「主題」「述語」「は」はじめに
先日、日本語は「主題+述語」ですという記事を書きました。
これがわかると今まで謎だった日本語がすこしも不思議でもなんでもないことにおのずと気づきます。
なんだ。そんなことだったのかと。
そもそも英語文法を日本語に無理やり当てはめようとするから、あるいは英語的思考回路で日本語を分析・解釈しようとするから辻褄が合わなかったり、謎だったりするのです。
日本人ネイティブは文法など勉強せずに自然に日本語を身につけました。
だからどういう思考回路で日本語を組み立てて話しているのか自分ではわかりません。
人は自分の姿は見えないのに似ています。
鏡を見たり、他人を観察することで人と自分のちがいが見えてきて、自分のほんとうの姿が見えてくるということもあります。
今日は英語文法を日本語に当てはめるのではなく、英語文法とかれらの思考回路を知ることで、日本語とのちがいを浮き彫りにしてより日本語を理解しやすく解説してみましょう。
彼を知り己を知れば百戦殆からずです。
日本語「は」主題+述語です。
英語
(主語) +動詞
英語は動詞が王様、絶対王者です。
かれらの頭は動詞を中心に回っています。
動詞を軸にその他の言葉を貼りつけていきます。
主語がいちばんえらそうなのにあえて ( ) をつけたのは、おなじ構造のヨーロッパの言語では主語が要らない言葉がたくさんあるからです。
英語はクレオール語に似ていて、いろんな言語のごった煮なので文法が省略されて、その結果主語を言わないと誰 / 何が主語だかわからない言語になってしまいました。
おじさん的にはラテン語の代表格のスペイン語。
日本人はつかわない「愛してる」は
Yo te amo.
私 あなた 愛する
です。
しかしかれらはふつうはYoを言いません。
ただTe amo.と言います。
これは日本語で「わたし」を省略するのとはちょっと意味がちがいます。
日本語では「わたし」ということはわかっているから省略するのですが、スペイン語の場合は動詞のamoじたいが1人称単数現在、つまり「わたしが〇〇する」という形なので「わたし」を言う必要がないのです。
「あなた」も主語ならtú、目的語ならteと形が変わるのでTe amo.だけでまちがいようがないのです。
英語ではloveは3人称単数現在 (彼、彼女) のときだけlovesとsがつくぐらいであとは形が変わりません。
動詞の活用がかんたんになった代償として主語をはっきり言わないと誰 / 何が主語かわからない言語になってしまったので、主語が必須になりました。
英語ではyouだけだと2人称単数・複数でさらに主格・目的格両方につかえるので曖昧です。
ちなみにスペイン語の「amar (愛する) 」は1、2、3人称単数・複数現在形だけで2×3=6通り。
amo, amas, ama, amamos, amáis, amanと変化します。
これが過去形2種類😮、未来形、可能形 (未来完了ともいう) 、接続法現在・過去 (se形・ra形) ・未来形、命令形とおなじ形もありながらそれぞれ2×3=6で都合60通りぐらいに変化します。
さらに不規則動詞てんこもりです😂
みなさん学校で習うのが英語でよかったですね😄
不規則動詞もあるけど3人称単数にsをつけるだけ。
過去形はedをつけるだけ。
未来形はwillをつけるだけ。
可能形はcanをつけるだけ。
かんた~ん。
いつものとおり話がそれたけど、ヨーロッパの言語は動詞ファースト。
他の者は控えおろう。
わし (動詞) に従え、ということです。
すると動詞が主軸なので、動詞を補助したり、補足説明したりする言葉として副詞をよくつかいます。
例:
I went to bed late last night.
