目次をご覧になりたい方はクリックしてください→
「動物」「名前」「英語」
日本語での動物
たとえば「牛」なら、
オスは「雄牛」、メスは「雌牛」、子どもは「子牛」、肉は「牛肉」と見ただけで「牛」であることがわかるし、オスか、メスか、子どもか、肉かわかります。
でも、英語はオス、メス、子ども、肉で言いかたがすべて変わり、さらに+αの言いかたまであります。
それらをまとめました。
じっさいには日本語でも、豚→豚肉、鳥→鳥肉は素直だけど、牛 (うし) →牛肉 (ぎゅうにく) は外国人にはトリッキーです。
じつはこれ、このあと説明する英語の理由とよく似ています。
もともとの日本語 (やまとことば。訓読み) と、漢字とともにはいってきた中国語 (外国語。音読み) の関係です。
一覧表をつくったんだけど横長で表示しきれないので個別に書き直しました。
発音がわかりにくいと思われるものに発音記号をつけました。
目安なのでアクセント記号など省略してあるものもあります。
(アクセント記号のついたフォントを探すのが大変😅)
くわしくは辞書で確認してください。
動物と肉の名前がちがう理由
基本的にもともとの動物の名前がゲルマン系の英語。
肉の名前は1066年のノルマン・コンクエストによりフランス人に持ちこまれたラテン系の言葉です。
肉を食べる支配階級 (フランス系ノルマン人) がそう呼んだので、肉だけ名前が変わってしまいました。
ロマンス語 (英語とラテン語の関係)その1~ノルマン・コンクエスト
牛 🐄
学名
bōs taurus
ラテン語で「牛 雄牛」という意味😄
家畜・動物としての総称
cattle
<ラ capitālis もっとも重要な → 財産
(< caput 頭)
ラテン系の言葉です。
これは1066年のノルマン・コンクエストによりフランスに征服されたからです。
ロマンス語 (英語とラテン語の関係)その1~ノルマン・コンクエスト
オス
去勢していないオス
bull
< 古英 bula ふくれる
ドイツ語 Bulle
鳴く (吠える) bellow [béloʊ]
「鳴く」という動詞と、「鳴き声」の名詞の両方につかうものとそうでないものがありますがここでは詳述しません。
こちらは「古英語」ゲルマン系の言葉です。
日本語の訓読み (やまとことば) と音読み (中国音) の関係に似ています。
英語とドイツ語はとてもよく似ていますね。
おなじゲルマン語の兄弟だからです。
bulldozer ブルドーザー
bull (牛) が doze (うたた寝する) からだと思ってたらちがいました。
doze は「徹底的に打つ」という意味で
bulldoze「人を脅して~させる」という動詞がありました。
「強引に押し進む」ことから重機がブルドーザーと呼ばれるようになりました。
去勢したオス
ox
< 古英 oxa 動物のオスの意
ド Ochse (発音はオクサ)
鳴く (声) low, bellow
bullock [bʊlək] 4歳以下で荷役用。
steer
ド Stier
子ども
メス
cow
< 古英 cū
ド Kuh
鳴き声 low, moo
heifer [hefə]
< 古英 hēahfore
hei- 成長した
fer 牛 (ド Vieh 家畜の意)
3歳未満で子を産んでいない雌牛
子ども
calf [kæf, keif | kɑ:f]
< 古英 cealf
複 calves [kævz, keivz | kɑ:vz]
ド Kalb
発音注意👄
この綴りで「ケイフ」はなかろう😅
鳴き声 bleat
肉
beef
< ラ bōs 牛
フ bœuf [bœf]
veal
< ラ vitellus (子牛、卵黄) < vitulus (子牛、アザラシ)
食肉用子牛の肉
フ veau (1歳までの子牛)
日本語なら「牛肉」なのに英語ではまったくちがう言葉になってしまいます。
ビフテキ
もはや死語?😄
フランス語 bifteck なんですが、じつは英語の beefsteak がフランス語にはいってできた言葉😲
逆輸入バージョン。
動物の名前と肉の名前がちがう訳
イギリスはノルマン・コンクエストによりフランスに征服されました。
もとはドイツ語とおなじゲルマン系の言葉をつかっていたのに、現在ではなんと45%がフランス語経由のラテン語です。
🍖肉は支配階級 (もとフランス人) が食べていたのでフランス語に置き換えられたと思われます。
他人事ではなく日本語も半分以上は中国語 (漢字と音読み) に置き換えられていますね😅
漢字を「てにをは」でつなぎ合わせたような言葉になっています。
「牛」をやまとことば (訓読み) で「うし」、中国語 (音読み) で「ギュウ」と読むのもゲルマン語とフランス語の関係に似ています。
さらにカタカナ語。
そして、動詞の活用までやめはじめた日本人。
