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可能形に「なれない」動詞 ~ やまとことば

possible 可能形2025-12-03-2

「可能形」「なれる」「なれない」

はじめに

日本人が日本語を話しているときはこんなことを考えたこともないと思いますが、外国人生徒を相手にしていると「そう来たか😮」ということがよくあります。

「わかる」を「わかれる」という形にしたのです。
気にしたことなかったけど、調べてみると可能形にならない動詞が意外に多いのにびっくりしました。

可能形に「なれない」動詞

あえて「なれない」と書きました。
ふつうは「ならない」ですね。

場合によっては「なれる / なれない」の形もつかいます。(後述)

もともと可能・能力の意味を持っている動詞

わかる

「わかる」は脳みその能力があって「理解できる」という意味なので可能形になりません。
それは「できる」を「できれる」と言うようなものです。

自発・可能の「ゆ」から「える」になった動詞

見ゆ→見える ✖見えられる
聞かゆ→聞こゆ→聞こえる ✖聞こえられる
燃ゆ→燃える ✖燃えられる

現代語では形がおなじになって区別ができないけど
「教える」は「教ふ / 教へる」なので自発・可能の動詞ではありません。
したがって「教えられる」という可能形になります。

物の性質を表す動詞

「燃える」はじっさいに「燃えている」ときにもつかうけど、「燃えるゴミ」のように「可燃性である」という意味もふくみます。
「可燃性でない」「火が点かない」ものは「燃えない」と言います。

「増えるわかめ」なんかもそうですね。
「増える」には性質や可能性をふくみます。
だから「増えられるわかめ」とは言いません。

これも古形は「増ゆ」です。

自他のペアの自動詞

これが圧倒的に多いです。

自動詞-他動詞の順で書きます。

焼ける-焼く
燃える-燃やす
倒れる-倒す
落ちる-落とす

自然現象とも言えますね。
左側の自動詞はすべて可能形にはなりません (✖なれません)

右側の他動詞は可能形になるんだけど「焼く」の可能形は「焼ける」なので自動詞とおなじ形になってしまいます。
これは文脈で判断するしかありません。

ただじっさいには「焼ける」を可能形でつかうことはほぼありません。
無理強いすると
「この肉は焼ける (焼くことができる) 」という文章も作れないこともないけど聞いたことがありませんね。
「肉が焼ける」はもちろん自動詞です。

動詞の自他のペア ~ じつはとても複雑な日本語

自然現象

雨が「降る」は「降れる」にはなりません。
自然現象には可能・能力はないからです。

可能性を表したいときは「降るかもしれない」と言います。

例:
地震が起きる。
台風が来る。
(人間が「来る」ときは意思と可能性があるので「来られる」という可能形になりますが、「台風が来られる」とは言いません)

他動詞でも自分の意思・能力・努力ではない動詞

間違う

自分で「間違えよう」として「間違う」のではなく、期せずして、無意識のうちに「間違う」ので、可能や能力ではありません。

ちなみに無理やり活用すると「間違える」という形になりますが、これは「間違う」の現代語で可能形ではありません。
紛らわしいですね。

間違える

「間違う」の現代語ですがもちろんこれも「間違えられる」とは言いません。
「俺は算数の計算が間違えられるんだぜ。どや、すごいやろ」とは言いません😄
「間違えられる」は受身としてしか使いません。

場合による

なる

「なる」は「自然にそうなる」という意味合いが強いです。

やはり自然現象で「春になる」は「春になれる」とは言えません。

なれる / なれない

「大人になる」は自分の意思ではなく自然の摂理でそうなります。
「大人になれない」は、たとえば何か病気で成長が止まり「大人になる能力が損なわれている」というようなときにつかいます。
あるいはやはり病気の一種だけど、精神的に「大人になれない人」など。

自分の意思でできる可能性があるもの

「アイドルになれるといいな」
この場合は自然になるのではなく、自分の意思と努力で実現しようとした結果です。

「あなたの好みにはなれそうもないな」
努力しても実現がむずかしいか、むしろなりたくないかです。

このようにほとんどの場合「自分の将来」について自分の意思や努力が伴うときにだけつかいます。

✖可能形になれない

タイトルの「可能形になる」の「可能形」には能力や意思はなく、物の性質なので「可能形にならない」が正しいです。
もし「可能形ちゃん」に人間のような意思があって、努力してもダメそうだなというきは「なれない」もつかえます😄

特殊な形

する

「する」は「できる」と、まったくちがう動詞をつかいます。

可能形ではない特殊な言葉

為せる (なせる)

「神の為せる業」という決まり文句があります。

形や語感からなんとなく「できる」のようなイメージを持ってしまいますが、ちがいます。

「為す」の已然形+完了の助動詞「り」の連体形

という構造で、「なした」「やった」という意味です。
つまり「神様がやったこと」という意味です。

さっちゃん
ケーキになれるといいな🍰
ひげおじさん
ケーキ屋さんじゃろ🏪

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