直訳すると
「昨日の夜は遅く寝た」
になります。
これは英語人がよくつかう英語構文的日本語です。
別の記事でまた説明するつもりですが日本人はこんな言いかたはしません。
自然な日本語では、
「昨日の夜は寝るのが遅かった」
といいます。
あるいは
「昨日の夜は遅くまで起きていた」
ですね。
動作主 (主語) +動作 (動詞) する
主語は動作主で、動詞は動作です。
かれらの頭のプラットフォームではまず動作主 (主語) がありそれが動詞 (動作) するという構造です。
英語の基本的な構文
動詞ありき
主語 (人・物) +動詞 (他動詞が多い)
動作主 (主語) →動作 (動詞)
焦点:原因→結果「◯が、 (△に) □する / した」
これがいわゆるSVOと言われる構文です。
これが英語をはじめとするヨーロッパの思考回路です。
日本語
主題+述語
日本語では主題が王様、絶対王者です。
わたしたち日本人の頭は主題を中心に回っています。
主題を軸にその他の言葉を貼りつけていきます。
日本語では動詞はその他大勢の脇役でしかありません。
むしろ日本語で重宝されるのは名詞ですが、それは主題がかならず名詞だからです。
日本語では動詞より名詞の比重が高く、たとえば
「感じる」という動詞をつかわずに「感じがする」と言います。
これについてもまた別の記事で書きたいと思います。
覚えていれば😅
日本語の基本的な構文
主題+述語に尽きる。
主題+述語。何がどのような状況か?どうなったか?
動作主 (誰・何) が動作したかは関心・興味がない。
焦点:主題→現在の状況・変化「◯は、□だ / □になった」
動作主が誰か気にしない。
状況・変化だけが重要ないい例文としてこんなのがあります。
例:
「先生。窓ガラスが割れました🫡」
じっさいには自分が割っても日本人は
「わたしが窓を割りました」とは口が避けても言いません。
それは無責任なのでも責任回避なのでもなく、日本語がそういう構造なのです😅
だから意地悪な先生はこう言います。
「窓ガラスちゃんがひとりでに割れたとでも言うのか?誰が割ったんだ?お前が割ったんだろう」
ここで初めて動作主・原因の元・責任の所在が明らかにされます。
こういう言語なのです。
割れるは自動詞で、 割るは他動詞です。
日本人と日本語は自動詞が好きです。
例:
もう1つの例
財布を探していた人が財布を発見しました。
100%こう言います。
「あった!」
もうすこし説明的でもこうです。
「見つかった」
一所懸命、他の誰でもない自分が探した結果「見つけて」も
「見つけた」
とは言いません。
見つかるは自動詞
見つけるは他動詞
日本人は無責任とはかぎらず、この場合はとても謙虚なんですね。
自分で見つけても「見つけた」とは言わず、財布がひとりでに自動的に「見つかった」かのように言います。
動作主が誰かは興味ないんです。
刑事が犯人を血眼になって探しているときでさえ「見つけたぞ」とは言いません。
100%「いたぞ」です。
刑事も謙虚ですね。
いやそうではなく、そういう構造の言語なのです。
「見~つけた」は子どもがかくれんぼしてるときだけつかいます😄
窓ガラス・財布・犯人に共通しているのは、動作主ではなく、窓ガラス・財布・犯人の状況がどう変わったか?という一点に絞られています。
find 見つける → 見つかる ~ 日本語の表現
主題は主語とはかぎらない!
これが日本語を理解するうえでとても重要です。
日本語の文章は「◯ (主題) は、□だ」で、主題はあなたがいちばん興味があること・言いたいことなので英語文法の主語 (動作主) とはかぎらず、英語的に言うと、目的語だったり、副詞だったりなんでもあります。
~について言えば
主題が表す意味はこれです。
とくに日本語の「は」が理解しにくかったら全部この魔法の言葉「~について言えば」に置き換えれば理解できるようになります。
もちろん日本語としては不自然だけど。
「は」は王様に次ぐお妃様
主題に圧倒的につかわれる格助詞が「は」です。
ほんと何にでもつかえます。
お妃様というより超有能な何でもできるスーパー召使いとでも言いましょうか。
むしろ王様を陰で操る黒幕、ラスボスかもしれません。
たとえば
「わたしは先生です」
の「は」は主格 (主語) を表していますが
「東京は3時です」
の「は」は主格 (主語) ではなくそれこそ主題なのであって、文法的な格付けとしては副詞句で場所を表しています。
でも、これは興味・話題の焦点なので「は」をつかいます。
これまた無理やり英語的解釈をすると、意味上の主語は「時刻」ですね。
でも、
「東京で時刻は3時です」
というのはあまりにもあまりに無理矢理英語的な構文で、もはや日本語とは言えません。
これは英語人が
It’s 3 o’clock in Tokyo.
