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「聞いて覚える」「舌の位置」
聞いて覚えられるのは、赤ん坊のうちだけ!
よく「聞いて覚えろ。赤ん坊は文法など習わずに聞いて覚えているではないか」などと言う人や、本やサイトがありますが、おっしゃる通り「聞いて覚えられる」のは「赤ん坊」のうちだけです(^^)
赤ん坊のうちは、言葉を覚えることが生きてくために重要なのでその能力が優れていますが、最初に覚えた言葉を「母語」として身につけると、耳も「母語」向き、思考も「母語」を使うので、聞いただけではそれこそ「空耳」になってしまうんです。
おじさんは子どものときに「ぐるんぱのようちえん」という絵本の英語版を聞いたのですが、”The kindergarten…”のところが「🐘ぞうちんがー… 」にしか聞こえませんでした(^^)
ぞうさんのお話で、表紙に「ぞう」の絵が書いてあったから、もう「ぞうちんがー」にしか聞こえなかったんですね。
こちらにも書いてます。”What’s this?” は覚えるな! 旅行英会話。海外旅行で必要なこと
5才から英語を→遅すぎます(^^)
まさにこのキャッチフレーズでおじさんは英語の塾に行かされたのですが、すでに「ぞうちんがー」としか聞こえない見事な日本語耳に「育って」いました。
裏を返すと、5歳になってまだ”The kindergarten”がそのまま聞こえるようだと、日本語の習得が遅れていると心配したほうが良さそうです。
小学生くらいで、海外に引っ越して現地の言葉を完全にマスターする子どももいます。
しかし、それは日本語の音が一切遮断されて、現地の音しか耳に入ってこない条件に限ります。
まわりの人がしゃべっているのは全て現地語。
テレビをつければ現地語。
本や雑誌などの印刷物もすべて現地語。
片親が日本人でも、結局、家族の間で話す言葉が現地語であれば、日本語は消滅していきます。
その場合はバイリンガルではなく、日本語脳と日本語耳を放棄し、現地語脳と現地語耳を獲得したにすぎません。
残念ながら日本語は全くしゃべれなくなっています。
移民や難民だけの集団にいて、現地の人と一切関わりがなければ何年いても現地の言葉は全く覚えません。必要ないんですから。
バイリンガルにするには、かなり人為的に第二言語に晒す時間と労力が必要です。
幼稚園や学校、家庭でも日本語をしゃべっていて、日本語のテレビ番組を見ていて、一週間に一回一時間くらい塾に行ったくらいでは無理ですね。
かりにバイリンガルでも基本となる第一言語は重要です。
人間は「言葉で思考する」動物なので。
言葉は本来、他の人とコミュニケーションをとるためのものに生まれたものですが、自分ひとりで物を考えるのにも言葉が必要になりました。
試しに、言葉を一切、思い浮かべずにイメージだけで明日の予定とか、工作するものとか考えてみてください。
できないでしょう(^^)
ただ、文法ガチガチになってもいけませんよ。何ごともバランスが大事です。
文法もあくまで「道具」として使いつつ、フレーズを覚えてしまうのがいいです。
毎回、一から文法に従って単語を組み立てるのではなく、
その場その場でフレーズの「必要なところだけ単語を入れ替える」という方法です。
言葉の習得の段階
① 生まれたばかり。
「音の習得」 ひたすら正確に耳コピーする段階
生きるために必須なので、口の形や舌の位置や動かし方などわからないのに、それこそ「聞いて」適当に口や、舌を動かして「それに近い音」を偶然、発声したらそれを定着させて、偶然ではなく、自分の意志でその音が出せるようになる。音の意味もわからないが、とりあえずまわりにいる大人と同じ音を出す。もちろん「口の形や、舌の位置」など頭にはない。これは大人も同じです。
重要なことは、この段階で「母語」 (これを読んでる方はまず日本語だと思いますが) の「音の体系」ができあがってしまうことです。生まれたところで一生を過ごすなら問題ないし、むしろこれはその後の言葉の習得や、会話をする上でとても大事な能力なのですが、