50年後には日本語はなくなるのではないかと危惧しています。
関連語
Taurus [tɔərəs] 牡牛座
taurine [tɔər(a)in] 雄牛の / タウリン (アミノエチルスルホン酸) 牛の胆汁から発見されたのでこの名が付けられた。
英語の発音は「トアライン / トーリン」などだが、英語の発音がおかしいのである。
そもそも読みかたがいろいろある言語は英語以外に知らない。
それは読みかたに決まりがなく、母語話者でさえ正式な読みかたを知らないので人それぞれテキトーに読むからだ。
英語の聞き取りがむずかしいのは人によって発音もアクセントもちがうことが大きな理由だ。
bovine [bóʊvain] ウシ属の
ラ taurus (雄牛)
> フ taureau [tɔro] ス toro [toro]
ワクチン
vaccine (ワクチン) はフランス語 vaccin(e)牛痘から
< ラ vacca [waka] 雌牛
スペイン語 vaca [báka]、フランス語 vache [vaʃ]
豚 🐷
学名
sūs scrōfa domesticus
(豚 母豚 家の)
家畜・動物としての総称
swine
< 古英 swīn
sow (メス豚。元は豚) の意
ド Schwein
pig
< 中英 pigge
(英) ブタ。 (米) 子ブタ
オス
boar
< 古英 bār イノシシの意
イノシシ wild boar
モルモット・アナグマなどのオス
hog
< 古英 hogg
去勢した食肉用のブタ
120ポンド以上。
英、豪では若い羊も指す。
メス
sow [sáu]
([sóʊ] と発音すると「種を蒔く」の意)
pigより大きいメス豚
クマなどのメス
gilt [gilt]
(guilt「罪」とおなじ発音です)
子を産んでいない若いメス豚
肉
pork
< ラ porcus 豚。海豚 (イルカ) 🐬の意もあり
フ porc [pɔ:r]
紅の豚
イタリア語で
porco rosso
関連語
porcine ブタの
鳴き声
oink, squeal, grunt
動詞、名詞両方あり
羊 🐑
学名
ovis ariēs
(羊 雄羊)
総称
sheep
< 古英 scēap 羊
オス
ram [ræm] ラム
< 古英 ramm
メス
ewe [jú:] (you とおなじ発音)
< 古英 ēowu 羊
子ども
lamb [læm] ラム
< 古英 lamb 子羊
1歳以下
カモシカなどの子
肉も指す
雄羊も子羊も日本語ではラムです。
r と l だけのちがいなので区別がむずかしいです。
肉
lamb 子羊の肉
mutton 羊の肉
< 古フ moton 雄羊
フ mouton 羊。去勢した雄羊。羊の肉、毛皮 (いわゆるムートン)
鳴き声
baa (メー) ,
bleat メーと鳴く
鹿 🦌
学名
red deer アカシカ
cervus elaphus
(鹿 鹿!) cervus (<cornu 角) はラテン語、elaphus はギリシャ語
fallow deer ダマジカ
dama dama
(鹿 鹿!)
ラ dāma=dāmma
鹿の一種。カモシカ。羚羊 (レイヨウ)
カモシカとレイヨウはべつの動物だが、むかしは羚羊と書いてカモシカと読ませたので混乱している。
総称
deer
< 古英 dēor 動物
オス
buck
< 中英 bukke
古英 bucc (雄鹿) と bucca (雄ヤギ) の混成語
ダマジカのオス
トナカイ・ヒツジ・ウサギ・ネズミなどのオス
hart
< 古英 heort
雄鹿
(英) 5歳以上のアカシカのオス
stag
< 古英 stagga 動物のオス
とくに5歳以上のアカシカのオス
メス
doe [dóʊ]
< 古英 dā
ダマジカのメス
ウサギ・ヒツジ・ヤギ・カモシカなどのメス
ドレミの歌
♫ Doe a deer, a female deer,
ドウは鹿、雌鹿だよ
hind [háind]
< 古英 hind「角がない」の意
3歳以上のアカシカのメス
子ども
fawn [fɔ:n]
< 古フ feon, faon 若い動物
1歳以下の子鹿
子ヤギ
fawn は「鹿が子を産む」という動詞としてもつかわれます。
関連語
cervine 鹿の (ような)、濃い黄褐色の
鶏 🐔
学名
gallus gallus domesticus
(雄鶏 雄鶏 家の)
誤植ではなく gallus gallus です😄
総称
fowl [fáʊl] (foul ファール 反則 とおなじ発音。ただし ファウル)
< 古英 fugol 鳥
家禽、猟鳥など広く鳥を指す。
ド Vogel
オス
cock
< 古英 cocc 雄鶏の鳴き声から
(cock-a-doodle-doo)
rooster
