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格助詞「は」と「が」と「を」のちがい ~ 日本語

は と が ちがい

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「格助詞」「は」「が」「を」「ちがい」

「は」と「が」のちがい

日本語の文法、助詞の中でもトップクラスの難題です。
外国人学習者に聞かれるベスト1かもしれません。
母語話者であるわれわれ日本人は無意識に使い分けているので、むしろ説明するのがむずかしいです。
「が」は強調とよくいわれますが、かならずしもそうとはかぎりません。

これだけで論文が書けるくらいです。
だから、一言で説明することはできません。

非常によく使われるということは、反面、守備範囲がとても広いということです。

文例を挙げながらちがいを見ていきましょう。

「は」物の一般的な性質・成分・種類
「が」いま目の前で見ているか、いまリアルタイムで情報を得ている自然現象・動作・存在・状況・眼前即時即物描写・実況中継・発見

❄雪は冷たい (です) 。 (性質)
❄雪が溶ける/溶けます。 (自然現象)

🐈猫は動物だ/です。 (種類)
🐈猫がいる/います。 (存在)

Qさんは人間だ/です。 (種類)
Qさんが歩く/歩きます (動作)

☔雨は水だ/です。 (成分)
☔雨が降る/降ります。 (自然現象)

🌞太陽は星だ/です。 (種類)
🌞太陽が昇る/昇ります。 (自然現象)
🌞太陽がまぶしい (です) 。 (状況)

これらは視覚 (目) による情報ですが、聴覚 (耳) などほかの五感でもつかいます。

♪音楽は音による芸術だ/です。 (定義)
♪音楽が聞こえる/聞こえます。 (状況。いま自分の耳で音を感知している)

ご飯は食事だ/です。 (種類)
ご飯がおいしい (です) 。 (味覚。いま食べて感じている)

ている形 (進行形)

文法的にはこうですが、文例のように辞書形 (終止形) でつかうことはほとんどありません。
文法説明のための例文としてのみ出てくることがほとんどです。
いま目の前にあること、起きていること、見ていることを描写するので、
ふつうは「ている形」を使います。

英語風に言うなら、現在進行形・現在完了進行形です。

「雨が降る」とは言わず、「雨が降っている」と言います。
これはまさにいま目の前で雨が降っている、少し前に気づいたか、いま気づいたかです。

おもちゃが壊れる→おもちゃが壊れている
この場合は、いま目の前で「おもちゃが壊れつつある」のではなく、過去のいつかに「壊れて」いまも「壊れた状態が続いている」という意味です。

人間に対しても同じで、「Qさんが歩く/歩きます」とは言いません。
「歩いている/います」と言います。
「Qさんは歩く/歩きます」も使いません。
これを使うのは、物語、教科書の文例、人の習慣などにかぎります。
「Qさんは毎朝10キロ走ります」のような使いかたです。
これはQさんの習慣であって、いま目の前で走っているわけではありません。
「性質」を表しているともいえます。

「ている」は書き言葉で、話し言葉では「い」が脱落して「てる」というのがふつうです。

雨が降ってる→雨が降ってる

実況中継 (過去もふくむ) なので

後ろに「~のが見えます」「~のを見ました」「~ところを見かけました」「~のが聞こえます」などがつきます。
あるいは省略しているとも言えます。

太陽が昇るのが見えました。
太陽が昇るのを見ました。
Qさんが歩いているところを見かけました。

🐕犬が吠えているのが聞こえます。

「は」一般論
「が」自分がいま目の前で見て自分が感じていること

これも上とおなじ種類ですが、細かく見てみましょう。

🌸桜はきれいです。 (一般的にみんなそう思うだろう。自分の判断や評価ではなく常識、社会通念など。物の性質。いま自分の目の前にはない)
🌸桜がきれいです。 (今、目の前に桜が咲いているのを見て、自分が「きれいだ!」と思っている)

❄雪は冷たい。 (一般的な性質。常識。社会通念。いま自分の目の前にはない。触ってもいない)
❄雪が冷たい。 (今、じっさいに自分が触って冷たいと感じている)

