目次をご覧になりたい方はクリックしてください→
- 1 アクロバット入門講座
- 2 Dutch Roll ダッチ・ロール
- 3 Aerobatic Turn エアロバティック・ターン
- 4 Rudder Stall ラダー・ストール
- 5 Power on Stall パワー・オン・ストール
- 6 loop ループ。宙返り
- 7 Sighting Device サイティング・デバイス
- 8 Slow Roll スロー・ロール
- 9 Inverted 背面飛行
- 10 Snap Roll スナップ・ロール
- 11 Spin スピン
- 12 Inverted Spin 背面スピン
- 13 Accelerated Spin 加速スピン
- 14 Graveyard Spiral 墓場行きの螺旋降下
- 15 Hammer Head ハンマー・ヘッド
- 16 Landmark 地上目標
- 17 Sequence
- 18 アクロバットのクラス (階級)
- 19 Safety Pilot (離着陸、無線要員)
- 20 アクロバットとエアロバティクス
- 21 アクロバット向きの体型、身長
- 22 食事
- 23 グライダーのアクロバット
- 24 おじさんオススメの記事
- 25 注目の記事
- 26 話題の記事
- 27 人気の記事
「アクロバット」「エアロバティクス」「マヌーバー」
アクロバット入門講座
Dutch Roll ダッチ・ロール
垂直尾翼の能力不足、不具合で起きるものを指しますが、アクロバットではべつの操作を指します。
Adverse yaw アドバース・ヨー
飛行機はエルロンで傾けることができるのですが、左右の補助翼の空気抵抗の差でヨーイング (機首を左右に振ること) が起きます。
それを打ち消すためにラダーがあります。
また、アドバース・ヨーは傾けたのと反対に機首を振るのですが、傾きはじめるとこんどはそちらに横滑りして機首を内側に向けていきます。
ラダーで修正してやり、外にも機首を振らず、内側にも振らないようにして、こんどは反対にエルロンを切ります。
左右に翼を振りながら、機首はどちらにも動かさずまっすぐ前方に向けて、旋回もしない練習です。
厳密には旋回しないので左右に横滑りをしているのですが、この練習の目的は機首を前方の目標の一点から動かさないことです。
とくに迎え角が大きいときにこの影響が出るのでフルパワーで上昇中にこの練習をします。
これはアクロバットだけでなくふつうの飛行機の訓練でも取り入れたらいいですね。
ふつうの飛行機ではラダーをつかうことはほとんどないので、ぜひやってください。
まわりの安全確認は必要ですが、危険な操作ではないのでふつうの飛行機でも、どこでもできます。
競技会では演技開始の合図
Competitionでは演技開始の合図としてダッチ・ロールを3回しなくてはなりません。
終わったあとも3回しなくてはなりません。
これを忘れるとどんなに完璧な演技をしても「失格」になるという代物です!
Dutchは英語で「オランダの (人) 」という意味です。
Dutch Rollは、
オランダ人のスケーターが肩を揺すって滑る姿からつけられた名前です。
じっさいはそんなことないと思いますが。
オランダ人に失礼です。
またDutchということば。
もともとはdeutsch (ドイチ) から来ていて、オランダをふくめたドイツ全般を指しました。
ドイツに対してはGerman (ジャーマン) をつかうようになり、Dutchはオランダを指すようになりました。
Germanの語源はゲルマンです。
オランダは貿易などでイギリスの競争相手だったことから、オランダをからかうような成句が多いです。
go Dutch「割り勘にする」なんかもそうですね。
オランダ人に失礼なのでDutchの成句はなるべくつかわないようにしましょう!
「割り勘にする」はsplit the billといいましょう。
Dutch Rollは航空用語として定着してしまってるからなあ。
オランダ人からクレーム出ないんだろうか?
