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「ゲルマン語」「ドイツ語」「英語」
ゲルマン語 (ドイツ語) との関係
ゲルマン=ドイツ?
英語の辞書を引くと、
German ドイツの、ドイツ人 (の) 、ドイツ語 (の) 、
Germanic ゲルマン民族の、ドイツ(人)の、ドイツ的な
となっていて、イギリス人から見ると、「ゲルマン≒ドイツ」! のようですね。
明確な区別がないということは、「どっちでもいい」ということでもあります。
ちなみに、小文字で書くと
german 同父母から出た
<ラ germānus (肉親の、実の、兄弟姉妹の) →ス hermano (兄弟) , hermana (姉妹)
という意味になります。
「ドイツ」とは関係ないので要注意!
Germanは、ラテン語Germānia (ゲルマニア国。だいたい今のドイツのあたりにあった国) から。
たまたま同じ綴りだけど、語源も意味も全く違う別の言葉です。
他にも、次のような単語があります。
Teuton チュートン人、チュートン民族、ドイツ人
Teutonic チュートン人 (民族、語) の、ゲルマン人 (民族、語) の、
<ラ Teutonī テウトニー(Teutonēs テウトネース) ゲルマニア国の一種族。
現在のデンマーク北部にいたらしいのでデンマーク人ならわかるのですが、これから派生したTeutonicus テウトニクスも、「テウトニ人」と「ゲルマニア人」の2通りの意味があります。
ああややこしい(^_^;)
本国、ドイツではそれぞれ次のように言います。
Deutschland (ドイチラント) ドイツ国
deutsch (ドイチ) ドイツの
※ ドイツ語では、”eu”と書いて、「オイ」と発音します。
だから、EUの通貨Euro「ユーロ」も「オイロ」になります=^^=
英語でDutch (ダッチ) は「オランダの」という意味ですが、
勘のいい方はわかりますね。
もともとはdeutschと同じ語源で、「ドイツの」という意味でした。
またまたややこしい(^_^;)
これらはTeutonīと同系列の言葉から作られたようですね。
アングロ・サクソン
ロマンス語のところで、英語の45%がラテン語、20%がアングロ・サクソンと書きました。
ロマンス語についてはこちらをご覧ください↓
このアングロ・サクソン≒ゲルマンです。
ノルマン・コンクエストでフランス系のラテン語に塗りかえられる前は、ゲルマン語が主体だったんです。
Anglo- (アングロ) は何をかくそうEngland (イングランド) の語源ですね。
Angle (アングル人の) land (土地) という意味です。
Angle (アングル人)
ドイツの「アンゲルン (Angeln) 半島」。
ユトランド半島のデンマークとの国境。ドイツ北部のデンマークに近い方に住んでいた人。
ゲルマン人の一つ。
現在、英語のangle (角、釣り針) 、ドイツ語のAngel (釣り針) の語源となっている共通の印欧祖語 (「曲がった」の意) から、名付けられたとされています。
Anglo-はもはや「イギリスの」という意味になっています。
アングル人はサクソン人とともに5世紀ころ、今のイギリスと呼ばれているGreat Britain (グレートブリテン島) にはいり、そこに住んでいたBriton (ブリトン人) を追い払い、支配しました。
Briton人は追い払われたけど、Great Britainという名前は残ったんですね。
ちょっと悲しいですね…(-_-)
Saxon (サクソン人)
ドイツ語ではSachsen (ザクセン人) 。
やはりゲルマン人の一つ。
今のドイツの北西部。オランダに近い方。「Niedersachsen (ニーダーザクセン) 」に住んでいました。
「ニーダー」は「低い」という意味。
ちなみに、ドイツ語でオランダを「Niederlande (ニーダーランド) 」と呼びますが、「低い土地」という意味です。
英語では、「Netherlands (ネザーランズ) 」と言います。
オランダ語では「Nederland (ネイダラント) 」
海外領土を含めるとde Nederlandenと複数形になります。
日本語の「オランダ」は、俗称Holland (ホラント (州) ) から来ています。
サクソン人は、アングル人とともにイギリスにはいります。
Anglo-Saxon (アングロ・サクソン)
イギリスに入った、アングル人と、サクソン人が混ざりあいアングロ・サクソン人となって、
この人たちの言葉が英語 (English) の大元になっています。
だから元は、「ゲルマン語」なんです。
アングロ・サクソンには、ジュート人も含まれます。
1066年のノルマン・コンクエストによりフランスから来た「ノルマン人」に支配されて、