「聞いた音しか発音できない」し、「聞いたことがない音は聞き取れなく」なるのです。
聞いたことがない音は、言葉ではなく、「雑音」の一種になってしまうといってもいいです。
外国語を習うときに、これが壁になります。
② 音の羅列が、意味のある言葉として捉えられるようになる。
「母語の体系」が作られる。
まわりの大人たちのやり取り、自分に話しかけることなどを聞いて、音の羅列が物の名前だったり、動作を表すことがわかってきて、それらを組み合わせて文章を作れるようになる。これも「文法」なんて全く頭にありません。まず、人の言うことがわかって、自分の言うことが相手に伝わればそれでいいのです。
大人たちの会話を聞いたり、大人に直されたりして、より正しい言葉に修正していきます。
③ 引き出しにある「音」と、「単語」リストに「照合」する段階。「補完」「予測」機能の習熟。
自分の「引き出し」を持ち、その中から「より近い音」「知ってる単語」「今、話されている会話で使われるだろう単語の候補」を探し、選び出して意味を理解します。
訛りがあったり、滑舌が悪かったり、ボソボソしゃべったり、言い間違いがあっても、引き出しの中身と照らし合わせることで、不完全な「発音」や間違った言葉や、表現さえ修正して意味のある正しい文章にして理解することができます。
また、相手が言うことをある程度予測して、単語候補の準備をして、スムーズな会話を可能にします。
これはとても重要な能力です。
「母語」生まれたときに親など一番身近にいた人がしゃべっていて、自然に覚えた言葉。
「母国語」自分の国籍がある国 (母国) の言葉。
「母語話者 (母語を話す人) 」を「ネイティブ・スピーカー」または略して「ネイティブ」といいます。
外国語を習うときにはじゃまになる。
この母語の「耳」と「発音」と「単語」の引き出しが、外国語を習うときにはじゃまになります。
どの国のどんな言葉でも、聞いた音は、日本語の50音のどれかに当てはめようとします。
これは文字だけの問題ではなく、「耳」が日本語の50音のどれかを選択するのです。
また、自分が知ってる単語のどれかに相当しないか「照合」をします。
la, raなら「ら」、thなら「す」、vなら「ぶ」という具合に。
これは日本人だけの問題ではなく、どこの国の人でも、外国語を習うときに起きる問題です。
「耳」もそう聞き取るし、当然、口も母語にある音で「発音」します。
たとえばフランス語にはthの発音がないので、フランス人が英語をしゃべると、
That is…はZat eez (ざっといーず) のように発音します。
なんか親近感、わきますね。
thの発音できないの、日本人だけじゃないんだ=^^=
空耳
「そう聞こえる」というのと、昔の人が大真面目で英語を覚えるために日本語の音にあてはめたものなどありますが、この通り発音してもまず通じません。
掘った芋いじるな。 What time is it now?
テレビ番組で検証していましたが、「掘った芋いじるな」では通じなくて、手首を指差すジェスチャーでやっとわかる有様でした(^^)
揚げ豆腐 I get off.
赤飯 shake hand.
亀 Come on. 戦後、アメリカ人が日本にやってきて、犬に向かって「カモン」というのを、英語で犬のことを「かめ」というのだと思ったそうです(^^)
停留所へ。 Did you do it? おじさんが実際に経験した「空耳」です。
和金 You’re keen. 映画「チキ・チキ・バン・バン」の歌詞の一部。
舌の位置
この文章が読める人はすでに「聞いただけで」舌の位置を探り当てる能力はなくしている。
いろんな教材が出回っていますが、いくらネイティブの英語を日本語耳で聞いても、”la”は日本語の「ら」としか聞こえないし、ちょっと訛った「ら」だなと思っても、自分が発音するときは、日本語脳の引き出しから、日本語の「ら」を引っぱり出してきて発音するので、永遠に英語の”la”にはなりません。
舌の位置を意識して、頭の中でイメージしよう!
