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「Ru-verb」「U-verb」「活用」
Ru-verb (G2。上下一段活用)
-iru
居る、見る、着る
-eru
食べる、出る、燃える
「げんき」などではこれらを Ru-verb と呼びます。
-i・ru, -e・ru と解釈して、ru の部分が脱落したり変化したりするという考えかたです。
見る mi-ru → 見ます mi-masu, 見ない mi-nai
食べる tabe-ru → 食べます tabe-masu, 食べない tabe-nai
のような具合です。
U-verb (G1。五段活用)
上の Ru-verb と、来る (カ変) 、する (サ変) 以外のすべてです。
読む、書く、聞く、話すなどですね。
こちらはたとえば「読む (yomu) 」なら、
語幹を yom、活用語尾を u と捉えて U-verb といいます。
読む yom-u → 読みます yom-imasu, 読まない yom-anai
でも何か気持ち悪いですね。
納得いきませんね。
なんで yo-mu じゃなくて yom-u なの?
おまけに活用語尾は Ru-verb が -masu, -nai なのに対して、
U-verb は –imasu, –anai です。
またこのことによる起こる混乱がつぎに挙げる例外です。
これについてはあとでもうすこし詳しく説明します。
例外「る (ru) 」で終わるのに U-verb
これらは規則がないので「丸暗記」ひたすら覚えるしかありません。
でも、それって特別なことではありません。
英語では listen の過去形は listened ですが、hear の過去形は heard です。
不規則動詞と呼ばれますが、それは文法学者が「過去形は -ed をつける」という規則をかってに作ったためでもともと不規則動詞なのではありません。
そこには規則がありません。
これを恣意的 (arbitrary) といいます。
言葉には物理や数学のように答えが1つだけ導き出される数式はありません。
-iru
要る、射る、鋳る、煎る、(×居る) 、切る、 (×着る) 、知る、散る、走る、率いる、入る (はいる)
入る (いる) 、炒る (いる) 、干る (ひる) 、もあるけどほとんど使うことはありません。
(×) は、Ru-verb (G2。上下一段活用) です。
比較のために ( ) 内に書いています。
-eru
蹴る、競る、照る、練る (×寝る) 、減る、
帰る (×変える)
これは例外と考えるより、そもそも「文法ありきではなく、はじめに言葉ありき」と考えるべきです。
文法学者がつくった文法にしたがって話しているのではなく、人が話してきたことを文法学者が規則性や共通点を見つけて類別したものが文法です。
そもそも Ru-verb という分けかたが問題
-iru, -eru をRu-verb としたために生まれた例外であって、本来は例外でも何でもありません。
売る、降る、狩る、刈る、通る、反るなど、-iru, -eru 以外のもの (-aru, -uru, -oru) はさらにあります。
こうすると例外のほうが多くなってしまいます。
「る」で終わる動詞
かつて「田淵る」とか「江川る」などという言葉が作られたように、日本語の動詞の語尾は「る」が圧倒的に多いのです。
「愚痴る」や「サチる (saturate 飽和する) 」「バズる」「ディスる」のような言葉もみんな名詞や外来語に「る」をつけてつくっています。
アクセントの型は関係ない
「要る (いる) 」「居る (いる) 」は両方とも尾高ですが、「要る」は U-verb、「居る」はRu-verbです。
Japanese accent pattern アクセントの型 ~ 日本語
活用の分けかたについて
直接法 (みんなの日本語) と、間接法 (げんき) で呼び名と順番がちがうのでややこしいです。
このへんは統一してほしいけど、いまさら変えるわけにもいかないのでしょう。
併用すればいいかもしれないけど相容れないものになってしまっています。
かつてのVHSとベータみたいなもんです。
Ru-verb という呼びかたについて
u とru の音の区別がむずかしい
U-verb と Ru-verb
「う (u) 」と「る (ru) 」です。
生徒に指導するとき口頭だと区別がとてもむずかしいです。
とくに英語圏の人は「る (ru) 」を日本語の弾き音ではなく、接近音で発音するのでいよいよ「う (u) 」と区別できません。
ring が「ウィング」、right が「ワイト゜」と聞こえるのもこのためです。
Japanese phonetic pronunciation 音声学的な発音 ~ 日本語
アルファベット使用言語専用
そもそも「げんき」は英語で説明しています。
英語母語話者あるいは英語がわかる人向けです。
ほかの文字をつかうアジアの国の人には向いていません。
学習言語の文字をつかうべし
日本語であれば、ひらがな、カタカナ、漢字ですね。
日本語を知っている、日本語ができるというのは、漢字仮名交じり文が読み書きできるということです。
+アルファベットと算用数字。
ローマ字はアルファベットをつかう人たちにはすぐ読めるので取っつきやすいですが、デメリットも多いです。
いや、「すぐ読める」以外はすべてデメリットといったほうがいいでしょう。
日本人が外国語をカタカナで勉強すると
逆に日本人が英語を勉強するとき、カタカナで勉強するとどうなるかを考えればすぐわかります。
I will go to the resort in this vacation.
