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「ナ形容詞」の正体=「名詞」+「だ」

na adjective ナ形容詞

「ナ形容詞」「名詞」「だ」「形容動詞」

形容動詞

学校文法では「形容動詞」といいますが、外国人に教えるには複雑なので「イ形容詞」にたいして「ナ形容詞」といいます。

形容動詞という呼び名は誤解を招きます。
動詞の仲間ではなくあくまで形容詞の仲間です。

「助動詞」の「だ」の活用をするので形容動詞という名前がつけられましたが、働きはイ形容詞とおなじように、後ろの名詞を修飾 (説明) します。

ここではナ形容詞といういいかたをつかいます。

ナ形容詞の例

純粋なナ形容詞 (やまとことば)

~か

細か (こまか) 。遥か (はるか) 。微か / 幽か (かすか) 。僅か (わずか) 。仄か (ほのか) 。確か (たしか)。清か / 明か (さやか) 。密か (ひそか) 。長閑 (のどか) 。愚か (おろか) 。円か (まどか / まとか) 。

~やか

鮮やか (あざやか) 。爽やか (さわやか) 。和やか (なごやか) 。穏やか (おだやか) 。軽やか (かろやか) 。華やか (はなやか) 。しめやか。速やか (すみやか) 。嫋やか (たおやか) 。細やか (こまやか / ささやか!) 。淑やか (しとやか) 。靭やか (しなやか) 。秘めやか。緩やか (ゆるやか) 。賑やか (にぎやか)。密やか (ひそやか) 。晴れやか (はれやか)

~よか

膨よか / 脹よか (ふくよか)

~らか

明らか (あきらか) 。大らか (おおらか) 。朗らか (ほがらか) 。麗らか (うららか) 。詳らか / 審らか (つまびらか) 。安らか。清らか。滑らか。なだらか。高らか。平か (たいらか) 。珍か (めずらか)。つぶらか。

その他

外来語以外で語尾に「か」がつかない珍しい形です。

円ら (つぶら)

「丸い」の意の「つぶ」に、状態を表す「ら」がついた言葉。
「粒」とは別語。
「つぶらか」という言いかたもあり。
後世、「か」が省略されたと考えるのが自然でしょうか

平ら (たいら)

これも「平か (たいらか) 」という言葉があるので省略されたのだと思います。

つまびらか

古くは「つらか」
もっと遡ると「つひらか」から変わった。
ほかに「つばらか」もある。

バ行→マ行はじつはとても多いんです。

けぶり→けむり (煙) 。ねぶる→ねむる (眠る) 。さびしい→さみしい (寂しい / 淋しい) などなど。

このように言葉はつねに変わっていくものです。

「さびしい」か「さみしい」か?~ 日本語

ほかの形や派生語があるもの

動詞

しなやか。しなう (撓う)
ひめやか。ひめる (秘める)
にぎやか。にぎわう
なごやか。なごむ
ふくよか。ふくらむ
たしか。たしかめる
あきらか。あきらめる (明らめる / 諦める) 。あける (明ける)
ひそか / ひそやか。ひそむ (潜む)
はれやか。はれる

かすか。かする。かすれる?

「密か」と「潜む」のように形容詞と動詞で漢字がちがうもの、
また「細やか (こまやか / ささやか) のように2通り読みかたがあるものもありますが、
やまとことばは1つです。

漢字を導入したときの学者が変な使い分けや読みかたをさせたせいです。
学者というのはフツーの感覚や常識が欠如していることが多いので漢字の読みかた、使いかたの大きな問題です。

現代でも国語分科会の御エライサンたちは常用漢字の範囲や読みかたに関して、現実世界と乖離した取り決めをしています。
「嘘」が常用漢字じゃないって「うそ」でしょ😄

だからニュースのテロップや新聞で「〇〇とうその記載をした」のように「とうそ」って何?ということが起きてしまいます。
漢字をつかえばこのように前の言葉の語尾や助詞などとくっついて謎の言葉が生まれることはありません。
いや、これはネタではなくて、おじさんは「とうそ」は法律用語か何かだと思い調べたけど何も出てこないので途方に暮れたことがあります😅

ほんらい「あきらめる」は「明らめる」で、物事の真理をはっきりさせる・理解するという意味です。
その中で否定的な意味のとき「諦める」という漢字をつかい、こちらの意味のほうが定着していますが「諦める」「諦観」も、ほんらいは「真理を見極める」という意味で否定的な意味ではありません。

ナ形容詞

たいらか (な) 。たいら (な)
つぶらか (な) 。つぶら (な)

イ形容詞

ゆるやか。ゆるい
めずらか。めずらしい
かろやか。かるい
たからか。たかい
おおらか。おおきい

日常的にはあまりつかわれないやまとことば

ナ形容詞の例を探すとほとんど「漢語+だ」の形ばかりで、純粋なやまとことばが思い浮かびませんでした。
ほじくり出したらけっこう出てきたけど、日常的にはあまりつかわれない言葉が多く、詩的な文章でつかわれるか、あとは死語に近いものもあります。
「円ら」「平ら」以外はみんな「か」で終わるのも新たな発見でした。
嫋やかなんて聞いたことないでしょ😄
つまびらかなんて、時代劇でしか聞きませんね。