を逐語訳したものにほかなりません。
あるいはレベルの低い自動翻訳アプリか、レベルの低すぎる翻訳家?ですね。
最近、英語の自動翻訳と低レベル翻訳家のせいで変な日本語が日本を席巻しています😅
百歩譲っても
「東京の時刻は3時です」
と、この場合は「の」をつかいますね。
「野菜は好きじゃありません」
この野菜は主語ですか?
ちがいますよね。
野菜が嫌いなのは誰ですか?
他でもないわたしです。
英語的に組み替えると
「わたしは野菜が嫌いです」
で目的語 (目的格) の部類にはいりますが、ふつうの日本人はこの構文で話しません。
これはあくまで英語的構文です。
この日本人はなぜ「わたしは」と言わずに「野菜は」と言ったのでしょうか?
それは話の中心が「野菜」だからです。
この文章でいちばん言いたいことは「野菜」についてなのです。
この人の頭に真っ先に浮かんで、いまこの瞬間に浮かんでいるイメージは他でもない「野菜」なのです。
そこに「わたし」はいません😄
「わたし」は二の次です。
だから「野菜は」と言いました。
このように主題はどこまでいっても興味・焦点であって主格 (主語) ではないのです。
もちろん主題が主語になることもありますが、それはその他大勢の1人にすぎません。
これがわかれば
「象は鼻が長い」
「田中さんは背が高い」
などの文章も恐るるに足らずですね。
もう「は」と「が」どっちが主語?なんて聞かないでくださいね。
いちおう書き下すとこうです。
「象について言えば、鼻が長い」
「田中さんについて言えば、背が高い」
となります。
もっと幼稚園児に噛み砕いて話すような言いかたをするとこうなります。
「みんなあ。これから象のお話をするぞう (ダジャレか) 。 (象は) 鼻が長いんだぞう (またダジャレかっ) 」
ってことですね。
「~について言えば」をつかった書き下し文は不自然きわまりない日本語です。
いや、もはや日本語ではありません。
でも外国人学習者がわかりにくいときは使ってみてくださいね。
あくまで意味を理解するために。
象は鼻が長い。水が飲みたい。君が好きだ! ぼくはウナギ? ~「は」「が」は主語ではない!
このスーパー召使い「は」の狼藉ぶり、もとい活躍ぶりについてはまた別の記事で書きます。
忘れなければ😄
述語は動詞とはかぎらない!
これも主題とおなじくとても重要です。
述語は性質・状況・変化などを述べる、あるいは説明する言葉だから。
この花は美しい。
このマンガは面白い。
田中さんはやさしい。
この教科書はわかりやすい。
東京は3時だ。
この文章には動詞が1つもありません😄
省略しているのではなく完璧で正しい日本語です。
前回も書いたけど「3時だ」の「だ」や「です」は助動詞であって動詞ではありません。
違うというのなら「だ」「です」はどんな動作を表していますか?
ないですよね。
英語とはちがうけど、英語だと、will, may, canなどのようにそれじたい動作を表してはいなくて、続く動詞の補助・補足説明をする言葉が助動詞です。
主語ではない主題「は」の例文
例:
「アメリカは行ったことありますか?」
これはほんらい
「アメリカに (は) 行ったこと (が) ありますか?」
または
「アメリカに行ったこと (は) ありますか?」
という文章になります。
外国人向けの日本語の教科書や学校では「~ことがありますか?」で教えるのでかれらは「が」をつかいますが、日本人はふつう「~ことはありますか?」と「は」をつかいます。
これもまた別の記事で書かねば。
逃げ道の「は」気遣いの「は」として。
この日本人と日本語の「アメリカは」には
「アメリカについて言えば」
「これからアメリカについて話すぞ」
「他の国のことは知らんけど」
「他の国のことは今は置いといて」
というとてつもなくたくさんの意味が込められています。
それを一言で「は」で済ませてしまう日本語ってすごいと思いませんか?
