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「音読み」「訓読み」「2通り」「熟語」
漢語とやまとことば
もともと漢字には、漢字といっしょにはいってきた「中国の音 (漢音、音読み) 」と「日本語の音 (やまとことば、訓読み) 」があります。
でも、基本的には1つの単語や熟語に対して読みかたは1つです。
ここでは「音読み」と「訓読み」の2通りの読みかたをするものを集めてみました。
また、言葉の説明は厳密な定義ではなく一般的なイメージです。
意味が変わるもの
音読みはカタカナ。訓読みはひらがなで書いてます。
だいたい文脈でわかりますが、わからないこともあります。
お札
おサツ。紙でできたお金です。
おふだ。神社でもらう紙のお守りです。邪悪なものを封印したりもします。
「お札が落ちてた」さて、どちらでしょう?
あっ、「金」も「キン」と「かね」で意味が変わりますね。
今日
コンニチ。現在。現代。近年。
きょう。
今日は (こんにちは) というと「きょう」のことを指します。
生物
セイブツ=いきもの
なまもの。加熱調理されていない食材。
生地
セイチ、ショウチ。生まれたところ。出生地 (シュッショウチ、シュッセイチ) 。音声では「聖地」とも区別がつかない。まぎらわしいのでこちらの意味では「出生地」をつかうのがふつう。
きじ。素地とも書く。手を加えていない素材。まだ服になっていない布。パンを焼く前の小麦粉を練ったもの。
上手
ジョウズ。うまいこと。「上手い」という書きかたもあるけど、「うまい」とひらがなで書くほうがいいでしょう。
ただし、「うまい」には、「ジョウズ」という意味と、「おいしい」という意味があります。
うわて。相手より能力がまさっていること。
「ヤツのほうが一枚うわてだった! 」
かみて。舞台の向かって右。
下手
へた。うまくないこと。「下手」は当て字です。
したて。相手より能力が劣っていること。または、へりくだること。
「したてに出てればいい気になりやがって! 」
しもて。舞台の向かって左。
下手人 (ゲシュニン) 。手を下した人。犯罪者。「下手 (ゲシュ) 」ということばはありません。
人気
ニンキ。人がもてはやすこと。
ひとけ。人の気配。
「人気がない」だけだとどちらかわかりませんね。
大人気
ダイニンキ。言わずもがな。
おとなげ (ない) 。「ない」と否定でしかつかいません。大人らしい思慮分別がない。幼稚。子どもっぽい。
寒気
カンキ。冷たい空気。
さむけ。人が寒く感じること。とくに風邪を引いて熱を出したとき。
見物
ケンブツ。興味本位でものを見ること。あまり関心がない。
みもの。見るだけの価値があるもの。これは見物だ!
目下
モッカ。目の前、さしあたり今現在。
めした。年下。地位が下。
手刀
シュトウ。空手などでつかう型、技。
てがたな。だいたいおなじ意味だが、おもにその形をいい、相撲などで懸賞金を受け取るときにつかう。手刀を切る。
火口
カコウ。火山の溶岩が吹き出すところ。
ほくち。火打ち石の火を移し取るもの。
町中
まちジュウ。町全体。ちなみに湯桶読みです。しかも本来なら「チュウ」→「ヂュウ」なのに国語分科会の分別のない人たちのために「ジュウ」と表記しなければなりません。これがかえって日本語をむずかしくしています。
まちなか。文字どおり町の中。
御中
オンチュウ。団体名につける敬称。
おなか。ふつうは「お腹」か、仮名書きにする。
小径
ショウケイ。径 (円の大きさ) が小さい。ただし「ショウケイ」の読みかたで「こみち」の意もあり。
こみち。小道とも書く。
葛藤
カットウ。葛 (かずら) と藤 (ふじ) のように絡み合うことから、複数の者の間で対立したり、迷ったりすること。
つづらふじ。ツヅラフジ科の落葉性の蔓 (つる) 植物。
この蔓で編んだカゴを「葛 / 葛籠 (つづら) 」という。
葛は「くず」とも読み、この場合はマメ科のつる性多年草を指します。
ああややこしや~。
これも漢字の濫用で、音訓はしかたないとしても、1つの漢字に複数の訓読み (やまとことば) を当てるのはよくありません。
ひらがなかカタカナにしましょう。
大事
ダイジ。=大切。「大事にする」やさしくする。丁寧に、丁重に、慎重に扱う。
時代劇では「大事 (ダイジ) ないか?」というセリフがよく出てきます。
これはむしろ「おおごとではないか?」の意味で、「程度は軽いか?」ということです。
現代語なら「大丈夫?」ですね。
おおごと。大変なこと。大事件。
大字
ダイジ。壱・弐・参など。
一、二、三は小字 (ショウジ) 。
また、これらは漢数字。
1.2.3…は算用数字またはアラビア数字 (インド起源) 。
おおあざ。住所の区分の1つ。
その下は、こあざ。
大勢
タイセイ。大体の状況。世の成りゆき。「大勢に影響はない」
おおゼイ。多くの人。いわゆる「湯桶 (ゆとう) 読み」ですね。
どちらも音読み
分別
フンベツ。道理をわきまえていること。
ブンベツ。種類によって分けること。
自重
ジチョウ。自分を大事にすること。軽はずみなことをしないこと。
ジジュウ。物の重さ。とくに車や船など大きな物。
人工
ジンコウ。人の数。人数
ニンク。1人 × 1日の仕事量。2人なら半日で終る。
工数
人数 × 時間
時間は1時間にかぎらず、秒、分、日でもいい。
区別するために [人月] と書いたりする。