🌞太陽がまぶしい。も、自分が感じている部類にはいるかもしれません。

ものだ/です

一般論を言うときには「ものだ/です」がつくこともあります。

🌸桜はきれいなものだ/です。
❄雪は冷たいものだ/です。
🌞太陽はまぶしいものだ/です。

「は」ただの叙述
「が」強調・焦点・注目

これが一般的に説明される強調の「が」ですが、「が」はかならずしも強調とはかぎりません。

わたしはトシです。 (ただの叙述)
わたしがトシです。 (他の誰でもない、わたしこそがトシです)

わたしは掃除します。 (ただの叙述)
わたしが掃除します。 (他の誰もやらない。いや、やらせない。他の誰でもないわたしがやります)

比較のために「わたしは」と書いたけど、ふつう日本語では「わたしは」は言いません。
「わたし」だけでなく、聞き手が誰のことか、何のことかわかると思われるときはすべての主語、目的語を省略します。

(わたしはあなたが) 好きです。
(あなたは) ここにいてください。
(雨が) 降ってる。
(店が) 閉まってる。
(この食べものは) おいしい。
(わたしは) 疲れた。
(わたしはこれを) 食べる。

だから、
「好きです
「 (わたしが!?) 」
「ケーキが🍰」
というようなしょうもないギャグを言う人もいます😅

誰が窓ガラスを割りましたか?
わたしが割りました (やりました) 他の誰でもないわたしです。

同じ言葉はなるべく繰りかえさないようにします。
だから「誰が窓ガラスを割りましたか?」の答えはじっさいには、
「わたしが窓ガラスを割りました」ではなく、
「わたしです」といいます。

英語でも、
Who did break the window? の答えは、
I broke the window. ではなく、
I did. ですね。

Qさんはどこですか?
(Qさんは) あそこです。

「対比」の「は」と捉えることもできます。

「Qさんは」には言外の意味で「他の人はどうでもいいけど」という含みがあります。
答えは「Qさんならあそこです」のように「なら」に置き換えることができます。
この「なら」にはやはり「他の人のことは知らないけど」という含みがあります。

どの人がQさんですか?
あの人がQさんです。

これも文例のためで、じっさいは「あの人です」と答えます。

たくさんの物・人の中から個を特定する「が」

あなたは大勢の人が集まるパーティ会場にいるか、大勢の人が写っている写真を見ています。

会場などすこし離れていれば「あの人」、写真など手元にあれば「この人」といいます。

単なる叙述「は」

あの人は田中さんです。
それから、あの人は鈴木さんです。
それから、あの人は加藤さんです。

特定の人、興味の対象、いま話題にしている人「が」

あの人が田中さんです。

田中さんを知らない人が
「どの人が田中さんですか?」とか、「田中さんはどの人ですか?」などと尋ねたときの返事。

あるいは、いま2人またはそれ以上で「田中さんについて話している」「田中さんについて噂している」「田中さんが話題になっている」「世間で話題になっている有名人」などを指すときは「が」をつかいます。

上の文章を細かく言うとこんな感じになります。

こそ (さらに限定、注目)

「ほら!あそこにいるの田中さんだよ!」
「ああ、あれ話題 (噂) の田中さんですか!」
「あの人 (こそ) ノーベル化学賞を受賞した田中さんですね!」

目的語 (希望・好き嫌い・能力 / 可能)

何が飲みたいですか? (希望)
水が飲みたいです。×水を飲みたい。

君が好きだ。×君を好きだ。 (好き嫌い)

🎸ギターが弾ける。×ギターを弾ける。(能力)
図書館でマンガが借りられる。マンガを借りられる。✕ (可能)

英語学習の弊害で、目的語だから「を」をつかうと考えてしまうのか「君を好きだ」という歌まで出てくる始末。
言葉は生きてるものだから変化するのはしかたないけど、気持ち悪いです。

