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やまとことば~ハ行転呼音。パピプペポだった!?

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「ハ行」「転呼音」「パピプペポ」

「ハヒフヘホ」は「パピプペポ」だった!?

むかしの日本には「h (ハ行) 」の音がありませんでした。
なんと「p (パ行) 」だったのです!

漢字の「ハ行」は「カ行」に

中国から漢字とともにはいってきた「h音 (ハ行) 」は発音できないので「k音 (カ行) 」に置き換えられました。

「海 (ハイ) 」「汗 (ハン) 」何より漢字の「漢 (ハン) 」など。
「上海 (シャンハイ) 」「成吉思汗 (チンギスハーン) 」とかいいますね。

もちろん現代中国語の発音ではありません。
中国はとても広く、現代語でさえ地域により発音はさまざまです。
時代が変わればさらに変わります。

発音の置き換え

これは日本だけのことではなく、どこの国も自分の国にはない発音があるので、外国語を仕入れるときは自分の国の「似た」音に置き換えます。
たとえばフランス語には「th」の音がないので、日本人といっしょで英語をしゃべるときは「s (ス) 」か「z (ズ) 」になります。

また、もともとのラテン語で「h」は発音していました。
それがラテン語の現代語にあたるロマンス語では、発音しなくなってしまいました。
スペイン、フランス、イタリア、ポルトガルなどがそれです。

日本語に通じるところがあります。

「h」は省略されやすい音。
また、省略しても混乱が起きにくい音のようです。

ギリシャ語に「h」の発音はあるのに文字はなく「’」で代用するというおかしなしきたりのために、ギリシャ語がラテン語に持ちこまれるときに「h」の文字と音がなきものにされてしまうこともあります。

国によって、ない発音。置き換えはこちら

言葉は生きている

言葉は生きています。
その時代、地域の変化に合わせて、言葉も進化あるいは退化して、変化していきます。

よく「言葉の乱れ」などというけど、生きているもので、新しいものが生まれれば新たに名前を付けなければいけない。
適当なものがなければ、今までの別の言葉で代用するとか、あまり使われなくなった言葉を引っ張り出してきて別の意味の言葉として使ったりします。
安易なのが外国語をそのまま使う「外来語」、いわゆる「カタカナ語」です。

中国人みたいに「コンピュータ」は「電脳」、「テレビ局」は「電視台」のように少しは日本人も考えましょうよ=^^=
「コンテンツ」とか、「アイデンティティ」とか、「コンプライアンス」とか、そのままカタカナにしてもけっきょく意味がわからない(^_^;)

これは日本だけの話ではなく、どこの国でも同じことです。

わたしたちは日本で生活して日本語をしゃべっているので、日本語だけが変化してると思っているけど、英語にも他の国にも「古語」があり、「新語」があり、「外来語」があります。
知らないだけです。

「乱れている」のではなく、「変化している」のです。

英語の変遷についてはこちら

英語はどれだけいろんな言葉が混じり合って変化 (乱れ? ) してきたかがわかります。

2人称には、どこの国も苦労してる!

ゲルマン語 (ドイツ語) との関係

ロマンス語 (英語とラテン語の関係)その1~ノルマン・コンクエスト

言葉と発音の増大と減少 (省略化)

人類はある日とつぜん何万語もの言葉を使いはじめたわけではありません。

はじめは「目」とか「口」など身のまわりにある「物の名前」から始まり、「食べる」とか「歩く」といった形としては存在しない「概念」を表す言葉を作っていきました。

「新しいもの」が増えればそれにつれて単語も新しく作られ、「考える」とか「思う」といった、より複雑で抽象的な概念を表す言葉を増やしていきました。

少ない音の種類しか持ってないと、単語数が増えるにつれ、おなじ音の組み合わせしか作れなくるので、「新しい音」を作り、「発音」と「単語」を増やしていきました。

しかし人間は楽したい。怠けたい(^^)

