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よく知られた実験であり、おもちゃですが、ほぼ100%タレビンにフタをしないで水が出入りする状態で紹介されています。
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このサイトでは、タレビンにフタをして全く水が入らない状態で実験します。
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基本的に原理は同じですが、ちょっと違うんです。
どこが違うかというと、それは…
「浮力 (ふりょく) 」「体積 (たいせき) 」「圧縮 (あっしゅく) 」「膨張 (ぼうちょう) 」「排水量 (はいすいりょう) 」
動画はこちら↓ (40秒)
用意するもの
- ペットボトル
(大きさも形もどんなものでもいいけど、500ミリリットルくらいがちょうどいいよ! 大きなペットボトルだとつぶすのにかなり力がいるよ! ) - おべんとうに入ってる、しょうゆや、ソースの入れもの
(タレビン。さかなのかたちをしてなくても、だいじょうぶ(^^)) - クリップ
- クリップをつける穴をあける道具。千枚どおし、キリなど。
(穴をあけなくてもできるよ! )
やってみよう! ①
- 魚のなかを空気でいっぱいにして、フタをしめます。
- 魚のしっぽにクリップをつける穴をあけます。
どうたいに穴をあけないようにね! 空気がもれてしまいます。
穴をあけるところや、どうぐがないときは、フタのねもとにクリップをつけてもいいです。 - 水にうかべてみて、しずむか、しずまないかのギリギリの数だけクリップをつけます。
7コつけてしずんだら、1コはずして、6コにします。
おじさんは6コでした。 - ペットボトルに水を満タンに入れて、魚くんを入れたら、フタをします。
- あとは押すだけ!
ギリギリしずまない重さにすること。軽すぎるとなかなかしずまないよ!
解説
ここからはちょっとむずかしいので、大人のひとと読んでね!
浮力 (ふりょく)
「浮力」
読んだとおり、「浮く力」です。
「浮力」は、物や人が、押しのけた水などの液体の「体積」 (→排水量) に「比例」します。
「比例」しますというのは、「体積」≠「重さ」だからです。
水は約4℃のとき、1ミリリットル (1cc) が約1g (グラム) です※。
※ もともとは「水1ミリリットルを1gにしようね」って決めたんだけど、
温度を一定にするのもむずかしいし、水はどんどん蒸発していきます。
それで、「キログラム原器」というものを作ってそれを基準にするようになりました。
水の重さを量ったら0.99997495gになってしまいました(^_^;)
でも、ほとんど1gです(^^)
海水は塩が入っているので1gより重くなります。
同じ「体積」でも塩水のほうが「重い」ので、よく「浮きます」
プールより、海のほうが、浮きやすいんですね。
泳ぎやすさは別です(^^)
「浮力」=押しのけた水 (液体) の「重さ」です。
「浮力」≧「重さ」⇒浮く↑
(浮力のほうが大きい)
「浮力」<「重さ」⇒沈む↓
(重さのほうが大きい)
「浮力」のほうが大きければ、浮きます。
「重さ」のほうが大きければ、沈みます。
※ 上の式が、≧になっているのは、じっさいには
「浮力」=「重さ」 (浮力と重さがつりあった。おなじになった) ところで、
それより浮き上がることもなく、それより沈むこともないからです。
ポイント①
「浮力」は押しのけた水の「重さ」
ポイント①
「浮力」は押しのけた水の「重さ」
だから、水に入れたものが何でできているか、中に空気が入っているかどうかは関係ありません!
木の船でも、鉄の船でも関係ないんです!
船に水が入ると沈むのは、単純に船が「重くなる」からです。
船に水でなくても、人や荷物を乗せすぎると「重くなって」沈みます。
「浮力」より「重さ」が大きくなるからです。
意外に思うかもしれないけど、
船に水がはいって、船が沈むほど、
「浮力」は大きくなってるんです!
押しのけた水の「体積 (重さ) 」が大きくなれば、「浮力」も大きくなるんでしたね!
「浮力」と「重さ」がつりあったところで、船はそれ以上、沈むのをやめます。
船がぜんぶ水の中にはいっても、「浮力」が「重さ」より大きくなれないと、沈んでしまいます。
ポイント②
沈んでいても
「浮力」は、はたらいてるよ!