Aerobatic Turn エアロバティック・ターン
ふつうは旋回するときエルロンとラダーを同時につかってバンクをつけていき、機首が下がらないようにバック・プレッシャーをかけていきますが、エアロバティック・ターンはちがいます。
直進のままバンクさせて、バンクを決めてから旋回をはじめます。
わざと直進部分と旋回部分を切り離すんですね。
ふつうにエルロンを切って傾けるだけだと、最初にアドバース・ヨーで機首が外を向き、そのあと内滑りがはじまって垂直尾翼のラダー効果で機首が内側に回りはじめてしまいます。
なので、上で練習したダッチ・ロールをつかって機首を一点に向けたままバンクだけさせます。
機首がブレないように、旋回しないように。
バック・プレッシャーも与えません。
トップ・ラダー (空の方、上に上がった翼端の方) を踏んで機首が内側を向かないようにします。
厳密にいうとわざと内滑りさせているんですね。
もたもたしてるとほんとに内滑りがはじまってしまいます。
side slipというべつの科目になってしまいます。
素早くロールして所定のバンクでピタッと止めて、エルロンとラダーをニュートラルにもどして、操縦桿だけを引き旋回をはじめます。
ニュートラルといってもあくまでバンクを止めて、滑りを止めるということです。
90°なら90°完全に旋回したら操縦桿をもどして旋回を止め、バンクをもどします。
このときも止めた方向から機首を動かしてはいけません。
Rudder Stall ラダー・ストール
ネーミングがよくないのですが、ラダーがストールするわけではありません。
ストールさせても操縦桿をフル・アップにしたままでヨーイングを起こさないようにラダーで修正します。
迎え角が大きく、アイドルで行うのでプロペラ後流が当たらず、あるいは乱流が当って、ラダーの利きが悪くなるということはあるかもしれません。
じっさいの訓練では生徒は操縦席の前にあるフレームにつかまり、教官が操縦桿を目一杯引いてストールさせます。
操縦桿はずっと引いたままです。
生徒が前のフレームにつかまるのは操縦桿に触らせないためです。
また、上半身を安定させるためもあります。
シートベルトをしているので体が動くことはないんだけど、ラダーを踏むのに上半身を固定してないと足に力がはいりにくいということもあります。
そして、教官はわざとエルロンを左右にバタバタと動かします。
するとアドバース・ヨーで機首が左右に振られるのです。
カンタンにスピンにはいります。
スピンにはいっても、操縦桿はフル・アップのままです。
でも、ラダーだけで回転を止めることはできるんですよ。
重要なのはヨーイングを止めることで、水平にもどすことではない!
ラダーで機体を水平にもどそうとしてはいけません。
こんどは反対側のスピンにはいってしまいます。
機体が傾いていてもヨーイングが止まったらそこで保持します。
そのままだと傾いたほうにヨーイングが起きて、またそちらのスピンにはいるのでラダーで止めます。
でも、水平にもどそうとしてはいけません。
うまくやればストールしたまま水平にもどっていきます。
でも、そうは問屋が卸さない。
鬼教官はエルロンを動かしてわざとヨーイングを起こします😄
おじさんはこれがけっこう好きです。
ゲームみたいな感じで。
旋回失速
グライダーの訓練で「旋回失速」という科目がありました。
しかし、このほんとの意味をだれもわかっていませんでした。
文字どおり旋回しながら機首を上げていき失速まで持っていくのですが、問題はその回復操作です。
「まっすぐ落とせ」と先輩に教わりました。
しかし、この「まっすぐ」の意味がだれもわかっておらず、その人もそう教わったからそう伝えているだけです。
そのときはみんなでだいぶ議論したけど納得のいく答えは出ませんでした。
その答えがここにあります。
失速して機首が下がるときに、「ヨーイングを起こすな」ということでした。
どちらかに頭を振ればスピンにはいります。
サーマルでセンタリングして速度を抜いていくと、旋回半径が小さくなるので、左右の翼の速度差が大きくなります。
するとバンクがどんどん深くなっていきます。
一定のバンク角を保とうとすると自然にエルロンを外に切ることになります。
そして、小回りになるのでラダーは内側に踏みこんでいきます。
知らずしらずのうちにクロス・コントロールになっています。
ストールの瞬間はラダーがかなり内側にはいっているのでとてもスピンにはいりやすくなっています。
しかし、機械的にトップ・ラダーを踏んでもダメです。
これまたわかってない人がほとんどですが、かりに左旋回をしていて左に傾いていても、トップ・ラダー (この場合は右) を踏めば水平を通り越して右のスピンにはいります!