これをカタカナで勉強するとこうなります。
アイ ゴー トゥー ザ リゾート イン ディス (ジス) バケーション。
ゴーではなく、ゴウだし、t は「ト」ではなく「ト゜ (トゥ) 」、f, v, l, r, thなどの発音が本来の英語とはちがうことも気づかず、そのまま定着してしまいます。
中級くらいになって直そうと思ってもなかなか直りません。
resort の r も、日本語の「ラ行」とはぜんぜんちがいます。
かくいうおじさんもその1人で、英語の r が接近音であることを知ったのは英語の勉強をはじめてから50年近く経ってからです!
学校の先生は知ったかぶりで巻き舌などと言いますが、巻き舌ではありません。
またカタカナで書くと、日本語の拍で発音するので、
strong が「ストロング (sutorongu) 」になってしまいます。
この中に母音は o の1文字しかなく、str は3つの子音を母音をはさむことなく一気に発音します。
外国人が日本語をローマ字で勉強すると
日本ではヘボン式ローマ字がつかわれますが、これは英語圏向けの記号です。
ちなみに Hepburn ヘボンはヘップバーンのイギリス式発音です。
たとえば chi は、フランスでは「シ」、イタリアでは「キ」、ドイツでは「ヒ」と発音します。
「ふ」は fu ではないし、hu でもありません。
しかし、fu と書いてあれば、かれらはそのように発音します。
日本語を勉強するならまず最低でもひらがなを覚えて、「ふ」として勉強するべきです。
その上で、日本語の「ふ」は「無声両唇摩擦音」であることを教えます。
この言葉は覚える必要はありません。
大事なことは f のように歯と唇で出すのではなく、上下の唇の隙間から出る音だと教え、理解させることです。
カンタンにいえば、ロウソクを吹き消すときの口、熱いお茶を冷ますとき、虫🐛やホコリを吹き飛ばすときの「ふ~」です。
r の音にいたっては、英語は歯茎接近音なのに対して、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語などは軟口蓋または口蓋垂接近音で「うがい」の音に近くなります。
フランス人が France を発音すると「フコーンス」のように聞こえます。
merci は「メクシ」あるいは「メフシ」のように聞こえます。
これをカタカナで「フランス」「メルシ」と勉強してもフランス語の発音に近づくことは永遠にありません。
「メクシ」なの?「メフシ」なの?
どちらでもありません。
merci と現地の文字と発音で覚えましょう。
ローマ字で勉強しても漫画は読めない
現実にローマ字で書いてあるのは外国人向けの教科書くらいです。
日本に来たら戸惑うでしょう。
こんなはずじゃなかった。
駅や道路、大きな施設にはローマ字でフリガナも振ってくれているけど、新聞もテレビも雑誌も、あなたの好きな漫画もぜんぶ漢字仮名交じり文でどこにもローマ字なんかありません。
反対に怪しげなカタカナ英語だけが氾濫していますがこれもローマ字ではなくあくまでカタカナなので、カタカナを知らないと読めません。
アイデンティティだの、コンプライアンスだの、「つかってるおまえもわかってるのか!」とツッコみたくなるけどここでは置いておきます。
こんなこと日本人なら言われなくてもわかりますよね。
カタカナで英語を勉強しても、アメリカに行ったらどこにもカタカナなんか書いていないって。
えっ?書いてあると思った?😅
ハワイやシドニーなど国際線の玄関「日本人大歓迎」「いい金づる」というところには「国際線」「免税店」など日本語が書いてありますが、国内線に乗り換えると英語だけになります。
それから「掘った芋いじるな (ホッタイモイジルナ) 」は通じません。
日本語文法の種類と呼応
学校文法
日本の学校で教える文法です。
日本人 (日本語母語話者) なら文法を知らなくてもしゃべれるので退屈な授業です💦
ただおじさんはワクワクしました😄
「へえーっ!そうだったのかあ!なるほど!」
興味ない人には「そんなの関係ねぇ」「どうでもいいわ」「文法知らなくても日本語しゃべってるし」でしょう。
学校文法では、動詞の活用は
五段活用、上一段活用、下一段活用、カ変、サ変と習いました。
外国人学習者には複雑すぎるので簡略化する
五段活用は G1, U-verb に相当します。
上一、下一段活用は G2, Ru-verb です。
上一 (-iru) と下一 (-eru) をまとめました。
i と e がちがうだけで活用のしかたはおなじだからです。
カ変、サ変は G3, irregular です。
念のため、カ変は「カ行変格活用」、サ変は「サ行変格活用」の略です。
でも、「来る」と「する」しかないので英語、その他の言語に比べればはるかにカンタンです。
※ G1 の G は group のことです。
教える順番
間接法では、Ru-verbのほうが上になっています。
直接法でも、G2を先に教えます。
最初に「ます形」を教えるので、上一、下一段活用のほうがカンタンだからです。
「着る」→「着ます」のように語幹はそのままで、「る」→「ます」の入れ替えしかないからです。
いっぽう五段活用の「切る」だと
「切る」→「切ります」で、「る」→「り」+「ます」という音韻変化をおぼえなければならないのでちょっとむずかしくなります。
といっても、u → i の変化だけなのでさほどむずかしくはないと思いますが。
ひらがな表記か、ローマ字表記か?