発音と単語が増えていったけど、人はできるだけ楽したい生き物です。
できれば、なるべく口を動かさずに (エネルギーを使わずに) コミュニケーションを取りたいのです。

そこで口や舌を大きく動かしたり、大きく息を吐かなければならない音は、なるべく口や舌を動かさないように、少ない息でしゃべるようになります。

もちろんそれで意味が通じなくなってはそれこそ意味がありません。

なので、「音を省略しても他の単語 (言葉) と混同しない範囲で」という条件がつきます。

「省略」というより、「省力」といったほうがいいかもしれません=^^=

「パ」から「ハ」へ

ここからはじっさいに口を動かして読んでください。

「パピプペポ」と言ってみてください。
毎回、唇を閉じて、そのあと強く息を吐いて、閉じた唇を破裂させなければなりません。
なので「破裂音」といいますね。

つぎに「ハヒフヘホ」と言ってみてください。
一度も唇を閉じることなく、口を開けたまま音を出せます。
こっちのほうが楽ですね(^^)

語頭の「p (パ行) 」は「ɸ (ファ行) 」→「h (ハ行) 」と変化していきます。

語中、語末の「p (パ行) 」は「ɸ (ファ行) 」→「w (ワ行) 」と変化していき、なんと最後には完全に子音が消えてしまい、「ワ」だけ残してほかは「a (ア行) 」になってしまいます!

[ɸ]は「両唇摩擦音」といって、わたしたち日本人が「フ」というときの発音です。
[f]は上の歯と下唇の隙間から出す音ですが、[ɸ]は「両唇摩擦音」の名のとおり上下の唇の隙間から出す音です。
熱いお茶を冷ますのに「フゥ~」って吹く (ふく! ) ときの口の形ですね。 [h]のほうは、寒いときに手を温めるのに「ハァ~」って吐く (はく! ) 息の音です。

ヘボン式ローマ字で「フ」を「fu」と書くのは、「hu」より「fu」に近い音だからです。
でも、「fu」ではありません。

[f][ɸ]が口先で出す音に対して、[h]は喉の奥で出す音だからです。

ハ行転呼音

これを「ハ行転呼音 (はぎょうてんこおん) 」といいます。

漢字がはいってきたころはまだ「h (ハ行) 」がなかったので、「k (カ行) 」で代用しました。
「漢 (カン) 」とか、「汗 (カン) 」とか、「海 (カイ) 」などがそうですね。

なので、「判 (ハン) 」とか、「平 (ヘイ) 」などはあとからはいってきたか、のちに音が変わったものと思われます。

語中、語末は?

旧仮名遣い (きゅうかなづかい) では、「いふ (言う。いう) 」とか、「うへ (上。うえ) 」とか書きますね。
これらはそれぞれ「ipu」→「ifu」→「iwu」→「iu」、
「upe」→「ufe」→「uwe」→「ue」と変化してきたのです。

むかしの人が聞いたら「近頃の若いもんは…」と「言葉の乱れ」を嘆くことでしょう(^^)

いつ頃、どのように変わっていったのか?

まず、奈良時代に[ɸ]に、平安時代に語頭以外の[ɸ]は[w]に変わりました。
語頭の[ɸ]は、江戸時代に[h]に変わりました。

これはあくまで説です。
テープレコーダーやCDは残っていないので💦

母 (はは)

ハ行転呼音の話を超上級外国人学習者にしたら、じゃあ「母」はなんで「は」と発音しないんですか?と聞かれました😅
す、するどい💦

じつは、平安時代中期以降近世のころまで「は」と発音して文字もそのように書いていました😮
その後「はは」にもどりました。

父 (ちち、とと) 、母 (かか) 、爺 (じじ) 、婆 (ばば) と同系列の言葉なので、やっぱり「はは」じゃないと居心地がよくなかったんですね。

なんでそんなことがわかるか?
ここだけの話。
おじさんはタイムマシンを持っているので平安時代に行って、聞いてきました😄

もう1つおなじようなのに「頬」がありますね。
これは「ほほ」と書いて「ほお」と発音するようになったんだけど、文字どおり読んで「ほほ」という発音も同居しています。
頬杖、頬紅は「ほお」と読み、頬笑 (微笑み、ほほえみ) は「ほほ」と発音しますね。
微笑みなんて当て字をつかうから「頬」と乖離してしまったんです。

「ア行」は語頭にしかなかった!