やまとことばは漢字の流入とともに駆逐され、置き換えられています。
さらに怪しげなカタカナ外来語に変わりつつあります。
漢語 (中国語) も外来語なんですけどね。

例:
穏やか→平穏
和やか→平和、和気藹藹→フレンドリーなムードで😮
細か→詳細、精細→ディテール
滑らか→スムーズ
速やか→即行、速攻→スピード感を持って (スピードがあるんじゃなくて、感じがするだけ😄じっさいに早くやれよ)
安らか→安心安全。何でもニコイチにするな😅
華やか→豪華→ゴージャス、ラグジュアリーな😂
清らか→清潔→クリーンな (いい加減にせえ)

言葉は変わるものだけど、日本語は「てにをは」を残して、名詞、動詞、形容詞などすべてカタカナになってしまうんではないかと危惧するおじさんです。
オンラインで日本語を教えているんだけど、
「relaxは日本語でなんと言いますか?」との問いに、
「…relaxは日本でもリラックスと言いますね…」と何ともやりきれない気持ちになります😅

「寛ぐ」「弛緩する」という日本語もあるけどつかわないですね。
あとは「ゆっくりする」「のんびりする」ですかね。

名詞 (漢語) +だ

便利だ。元気だ。簡単だ。難解だ。親切だ。幸運だ。傲慢だ。横暴だ。完全だ。完璧だ。充分だ。不十分だ。

こちらの例は、「名詞 (漢語) +だ」でいくらでも出てきます。
つまりこれらは現代ではれっきとした日本語になっているけど、もともと外国語 (中国語) で日本にはなかった言葉です。
これが問題なんだけど、それはあとで話します。

きれい

漢字で「綺麗」「奇麗」と書きます。
ひらがなで書くともともとの日本語の顔をしているけど、どうやらこれも漢語のようです。
「綺麗」が当て字という考えもあったんだけど辞書を開いてもそのような記述はありません。

「きれ」はたまたま語尾が「い」であるため、しばしばイ形容詞とまちがえられます。

×「きれかった」
→それは「きれいだった」だよね😅

きれかった? ちがかった? ちがくない? ~なんか変?

素敵

すてき。
ちゃんと漢字があります。
漢語のような顔をしているけど、じつは「当て字」です😄

「すばらしい」の「す」に形容詞語尾の「的」をつけたとの説があります。
だから「素的」とも書きますが見たことがありません。

言われてみれば「敵」という漢字をつかうのはちょっと変ですね。

イ形容詞とナ形容詞の二足のわらじ

やわらかい=やわらかな

こまかい=こまかな

あたたかい=あたたかな

漢字はやたらいっぱいあるので、あえてひらがなで書きました。
やまとことばは1つです。

どちらが先かわかりませんが両方ともつかわれ定着しためずらしい例です。

過去に遡るとどこかで「〇〇はまちがいだ」という記事が出てくるかもしれません。

古語

古語辞典ではナ形容詞の「やはらか (やわらか) 」はあるけど、「やはらかし (やわらかし) 」はありません。
ナ形容詞の「やわらか」の語幹に、イ形容詞の「し→い」をつけたと考えるのが自然でしょうか。

「こまか」もナ形容詞の「こまか」はあるけど、イ形容詞「こまかし」はありません。
イ形容詞のほうがあとからつくられたと考えられます。

いっぽう「あたたか」のほうはナ形容詞「あたたか」と、イ形容詞「あたたし」の掲載があります。
平安時代にナ形容詞「あたたかナリ」がすでにあるけど、「あたたし」が「あたたし」になったのは中世以後、近世にはいってからとのことです。

連体詞

「体言 (名詞) 」に「連なる」ので連体詞といいます。
形容詞と何がちがうかというと「活用しない (形が変わらない) 」ことです。

大きな。小さな

「大きな人」
「小さな事」
のように名詞を修飾するのでナ形容詞と思われがちですが連体詞です。

この人は大き
この箱は小さだった

とは言いませんね😄

大きい。小さい

この2人はかなり特殊で、イ形容詞としての顔も持っています。
よっ、二刀流🎌

連体詞とイ形容詞どちらが先かわかりませんが、2通りにつかわれるようになって、どちらがまちがいともいえずそのままズルズルと現代に至る、です。

ちがいは文法と抽象的な概念

文法的に、連体詞は名詞の前にしかつけられず終止形はない。
終止形にするならイ形容詞しかつかえない、ということです。

つかいかたとしては「大きな心で」のように、連体詞のほうは物理的な大きさではなく抽象的な概念にもつかえるということでしょうか?
「大きな家だね」のように物理的に大きいものにもつかえます。