拍手
ハクシュ。手を叩くこと。
ヒョウシ。音楽のリズム。雅楽の奏者。
柏手 (かしわで)
神社で手を打つことなのだが、「拍手」を読みまちがえて定着してしまった可能性がある。
利益
リエキ。人間界での恩恵。
ゴリヤク。神による恩恵。
工夫
クフウ。よい方法や手段。またはそれをさがすこと。
コウフ。肉体労働者。工事をする人。
追従
ツイジュウ。人や物の後ろについていくこと。物理的なことから、人の意見などにも意味が広がる。追随とも。
ツイショウ。ツイジュウから派生したものと思われるが、とくに人の気に入るように媚びへつらうこと。
追従笑い (ついしょうわらい)
お追従を言う (おついしょうをいう)
日中
両方とも読みかたは「ニッチュウ」
アクセントが変わります。
ニ/ッチュウ。昼間
ニ\ッチュウ。日本と中国
気色
キショク。
漢音でこちらのほうが新しく一般的な発音です。
文字どおり気持ちが外に現れたもの、つまり顔色や表情。
キソクという読みもありますが音訓表にはありません。
でもこのままつかうことはまずなくて、「気色悪い」で「気持ち悪い」という意味でつかうことがほとんどですね。
ケシキ。
呉音でこちらのほうが古い発音です。
読みはちがうけど意味はおなじです。やはり顔色や表情。
こちらは物事のようす。ありさま。という気持ちではなく見た目の意味もあります。
語源は景色とおなじ😮
こちらもこのままつかうことはなく、「気色ばむ」で本来は「それらしい様子が現れる」意味だったんだけど、現在では「怒りを表す」という意味でしかつかいません。
変化
ヘンカ。変わること。
ヘンゲ。神仏、動物などが姿形を変えて現れること。またそのもの。妖怪変化など。
どちらも訓読み
お守り
おもり。子どもの世話をすること。子どもじみた大人の相手をすること。
おまもり。身を守ってくれるアイテム。または、人を守る丁寧語。
「お守りする」だけだと、どちらだかわかりません。
つぎの2つはどちらでしょうか?
①「田中課長のお守りをしなきゃならないんだよね💦」
②「若君様をお守りするんです」
AshiGirl 「アシガール」の考察~「未来少年コナン」との共通点~時間旅行~ひげおじさんのつぶやき
爪弾き
つまびき。ギターなどを弾くこと。
つまはじき。嫌って遠ざけること。
だいたいみんなからつまはじきにされる、のように受身でつかう。
「つまびく」という動詞はあるが、「つまはじく」という動詞はない。
また「はじく」は常用漢字音訓表にはない。
「はずむ」という訓はある。
同じ意味のもの
風車
フウシャ。粉をひく大きな建物
かざぐるま。子どものおもちゃ
風穴
フウケツ。富士山のまわりにある人が入れるような穴。
かざあな。全般的に風が通る穴。
ほんとの穴ではなく、比喩的に用いられることもあります。
「閉鎖的な組織に風穴を空ける」
洞穴
ドウケツ / ほらあな
「ほらあな」が普通の読みかたでしょうか。
漢語の場合は、「洞窟 (どうくつ) 」のほうが一般的です。
牧場
ボクジョウ / まきば
戦場
センジョウ / いくさば。戦国時代のイメージ。時代劇で使われます。
氷室
ヒョウシツ / ひむろ。氷を貯蔵するところ。
水面
スイメン / みなも。
「みなも」は「水 (み) 」「な (の) 」「面 (おもて) 」です。
掌 (たなごころ) 、眼 (まなこ」などの「な」も現代語の「の」です。
ふりがなをつけるもの
気配 (り)
ケハイ。とくに「人の」存在を感じること。
きくばり。送り仮名がつきますが、他人への配慮・心づかいです。
照合 (ショウゴウ)
照 (て) らし合 (あ) わせる
日出 / 日の出
ニッシュツ / ひので
食物 / 食 (べ) 物
ショクモツ / たべもの
気圧される
キアツ。空気の圧力。
けおされる。相手や物の大きさや無言の圧力に押されて、気分的に負けてしまうこと。
山積 (み)
サンセキ / やまづみ
意味はおなじたけど「サンセキ」というと堅苦しい感じがするし、意味がつかみにくいことがあります。
「問題が山積 (サンセキ) している」より
「問題が山積み (やまづみ) になっている」のほうが聞いたときにすっと耳にはいってきますね。
番外
生暖かい、生温い
生暖かい (なまあたたかい)
空気が中途半端に暖かくて気持ち悪い。
生暖かい風が吹いてきた。 (爽やかではなく、湿っていて空気というより物があるような感じ)
生温い (なまぬるい)
漢字の使い分けで、空気は「暖」、液体や固体など触れるものは「温」を受けないとつかうということになっています。
おじさんはこういう漢字の使い分けには否定的です。
なぜなら、使い分けるというくせに「温暖 (おんだん) 」という熟語があるからです😄
温暖な気候とか、温暖前線などといいますね。
これらは空気ですが「温」もニコイチでつかっています。
ちなみに「温」は「あたたかい」と読むけど、「ぬるい」は常用漢字音訓表にない読みかたです。
「生温い」は液体にも気体にも使います。
生温い風呂、生温い風のように。
風呂の場合はおそらく「なまぬるい」と読み、風は「なまぬるい」か「なまあたたかい」か判断に困ります。
書いた人がどっちのつもりで書いたのか?
また温度ではなく「対応が厳しくない」ときにもつかいますね。
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