目的語 ≠「を」です。
また、主語 ≠「が」です。

上記のように「希望・好き嫌い・能力」の場合は、「が」を使いますが、それ以外は「を」になります。

例:
水を飲む。
君を誘う。
ギターを弾く。
マンガを借りる。

目的語に「が」をつかう用法は平安時代に生じました。
だからあながち「を」がまちがいとも言いきれないのですが、すくなくとも現代国語では「が」をつかいます。
これを言い出すと、現代語はすべてまちがいになってしまいます😄

主題・話題の「は」と主語、目的語の「が」

「が」は主語にも目的語にもつかわれる。

🐘象は鼻が長い。象 (主題) について言えば、👃鼻 (主語) が長い。
わたし (主語) は水 (目的語) が飲みたい。

象は鼻が長い。水が飲みたい。君が好きだ! ぼくはウナギ? ~「は」「が」は主語ではない!

初出「が」→ 既出「は」

昔むかしあるところに、おじいさんとおばあさんいました。
おじいさん山に柴刈りに、おばあさん川に洗濯に行きました。

3匹の子豚いました。
一番目の子豚藁で家を作りました。
二番目の子豚木の枝で家を作りました。
三番目の子豚レンガで家を作りました。

そこに狼やってきました。
藁の家を吹き飛ばしてしまいました。

あの人Qさんです。
Qさんわたしの先生です。

初見「が」と、既知の情報「は」

初出と既出の関係にも似ています。
おなじものと考えてもいいかもしれません。

Qさん走っている/います。 (たまたま今、はじめて見ました。眼前描写・実況中継)
≒Qさんが走っているのが見えます。

「の」もまた非常によくつかわれ、たくさんの意味と用法がある。
ここでつかわれている「の」は走るという動詞を名詞化している。
このときは「普通形 (辞書形または、ているなど) 」がつかわれ、「丁寧形 (です、ます) 」はつかわれない。
×走りますのが/走っていますのが
○走るのが/走っているのが

「の」についてはべつの記事で書きます。

上の、Qさん走っています。を引きついで、
Qさんマラソン大会に出場します/しました。
(わたしは直接、あるいは人伝に、新聞、テレビなどで「Qさんがマラソン大会に出場する」という情報を事前に得ている。それを相手に伝える)
(「出場しました」の場合も、じっさいに見ても見てなくてもいい。「出場した」という事実とその情報を相手に伝えるだけ)

マラソン大会の話が最初に出るなら、
Qさんマラソン大会に出場します/しました。

となります。

自分と自分に関わりが深いもの。他人に情報として伝える「は」

これも上の「すでに知っている情報」とおなじ種類の使い分けです。

自分自身「は」

わたしは勉強しています。 (情報伝達「わたしは」はふつう言いません)
Qさんが勉強しています。 (眼前描写・実況中継。たまたま見かけました)

(わたしは) ご飯を食べているところです。 (情報伝達)
Qさんがご飯を食べています。 (眼前描写・実況中継)

(わたしは) 歩いています。 (情報伝達)
Qさんが歩いています。 (眼前描写・実況中継)
→Qさんが歩いているのが見えます。/わたしはQさんが歩いているのを見ました。

自分に関わりが深い、自分に所属するもの、自分の身の回りのもの (人) 「は」

弟 (かずお) の友だちから電話がかかってきました。
「かずおくんは、いますか?」
「 (わたしの) 弟はお風呂にはいっています」

なら

この場合、「は」→「なら」に言い換えることができます。

「弟ならお風呂にはいっています」

この「なら」は限定の意味があります。
「他の人のことは知らないけど、弟のことに限って言えば」という長ったらしい意味が込められています。

(わたしの) 父は会社に行っています。
→じっさいに自分の父親が会社にはいっていくところを自分の目で見たわけではないが、情報として持っている。だから、父が嘘をついていれば会社にいない可能性もある。嘘とまで言わなくても、交通機関のトラブルなどで会社にたどり着いていない可能性もある。