いっぽう「大きい」は物理的に大きいものにしかつかいません。

辞書での取り扱いと表記

デジタル大辞泉では [名・形動] のように表記しています。
名詞と形容動詞 (ナ形容詞) の両方の属性がある。
両方でつかわれるという意味です。

そもそも「名詞」+「だ」が「ナ形容詞」として市民権を得た

もともとの日本語であるやまとことばのナ形容詞以外はすべて「名詞」+「だ」です。

これは
「これは
「あしたは遠足
などとまったくおなじです。

ただその名詞に「状態や様子を説明する」意味があって、「だ」を「な」に活用して名詞につくものが「ナ形容詞」として市民権を得ただけです。

漢語

名詞は漢字とともに中国から輸入された漢語なので日本にはいってきたのはおよそ西暦500年以降です。

「だ」は断定の助動詞です。

活用

だろ、だっ、で、だ、、なら

ダ行の「だ」がなぜナ行の「な」「なら」になるのかについてはこちら↓

「だ」「じゃ」の語源 ~ 古語とのつながり ~ やまとことば

連体形

体言 (名詞) に連なる。
名詞に接続するときの形「な」で「ナ形容詞」といいます。

ほんらい「名詞」+「の」

名詞が後ろの名詞を修飾するときは、もともと「の」をつかいました。
もちろん現在でもつかわれています。

例:
外国

国語教科書
友だち

これらは「な」に変えることができません。

×外国人、家鍵、国語教科書、私友だち

近頃の若いもんは!

現在、ナ形容詞として市民権を得たものも元は、

便利道具
元気

と言っていたでしょう。

当時の若者が

便利道具
元気

といういいかたをわざとか、まちがえたかわからないけど使いはじめたときは、当時の年寄りは
「近頃の若いもんはなっとらん!」
「言葉の乱れ」
と眉をひそめていたにちがいありません😄

いっぽう「このほうが形容詞っぽくね?」という若者の声が聞こえてきます。

イ形容詞

イ形容詞にもおなじような経緯があり、
「丸い」「四角い」はあるのになぜ「三角い」はないのか?
「赤い」「青い」はあるのになぜ「緑い」や「紫い」はないのか?

これらも「名詞」+「い」ですが、やはりもとは「名詞」+「の」で言っていたでしょう。

「丸の」「四角の」「赤の」「青の」というように。

日常的によくつかう言葉は、もとからあった「美しい」「楽しい」などにならって「い」をつけて「丸い」「四角い」というようになり、年寄りの反感と批判をよそに定着していきました。

言葉は生きものです。
道具です。
時代と用途によって日々変化・進化していきます。

言葉は文法学者がつくるものではなく、じっさいに言葉を話す一般大衆によってつくられ変わっていきます。
大勢がつかうようになれば、それはまちがいではなく、言葉が「変わった」のです。

大儀い

岡山には「大儀い (たいぎい) 」という言葉があります。
共通語では「大儀な」とナ形容詞ですが、まあいいじゃないですか😄
ちなみに「大儀」は名詞です。

たまたま語尾が「たいぎ」とイ段だったのでそのまま伸ばして「たいぎー」になったのでしょう。

丸い。四角い。三角い? 赤い。緑い? ~ やまとことば

混乱。そして間違いと言いきれない理由

かつて「問題日本語」という本が出版されました。

「問題」は「名詞」であって「ナ形容詞」ではないので「な」はまちがい。
「問題」と「の」をつかわなければならない、というのが趣旨です。

しかし、上に書いたように言葉は日々変化していきます。

みんながつかうようになればそれは「正しい国語」になるのです。

「大人対応」は現在ではまちがいですが、「精神的に熟した成人らしい」という意味合いでつかう人もいます。
「大人らしい」をつかうのが正しいのですが、これも単なるまちがいと切り捨ててしまうことはできません。
日常的につかう言葉はなるべく「短い」ほうがいいんです。
みんながつかうようになれば正しい日本語になる。

よくつかう言葉は変化する

「丸い」「四角い」はあるのに「三角い」はなぜないのか?
「丸」や「四角」ものはそのへんに転がっていて日常的に口にするけど、「三角」ものはあまりないので「三角い」が広がらなかったんですね。

百な人。そこな人

古い文献に「百人」という記述があります。
現代国語なら「百の人」、つまり「百人」ということです。

これをまちがいとするのか?
「な」と「の」
母音がちがうだけです。
「な」はおそらく「の」の母音が変化してできた言葉でしょう。
「の」で後ろの名詞を修飾するんだけど「な」のほうがより形容詞っぽい。
それで「な」が使われはじめた。

おなじように「そこ人」という表現もあります。
「そこの人」という意味です。

元気な人と、病気の人

もともと「元気の」は「元気な」とナ形容詞としてつかわれ定着したけど、「病気の」は「病気な」とは言いません。

元気が状態を表しているといっても、病気も状態を表しています。
また「元気」の反対語は何ですか?と聞かれれば、「病気」と答えるでしょう。

この先、病気の人があふれかえって「病気の人」がしょっちゅうつかわれるようになると、そのうち「病気な人」という言いかたをする人が出てきて、「まちがっている」といわれるのも最初だけで、みんながつかうようになれば「病気な人」は正しい日本語として認められるようになります。

「病気」がナ形容詞として辞書に載るようになります。

「問題な」も10年、20年後にはナ形容詞として載るようになるかもしれませんね。
それはみなさん次第です😄

さっちゃん
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