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「サイフォンの原理」「重力」
「位置エネルギー」「運動エネルギー」
水のおもしろいところは、チューブをつかうと、とちゅうがコップの水面より高くなっていても
それを乗りこえて出口まで流れていくことです。
これを「サイフォンの原理」といいます。
それでは、じっさいにやってみましょう!
用意するもの
たらい。コップ。チューブ (お風呂でやるときは2メートルくらいのホース)
たらいは台所のシンクにかならずあると思います(^^)
コップでなくても水がはいるものなら、なんでもいいです。
チューブは、ここでは金魚の水槽の空気ポンプ用のものを使っているけど
折り曲げられるストローとか、こどものビニール製のなわとびのロープなんかでもできます。
やってみよう!
- たらいなどの大きな入れものに水をいっぱい入れます。
- コップに水を入れます。
- チューブに水を入れます。
- チューブの両側を指でふさいで水がぬけないように片方をコップに入れます。
- 反対側をコップより下に持っていきます。
- 指をはなすと…水が出てきましたね!
(⏰ 目安時間。5分。準備の時間はふくまれません)
少しでも空気がのこっていると空気がじゃまをして水が出てこないよ!
もし空気が入っちゃったらもういちどやりなおしてね!
出口を水面より高くすると止まってしまいます。
そして、あいだに空気がはいってしまうと空気がじゃまをして水が流れなくなってしまいます。
チューブを長くしたらどうなるでしょう?
チューブの道すじがどうなっていても出口が低ければ流れていきますね。
チューブの出口がコップの水面より高くなると、止まってしまいます。
① 水面より出口が低いこと。出口が水面より高くなると水は止まります。
② あいだに空気が入ると流れなくなります。
入口から出口まで水がつながっていることが大事です。
チューブが長くて中の水が多いときは、少し空気が入っても出口を下げてやると、
中に入っている水の重みで空気をおしのけて、また出てくることもあります。
解説
「サイフォンの原理」
水 (液体) は管の中を水で満たすと、とちゅうの経路が上がってても、下がってても、
ぐるぐる回ってても高いほうから低いほうに流れます。
そして水面が同じ高さになると流れなくなります。
上の動画のように、水が出る方 (低い方。この絵では右側) は容器も要らないし、水につかっていなくてもいいです。ただ、太い管だと下から空気がはいって流れなくなってしまいます。
これを利用しているのがみなさんお世話になっている「シュポシュポ」ですね。
もうわかりましたね。ポリタンクの油面をストーブのタンクより高くしてやれば
ずっとシュポシュポしてなくても、かってに低いほうに流れていってくれます。
そしてシュポシュポの頭についている「空気抜き」が何のためについているのか?
あいだに空気が入ると流れなくなるんでしたね。
気づいたらあふれていたということも…
また台の上にポリタンクをのせると不安定になるので倒れないように気をつけてね。
今どきは電動のポンプがあるのでシュポシュポしなくても良くなりましたが、
電池切れ、故障の予備としてシュポシュポも持っています。
「重力」「位置エネルギー」「運動エネルギー」
地球には「重力 (引力) 」があるので、いつでもどんなものでも地面のほうにひっぱられています。
人も物も支えるものやじゃまするものがなければ、
できるだけ低いほうに落ちたり、転がったり、流れたりして
それ以上、低いところにいけなくなったところで止まります。
この「高さ」が持っているエネルギーを「位置エネルギー」といいます。
英語でいうと「ポテンシャル」エナジーです。
ポテンシャルは日本語でも使われますね。
「高い」ところにあるものは「位置エネルギー」をたくさん持っていて、
それが「低い」ほうに動き出すと、
「位置エネルギー」を「運動エネルギー」に変えている。と考えます。
「運動エネルギー」は「摩擦」により「熱」や「音」 (振動) などに変わって最後は止まってしまいます。
「位置エネルギー」と「運動エネルギー」
むずかしく考えることはありません。
身のまわりにあるものを探してみましょう。
たとえば「すべり台」
あなたが階段を上っていきます。運動エネルギーを位置エネルギーに変えています。
あなたは運動するのでエネルギーを使ってつかれますね(^^)
そして上にのぼったら、こんどは位置エネルギーを運動エネルギーに変えて、
滑っておりてきます。
これであなたが階段をのぼってたくわえた位置エネルギーが運動エネルギーに変えられました。
また摩擦で運動エネルギーの一部は熱エネルギーに変えられて、あなたのお尻は少し熱くなったかもしれません。
ほんの少しだけど、空気抵抗もあったかもしれません。
滑るときに風を感じたでしょう。
どうして止まってしまうのでしょうか?
そうです。地面があるからです。
すべり台の下に穴があったらあなたはもっと下に落ちていきます。
あなたは地面の上に寝ころがっているだけでも、まだ位置エネルギーを持っていて
いつでももっと低いところに落ちようとしています。
ベッドで寝てれば、より低い床に落ちようとしています。
階段の上にいれば、いつでも階段の下に落ちようとしています。
公園にある「ターザンロープ」もそうですね。
あなたはまずぶら下がるロープを持って台の上にのぼらなければなりません。
そして、台から飛び出すといちばん低いところまで行って止まります。
位置エネルギーを利用しているもの
「水力発電所」…水が落ちるときに発電機の羽根を回して電気に変えています。
「スキー」「スノーボード」…歩いてのぼるか、リフトで運んでもらって、滑っておりてきます。
「ジェットコースター」…ジェットコースターには車のように動力がついていません。
はじめはレールの下にあるチェーンでいちばん高いところまで運んでもらって、
あとは位置エネルギーを運動エネルギーに変えておりてきます。
おとうさん、おかあさんと探してみてね!