そもそも、やまとことばでは「ア行」は語頭にしか現れませんでした。

だから、現在、語中や語末に現れる「ア行」は、「ハ行」が変化したものか、漢字の音読みなのです。

変化の名残り

この名残りは、現代語のところどころに見られます。

助詞の「は」「へ」「を」

「わたしは」と書いて、じっさいには「わたしわ」と読みます。
子どもが最初につまづくところですね。

いや、そもそもなんで「は」と書いて「わ」と読ませるの?
おなじように旧仮名遣いで、「岩」は「いは」と書いて「いわ」と発音していたけど、現在は発音どおりに「いわ」と書くようになっています。

助詞の「は」は現代語でも「あ」まで変化せずに、発音は「わ」のまま残っています。

「わ」と書くと読みにくいから?
いいえ、そんなことはありません。

たとえば「わたしははなこ (花子) です」とか、「きょうははなみ (花見) にいきます」とか読みにくいでしょ(^^)
「ははのはははははははとわらう (母の母はハハハハと笑う) とか😄

一方、「へ」のほうは、「we (ウェ) 」とは言わず、完全に「え」と発音するようになっています。
「駅へ行きました (えきえいきました) 」の2つの「え」はまったく同じ発音です。

「を」も完全に「お」になっています。

ちょっと前までは「ワ行」は「ワヰウヱヲ」または「わゐうゑを」という文字と音がありました。
「wu (ウ) 」の音だけはかなり早い時期に「u (ウ) 」の音になってしまったようで、旧字体さえ存在しません。
現在、文字としては「ワ、わ」「ヲ、を」が残っていますが、発音としては「wa (ワ) 」しか残っていません。

「わたし」が「あたし」になるように、これも少しずつ「あ」に変わっていくと思われます。

ただ、「鷲 (ワシ) 」を「アシ」にしてしまうと、「足」と区別できないので残るのではないかと。
「アシ」という音はすでに「葦」という同音異義語もあるので。
まあ、「ハシ」という音には、「橋」「箸」「端」という同音異義語が存在するけど文脈からしてまちがえることはないので、「鷲」もそのうち「アシ」になるかもしれませんね。

じつは「橋」「箸」「端」は単語単体の高低アクセント以外に、助詞が付くと誰も知らずに、さらに助詞をふくめた高低アクセントを区別しているという高度な技を駆使しているのですが、それはこちらに書いてあります↓

はし~箸。橋。端。どうやって区別しているか?

Fuji (富士)

ローマ字で「ハ行」は「h」ですね。
だから富士山は「Huji」または「Huzi」と書いてもまちがいではありません。

でも、習慣的に「Fuji」と書かれます。

ここに、ハ行転呼音の名残りを見ることができます。

もういちど「ハヒフヘホ」と唇の動きを意識しながら、できれば鏡を見ながら言ってみてください。

「フ」のときだけ、唇をすぼめているのがわかりますか?

じつは日本語の「フ」は「hu」ではないのです。
むしろ「fu」に近い音です。
ただし唇はつけないので「fu」でもありません(^_^;)

国際音声記号 (IPA) では「ɸɯ」で書かれます。
以前は「f」を逆さまにした記号が使われていました。

「ハ」という発音をするとわかるけど、「h」は口を大きく開けて舌の後ろの方を喉の入口に近づけて出す音で、唇で出す音ではないのです。

日本人は「フ」のときだけ、唇をすぼめて「f」に近い音を出しているのです。

ひげおじさん
手を温めるときの「はあ~」が「h」で、お茶を冷ますときの「ふう~」が「ɸ」といえばわかるかな(^^)

語中、語末の「ハ行」が少ない

何でもいいので本を開いてみてください。
ネットの文章の部分でもけっこうです。

語中、語末の「ハ行」を探してみてください。
ほとんどないでしょう。
あるのはたいてい「語頭」です。

また、あっても「大変」「方法」などのように「漢語」であることがほとんどです。

「アル」のような言葉はわりと「最近」作られた言葉だということがわかります。

ナンセンスな根拠
ここに書いたのは誤りの例、トンデモ学説です!