Power on Stall パワー・オン・ストール
これはアクロバットならではの練習です。
ストールの練習ではふつうはパワーをしぼっていってアイドルの状態で機首が下がり回復操作をします。
でも、これはスロットル全開のままやります。
とにかく機体が暴れます。
重要なことはストールしようが、機首が下がろうが、とにかくラダーでヨーイングを起こさないようにすることです。
ヨーイングを起こすとスピンにはいってしまいます。
loop ループ。宙返り
回ること自体はむずかしくない。
ただ操縦桿を引きつづければいいだけのこと。
またネガティブG (背面のG) もかからないので初心者向きです。
でも、きれいに正円を描くのはとてもむずかしいです。
ℓやeになったりしてつぶれた円になってしまいます。
Sighting Device サイティング・デバイス
横についてる照準器です。
上昇角、下降角を測ります。
45°刻みになっています。
また機首が上がっているときは地平線が見えないので、翼端を見て操縦することが多くなります。
ふつうは機首を見て、pitch (上下) 、yaw (左右) 、roll (回転) を知るのですが、
翼端を見てもこの3つの動きがわかります。
翼端が回転すればpitch。
前後に動けばyaw。
上下に動けばrollです。
Slow Roll スロー・ロール
スローというけど、ゆっくりロールすることではありません。
Snap Rollに対してゆっくりなのでSlow Rollといいます。
Slow Rollといっても、ロールレートが540°/sの機体なら1秒かからず1回転してしまいます!
エルロンをつかい、機軸を動かさずにロールします。
ナイフエッジの状態のときには機首が下がらないようにトップ・ラダー (空を向いてるほう) を踏みます。
背面のときは機首が下がらないように、操縦桿を押さなければなりません。
これらは一つひとつバラバラではなくすべての舵が連続的に動きつづけるので、じつはとてもむずかしいのです。
左回りがつかわれるのは、プロペラが時計回りだからです。
反トルクで左回りのほうが回りやすいのです。
Inverted 背面飛行
スロー・ロールを180°して背面で止めるのが入門篇です。
よく背面になると舵が逆になるというけどウソです。
舵は飛行機がどっちを向いていようとパイロットから見て、動かしたほうに飛行機は動きます。
ふつうの状態でも、背面でも、空を向いていようと、地面を向いていようと、操縦桿を引けば前の景色は足元へ流れていきます。
操縦桿を押せば、前の景色は頭のほうへ流れていきます。
ラダーも左右は関係なく、踏んだほうに機首が向きます。
エルロンにいたっては操縦桿を倒したほうに回るのでそれこそ上下は関係ありません。
アクロバットでは、上下左右と考えないで、「こっちに行きたい」とだけ考えると混乱しません。
ラジコン
よくいわれるのは実機でアクロバットをやる人など稀で、ラジコンでやるからです。
ラジコンは地上でつねに頭を上に向けた人が操縦するので背面になると訳がわからなくなります。
イメージ力の強い人なら自分がラジコン機の中にいると思ってその景色を想像すれば混乱しないけどそれもむずかしいでしょうね。
外からラジコン機を眺めていると背面のときはエルロン以外の舵は逆になります。
天橋立を見るときみたいに、股の間からラジコン機を見ればまちがえないかもしれませんね😄
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Snap Roll スナップ・ロール
水平方向のスピンです。
水平飛行をしてパワー・オンの状態で一気に操縦桿を引き、ラダーを蹴っぽります!