お風呂でもできます。
わたしが子供のころ、おじいさんと温泉に行くと浴槽にホースがはいっていて、
出口から洗い場にお湯が出ていました。
浴槽の底にたまったゴミや、ぬるいお湯を外に出すためだそうです。
おフロといえば気になるのがこれ! 「シャンプーが水っぽくなる! 」
と感じたことは?
「ある! 」と思ったかたは、こちらをクリック↓
シャンプーが水っぽくなるのはなぜ?
逆サイフォン
一般的にはサイフォンはとちゅうの経路が高くなっているものをさしますが、
とちゅうの経路が低くなっているものもあり、「逆サイフォン」と呼ばれています。
岡山県久米南町にある「神谷 (かまだに) サイフォン」です。
谷の川の下を水路が通っています。
上の実験でやったように、とちゅうの経路がどうなっていても、
入口より出口が低ければ、水は低い方へ流れていきます。
ついでに台所の流しで水をつかう実験をやってみよう!
リンクはこちら↓
しずむ魚くん~もうひとつの「浮沈子 (ふちんし)」
ボールが水や空気にひっつく! 「コアンダ効果」
割れない! 跳ねる! 凍る! シャボン玉
いろんなサイフォン
サイフォンとはギリシャ語で「管」という意味なので、ほかにもサイフォンと呼ばれているものがあります。
だから間違いではありません。
ただし、サイフォンの原理ではありません!
コーヒーサイフォン
コーヒー専門店くらいでしか見ることはないと思います。
これは熱膨張で下のガラス容器の水 (お湯) が上に押し上げられてコーヒーの粉と混ざり、冷めるとまたもとの下の容器にもどってくるというシステムです。
サイフォンの原理ではありません。
これとおなじことがみなさんの家のおフロ場のシャンプーやボディソープのボトルで起きています。
ボトルにお湯がかかると中のシャンプーやボディソープが外に出てきます。
つぎの日、お風呂にはいると床がぬるっとしていることがありませんか?
ボトルから漏れている、というより温められて、押し出されたんです。
そして、みんながお風呂から上がり、おフロ場の温度が下がってくるとボトルの中の空気もちぢんで、今度はおフロ場の湿った空気を吸い込みます。
これが中で結露して、水になります。
こうしてシャンプーやボディソープのボトル中は日に日に水っぽくなっていくんですね。
おかあさんが水を入れてるんじゃないですよ(^^)
こちらに書いてます↓
シャンプーが水っぽくなるのはなぜ? (実験編。あたためるとシャンプーが外にもれる)
シャンプーが水っぽくなるのはなぜ? (実験編。さめると外の空気を吸いこむ)
ソーダサイフォン
サイフォンで画像を検索するとこんな見慣れないものが出てきます。
ソーダサイフォンといって、炭酸ガスのカートリッジを取り付け、中の水に炭酸ガスを送り込み、溶かして「炭酸水 (ソーダ水) 」をつくる道具です。
これもサイフォンの原理じゃないですよ(^^)
炭酸ガスといえば、みなさんが1日24時間、1年365日出しつづけていますね。
水に息を吹き込めば「炭酸水 (ソーダ水) 」がつくれるのでしょうか?
残念ながら圧力をかけないとダメです。
買ってきた炭酸水、炭酸ジュース。
フタを開けるとあっという間に気が抜けていきますよね(^^)
それから人が吐く息は100%炭酸ガスではありません。
かなり酸素が残っています。
でなければ人工呼吸の意味がないですよね=^^=
トンデモ科学
これを大気圧の力だという迷信、都市伝説が出回っています。
自分で調べもせず、考えもせず、ただネットに書いてある情報を鵜呑みにして、あるいは正しく理解せずに大気圧といっています。
もし、大気圧であれば低いほうが高い大気圧がかかっているので液体は「降りて」行かないことになります。
高度による大気圧
地上 (海抜0m) を1気圧 (1013mbまたはhPa) とすると標高5500mで気圧は半分になります。
もしこの間を管でつないだら5500m地点の大気圧は地上の半分なので地上の1気圧に押し返されてしまいますよね。
こんな馬鹿げた理論はありません。
ポンプ
じっさいには水をポンプで汲み上げても10mまでしか上がりません。
あとはいくら引っ張っても管内が真空になるだけで水は上がりません。
10m以上水を揚げるには下から押すか、いったんプールなど大気圧に開放してそこから新たにポンプを使う必要があります。
水銀なら760mm
760mmHgという表記はここから来ています。
重力
あくまでこれは重力、地球の引力によって「高いところから低いところに落ちる」という現象にすぎません。
液体が管の中で特殊な動き方をするのはこの記事に書いたことを読めばわかると思いますが、水の分子は手をつないでいて鎖のように動いていくのがとても重要なところです。
だから、間に空気がはいってしまうとその鎖が切れて引きずり下ろす力はなくなり、サイフォンは停止します。