・ 日葡辞書。
ポルトガルの宣教師がつくった日本語の辞書に「ハ行」が「f」で書かれていたというもの。

→ポルトガル語にはそもそも「ハ行」がありません😄
hの文字はあるけどポルトガルのみならず、ロマンス語 (ラテン系) のスペイン、イタリア、フランスはみんな「h」を発音しません。
いちばん近い音「f」で書くしかなかったんです。

これは日本人が英語の「th」を「ス、ズ」と書いてそう発音するからといって、「昔のイギリス人はそのように発音していた」というのとおなじようなものです。

・ 日本で今でも「ファ」で発音する地域があるというもの。

その地域の言葉が「むかしの日本語の発音をいまでも残している」という根拠は何もありません。
むしろその地域の人だけ「ハ」が「ファ」に変わったと考えるほうが自然です。

さっちゃん
うちのおばあちゃん、「ふぁふぃがない」って言うわ😄
ひげおじさん
歯が抜けとんじゃろ!

母音の多い言葉

日本語は「母音」が重要で、母音だけの単語や文章が多いです。

「うえのあおいいえへいいにいく (uenoaoiieeiiniiku)」なんて言葉もできちゃいます。
「上の青い家へ言いに行く」ですね。

おそらく、英語圏の人にとってはとても「聞き取りにくい」単語と文章でしょう。

英語は子音が多い

英語圏の人は、子音は言語脳の左脳で、母音は右脳で聞いています。
なので、彼らは子音が重要で、母音は子音だけでは発音しづらいので「つなぎ」として入れていて、あまり意味を持っていません。

英語脳の人は、子音を左脳、母音を右脳で聞く!

略語を見ればよくわかります。

building→BLDG
freeway→FRWY

字面も発音も子音だけで意味がわかりますね。

反対に、われわれ「ん」以外はすべて「子音+母音」で1セットの言葉を話している民族にとって、
strange”なんて頭がいきなり子音3つの”str”、後ろが”ng”、間にたった一つのつなぎ母音”a”が挟まっているだけの単語なんて「聞き取れないし」「発音できなく」て当たり前です。

日本語は、もともと母音だらけの言葉ではなかった

ここまで読んだ方はもうおわかりだと思いますが、

「うえのあおいいえへいいにいく (uenoaoiieeiiniiku)」は、旧仮名使いだと
「うへのあをいいへにいひにいく (uwenoawoiiweniiwiniiku)」になります。

ちゃんと子音がたくさん含まれています。

「ワ行」も「ヤ行」も「ア行」に同化!

もともと「ワ行」だったものがwが落ちてしまって、「ア行」と一緒になって母音が増えてしまったんですね。

さらに50音図で不思議な「ヤ行」。
なんで「ヤユヨ」なの?
これも、昔は「ya yi yu ye yo」と発音していたらしいです。
「ア行」と「ヤ行」の漢字は、厳密に使い分けられていたことから、発音も区別していたとされています。
江戸の「エ」は「ye」であって、「e」ではなかったようです。

さっちゃん
むかしの人が「パピプペポ」ってしゃべったなんて何でわかるの?
ひげおじさん
わからないよね。テープレコーダーがあったわけじゃないし。タイムマシンで見に行ったわけじゃないし。学者さんがそうおっしゃってる(^^)
さっちゃん
テープレコーダーって何?
ひげおじさん
そこかい! (^^)

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https://www.italki.com/teacher/8455009/japanese

さっちゃん
わたしはさっちゃんです!watashi wa Sacchan desu!
ひげおじさん
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