水の底に沈んだ鉄のかたまりでも「浮力」は、はたらいています。
ただ、「重さ」のほうが大きいから沈んでいるだけです。
だから、水の外にあるときよりは、水の中にあるときのほうが軽くなっています!
排水量 (はいすいりょう)
巨大な船などは、ちょくせつ、ハカリにのせて「重さ」をはかることができないので、「排水量」を利用します。
実際に船を大きなプールに浮かべて、あふれた水の量をはかることはできないので、
「吃水線 (きっすいせん) 」をつかいます。
「吃水線」とは、船が水につかっている線のことです。
設計図から、この水面から下の船の「体積」を計算して、そこから「排水量 (押しのけた水の体積→重さ) 」を計算します。
これが船の「重さ」とおなじになります。
やってみよう! ②
浮いてる氷がぜんぶ溶けても水はあふれない!
水が凍って、氷になると、体積が1.1倍くらいになります (10%くらい大きくなる) 。
氷が水に浮いてるとき、おしのけた水の量が、浮力 (=氷の重さ) になっています。
氷が溶けて水になると、体積が0.9倍くらいになる (10%くらい小さくなる) ので、
ちょうど氷がおしのけていた水の体積と同じになります。
だから、氷が全部溶けてもあふれないんです!
ペットボトルをつぶすと、魚くんはどうなると思う?
「体積」が小さくなるんだ!
「浮力」も小さくなるのね!
ここがポイント!
魚くんの
「重力 (重さ) はかわらない」
「中の空気の量もかわっていない」
(つぶれているだけで外にでたわけではない)
ことに注意!
体積だけが小さくなって→
浮力だけが小さくなって→
しずむんだ!
つぶれる (圧縮) →体積が小さくなる→浮力が小さくなる→沈む
直接、魚くんにはさわらないけど、
ペットボトルをつぶすと、
中の魚くんもつぶされます。
魚くんの中の空気がつぶされて、
体積が小さくなります。
排水量 (押しのけている水の量、重さ) が減って、浮力が小さくなるので、
沈みます。
手をはなす (膨張) →体積が大きくなる→浮力が大きくなる→浮かぶ
手をはなすと、圧力がもとにもどって、
魚くんの中の空気も、もとの体積にもどって、排水量がふえて、
浮力ももとにもどるので、また浮かび上がります。
他のサイトと、ここがちがいます!
多くのサイトで紹介しているのは、タレビンにフタをしないで、タレビンの中に水が流れ込んで「重くなる」ので沈む実験です。タレビン自体の「体積」は変わっていません。これは、潜水艦が潜航するとき、水を船内に入れて重くするのと同じ原理です。
一方、このサイトの実験では、中に水が入らず、タレビン自体がつぶれて「体積」が小さくなることで、「排水量」が減って、「浮力」が小さくなって沈みます。人が深くもぐると、肺がつぶれて「浮力」が小さくなって、沈んでいくのもこの原理です。
この、中に水がはいって「重くなる」のと、入れもの自体の「体積」が小さくなって「浮力」が小さくなるのでは、意味が違います。
空気がつぶれて、「空気の体積が小さくなる」という点では同じです。
ペットボトルの上に空気がのこっていると沈まない (沈みにくい) 理由
- のこっている空気がつぶされて、魚くんに力がつたわらない。
- 沈んだ分だけ「浮力」が増える!?
- 表面張力がはたらいて沈むのを邪魔する。
表面張力 (ひょうめんちょうりょく)
水などの液体は、「表面積」をできるだけ小さくしようとする性質があります。
なので、水より「比重」が重いもの (簡単にいえば、水より重いもの) でも「浮く」場合があります。
魚くんの頭が水面から上に出ていると、「浮力」+「表面張力」がはたらいて沈むのを邪魔します。
「ゆらすと沈む」のは、魚くんの頭が水でぬれて、「表面張力」が破られるためです。
動画はこちら↓ (24秒)
1円玉や針も水に浮く!