最初は自分の舌がどの辺にあって、どう動いているかわからないと思うけど、いつも意識することで見えないけど、イメージできるようになってきます。
ふつうに「ら、り、る、れ、ろ」と舌の位置と、動きを意識しながらゆっくり言ってみましょう。
はじき音
上の歯茎の裏側か、口の中の天井 (口蓋といいます) 辺りに舌が瞬間的に当たって、すぐ離れるのがわかりましたか?
わからなかったらもう一度、言ってみてください。
これはそれこそ地域差、個人差があるので、一人ひとりの発音はみんな少しずつ違います。
舌の当たる位置や、舌の形など十人十色です。
それでも同じ「ら」の音として捉えるから日本人同士が会話するときはスムーズに会話できるんですね。
外国語を習うときは、ここから離れなければなりません。
日本語の「ら行」は「はじき音」と言って、英語の”r”とも”l”とも違います。
国際音声記号で、スペイン語の”r”は日本語と同じ「はじき音」にくくられ、英語の”r”は「歯茎接近音」で、舌が歯茎の裏側にくっつかないんですね。
むしろ英語が特別なんです。
歯茎接近音、後部歯茎接近音
ちょっとむずかしい話になりましたが、英語の”r”は「舌が歯茎に近づくけど、付かない」
音を無理やり書くと、「る」ではなく「う~」という感じです。
歯茎側面接近音
一方、”la”のほうは、舌が歯茎につくので日本語の「ら」に似ています。
” l ” は舌先を歯茎につけたまま舌の横から空気を通します。
“la”が初めから舌を歯茎につけておくのに対して、日本語の「ら」は音を出す瞬間に舌を歯茎にぶち当て、すぐ離します。
面白いことに英語の”letter”は「レター」だけど、早く発音すると、「レラー」になります。
これも舌の位置を想像しながら「た」と言うと、「ら」と同じように歯茎の裏側に舌がついているのがわかります。
「た」が初めから舌を歯茎につけておいて、素早く離すのに対して、「ら」は音を出す瞬間に「叩きつける」だけの違いなんです。
英語の”letter”にでてくる「レラー」の「ラ」の音がまさしく、日本語の「はじき音」の「ら」と同じなんです!
ただなら
「た、だ、な、ら」”ta da na la (ra)”と舌の位置をイメージしながらゆっくり言ってみましょう。
全部、舌が歯茎の裏側についてるのがわかるでしょう。
違いは、舌を初めから歯茎につけておくか (無声音、た) 、舌をつけた状態で音を出すか (有声音、だ) 、音を出す瞬間につけるか (ら) 、鼻から息を漏らすか (な) です。
t, d, l, nは仲間です。
特に、t, d, lとthは、ヨーロッパの言葉では国によって入れ替わることがよくあります。
「ただなら」と「ん」の関係について書いてあります↓
日本語の「ん」の発音は5通りある!
上に書いたように、日本語の「ら」は英語の”la”でも”ra”でもありません。
しいて言うなら、”la”のほうが近い音です。
次に、「分布」と言ってみましょう。
「ぶんぷ」と書くけど、「ぶむぷ」と発音しています。
これらは全部、唇を閉じて発音する仲間です。
b, v, p, mは仲間。
b, v, p, fは、ヨーロッパの言葉ではよく入れ替わります。
じつは、日本語の「は行」はもともと「ぱ行」で、
語頭では、パ→ファ→ハ (p→f→h)と変化して、語中、語尾ではパ→ファ→ワ(p→f→w)と変化して現在に至っています。
旧仮名使い (歴史的仮名遣い) で、「岩」は「いは」、「家」は「いへ」、「言う」は「いふ」と書かれるのはそのためです。
発音は、それぞれ「いわ」「いえ」「いう」です。
現代では、「わ行」も「わ」以外は「あ行」と同じ発音になってしまいました。
これを「ハ行転呼音 (はぎょうてんこおん) 」といいます。
ハ行転呼音についてはこちら。パピプペポだった!?
