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「寝る」「眠る」
生徒が言いました。
「きのうはよく寝られませんでした」
まちがいではないけど、なんか引っかかりました。
「寝る」と「眠る」のちがい
大意はこうです。
寝る
横になる。眠るために布団にはいる。床につく。
lie, go to bed
自分の意志でできる。
「寝る」のほうが範囲が広くて「眠る」こともふくみます。
眠る
意識がなくなり自分の意志で体が動かせなくなること。
sleep
とうぜん自分の意志で「眠りにはいる」ことはできません。
裏を返すと、自分では「眠る」つもりがなくても「眠ってしまう」ことがあります。
「居眠り運転」など。
自分の意志ではできないけど、文法的には「寝る」とおなじ自動詞です。
文例による比較
寝る
横になる。床につく。の意
早く寝ろ!
そろそろ寝なさい!
こんな時間だ!寝なきゃ/寝よう。
先に寝るね。
「あ~、眠い」という人に対して、
「寝たら?/ 寝れば?」と言います。
「眠ったら?/ 眠れば?」とは言いません。
眠るの意
あ~、よく寝た!
(親が子どもを見て) よく寝てる。
寝る子は育つ。
きのうはあまり寝られなかった。 (蚊に刺されたり、まわりが明るかったり、うるさかったりして、または朝早く人に無理やり起こされたり、寝る時間がなくて物理的に眠りを妨げられたから)
きのうはよく寝られなかった。
これが引っかかったのは話の流れから、物理的に睡眠を妨げられたのではなくて布団にはいったけど目が冴えて「眠れなかった」からだと思います。
でも、まちがいではありません。
この例文では「寝る」も「眠る」もほぼおなじ意味でつかいます。
「よく寝た!」 (長い時間、ぐっすり眠ったの意)
はよくつかいます。
「うたた寝」は自分の意志でなく「眠ってしまう」ことを言います。
眠る
眠ることは自分の意志ではできないので本来、命令形と意向形はありません。
「眠れ」と言われても「はい!」といって眠れる人はいません。
催眠術師が「眠れ」とか、歌の文句で「眠れ」はあるけど日常的にはつかいません。
「眠ろう」として「眠れる」ものではないからです。
子守歌の「眠れ」はドイツ語の Schlafe (英語の sleep) を訳したからです。
だから、
「早く眠れ!」
「そろそろ眠りなさい!」
「こんな時間だ!眠らなきゃ/眠ろう」
「先に眠るね」
などはありません。
自動詞だけど自分の意志では動作できないので、
「私は眠る」「子どもが眠ります」という辞書形、現在形でつかうことはなく、
「 (子どもが) 眠った (完了) 」「眠っている (状態) 」のようにタ形、テイル形でつかいます。
ただ、じっさいには「寝た」「寝ている」のほうがふつうです。
また、
あ~、よく眠った!とは言いませんね。
きのうはあまり眠れなかった。 (明日の試験や仕事のことが心配で精神的に眠れなかった)
きのうはよく眠れなかった。 (「あまり」も「よく」もつかいます)
きのうはよく眠れた。 (「よく」は肯定にも否定にもつかえますが、「あまり」は否定にしかつかえません)
これらの意味では「寝られた」「寝られなかった」との厳密なちがいはありません。
使役
寝かせる/寝かす
子どもを寝かせる。
眠らせる/眠らす
脅しても賺しても (おどしてもすかしても) 眠らせることはできないので、
「眠らせる」というと、飲みものにこっそり睡眠薬を混ぜて飲ませるとか、首を絞めてあの世に送るというような意味になります😅
むすび
「寝る」と「眠る」のちがいについて書いたんだけど、結果的に「寝る」は「眠る」の意味でつかわれることが多いことがわかりました。
ただ「早く眠りなさい」「そろそろ眠ろう」「今から眠ります」など、つかえないものもありますね。
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