フランス語経由の「ラテン語」が、今では英語の45%を占めています。
ノルマン・コンクエストについてはこちらをご覧ください↓
Briton, Brython (ブリトン人)
もともと、イギリスに住んでいた「ケルト系」の人。
ケルト人は、ゲルマン人に追われ、フランスやスペインに移動するも、今度はローマ人により支配されてしまいます。
Bretagne ブルターニュ
フランスのブルターニュ地域の語源はブリトンです。
またフランス語ではBreton (ブルトン) といいます。
ブルトン人はもともとブリトン人なんだけど、おもにブルターニュ地方の人を指すようです。
ああややこしや~。
Celtíberos (ケルト=イベロ)
ケルト人は、イベリア半島 (今のスペインとポルトガルがあるところ) に流れてきて、イベロ人と混ざりあいました。
今のスペイン人の一部になっています。
そして、さらにローマの支配を受けて、ロマンス語 (ラテン語の現代語) に晒されます。
英語の中にあるラテン語はフランス語経由のはずなのに、
むしろ、綴りや発音がスペイン語に近いことがあります。
Celt ケルト
ケルト人はもともとヨーロッパの広い範囲に広がっていました。
いつの時代にどの範囲にいた人たちを何と呼ぶかは曖昧で、古代ローマではローマの北部に押し寄せてきた人たちをガリア人と呼びましたが、ガリアがどこまでなのかも曖昧です。
この地域の人が話していた言葉をガリア語またはゴール語といい、ケルト語の一派です。
この言葉はイングランドを除くイギリスとブルターニュ、つまりブリトン人のいたところに残っています。
ガリアとゴール。
カタカナで書くとまったくべつの言葉ですが、ラテン語、英語、フランス語などで読みかたが変わるだけでおなじものです。
何度もいうけどフランス語や英語の読みかたが変なんです😄
たとえば「日」を表す言葉。
ラテン語。diēs (ディエース)
英語。day (デイ)
スペイン語。día (ディア)
ポルトガル語。dia (ジア)
イタリア語。giórno (ジョルノ) 。 (dì (ディ) という単語も存在します。)
フランス語。jour (ジュール)
スペイン語のdía (ディア) が、ラテン語のdiēs (ディエース) にも、英語のday (デイ) にも綴り、発音ともに一番近いですね。
イタリア語とフランス語は、diēsの形容詞、diurnus (ディウルヌス) から変化したものと思われます。
英語のjournal (ジャーナル) , journey (ジャーニー) はフランス語のjournal (ジュルナル) , journée (ジュルネ) から来た単語であることは間違いないでしょう。
ポルトガル>イタリア語>フランス語の順番に、綴り、発音とも崩れてく気がするな。
日本の方言と呼ばれているものも、じつは古語だったりするしね!
Jutes (ジュート人)
ドイツ語ではJüten (ユーテン) 。
今のドイツ北部から、デンマークの「ユトラント半島」に住んでいた人です。
やはりゲルマン人の一つです。
アングル人、サクソン人とともにイギリスにはいり、今のイギリス人になっています。
ちなみに「ユトラント」はドイツ語 Jütland の発音で、英語では「ジャトランド」になります。
英語ってやっぱり変(^^)
king (王。キング) ⇔ド König (ケーニヒ)
night (夜。ナイト) ⇔ド Nacht (ナハト) ⇔スnoche (ノーチェ) 、ラ nox (ノックス) 、ギ nyx (ニュクス)
knight (騎士。ナイト) ⇔ド Knecht (クネヒト)
father (父。ファザー) ⇔ド Vater (ファーター)、ラ pater (パテル) 、ス padre (パードレ)
folk (人々、国民。フォウク) ⇔Volk (フォルク)
wagon (車。ワゴン) ⇔ド Wagen (ヴァーゲン)
→Volkswagen (フォルクスヴァーゲン。国民車)
wolf (狼。ウルフ) ⇔ド Wolf (ヴォルフ)
grass (草。グラス) ⇔ド Gras (グラス)
hound (猟犬。ハウンド) ⇔ドHund (フント)
→Dachshund (ダクスフント)。 Dachsは、「あなぐま」
salt (塩。ソルト) ⇔ドSalz (ザルツ)、ラsāl (サール) 、スsal (サル)
dream (夢。ドリーム) ⇔ドTraum (トラウム)
think (考える。シンク) ⇔ドdenken (デンクン)
thank (感謝する。サンク) ⇔ドdanken (ダンクン)
sleep (眠る。スリープ) ⇔ドschlafen (シュラーフン)
cook (料理する。クック) ⇔ドkochen (コフン)
What is that?⇔Was ist das?→vasistas (ヴァジスタース) !?