< roost (木に止まる) -er (もの)
cockerel
1歳以下の若い雄鶏
メス
hen
< henn 雌鶏
(鳴き声 cluck)
鳥のメスだけでなく、エビ・カニ・サケなどのメスも指す。
子ども
chicken
< 古英 cycen
ひよこ
chick- (雄鶏=cock) -en (指小辞)
chick より大きい
chick
< 中英 chike
chicken の尾音消失
(鳴き声 cheep)
ひよこ。ひな
肉
fowl, chicken
fishmonger
魚屋🐟
イギリスでは魚屋で鶏肉を売っているらしい。
雁
雁、鴈 (ガン、かり)
家禽と区別するために wild goose (野良ガチョウ) といいます。
カモ科でカモより大きくて白鳥より小さいものの総称。
ガチョウ
鵞鳥、鵝鳥、家雁
家雁と書くように、雁を家禽にしたものです。
学名
ānser ānser domesticus
(ガチョウ ガチョウ 家の)
ハイイロガン (灰色雁 ānser ānser (英) greylag goose/ (米) graylag goose) を飼いならして家禽にしたもの。ヨーロッパ系
ānser cygnoides domesticus
(ガチョウ 白鳥もどき 家の)
サカツラガン (酒面雁 ānser cygnoide) を飼いならして家禽にしたもの。中国系
< ラ cycnus/cygnus (白鳥) + -oid (もどき。みたいなもの)
「y」はスペイン語でイ・グリェガ (ギリシャのイ) と言われるようにもともとラテン語には存在しません。
y があったらギリシャ語からの借用だと思いましょう。
super (スーパー) と hyper (ハイパー) どっちがすごいのか!?
-oid はandroid (アンドロイド) , humanoid (ヒューマノイド) , gynoid (ガイノイド) でおなじみですね。
アンドロイドは♂で、ガイノイドは♀ですが、アンドロイドは男女の別なく人間もどきも指します。
それにしても酒面雁てすごいといおうか、ひどい名前ですね😅
酒を飲んだように顔が赤いからつけられたようですが、そこまで赤くありません。
あっ、酒は飲んでいません。
英語では swan goose (白鳥ガチョウ?) ともうすこしマシな呼ばれかたをします。
総称
(domestic) goose (複 geese)
< 古英 gōs ガチョウ
総称ですが、とくにメスのガチョウという意味でもつかいます。
肉も指します。
ああややこしや~。
オス
gander
< 古英 gandra ガチョウ
male goose
メス
goose
前述のとおり、総称としてもつかいます。
man は「男」でもあり「人間」でもあるパターン。
ガチョウは「女」と「種」を共用しています。
子ども
gosling [gɑzliŋ]
肉
goose
鳴き声
gabble, gaggle,
honk ガンの鳴き声ですが、車の警笛にもつかいます。
関連語
anserine (< ラ ānser)
カモ目の、ガチョウの (ような)
高貴なイメージの swan (白鳥) に対して、goose は「とんま」「間抜け」「ばか」という意味もあります。
ひどいですね。
おじさんが言ったんじゃないですよ。
クレームはイギリス人にお願いします。
カモ 🦆
鴨、鳧
カモ科でガンより小さいものの総称
呼び名はすべてアヒルとおなじです。
区別するために wild duck ともいいます。
マガモ
mallard [mæləd]
学名
anas platyrhynchos
(マガモ マガモ)
anas はラテン語でマガモ、アヒル
platy-rhynchos はギリシャ語で「平べったい-嘴」という意味
子音の後ろのhと、yが出てきたらギリシャ語だと思いましょう。
アヒル
家鴨、鶩
家鴨と書くように、鴨 (とくにマガモ) を家禽にしたものです。
区別するために domestic duck ともいいます。
総称、メス、肉
duck
< 古英 dūce
水に潜るもの
オス
drake
子ども
duckling
肉の意もあり
鳴き声
quack
アイガモ
合鴨
マガモとアヒルの合いの子ですが、もともとアヒルはマガモとおなじ種なので単に言葉の綾という感じがします。
家禽になったはずのアヒルが野生化して野良アヒルになり、野生のマガモと子どもをつくって川や池のほとりで人から餌をもらってる姿もよく見ます。
馬、ロバ🐴
オス
horse (馬)
donkey (ロバ)
メス
mare
参考資料:
ジーニアス英和大辞典 (大修館書店)
小学館 独和大辞典 第2版
研究社 羅和辞典 (田中秀央)
わたしは日本語教師をしています
プロフィール・レッスン予約はこちら。
表示名はToshiです。