ゆっくり引くとストールしないで急上昇になってしまいます。
そして、いちばんむずかしいのが1回転して水平になったときにスピンを止めることです。
Auto Rotation オート・ローテーション
ヘリコプターのオート・ローテーションとはまたちがいます。
文字どおり「自動回転」で、片翼の失速による回転、つまりスピンのことです。
スピンのときは「旋転」という用語もよくつかわれます。
エルロンで回すのとちがい片翼の失速による回転なので、入れるのはカンタンだけど所定の場所で止めるのはとてもむずかしいのです。
これは「水平になるどれくらい手前で回復操作を行うか?」というタイミング次第なので、水平になる手前で微調整はできないのです。
何十回、何百回と練習してタイミングをつかむしかありません。
もちろん飛行機が変わると、タイミングも変わってしまいます。
車でいったら、ブレーキ調整で停止線に止めるのではなく、とちゅうでブレーキを緩めたりして加減することなくフル・ロックのまま停止線に止めるようなもんです。
ブレーキを「いつ踏むか?」にかかっています。
Spin スピン
上に書きましたが、スピンに入れるのはカンタンです。
でも、アクロバットのスピンはただ回復操作をすればいいのではなく、正確に360°とか、1と1/4回転とか回転する角度が指定されます。
目安としてデカスロンの場合は、3/4回ったら回復操作をするよう習いました。
でも、1と1/4のときも3/4回ったらといわれました。
その差はわずかなのでそうとしかいいようがないんですね。
あとは自分で何回もやってみて、そのタイミングをつかむしかありません。
そしてスピンが止まったときは機首は真下より上を向いてるのであえて機首を抑えて真下を向くように修正しなければなりません。
またスピンの回復操作でラダーも思いっきり踏んでいるので、ラダーを踏んだほうに機首が向いています。
これを修正するために反対の (つまり最初にスピンに入れたほうの) ラダーを踏んで真下に向けます。
そうしないと「美しく」ないのです。
回転を止めたときに真下を向いてないと減点されます。
そして、垂直に降下してからはじめて引き起こします。
また、ふつうの飛行機ではスロットルをもどしてアイドルの状態で引き起こして水平から上昇に移ってはじめてスロットルを入れるのですが、アクロバットでは真下を向いた時点でスロットル全開にします!
これはgoverner (ガバナー) といって、エンジン回転が一定になるようにプロペラピッチが自動的に変わる装置がついているからこそできることで、ふつうの飛行機でやったらエンジンがオーバーレブしてしまいます。
飛行機はグライダーとちがいプロペラがついているので真下を向いてもそんなに加速しません。
プロペラが空気抵抗になって、車でいうエンジンブレーキのような働きをします。
グライダーはあっという間にVNEを超えてしまうので、すぐ引き起こさなければなりません。
飛行規程
スピンの挙動は機体によって変わるので、かならず飛行規程を読むこと。
グライダーは立つとよくいわれますが、これは翼が長くて胴体が短いからです。
回転すれば遠心力が働くので重量物は外へ外へと膨らみたがります。
ジェット戦闘機がフラットスピンになりやすいのは、翼が短くそれに対して胴体が長くて重いからです。
胴体の頭と尻尾が外へ外へ行こうとするのでフラットになりやすいのです。
すると垂直尾翼が水平尾翼の陰になりラダーの利きが悪くなってスピンから回復しにくいといういやな特性があります。
そこで機体によっては機首をすこし下げてラダーに風を当てるということをします。
グライダーはかってに立つので操縦桿を押す必要がありません。
というより押してはいけません。
極端な場合、背面スピンにはいってしまいます。
あとから出てくるAccelerated Spin (加速スピン) にも理由が書いてあります。
あくまで飛行規程に従うこと!
