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「ドイツ語」「sie」「オタク」
sie (彼女、彼ら) と、Sie (あなた)
ドイツ語のsieには3通りの意味があります。
sie 彼女 (3人称単数)
英語の「she」 に相当します。
形も音もそっくりです。
Sie ist Japanerin.
彼女は日本人です。
動詞が2人称単数なので「彼女」だとわかります。
sieは文頭にあるので大文字になっています。
疑問文など文中にはいると小文字になります。
Ist sie Japanerin?
彼女は日本人ですか?
sie 彼ら (3人称複数。男女ひっくるめて)
英語の「they」に相当します。
これもなんとなく音が似ています。
英語ではむかし、3人称複数は「ye」と書いて「ズィー」と発音していました。
くわしくはこちらに↓
2人称には、どこの国も苦労してる! 世界各国みんなオタク族!
Sie sind Japaner.
彼らは日本人です。
動詞が3人称複数なので「彼ら」とわかります。
やはりsieは文中では小文字になります。
Sind sie Japaner?
彼らは日本人ですか?
「彼女」と「彼ら」のちがいは「動詞の活用形」でわかります。
また、sein (英語のbe動詞) で後ろが名詞なら、女性名詞か、複数形かでわかることもあります。
ここでは、
Japaner 単複同形
Japanerin ♀ (女性の) 日本人
でも、ふつうの動詞だとわかりません。
Sie mag Schokolade.
彼女はチョコレートが好きです。
Sie mögen Schkolade.
彼ら (または、あなた) はチョコレートが好きです。
この場合はやはり動詞の活用で判断します。
Sie あなた (2人称敬称。単複ひっくるめて)
よくいえば「敬称」、悪くいえば「親しくない」相手につかいます。
親しい間柄なら、duやihrをつかいます。
文中にあっても「Sie」と大文字で書くのが目印です。
ただ文字ならわかるけど、言葉として音で聞いたときは「大文字の」音はないのでわかりません。
親しくない人に物を尋ねたり、頼んだりするときは、目の前にいる相手を「彼ら」だと思ってしゃべればいいです。
動詞の活用は3人称複数 (彼ら) のsieとまったくおなじなので、べつに活用を覚えなくていい反面、区別ができません。
Sie sind Japaner.
あなた (がた) は日本人です。
ふつう、相手に対して「あなたは〇〇です」なんていうことはありえないので、あくまで文法上の例です。
単複いっしょなので、相手が1人でも、2人以上でもおなじ形です。
この場合、Japanerも単複同形なので、文章だけだと1人なのか、2人なのか、はたまた10人なのかわかりません。
1人でもsindをつかいます。
まあ、英語のyou areも1人か2人かわからないのでおなじですね。
areは本来、複数なのでこのへんも英語とドイツ語のよく似ているところです。
2人称敬称のSieは、ふつう疑問文か、命令文 (依頼) でつかわれます。
Sind Sie Japaner?
あなた (がた) は日本人ですか?
この場合、Sieはどこにあっても大文字です。
もしあなたが口頭でこの質問を受けたとき、
「自分に聞いてるな」と思ったら、これは2人称敬称で、
「あっちのほうにいる人、あるいは話題に出ている人たちのことを聞いてるな」と思ったら、3人称複数です。
「あの人たちは日本人ですか?」と聞かれたのに、
「はい、わたしは日本人です」と答えたら変な顔されます😅
Sprechen sie langsam?⤴
彼らはゆっくり話しますか?
Sprechen Sie langsam.⤵
ゆっくり話してください🙏
とまったくおなじ形になりますが、日本語とおなじで語尾を上げれば疑問文、下げれば命令文です。
これも語尾の上下だけでなく、会話の流れや文脈で、彼らのことをいってるのか、自分のことをいってるかわかりますね。
お願いする場合は bitte をつけたほうがいいです。
Sprechen Sie bitte langsam.
bitteをつけないと
「ゆっくり話せよ!」
と怒ってる感じ、不躾な印象を与えてしまいます。
2人称敬称は蔑称に変わってしまう!
Sie (女性に対する敬称→蔑称)
Sieは女性に対する敬称だったのに、これも女性 (2人称) に対する蔑称になってしまいました。
下女や、職人に対して「オマエ」という意味になってしまいます。
Sieは中性名詞で「女性に対してのお前という呼び方」という意味があります。
□jn. Sie nennen
~をお前呼ばわりする (見くだして話す)
jn. はjemanden「誰か人の4格」です。
もちろん3人称でつかえば、ふつうの「彼女」です。
日本語でも神さまに対してつかう最上級の2人称「御前 (おんまえ) 」がいつしか相手を罵る言葉になってしまいました。
これもまた世界共通なようで、英語もむかしは2人称をthouといっていたのに、いつしか「オマエ」という蔑称になってしまったので、困ったイギリス人たちは「オタク」に相当するyouをつかいだしたんです。
これもこの記事に詳しく書いてあります↓
2人称には、どこの国も苦労してる! 世界各国みんなオタク族!
オタク、あなた
一時期、2人称を「オタク (お宅) 」と呼ぶオタク族が流行りました。
しかし、オタク族が特別なのではなく、また日本が特別なのでもなく、2人称を呼ぶのはむかしからどこの国も困っているんです。
相手に対して呼びかけたり、名前を言ったりすることが、相手に対して失礼になるという感覚はどうやら万国、そしていつの世も共通のようです。
オタク族を笑っているあなた!
「あなた」って漢字で書くと「彼方」で「あっちのほう」という意味なんですよ。
えっ?貴方って書く?
それは当て字です。
目の前の人に向かって「あっちのほう」といってるんです😄
時代劇を見てると、「そち (そちら) 」とか「そなた」「そのほう」とかいってますね。
これも「そっちのほう」と、ちょくせつ相手を呼ぶことを避けています。
(参考:小学館 独和大辞典 第2版)