ハ行転呼音についてはこちらのページにも書いてあります。↓
「ま行」は「な行」と同じく鼻から息を抜く「鼻音」です。
鼻が詰まった (はながつまった)
これを鼻をつまんで言ってみましょう。
「はらがつばった」か「はだがつばった」になったんではないですか?
子どもが「じどうしゃ」を「じろーしゃ」と言ったり、「ラジオ」を「ダジオ」と言ったりするのも、
英語の”letter”「レター」が「レラー」、”middle”「ミドル」が「ミロー」になったりするのも、「舌の位置」が同じだからなんですね。
赤ん坊が無意識にやっていることを、大人は意識してやらなければいけません。
赤ん坊は、まっさらなので、試行錯誤していろんな口の形や、舌の位置を試して、その音の出し方を探り当てていく (もちろん本人の自覚のないまま) のですが、母語の体系ができてしまった大人は、「ら」に近い音を聞いたら、自分の中にある日本語の「ら」を発音してしまいます。
理論的にも、舌の位置と動かし方を理解して、聞いた音に近づけていくことをしないと、何万回聞いて、何万回発音しても、日本語の「ら」からは離れられません。
「教師はみな外国人」なんていうCMもあったけど、中国人も、韓国人も外国人だからね!
「resident (居住者) 」「alien」と書いてあった。今は「foreigner」になってる。
「Alien」という怖い映画ができたせいかな(^^)
でも、「alien」て普通に「外国人」という意味だからね。
「宇宙人」という意味もある。
腹話術 (母音でも)
「あ」は口を大きくあけて、「う」は口を小さくすぼめる。
もちろんそうするのが普通で、そうすべきなんだけど、あまり口を開けないで話す人や、その最たるのが「腹話術師」ですね。
試しに、それぞれ口を「あ」のように大きくあけたまま、「あいうえお」、「い」のように横に広げたまま「あいうえお」と言ってみてください。
ちょっと音が違うけど、言えますね。
ということは、発音は「口の形」ではなく、「舌の位置」が重要だということがわかります。
ドイツ語の”ä”は「あ」のように口を大きくあけたまま、「え」と発音します。
モンゴル語の”θ”は「お」の口で、「う」と発音します。
舌の位置については、外国語の辞書の初めの方に絵が書いてあったり、専門のサイトがあるのでそちらで研究してみてください。
大事なのは、発音より、文法より、「語彙 (ボキャブラリー) 」
考えてみてください。
ネイティブのような美しい発音と、文法も完璧だけど、単語を100しか知らない人と、
発音は今一、ジャパニーズ・イングリッシュだし、文法も正しくないけど、1000の単語を知っている人。
どちらが自分の意志を伝えることができるでしょうか?
後者の1000の単語を知っている人ですよね。
そして、上にも書いたように、それだけ英語の単語の引き出しを持っていれば、英語を聞いたときも自分が持っている頭の中の単語帳と照らし合わせて、「あっ! これ聞いたことがある」と「聞き取れる」ようになるんです。
聞き取れるということは、単に「音」を聞き取る能力ではなく、自分が持っている頭の中の単語帳の中にある単語にどれだけ「ヒット」するか? ということなんです。
「ピエンソケウンスウェーニョパレシードノボルベラマス」
これ、何だかわかりますか?
キリン淡麗のCMで使われているジプシー・キングスの「ボラーレ」の出だしの歌詞なんだけど、スペイン語の単語の引き出しを持っていない人には、ただの意味のない「音の羅列」でしかありませんね。どこからどこまでが一つの単語かもわかりませんね。
ただの音の羅列は聞き取れないし、覚えることもできません。
外国語を学ぶときは、できるだけ多くの語彙 (単語) を引き出しに持つことが一番、重要です!
発音や、文法がどうでもいいとは言いません。
でも、それらは二の次です。
一番は、「語彙の数」です。
こちらにも書いてます。”What’s this?” は覚えるな! 旅行英会話。海外旅行で必要なこと
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