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「helpful」「役に立つ」「便利」「ためになる」
外国人の生徒は日本人なら絶対つかわない言葉をつかうので、文法的には正しいし意味はわかるんだけど日本で、日本人なら何ていうんだろう?と悩むことがよくあります。
思いもよらない言葉が出てくるのでそれに惑わされて、ふつうの言葉が思い浮かばなくなります。
生徒がよくつかう言葉。
「先生は役に立ちます」
「先生は便利です」
もちろん生徒は褒めているつもりだし、感謝の意を表そうとしているのはわかります。
でも、なんか癇に障ります😅
なぜでしょうか?
また、どう言えばいいのでしょうか?
上から目線。物扱い
「役に立つ」も「便利」もいいことです。
褒め言葉です。
でも、これは
「上から目線」であり、または
「物につかう」言葉なんです。
物につかえば、
「この道具はとても役に立つ!」
「この機能はとても便利だ!」
と褒め言葉としてつかえます。
でも、人間につかうと、
「おまえは役に立つから家来にしてやろう」
「あいつは (使い走りとして) 便利なやつだ」
「他人にとって都合がいいだけの人」
上から目線で人を見下した感じ。
さらには、利用するだけ利用して用が済んだら捨てる。
一時的につかう道具扱い。
人間として尊敬したり、感謝したりしていない。
だから、上司や社長など、自分の目上や立場が上の人にはつかえません。
「社長の言葉はとても役に立ちます」💦
「上司にやってもらうと便利です」😅
「おまえ何様のつもりだ!なめとんのかコラ!」と言われてしまいます😄
じゃあ、なんといえばいいのか…あっ、いいのがありました。
ためになる/なります
もちろん
「私のためになる」という意味です。
具体的には、
「わたしの勉強の役に立つ」
「わたしが仕事をするのに有益な情報である」
ということです。
だから目上の人には次のようにいいます。
「社長のお言葉はとてもためになります」
「先生の授業はとてもためになります」
繰りかえしますが
この「ため」は「私のため」であり、「わたしが何かをすること/もののため」です。
「上司の助言はためになります」
主語は物
ただ、これらの例文でわかるとおり「主語は物」です。
人を主語にするとやはり「物扱い」「上から目線」「失礼な感じ」になってしまいます。
たとえば
「社長は (私の) ためになります」
「先生は (私の) ためになります」
というと、社長や先生は私のしもべで、私のために働いている感じ、あるいは道具・手段になります😅
参考・勉強になりました
「今日の授業はとても勉強になりました」
「とてもわかりやすい授業でした」
これもやはり物が主語ですね。
先生が helpful, useful なのではなく授業について評価しています。
具体的な成果を述べる
これも授業という物に対してです。
「今までわからなかったところが、今日の授業でよくわかるようになりました」
もし先生という人間を評価するなら
「先生は素晴らしい先生です」
「先生は教えかたがとても上手です」
これは教えかたという物の評価ですが、先生の技術や能力をほめています。
helpful や useful を辞書で引いてそのいちばん上にある言葉をつかうのではなく、状況によって日本語にふさわしい言葉と言い回しを選びます。
これは要するに翻訳の作業です。
また日本語だけでなくすべての言語についていえます。
だから日本語を英語にするときも直訳ではおかしいことがあるので、その意味から英語にふさわしい言い回しを選びます。
たとえば「難色を示す」という言葉を difficult color なんて言っても何のことやらさっぱりわかりません😄
この意味を掘り起こすと「賛成しかねる」「快く感じていない」ということですね。
それを英語の表現にしてやりましょう。
言葉だけでなく言い回しが大事
たとえ英語では helpful が人につかわれていても、日本語にするときそのまま単語だけ言い換えることはできません。
この例ではあくまで「物に対して」つかい、人間にはつかえません。
日本語では人に対して、形容詞や動詞をつかうと「失礼」と感じてしまう場合があるからです。
たとえば
「helpful man に道を教えてもらった」というような文章なら
「親切な人に道を教えてもらった」とか
「親切にも道を教えてくれた」のような日本語を掘り出してきます。
もとが形容詞でも日本語に訳すときは、副詞や動詞に変えたほうがいいこともあります。
これを「役に立つ人」と訳すと奇妙な日本語になってしまいます。
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