Inverted Spin 背面スピン
ただ背面スピンをするだけならどっち回りでもいいのですが、アクロバットでは右ラダーを踏むのが一般的です。
そのほうが機首が上がってフラットスピンになるからです。
ジャイロ効果 (歳差運動ともいいます)
gyro effect/gyroscopic force/precessionなど
飛行機を操縦したことのある人ならわかるけど、左旋回のほうが右旋回より楽ですね。
それは左旋回をするとジャイロ効果で機首を上げる力が働くのでバック・プレッシャーをあまりかけなくてもいいからです。
反対に右旋回ではかなり力を入れて操縦桿を引かないと頭が下がって速度が出てしまいます。
機体によっては両手でないときつい場合もあります。
これはアメリカやヨーロッパではプロペラの回転が時計回りがふつうだからです。
ロシアのスホーイなどは反時計回りなので、すべて逆になります。
ジャイロ効果はループやスピンなどすべての回転系の技に影響するので、逆回転のプロペラ機に乗ると慣れるまでかなり苦労すると思います。
ジャイロ効果 ~ 飛行機にかかる力
ラダーへの風当たり
航空ショーで背面のフラットスピンをやるのは「視覚的に映える」からでもあるのですが、じつはほかに理由があります。
水平尾翼の上に垂直尾翼がある機体だと、ふつうのスピンに入れたとき垂直尾翼が水平尾翼の陰になって気流が当たりにくく、ラダーの利きも悪く回復が遅れるということがあります。
その点、背面だと垂直尾翼が下にあるのでラダーがよく利きます。
ふつうの姿勢でスピンに入れるとフラットになればなるほど垂直尾翼が水平尾翼の陰になってスピンから抜けにくくなります。
T尾翼はこの影響を避けるための形です。
スピンのためというより主翼の後流が水平尾翼に当たらないようにしています。
そのためバフェッティングを感じないというデメリットもありますが。
Accelerated Spin 加速スピン
スピンの状態でスロットル全開。
さらに操縦桿を押します。
すると不思議なことに回転が加速します。
角運動量保存の法則
スケーターのスピンを想像してください。
広げていた手足を体に巻きつけると回転が加速します。
そして、手足をパッと広げると止まります。
飛行機にもおなじことが起きます。
スピンの回復操作でよくまちがっているのが「操縦桿を押して機首を抑える」ということです。
けっして操縦桿を押してはいけません。
回転が加速します。
ますますスピンから抜け出せなくなります。
機首が上がった状態から、操縦桿を押して機首を下げると、重量物がスピンの回転軸に近くなるので「角運動量保存の法則」によって加速します。
これはドイツのベルリンにある技術博物館のScience Center Spectrumにある遊具、もとい実験道具です!
技術博物館 (ベルリン) Science Center Spectrum~ちょっとした遊園地かも
さらに時計回りのプロペラ機なら左に回転してるときに頭を下げるとジャイロ効果でさらに左に回す力が働き回転が加速します。
むしろ操縦桿は引いておいてできるだけ機首を上げたほうが回転は遅くなります。
まずラダーで回転を止めてから機首を下げます。
まあ、回転が止まればストールしてるので操縦桿フル・アップの状態でも自然に頭が下がりますが。
機体によっては操縦桿を押す必要があるものもあります。
垂直尾翼が水平尾翼の陰になってしまうものです。
これは飛行規程に書いてあるのでかならず熟読して、体験できるならしておくこと。
スピンから回復できないような飛行機は欠陥機なので乗らないこと。
Snap Rollへの応用
前述のとおりSnap Rollは水平スピンなのでスピンに持ちこんで回転がはじまったら素早く操縦桿を前に押します。
すると回転がより速くなるのです。
また、迎え角を小さくすることで速度の減少も抑えることができます。
回転を止めるときはまた操縦桿を引かないと止まってくれません。
Graveyard Spiral 墓場行きの螺旋降下