それに「は」一言で片づく超便利さ。
この3つの文のニュアンスや厳密な意味のちがいはスーパー召使いこと陰の黒幕「は」の記事でもうすこし突っ込んでみたいと思いますが、「は」はいろんなほかの格助詞にくっつき、そのうちその格助詞の座を奪い、なりすますとんでもない輩です😄
でもただ横取りしているのではなく主題 (興味・話題の焦点) として役目を果たしているのです。
かれを責めないでください😂
そして ( ) をつけたように会話では格助詞はしばしば省略する、というよりむしろ言わないほうがふつうです。
例:
「コーヒー (は) 飲みますか?」
「コーヒー、飲む?」
コーヒーはもちろん主語ではなく主題。
いまこの人がいちばん口にしたい興味・話題の焦点です。
やはり会話では、格助詞は省略するのがふつうです。
便利なのでこのように「は」が2つ重なることもめずらしくありません。
厳密には2番目の「格助詞は」は目的格なので「を」にしたいところですが、それはこの上なく英語文法に毒された人の考えです。
目的語だから「を」というのは英語文法であって日本語文法ではありません。
「君が好きだ」と言わず「君を好きだ」などという男はそっぽを向かれることまちがいなし😄
外国人なら一所懸命話そうとしていると好意的に受け止められるかもしれないけど、われわれは日本人であって外国人ではないのです。
「リンゴが好きだ」
「ギターが弾ける」
もその部類です。
あっ、いま「が」を出すと混乱するか。
格助詞「は」と「が」と「を」のちがい ~ 日本語
日本語の格助詞は守備範囲が広くて奥が深いのでこの先のリンクも辿ってみてください。
話をもどします。
日本語脳では動作主と動作は考えません。
日本人にとって動作主と動作には興味がありません😄
まず自分の頭に浮かんだ「物事」をとにかく口に出して「は」をつけます。
これから〇〇について話すよ。
主語とか目的語とか考えません。
それは英語文法であって日本語文法ではないから。
例:
「そこから海は見える?」
「ううん。ここからは見えない」
このへんは外国人にとっては難解極まりない構文でしょうね。
日本人にとっては屁でもないけど。
じつは「ここからは」の「は」はまた主題ではなく「対比」の「は」なので別記事を参照してください。
上の「格助詞は」の「は」もじつはこの仲間です。
そこには「他は知らんけど」という言外の意味がふくまれています。
対比についても上のリンクに書いてあります。
主語 (動作主) +動詞 (動作) というプラットフォームから離れて、
主題 (興味・話題の対象) +述語 (状況・変化) というプラットフォームに乗り換えればこのような日本語を理解できるようになり、また操れるようになります。
英語文法で考えるかぎり永遠にわからないでしょう。
何度も繰り返しますが、日本語は日本語であって英語ではないのです。
英語人がドイツ語やスペイン語やフランス語を勉強するのはかんたんです。
なんてたって印欧語族ですから。
基本的な構造はおなじ。
ほとんど逐語訳、単語の置き換えだけで理解できます。
おじさんはスペイン語とドイツ語を勉強したのでそのことがよくわかります。
日本語を理解するためには、印欧語脳を捨て去って、日本語脳に生まれ変わってください。
しつこいようだけど
「主題+述語」脳に切り替えるだけで日本語はじつにかんたんで便利な言葉だとわかりますよ。
日本語の組み立てかた
- いま自分がいちばん言いたいこと、興味・話題の対象を口に出す
- 「は」をつける
- その状況・変化などを説明する
これほどかんたんな言語が日本以外のどこにあるか🙌
さあ、今日からあなたも日本語マスターです。
ただ仮定法は世界中どの言語でももっともむずかしい最終画面のラスボス登場シーンなのでぼちぼちと。
おじさんもスペイン語の勉強をしていて接続法で挫折しました😅
英語の仮定法過去もわかりにくいけど、日本語の仮定法も外国人からするとむずかしいですよ。
春になったら
春になれば
春になると
このちがい、説明できますか?
日本人には説明できません。
なぜなら日本人は理屈抜きで使い分けているからです。
ネイティブとはそういうものです。
英語人だってスペイン人だって、文法を理解して仮定法過去や接続法をつかっているわけではありません。
まあ焦らずぼちぼちと。
「たら」「れば」のちがい ~ やまとことば
やまとことば ~ 一覧
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表示名はToshiです。