(どこかの知らない) 赤ちゃんが寝ています。 (眼前描写・実況中継)
(わたしの) 赤ちゃんは寝ています。 (目の前で見ていても、人に情報として伝える場合)

(どこかの知らない) 猫が昼寝しています。 (眼前描写・実況中継)
(うちの) 猫は昼寝しています。 (情報伝達)

家に帰るとどこかの知らない猫がかってに上がりこんで昼寝していたら、
「猫が昼寝していました!」になります。

(どこかの知らない) 車が走っています。 (眼前描写・実況中継)
(わたしの) この車はよく走ります。 (自分の所有するもの。性質・性能・能力。自分の車で、いつも乗っているから車の状態をよく知っている。この場合、今この車は走っていない)

自分に関わりが深くても、事前に情報を持っていない・知らない場合は「が」

(わたしの) 弟が走っていました。 (弟がそこにいることを事前に知らず、たまたま見かけた)
(わたしの) 弟はジョギングしています。 (弟がジョギングに出かけたことを知っている。もちろんほんとにジョギングしているかどうかはわからない)
→厳密に言うなら、
弟はジョギングしていることになっています。
弟はジョギングすると言って、出かけました。
(ほんとはどこで何してるかわかりません😅)

さっちゃん
わたしは勉強していることになっている🍰
ひげおじさん
ことになっている、じゃなくてほんとにせえよ!

物語の登場人物「は」

これも「事前に情報を得ている」。
それを「他人に伝える」ものです。

自分のことなら
「 (わたしは) お腹が空きました」と言えますが、
他人の腹具合はわからないので、
「Qさんはお腹が空きました」とは言えません。

これはQさん自身にしかわからないので、
「Qさんは『お腹が空いた』と言いました (引用文) 」とか、
「Qさんはお腹が空いているようです (あくまで見た目、推測) 」などとしか言えません。

ただし物語、教科書によくある登場人物のやり取りでは
「書き手、話者が、登場人物のことを事前に知っている」ので、
「は」をつかいます。

この場合は、
「Qさんはお腹が空きました」がつかえます。
「Qさんはお腹が空いたのでレストランにはいりました」というような文章はよくありますね。

Qさんは学校に行きます。
(クラスメートの) Aさん教室で本を読んでいました。

これが物語の登場人物ではなく、現実の世界でたまたま見かけたなら、
Aさん教室で本を読んでいました。

となります。

昔話の「むかしむかしあるところに~」とおなじで、
2行目からは、
Aさんよく勉強をします。

となります。

比較・対比・反対・対立の「は」、「は」

🐕犬喜び庭かけまわる。
🐈猫こたつで丸くなる。
→犬喜び庭かけまわり、猫こたつで丸くなる。

好きだ/です。
野菜嫌いだ/です。
→肉好きだけど、野菜嫌いです。

言いよどみ→否定に続く

それはいいんだけど…
「は」をつけると、その後に対比 (この場合は否定語) が来るのが予測できます。
何も問題なければ「それがいいです」といいます。

なら (仮定の限定)

明日はどうですか?
いいですよ。 (問題ない場合)

今日はいいんだけど… (問題あり)
(→明日はダメです。につづく)
この場合、「なら」に置き換えることができます。
今日ならいいんだけど…

この「なら」は上に出てきた「弟なら」の「なら」とはちがい仮定の意味を持ちます。
だから頭には「もし」がよくつきます。
→「もし今日ならいいんだけど…」
またこの文章は次のようにも言い換えられますがここでは説明しません。
→「もし今日だったらいいんだけど…」
→「もし今日なら良かったんだけど…」
→「もし今日だったら良かったんだけど…」

また、日本語では「ダメです」とは言わず、
「明日はちょっと…」と濁します。
これは「ダメ」の意味。
もうすこしはっきり言うと「都合が悪いです」になります。

わたしは日本語教師をしています

プロフィール・レッスン予約はこちら。
表示名はToshiです。

https://www.italki.com/teacher/8455009/japanese

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