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「も」全面的肯定・否定 ~ やまとことば

mo も。全面的

「も」「並列」「全面的」

リンゴ、ブドウ、ミカン好きです。
杓子
老い若き

この並列の「も」はだれでご存知。

しかし、日本語の助詞はいろんな顔を持っています。
日本人なら文脈で判断するんだけど、外国人には脅威 (驚異) です。

「が」「は」「も」

つぎの例文を比べてみましょう。

行くつもりない。

ただの叙述。
ただし強調の意味合いでは「も」に置き換えることできる。

行くつもりない。

「は」は、このことについて取り立てているので他の場合・状況がある可能性がある。
行くつもりない、話くらいなら聞いてやっても良いぞ。
行くつもりない、ときどき思い出すことはあるかもしれない。

ここの「が」は逆接です。

それぞれ、
行かないけど、話聞く。
行かないけど、思い出す。
ということですね。

対比

この「は」は対比の後半が省略されているとも考えられます。

例:
野菜嫌いだけど、肉好きだ。
土曜仕事だけど、日曜空いてるよ。
お母さんに言わないでね。 (お父さんに言ってもいいよ)

行くつもりない。

他のことしない。話も聞かない。興味がない。強い否定。全面的否定驚き軽蔑不快感などを表す。

もう2度と行くことないだろう。

ただ行かないのではなく、話題に出てこないし、思い出すことない。
また「行く」ことを軽んじている、あるいは嫌っている不快感を持っているニュアンスにも聞こえます。

これは並列の延長と捉えることもできます。

もう1つ例を出しましょう。

お化け👻なんか…

見たことない。

お化けの話の場合はむしろ、この「が」がいちばんつかわれるのではないでしょうか。

見たことない。

見たことないけど、聞いたことある。
見たことないけど、気配を感じたことある。

これらはやはり取り立て・対比です。

見たことない。

強い否定・全面的否定とも捉えられるし、並列の一部を切り取ったとも捉えられます。

見たことないし、 (聞いたことない) 。

この「聞いたこともない」が話者の気持ちの中にふくまれていると、この言いかたになります。
もちろん日本人はそんなこと考えないでしゃべってるし、聞いてるほうも考えてないけどそのニュアンスを感じ取ります。
ほかにも「考えたこともないし」「想像したこともない」などもふくまれているかもしれません。

また並列したものをことごとく否定することで、全面的否定・強い否定のニュアンスに変化したと考えられます。

このように否定で使われることが多いです。

軽んじる「も」

そんなこと知らないのか!
子どもでできる。

これらは「すら」「さえ」に置き換えられます。

そんなことすら / さえ知らないのか!
子どもですら / さえできる。

英語だとevenに相当します。

これもやはり並列の延長と捉えることできます。

言外に並列しているものを書けばこうなります。

こんなことそんなこと知らないのか!
大人で子どもでできる。

「子どもでもできる」は数少ない、肯定文の例ですね。

驚き

文法的には否定なんだけど驚き・称賛でつかうこともあります。

例:
見たことないようなまばゆい宝石に目が眩んだ。
それはかつて経験したことない大事件だった。

ただ「経験したことない」より、「も」をつかうと、「夢にも思わない」「想像だにしたことがない」驚きを表します。

消極的肯定

あれっ?チーズ嫌いなの?

食べないことない。

いや、食べるよ。
めちゃくちゃ食べたいわけじゃないけどね。

食べないことない。

食べようと思えば食べられるけど、好きじゃない。いや嫌いだ。できれば食べたくない。でもどうしても食べろと言うんなら食べるよ。
まあ、自分から進んでは食べないね。

この場合、「は」も消極的ですが、「も」はより否定的です。
「食べない」のギリギリ手前だけど、かぎりなく0に近いです。

文脈で意味が変わる

こんな文はどうでしょうか?

この店には塩ないのか!

  1. 塩などというありふれたものでさえない (軽視)
  2. 砂糖も醤油も塩もない。 (並列)

この短い文章だけだとどちらかわかりませんね。

もちろん「も」に他に使いかたと意味がありますが、ここでは割愛します。

疑問詞の「も」「か」

肯定で使われるのは疑問詞のときが多いです。
両方使えるものと、肯定、否定どちらかだけのものがあります。

疑問詞として

いつ? 行く? (when)
どこ? どこにある?どこに行く? (where)
誰? 誰ですか? (who)
何? 何ですか?何が食べたい?何をする? (what)

不特定の「か」

いつ 行く。(some day)
どこ 知らないところ。にある / どこに行く。(somewhere)
 いる。(someone)
 ある。(something)

あれもこれも全面的肯定・否定の「も」

いつ ある / ない。(whenever)
どこ 混んでる。人でいっぱいだ。(wherever)
どこにで ある / 行く。(wherever)
どこに ない。(nowhere)
 いない。(no one)
 ない。(nothing)

いつも

あの時も、この時も、その時も、朝も、昼も、夜も、今日も、昨日も、一昨日も、明日も、明後日も、10年後も、100年後も。
並列の延長と考えられる。

「いつでも」の形もあり。

例:
いつでもどうぞ。
いつでも行ける。
いつでも乗れる。

「いつでも」は可能・許可を表すことが多いですね。

どこも

ここも、そこも、あそこも、どこも。
これも並列の延長と考えられる。

上とおなじように「どこでも」だと可能・許可を表します。

例:
どこに行きたい?
どこでもいいよ。

どこでもドア🚪😄

ただし否定でも使います。

例:
ここはどこ?
どこでもないよ。 (異次元の世界だよ)

どこにも

ここにも、そこにも、あそこにも、どこにもない。
同上。

肯定のときは、「どこにでも」を使います。

例:
わあ、きれいな石✨
そんなのどこにでもあるよ。

誰も

田中さんも、高橋さんも、木村くんも、老いも若きも、誰もいない。

肯定のときは「誰でも」を使います。

例:
そんなことは誰でもできる。
誰でも大人になればわかります。

何も

木も草も花も、虫も、魚も、何も。

肯定のときは「何でも」を使います。

例:
書けるものなら何でもいいよ。
この店は何でもあるよ。
君は望めば何にでもなれるよ。

ただし「何でもないよ」のように否定でも使います。

このように文脈で肯定でも否定でもつかうし、意味も変わるので外国人の生徒には例文をいくつか挙げて状況によって変わることを説明しなければなりません。
数学のように1+1=いつでも2、とは言えないのが言語です。

ひげおじさん
さっちゃん。ケーキ要らないの?🍰
さっちゃん
食べるに決まってんじゃん!
ひげおじさん
そこは流れ的に「食べないこともない」と言ってほしかったな💦
さっちゃん
ムリ

わたしは日本語教師をしています

プロフィール・レッスン予約はこちら。
表示名はToshiです。

https://www.italki.com/teacher/8455009/japanese

さっちゃん
わたしはさっちゃんです!watashi wa Sacchan desu!
ひげおじさん
わしはひげおじさんじゃ!washi wa hige-ojisan ja!

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