「針が浮く」実験は「針をコンパスにする! 磁石で遊ぼう!」でやってます。
リンクはこちら↓
「表面張力」についてはこちらでも書いています。
リンクはこちら↓
ほんものの魚くんたち (浮き袋)
ほんものの魚くんたちは、「浮き袋」という「空気タンク」をもっていて、
これを「つぶしたり」「ふくらましたり」して、もぐったり (沈んだり) 、浮かんだりします。
「浮力」が小さすぎると、いつも上に向かって泳いでいないと水の底に沈んでしまいます。
反対に、「浮力」が大きすぎると、いつも下に向かって泳いでいないと水面に浮かび上がってしまいます。
それは大変なので、「浮き袋」をつかって、ほとんど泳がなくても、
浮かびもせず、沈みもしないちょうどいいところにいます。
魚の種類によってもちがいますが、進化した魚くんたちは、
血液の中に溶けている「酸素」や「二酸化炭素」を「浮き袋」に入れたり、血液に戻したりして
「浮力」を調節しています。
サメのように、原始的な魚は浮き袋を持たないものもいます。
代わりに「脂肪 (しぼう) 」をたくわえて浮力調整をしていますが、
泳がないと沈んでしまいます。
人間も浮き袋!?
人は水に浮くことになっているけど、それは「肺 (はい) 」という「浮き袋」をもっていて、
そこに空気をためているからです。
だから、息を吐いて水に入ると沈んでしまいます。
ぜんぶ吐きらなくても、半分くらい吐くと沈みます。
人が浮いているのは、肺の中の空気のおかげなんですね。
人が深いところにもぐっていくと、水圧が高くなっていきます※。
ペットボトルの魚くんと同じことがおきて、肺がつぶれて、「浮力」が小さくなります。
ある水深より深くもぐると、自分で泳がないかぎり自然に浮かび上がることはなくなり、どんどん沈んでいきます。
※ 地上は1気圧ですが、
水に10メートルもぐるごとに水圧が約1気圧かかります。
水深10メートルだと、地上の気圧と合わせて、2気圧がかかります。
潜水艦
潜水艦は自分自身の「体積」「重さ」がかわらないのに、もぐったり (沈んだり) 、浮かんだりできます。
もちろん
船首を下に向けてスクリューを回せば、下向きに力がはたらき、もぐります (沈みます) 。
船首を上に向けてスクリューを回せば、上向きに力がはたらき、浮かび上がります。
でも、それだけではなく、
「バラストタンク」という部屋があり、
空気をはき出して、代わりに海水を入れると、重くなって沈みます。
このばあいは、潜水艦自体の体積は変わらない (浮力は変わらない) ので、
海水を入れることで、じっさいに「重くなって」沈みます。
ことばは悪いけど、一時的に「沈没」させているような感じです。
反対に、浮かぶときは、船内のタンクにたくわえている「圧縮空気 (あっしゅくくうき) 」を
この部屋に入れて、海水を外に追い出して「軽くして」浮かび上がります。
潜水艦自体が、ふくらんだり、つぶれたりするのではないので、
このサイトでやっている実験や説明と、しくみは少しちがいますが、
圧縮空気は、圧縮されて (つぶされて) いても、膨張しても (ふくらんでも) 重さは変わらず、
体積だけが変わるのです。
おまけ
炭酸抜けま栓
ペットボトルの炭酸が抜けないように、ペットボトルにとりつけて
ポンプのように何回か押すと、空気が中に入って圧力が上がって、
炭酸が抜けにくくなる道具があります。
これを使うと、手で押しつぶすのとおなじように、
ペットボトルの中の圧力が上がって、魚くんがつぶれるので、
やはり沈みます。
動画はこちら↓ (28秒。音が出ます)
2リットルのペットボトル
けっこう力がいるので、なるべく500ミリリットルくらいのペットボトルでやりましょう(^^)
動画はこちら↓ (32秒)
ついでに台所の流しで水をつかう実験をやってみよう!
リンクはこちら↓
灯油のシュポシュポはなぜ手を放してもずっと出つづけるの? 「サイフォンの原理」
浮沈子 (ふちんし)
Cartesian diver カーティージャン・ダイバー
英語ではこのようにいいます。
Cartesian デカルトの
ルネ・デカルト René Descartes
コギト・エルゴ・スム「われ思うゆえにわれあり」で有名なフランスの哲学者ですが、
この人が「浮沈子」を考えたといわれ、この名前がついてます。
「デカルトのダイバー (潜水夫) 」という意味です。
ん? 「デカルト」と「カーティージャン」て全然、発音がちがうじゃないか!?
レナトゥス・カルテシウス(Renatus Cartesius)というラテン語名から英語ではこういうそうです。
あちらの人の名前は、複雑ですね(^^)