これは競技ではありません。
雲にはいって自分の姿勢がわからなくなったときに起こります。
至極、カンタンなことでまわりが見えないからです。
計器飛行ではOKですが、有視界飛行ではけっしてはいってはいけません。
まず、ほかの飛行機がいても見えないので衝突する危険があります。
そして、いちばん怖いのは地平線が見えないので、上下がわからず傾きもわからないことです。
「傾きなんか目をつぶっててもわかるじゃん」と思うかもしれないけど、それは止まっていれば、の話です。
旋回してても横滑りがなければ傾きを感じません。
旅客機に乗っていて窓の外が見えなければ傾いていることも旋回していることもみなさん気がつきませんよね。
右や左に倒れそうになったことはないでしょう。
はじめは旋回すれば三半規管のセンサーで回転を感じますが、時間がたつとセンサーの中の液体がいっしょに回りはじめるので回転を感じなくなってしまいます。
そして、止まると逆に回っているように錯覚してしまいます。
中の液体が惰性で回りつづけているからです。
なのでまた旋回する操作をしてしまいます。
バットのまわりをグルグル回って、急に止まると逆に回ってるように感じてまっすぐ歩けない、あれです。
上を向いているのか下を向いているのかもわかりません。
急旋回しながら、機首を下げていって加速して、荷重も増大して、最後はVNE (超過禁止速度) を超えるか、その前にオーバーロードで機体が空中分解するかどちらかです。
これをGraveyard Spiralといいます。
計器飛行証明を持っていなくても姿勢儀がついていればそれを信じましょう。
自分の感覚は当てになりません。
でもアクロバットのような動きをすると姿勢儀が狂うこともあるので、やっぱり雲にははいらなように!
スピンは速度と荷重を制限できる
はいってはいけないけど、万が一はいってしまって、姿勢がわからなくなってしまったらわざとスピンに入れます。
操縦桿を目一杯引いて、どちらかのラダーをストッパーまで踏みこんだままにします。
プロペラが時計回りなら左ラダーを踏んで、左回転のスピンに入れたほうが機首が上がり、速度が出すぎるのを防げます。
もちろんスロットルはアイドルです。
そして雲の下に出たら、目はグルグル回ってるけど三半規管の情報は遮断して地平線の動きだけに集中して回転を止めます。
これも慣れで、スケーターの選手はドリルのように高速回転して急停止してもフラフラしないで止まれるでしょ。
途中でほかの飛行機に衝突したり、高度が足りなくて回復操作が間に合わなかったりしなければ助かります。
空中分解するよりはマシです。
まあ、くれぐれも雲にははいらないように!
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Hammer Head ハンマー・ヘッド
金づちを放り投げたときの運動に似ているのでこう呼ばれます。
グライダー界ではStall Turnといいますがおなじものです。
じっさいはStallしてないのでこの呼び名はふさわしくないのですが。
加速して水平飛行からプル・アップ。
垂直上昇になったらその姿勢を維持します。
最初のプル・アップではジャイロ効果で機首が右を向こうとするので左ラダーを踏むのはいうまでもありません。
機械的にではなく機首がぶれないように。
そして、垂直姿勢になったらラダーをもどすこと。
速度が抜けてくるとp-factor (プロペラ後流) の影響で右ラダーをすこしずつ踏みこんでいき、
プロペラの反トルクで機体が左にロールするのでエルロンを右に当てていきます。
右のエルロンが1インチくらい開いたら回転するタイミングだというけど、操縦席からエルロンの1インチはわかりません💦
機体によっても変わります。
それよりも上昇の頂点付近に達し、飛行機が止まりかけると機体がブルブルと振動してくるのがわかります。
すかさず左ラダーをストッパーまで蹴っぽる!
あっ!舵が壊れない程度にやさしくね!
