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「箸」「橋」「端」「はし」「高低アクセント」「アクセントの滝」
高低アクセント
この記事での決めごと
「/」後ろの音が上がる。
「\」後ろの音が下がる。
日本語では音の高さが上がったり、下がったりする「高低アクセント」を使っています。
アクセントの滝
それで「箸」は「は\し」。
「橋」は「は/し」のように区別することができます。
でも、「端」も「は/し」なので、「橋」と区別できないですね。
「は\し」のように「音が下がる部分」を「アクセントの滝 (核) 」といいます。
アクセントの滝についてはこちら↓
Japanese accent pattern アクセントの型 ~ 日本語
助詞が高低を分ける!
単語レベルでは一緒だけど、文章になると違いが出てきます!
「はしをわたる」という文章で説明しましょう。
「橋を渡る」→は/し\を、わ/たる
「端を渡る」→は/しを (\) 、わ/たる
わかりますか?
どちらも「は/し」と後ろが上がるアクセントなんだけど、
そのあとの「を」が、
「橋」の場合は下がり、
「端」の場合はそのままで下がりません。
あくまで共通語のアクセントで、方言によって変わります。
とくに西日本では高低アクセントが逆になることが多いようです。
おそらくこれを読んだ人は誰もこんな規則があったなんて知らなかったでしょう。
でも、知らないし、学校でも習わないのに、みんな無意識にこの使い分けをしています。
それは自分のまわりの大人たちがしゃべっている言葉を聞いて覚えるんですね。
同じようなグループに「はな」があります。
「花」も「鼻」も「は/な」で後ろが上がるんだけど、文章になると違いが現れます。
例:「はなをみる」
「花を見る」→は/な\を、 (/) み\る
「鼻を見る」→は/なを、み\る
文脈で判断する
このように高低アクセントで区別もするけど、アクセントはまったく同じものもあります。
じっさいには「文脈」「意味」そして「いっしょにつかわれる動詞」から判断していることが多いです。
たとえば「雲」と「蜘蛛」はどちらも「く\も」で、
文章になっても「く\もが」と、同じになるんだけど、「雲」と「蜘蛛」はあまりに違うものなのでまず間違えることがありません。
「空にくもが浮かんでる」といったときに、ふつうの人は「雲」を思い浮かべます。
「蜘蛛」が空を飛んでいることもあるかもしれないけど、「蜘蛛が浮かんでる」という表現はふつうはしません。
それなら「蜘蛛が飛んでる」と言うでしょう。
「くもが巣を張ってる」といったときに、「雲」を思い浮かべる人はいないでしょう(^^)
箸。橋。端。
これらの言葉も文脈から間違えることはまずありません。
はじっこ
それでも一休さんみたいに頓知 (というより、おじさんは屁理屈だと思うけど(^^)) で、「はしをわたるな」という文字を見て、『「端」なら渡ってもいいんだよね』なんて言う人もいるので、「端」のほうは、「はじ」とか「はじっこ」とかいう言いかたもしますね。
おはし
「箸」も「はし」でつかうことはすくなく、「お」をつけて「おはし」ということが多いです。
でも、日本人は助詞 (が、は、をなど) までふくめて本人も知らずに「高低アクセント」で区別するという高度な技を駆使しているということを知ってください。
おそらく日本語を学ぶ外人にとってはかなり高い「ハードル」だと思います(^^)
しかも、これはあくまで共通語の話で、地域、個人によっても高低アクセントは変わるので日本語は「超難関」の言葉だと思います。
一休さん
子どものときは「なるほど」と思っていたけど、今になると「屁理屈」もいいところという気がします😄
「橋」に立ってる立て札に対して「端」を持ち出すのは「頓智」ではなく「ひねくれ」だと思ってしまいます。
かわいくないです。
共感できないです。
「頓智」というのは「ひねくれ」や「屁理屈」ではなく、もっと気の利いたものだと思います。
それに対して脱帽する大人もいかがなものかと。
🌸桜、さくら
そもそも桜は花の名前ですが、人の名前につかうとアクセントが変わります。
花 さ/くら
人 さ\くら
百合も
花 ゆ/り
人 ゆ\り
多数決
言葉の乱れなんてことをよく聞きますが、言葉は生きています。
そして、文法学者が言葉をつくったわけではなく、みんなが、より多数の人が話していることがその時代における「正しい言葉」であり、王道です。
それに対して、「今の若いもんは」とか「むかしは」とかいうのは無意味です。
そもそもそういうことを言ってる年寄り連中も、由緒ある日本語の古語はつかっていません😄
それを棚に上げて、自分たちが子どものときに習った言葉がいちばん正しいと思っています。
恣意的
勝手気ままといういう意味です。
規則がありません。
「みんながそういうから」です。
「はし」の例にあるように、おなじ音なのに、前が高いか、後ろが高いかには規則がありません。
ただ、なんとなくそうやって使い分けているんです。
時代によって変化する
熊🐻
みなさんはどう発音しますか?
おじさんはずっと「く\ま」だと思っていました。
最近になって人里に熊が現れるようになってきて、ニュースで報道されることが多くなりました。
そのとき気になったのが、アナウンサーが「く/ま」と発音するんです。
気持ち悪いなと思ったけど調べたら「く/ま」が正しい発音でした!
上に書いたように何をもって正しいとするのかは「みんながそういうから」なんですが、おそらく以前はそれが多数派だったんでしょう。
使われる頻度が少ないとわからなくなる
熊って日常そのへんにはいないものです。
日常会話にも出てきません。
「クマが出た!」って日常茶飯事ではありません。
つかうとすれば、「クマちゃん」とか「クマのぬいぐるみ」というような組み合わせです。
アクセント辞典
NHKのアクセント辞典なるものがあって、アナウンサーはそれを基準に話すのですが、最近になって両方の発音があるものに「熊」が加えられました。
つまり、おじさんとおなじように「く\ま」と発音する人が増えてきたからです。
世の趨勢に対して「く/ま」が正しいんじゃ!と言い張っていてもしょうがないんです。
Japanese beat and pitch accent 日本語の拍と高低アクセント (日本語)
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