さて、ここからは日本語を教える人にとって高度な話になります。
「着る / 切る」のペアのようにおなじ「kiru」 なのに活用がちがうものは外国人にとってはやっかいなものです。
もちろんわれわれ日本人が外国語を学ぶときにもおなじような例外は山ほどあり、そこがネイティブ (母語話者) と外国人のちがいなのですが。
ただ、これを外国人 (アルファベット圏の人) だからといって
「着る」を「ki-ru」
「切る」を「kir-u」
という分けかたにして
「着る」は「ki-masu」
「切る」は「kir-imasu」
と説明するのはかえって混乱を招く気がします。
すぐこんな質問が飛んできます。
「せんせー、なんで『着る』は ki で切って、『切る』は kir で切るんですか?」
そしてさらにほかの生徒が手を挙げます。
「せんせー、なんで『着る』は masu で、『切る』は imasu なんですか?」
「そのちがいは何ですか?」
「どうやって区別するんですか?」
ひらがなは2つに切れない!
日本語は基本的に「ん」以外はすべて、子音 + 母音のペアで、開母音で終わります。
子音だけの音の概念がありません。
つまり「る」は「ru」であって、「r + u」ではないのです。
だから、語幹が kir- で、後ろに u や imasu, e, ou などがつくという感覚はありません。
また、ひらがなやカタカナは、活用をおぼえる前に学習すべきもので、このようなアルファベットでの切りかたは、日本語も子音と母音を切り離して成り立つものだという誤解を与えます。
ローマ字で授業を進めてはいけない
そのことで学習者がたとえば、kir-masu というような音を作ってしまう可能性もあります。
ひらがなで書けばぜったい起こらないまちがいです。
やはり、「る」が「らりるれろ」と変化すると教えたほうがいいでしょう。
それに、「ます形」「ない形」においては Ru-verb がカンタンに見えても、仮定形「れば (reba) 」、命令形「ろ (ro) 」が出てきたときにまた混乱します。
おじさんは文法や活用をローマ字で教えるべきではないと思います。
英語圏の人に英語で説明するのはいいですが、文字はひらがなをつかいましょう。
「着る」は「着ます」
「切る」は「切ります」とちがう活用をすることに変わりはありませんが、
「ki-masu」と「kir-imasu」のほうがはるかに文法を複雑にし、混乱を招く要因になると思います。
まず、ローマ字の「子音 + 母音」脳から離脱しなければなりません。
日本語には「kir-imasu」という概念も発音も文字もなく、
「き・り・ま・す (ki ri ma su) 」です。
日本人が英語を勉強するとき、過去形をカタカナで勉強するでしょうか?
カタカナでは run と ran の区別はできません。
いわんや関係代名詞や仮定法過去においてをや。
まず五十音図
外国人の日本語学習者には何はさておき「ひらがなの五十音図」を覚えさせます。
ふりがながあれば漢字が混ざっていても読めます。
「げんき」では2課まではカタカナにもふりがながありますが、3課からはなくなるので3課にはいるまでにカタカナを覚える必要があります。
またローマ字のふりがなも3課からなくなります。
ひらがなは必須です。
「みんなの日本語」では最初からカタカナにふりがなはないので、ひらがなとカタカナはすべて覚えておく必要があります。
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