すぐさまヨーイングを起こして左に回ると右の翼が前進するので、左にロールしてしまいます。
なのでエルロンは右にストッパーまで当てます。
さらに左回転することでジャイロ効果がはたらき機首は上に (すでに上を向いているので背面に) 倒れそうになるので、エレベータはフル・ダウン。
ラダーと逆エルロンはほぼ同時。
そしてすぐエレベータ・ダウンです。
操縦桿は右→前と四角く動かします。
180°回転して真下を向いたらすべての舵をつかって真下に降下するように調整します。
かならずしもニュートラルとはかぎらないので機体の動きに合わせてです。
とくにエレベータは自分が思うより押したままです。
一般的に左に回りますが、それは上昇中に右ラダーを踏んでいくということは右側には残りの踏み代が少ないということを意味しています。
p-factorの影響もありほとんど前進してないときには左ラダーをつかって左に回るほうが回りやすいのです。
スホーイは逆になります。
Landmark 地上目標
アクロバットをやるときには自分のまわりの目標を90°ずつ取ります。
できるだけ遠くの山とか川とか道路とか建物など。
そして、ループ、スピン、ハンマー・ヘッドなどをやる前とやったあとで、方向がずれずに回ったか確認します。
上を向いてるときは空しか見えないので、翼端を見ます。
スピンを正確に1回転、1と1/4回転などで止めるには地面をしっかり見ている必要があります。
アクロバットの操縦席の動画を見ればパイロットはいつも地面を見ていることがわかります。
体操の選手も
器械体操の選手も宙返りや回転技をやるときはかならず床を見ていることがわかります。
天井を見ていても姿勢がわからないし、高さもわからない。
体操の選手はとくに床がすぐそこにあるので、月面宙返りのようにメチャクチャに回っているようでも着地点をいつも見ています。
下がよく見えるように窓がついてるものもある
Sequence
sequenceは「ひと続きのもの」という意味です。
カンタンにいうと「アクロバットのお題」です。
記号が決まっていて、何のマヌーバー (演技、操作) をどの順番でやるかが書いてあります。
メモを計器盤に貼ったりしますが見ながらやってられないので暗記します。
音楽といっしょですね。
楽譜を見ながらだとそこそこの演奏しかできません。
アクロバットのクラス (階級)
5段階あります。
クラス1~5ではつまんないので、もっともらしい名前がつけてあります。
- primary 初級
- sportsman 運動家、運動好きな人
- intermediate 中くらい、中級
- advanced 進んだ、高等の
- unlimited 無制限、最上級
primaryは科目が3つしかありません。
sportsmanはよくわからないことばですね。
Safety Pilot (離着陸、無線要員)
おじさんはアクロバットはそこそこできるようになったものの、ソロでは飛べません。
ソロで飛ぶには免許とはべつにクラブやその機体を貸し出すところの「お墨付き」が必要です。
車とちがって、怖くなったから路肩に停めて…というわけにはいかないからです。
またほとんどのアクロバット機は「tail dragger (尾輪式) 」なので免許とべつに尾輪式のendorsement (限定解除みたいなもの) が必要になります。
セスナのような首輪式とちがい尾輪式はまず誘導路や離着陸のときに前が見えないという制約があります。
また、groundloop (グラウンド・ループ) といって滑走中にお尻が前に出てしまって地上でスピンしてしまいやすい特性を持っています。
車でいうスピンです。
飛んでるときは問題ないけど、地上滑走でスピンして機体を壊してしまうことがよくあります。
グライダーでは尾輪さえなく、尾橇 (スキッド) であることもあります。
むかしのグライダーはtail heavy (お尻が重たい) のものがあり尾橇がついていましたが、最近はnose heavy (前が重たい) ものが多いのであまりグラウンド・ループするものはなくなりました。
首輪
nose gear (ノーズ・ギア)
セスナや一般的な旅客機のように胴体の前の方に1本ある車輪です。
主輪
main gear (メイン・ギア)
機体の主な重量を支える車輪です。
どちらも日本語では「しゅりん」になるけどまったく別のものです。
そこでSafety Pilotの登場!