What is that? (あれ何ですか? ホワットイズザット) ⇔ドWas ist das? (あれ何ですか? ヴァスィストダス)※
よく似てますね。
ヨーロッパ人。2カ国語しゃべれるくらいでいばるなよ(^^)
フランス語にvasistas (ヴァジスタース。ドアについている小さな窓) というフランス語らしからぬ言葉があるのですが、何を隠そうドイツ語のWas ist das? なんです。
ドイツ人が「あれ何ですか? 」と尋ねたのに、ドイツ語がわからないから質問しているとは思わず、「ドイツ人は『ヴァジスタース』って言うんだ」って勝手に解釈して、「ヴァジスタース」が定着してしまったんですね。
もともとは何て言ってたのかおじさんは知りません(^_^;)
こんな「ああ勘違い! 」でも今さら変えられないもんね…という言葉は世界のあちこちにあります=^^=
Good morning! (おはよう。グードモーニング) ⇔ドGuten Morgen! (グーテンモルゲン)
現代ドイツ語が英語になったのではなく、共通の古いゲルマン語から現代のドイツ語と英語に変化していったのです。
“k”, “gh”はもともと発音していた!
knight (ナイト) ⇔ドKnecht (クネヒト) から見えるように、昔はkも、ghも発音していたようですね。
k, ghのように発音しない文字を「黙字」といいます。
黙字についてはこちらにも
super (スーパー) と hyper (ハイパー) どっちがすごいのか!?
英語の単語は丸暗記しなければいけないから覚えるのが大変? そんなことはないよ!
音韻変化 (舌の位置)
カッコつけて言うと、「音韻変化」。
平たく言うと、「訛り」です。
でも、けっして悪い意味ではありません。
「舌の位置」のところでも書きましたが、舌の位置が同じ発音は、
ちょっと舌の「位置」が変わったり、
舌を口蓋 (口の中の天井) や歯茎につける「タイミング」が変わるだけで別の音になります。
「舌の位置」についてはこちらをご覧ください↓
外国語。聞いて覚えられるのは、赤ん坊のうちだけ! (舌の位置)
ただし、同じグループの中の別の音です。
勘のいい方は上の英語とドイツ語の対比でお気づきかと思います。
以下にいくつかのグループを挙げます。
- t, th, d, l (た、さ、ざ、だ、ら)「舌を口蓋や、歯茎の裏側につけて出す音」
- p, f, b, v, w (ぱ、ふぁ、ば、わ)「唇を合わせて破裂させたり、隙間から出す音」
- k, g, gh, kh, ch, h (か、が、は)「舌根 (舌のつけ根) を軟口蓋 (口の中の天井の奥の方) または口蓋垂 (いわゆる、のどちんこ) につけるか、近づけて隙間から出す音」
例:)
① 英 thank⇔ド danken。
英 think⇔ド denken。
th⇔d
英 dream⇔ド Traum
d⇔t
英 father⇔ド Vater⇔ス padre
th⇔t⇔d
英 hound⇔ド Hund
d⇔t (ドイツ語では語尾のdは、t音になります)
② 英 father⇔ド Vater⇔ス padre
f⇔p (ドイツ語のvは、発音はf (ふぁ) です)
英 wagon⇔ド Wagen。英 wolf⇔ド Wolf
w⇔v (綴りは同じwだけど、ドイツ語ではvの発音です)
英 tear (涙) ⇔ス lágrima⇔印欧語根 dakru-
t⇔l⇔d
③ 英 cook⇔ド kochen
k⇔kh (ch [x])
スペイン語のj, xも、[x]の音です。
なので、Japón (日本) は「ハポン」、México (=Méjico メキシコ)は「メヒコ」になります。
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