
運動アレルギー (食物依存性運動誘発アナフィラキシー) ~食べてすぐ動くと「じんましん」が出る!?
花粉を異物だと思わず、「抗体」をつくらない人は花粉症にはなりません。
おじさんも30まではなったことがなく、花粉症なんてあるわけない!と思ってたらなりました。
いちどなると抗体ができて体が覚えてしまうので、つぎの年からは毎年発症します。
花粉症対策の薬はヒスタミン受容体の鍵穴に人工の鍵を先に差し込んで、ヒスタミンが受容体に取りつけないようにしてしまうものです。
血液型のマッチング
血液はウイルスじゃないんだけどなぜか抗原と抗体を持っています。
人間が人工的に行わなければ自然の状態で血が混ざることなんかないんだけど。
人間にはA, Bの2種類の抗原 (鍵穴) と、それに合う抗体 (鍵) しかありません。
A, Bにしたのは発見したのがヨーロピアンだったから。
日本人だったら、「あ」と「い」とか、「甲」と「乙」でもよかったんです。
「わたし『あ型』なんだ」
「そう。わたしは『い型』だけど」
という会話もあったかもしれません。
血液
血液と一言でいうけど、血液には血漿という液体 (ほぼ水と思っていい) とその中に浮いてる赤血球という粒粒や、白血球、血小板、その他栄養素なんかがあります。
白血球そのた大勢はいまおいといて、赤血球と水だけ考えましょう。
水が必要なのは、砂粒みたいな赤血球だけじゃ体の中を流れていかないからです。
赤血球にはA, Bの2種類の「抗原」があって、血漿にはそれに対するA, Bの2種類の「抗体」があります。
Aの「抗原」とAの「抗体」が出会うと固まってしまいます。
Bの「抗原」とBの「抗原」もおなじく。
A型の人は赤血球にAの「抗原」があるので、血漿にAの「抗体」があったらはじめから自分の中で固まってしまいます。
だから、A型の人の血漿にはBの「抗体」があります。
そしてB型の人は赤血球にBの「抗原」があって、血漿にはAの「抗体」があります。
だからAとBを混ぜると固まってしまいます。
AB型
AB型の人は赤血球にAB両方の「抗原」(鍵穴) があって、血漿には「抗体」がない!
ここがポイント!
血漿にAでもBでも抗体があったら自分で固まってしまいますからね。
O型
Oというのは0 (ゼロ、何もない) ということ。
つまり、O型の人の赤血球には「抗原」がない!
ここもポイント!
そして、その代わりなのか血漿にはA, B両方とも「抗体」がある!
ここもポイント!
輸血
A型の人から血を取って、O型の人に輸血すると血は固まってしまう。
O型の人から血を取って、A型の人に輸血しても血は固まってしまう。
どっちも同じことだから。
じゃあなんでO型の人の血は他の人に輸血できるの?
それは、血をそのまま入れないからです。
濃厚赤血球 (100%濃縮赤血球)
輸血するときは濃厚赤血球といって、じっさいには血漿から赤血球だけを取り出して、人間に無害なべつの液体に入れて輸血するんです。
だから、血漿にはいってる「抗体」は取りのぞかれています。
問題になるのは赤血球についてる「抗原」だけ。
AとBは何があっても相容れないけど、
O型の赤血球は「抗原」が0 (ない) ので誰の体に入れても抗原抗体反応 (凝集反応) は起きません。
O型の赤血球は「何もしません」
反対にAB型の赤血球はAB両方の「抗原」を持っているので誰の体に入れても抗原抗体反応 (凝集反応) が起きてしまいます。
起きないのはAB型の人だけ。
AB型の人は血漿に「抗体」がないので誰から血 (赤血球) をもらっても固まりません。
AB型の血漿は「何もしません」
来る者拒まず、です。
お得な人。
かわいそうにO型の人は血漿にAB両方の「抗体」があるので、誰の血を入れても凝集反応が起きてしまいます。
誰でも拒否します。
凝集反応が起きないのは自分と同じく「抗原」がないO型の赤血球だけ。
繰りかえすけど、「抗体」がある血漿をいっしょに入れたらダメですよ。
あくまで赤血球だけ取りだして輸血した場合の話。
血漿ごとそのまま (全血) 輸血して大丈夫なのは、おなじ血液型の人どうしだけ。
Rh-
血液型はABO式以外にもたくさんあってRhというのがあります。
ほとんどの人はRh+なんだけど、まれにRh-の人がいます。
Rh+とRh-では凝集反応が起きます。
それで人はABOとRhが問題になります。
ほかにもたくさん血液型があるんだけど、凝集反応が起きるのはこの2つだけなんでほかの血液型が話題になることはありません。
Rh
ドイツ語 Rhesusfaktor (レーズスファクトア)
英語 Rhesus factor (リーサス ファクター)
の頭文字
ドイツ語 Rhesusaffe (レーズサフェ) affe=英 ape
英語 rhesus monkey (リーサス モンキー) は
アカゲザル (赤毛猿) のこと。
実験動物としてつかわれる。
Rhēsus (ラテン語 レースス、ギリシャ語 レーソス)
ギリシャ神話のトロイの木馬で有名なトロイア戦争に出てくるトラキア国の王さまの名前。
赤や、猿という意味はまったくないのになぜ赤毛猿の名前になったのかは不明。
じっさいの現場
じっさいには「わたしA型です」といっても検査をしてから輸血をします。
まちがってるかもしれないから。
出血多量で一刻を争うときはとりあえずO型の血漿を取り除いた赤血球だけを輸血して、それに並行して患者の血液型を調べます。
また出血多量のときは全血 (赤血球と血漿を分離してないもの) を輸血することもありますがあくまで緊急時であって、ふつうは患者の具合のよって各成分に分離したものをつかいます。
病気の問題
輸血で問題になるのは血液凝集反応だけではなくて病気の問題があります。
かつてそれと知らず梅毒やエイズ患者の血液を輸血することで、輸血された人が感染してしまうことがありました。
だからいまは献血された血液をそのままつかうことはありません。
病原菌やウイルスの検査もして、赤血球や血漿に分離したものをつかいます。
赤ちゃんはお母さんと血液型がちがっても大丈夫なの?
お母さんがA型で、おなかの中の赤ちゃんはB型ってことはめずらしくありません。
あれっ?
それじゃ血が固まっちゃうんじゃない?
血がつながっていない!?
よく親子を「血がつながっている」と表現しますが、お母さんと赤ちゃんは血がつながっていません!
A型のお母さんとB型の赤ちゃんの血がつながってたら大変なことになりますよね。
AとBの血がかき混ぜられる。
安心してください。
赤ちゃんは胎盤とへその緒でお母さんとつながっていますが、そこからもらうのは酸素と栄養素だけです。
赤ちゃんは赤ちゃんで独立した心臓と血管があってB型の血が体の中を回っています。
お母さんのA型の血が赤ちゃんに流れこむこともないし、赤ちゃんのB型の血がお母さんの体に出ていくこともありません。