競技は自分でやるけど、離着陸や無線の交信などをやってくれるパイロットが同乗してくれます。
しかも「ただ」です!
やっぱりアメリカはええのう!
おじさんはこのことばは好きじゃないけどいわゆる「ボランティア」ですね。
ボランティアは「みずから進んで志願する」というのが本来の意味です。
日本では「タダ働き、無償で働く」という意味合いが強くなってしまっています。
ほかのクラス (とうぜん上のクラス) で出場する選手が自分が競技に出ないときに後席に乗ってくれるんです。
Competition Box (競技をやる場所) は1カ所なので、クラスがいくつあろうと参加者が何人いようと、1回に演技をする人は1人です。
自分だったら自分の競技に集中して、地上にいるときは自分の競技のことを考えたり、休んだりしたいと思うのに。
でも、こういう人やシステムがあるから初心者もはいりやすく裾野がひろがっていくんですね。
日本は敷居の何と高いこと。
そして、航空界の御仁が偉そうにふんぞり返っていて、初心者・新参者を叩き落とすことに命をかけている=^^=
アクロバットとエアロバティクス
そもそもacrobat (アクロバット) とは「軽業師」「曲芸師」「曲芸をする人」です。
それに対して「軽業」「曲芸」はacrobatics (アクロバティクス) です。
acrobaticsにaero-「空気の、空の、飛行機の」をつけて、aerobatics (エアロバティクス) ということばが作られました。
aeroで「エアロ」と読むのはおかしいので、ヨーロッパでは「アエロ」とそのままローマ字読みするのがふつうです。
英語のほうがおかしいんです!
aerobaticsは「飛行機の曲芸」です。
むかしの人は「曲芸飛行」などといったりしますが、そのとおりです。
それから逆成してaerobat (エアロバット) を、「aerobaticsをする人」という意味につかうことにしました。
これはおじさんが自分で考えました。
辞書にはありません。
と偉そうにいったものの、世界中にはおなじことを考える人が大勢いるようでIDにaerobatをつかおうとすると「すでに使われています」💦
まあ、英語圏の人は自然にそうなるでしょう。
日本でつかう人はまずいないと思いますが。
「エアロバティクス」というと「エアロビクスですか」といわれるけど、ちがいます😄
アクロバット向きの体型、身長
アクロバットでは強いG (荷重) がかかるので身長が高い人ほど心臓から脳までの距離が長く、脳に血が行かなくなる傾向があります。
「大男 総身に知恵が 回りかね」なんて歌がありましたね。
「知恵」ではなく、「血」が回らなくなります。
グレイ・アウトとか、ブラック・アウトとかいいます。
一瞬、目の前が暗くなるだけならいいけど、失神してしまうと危険です。
視界が暗くなってきたら操縦桿をもどしましょう。
ループでは6Gほどかかりますが、かかってる時間が短いのであまり問題にならないです。
意外と危ないのが急旋回です。
長い時間Gが持続するのでグレイ・アウトが起きやすいです。
長時間でなければGがなくなったとたん回復します。
訓練のあと教官が「急旋回のときグレイ・アウトしてたwww」と笑いながらいってたけど、怖いです😱
食事
お腹いっぱいで消化しないうちにアクロバットやるのはやめたほうがいいというのは言うまでもないでしょう。
でも、空腹でやるのもよくないです。
血糖値や血圧が下がると耐G性が弱くなります。
しっかり食べてお腹の中が片づいたくらいにやりましょう。
おじさんはわりと食べてすぐでも平気だったけどこれも人によりけりです。
消化のいい炭水化物がいいですね。
消化の悪い肉とか、油ものはやめたほうがいいです。
グライダーのアクロバット
ASK21のアクロバットです。
ビデオをデジタル化したので画像は悪いですが参考までに。
はじめての海外旅行 ~ 飛行機の免許とアクロバット ~ はじめてのアクロバット!
飛行機の免許とアクロバット ~ 一覧
海外旅行 ~ 一覧
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