目次をご覧になりたい方はクリックしてください→
「母音」「子音化」「口蓋化」「耳障り」
ナレーターやアナウンサーの声が耳障り!
ここ数年、ナレーターの声が聞き苦しくなり、それをマネするようにアナウンサーの声までが聞き苦しくなってきました。 (2020年現在)
はじめはおじさんの耳がおかしくなったのか、テレビがおかしくなったのかと思いました。
でも、ドラマの役者はもちろんのこと、やかましいバラエティ番組の芸人でさえふつうの声なので、ナレーターとアナウンサーがおかしいのです。
いったいなぜなのでしょうか?
母音の子音化 (口蓋化)
ちょっとむずかしい話をします。
「わからん」というかたは「口蓋音 (こうがいおん) 」に行ってください😄
音の出しかた。舌の位置
舌の位置を想像しながら、あるいは鏡を見ながらじっさいに発音してみてください。
母音
「あ、い、う、え、お」ですね。
母音は、声帯で振動した音を何も妨害せずに外へ出します。
舌の位置は上下前後に動きます。
これによって、音が変化して、母音の区別ができます。
大事なのは「舌の位置」であり、「口の形」ではありません。
ためしに口をだらしなく半開きにしたまま「あいうえお」と言ってみてください。
言えますね。
声帯振動なので、ふつうの人間が出せる音は85~1100Hzといわれています。
男性は100Hz、女性は200Hzくらいで発声します。
大ざっぱに言って、100Hzはギターで5弦のラ。
200Hzは3弦のラです。
ちなみに1弦のラは440Hzです。
時報の低いほうが440Hz (ラ) 、高いほうの音が880Hz (ラ) です。
ギターのチューニングフォーク (音叉) も440Hzです🎸
むかしはNHKでこの時報を鳴らしていて、民放では880Hz (ラ) を使う局と、1047Hz (ド) を使う局がありました。
この高いドがふつうの人間が出せる高い音の上限ですね。
いや、一般のかたはここまで出せません(^_^;)
いまは電波時計やデータ通信などで自動的に時計を合わせてくれるので時報を聞くこともなくなってしまいましたね💦
聞いてみたいかたは117にかけてみてください。
子音
おもに「舌」と「唇」をつかって空気の流れをさえぎり、乱すことで、「声帯で出た音以外の音」を出します。
子音のほうは、声帯振動ではなくおもに舌と口蓋 (こうがい) の隙間で出る気流の音なので4000Hzくらいまで出ます。 (口蓋音については後述)
ピアノのいちばん高い音 (いちばん右の鍵盤) が4186Hzです。
舌
か (が) 、さ (ざ) 、た (だ) 、な、は、や、ら行
見ていちばんわかりやすいのは「た」「な」
舌が歯茎の裏側に当たるのがわかりますね。
つぎが「や」「ら」
「か」「さ」は舌が歯の陰や、奥のほうで見にくいと思います。
唇
ま、ぱ、ば、わ行
これは唇を閉じる、あるいは狭めるのですぐわかります。
腹話術師が困る音です😄
口蓋音
口蓋 (こうがい) というのは、口の中の「天井」部分のことです。
口蓋に舌を近づけて空気のかすれる音を出します。
「ひ」と「し」がわかりやすいです。
声を出さずに息だけ出して「ひ」「し」と言ってみてください。
いわゆる「ささやき声」の出しかたです。
それこそ「ヒュー」とか「シーッ」とかいう風の音が聞こえます。
これが子音の「空気の流れを妨害して出す音」です。
母音の口蓋化とは?
ほんらい声帯で振動した音 (空気の流れ) を妨害しないで出すものなのに、舌を口蓋に近づけて妨害します。
「か」「が」を出すときと同じように、舌の奥のほうを軟口蓋や口蓋垂 (のどちんこ) に押しつけて出します。
すると、こんな声になります。
① カエルが轢かれたような声、平べったい声
軟口蓋 (口の天井の奥のほう) に舌を押しつけます。
さらに舌全体を平べったくして口蓋全体に押しつけすき間を狭くします。
するとこの音になります。
文字で音を表すのはむずかしいですが、まさしく現在、ほとんどのナレーターとアナウンサーが使っている音なのでテレビを見て、聞いたらすぐわかります。
わかりやすい例では出川哲朗😄
ただ、おじさんは出川哲朗の声も人も嫌いではありません。
あくまでナレーターとアナウンサーがこの声の出しかたをすると不愉快です。
この声にウンザリしている人も多いのでは。
② うがいの音
もう汚いとしか言いようがないですね。
これをテレビで使うとは。
もっというとタンを吐く音です。
舌の奥のほうをのどちんこ (軟口蓋よりもっと奥) に押し当てて振動させます。
フランス語やドイツ語、ポルトガル語の r がこの音です。
こんな声でしゃべられたら気持ちが悪くてすぐテレビを消します。
個人的には嫌いではないんだけど、パックンがこの声を出します。
よく言えば耳に響く。しかし、耳障りなだけ
いったいなぜ、このような音が流行病 (はやりやまい) のように蔓延しているのでしょうか?
声帯振動だけの母音とちがい、空気のかすれる音が混ざるので、高周波 (高い音) が加わり耳にインパクトを与えます。
よく言えば、母音だけのときより耳の神経が拾いやすく、脳にも刺激を与え認知しやすくなる。
でも、高い音で、脳に刺激を与えるということは「耳障り」「不快」であるということでもあります。
わかりやすくいうと、「大きな音」は聞き取りやすいけど、大きすぎれば「うるさい」ですね。
子音は一瞬、母音は継続する
ふだん聞いている「ひ」「し」がそんなに気にならないのに比べて、子音化 (口蓋化) した母音が「耳障り」なのはもう1つ理由があります。
それは、「音が出ている時間が長い」からです。
「ひ」「し」をローマ字で書くと「hi」「shi」ですが、これを音が出ている時間で表すとこんな感じになります。
hiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii
shiiiiiiiiiiiiiiiiiiii
子音は最初に一瞬だけ出て、そのあとは母音が長さを持ってつづくのです。
うがいに例えると、
「ガ」ではなく、「ガ・ラララララララララララ」という具合です。
ほかにも
気息音 (帯気音) h
すべての子音、母音の後ろに「気息音 (きそくおん) 」を入れるやつ。
うがい音に近い音です。
うがい音とちがうのは、こちらは無声音。
声帯を振動させないで出す音です。
寒いとき手を温める「ハア~」という息がまさにその音です。
驚いたときの「アッ! 」もそう。
舌の奥をのどちんこに押し当てて息の流れを邪魔します。
また、声帯を急に閉じたり、そこから破裂させたりして出します。
専門的には声門閉鎖音と声門破裂音といいます。
とくに「カ行」と「タ行」が多いです。
記号で書くと「kh」「 th」です。
「地球ドラマチック」のナレーションをしている渡辺徹。
渡辺徹は別に嫌いじゃないけど、このナレーションはとても耳障りですぐに見るのをやめてしまいます。
こんな感じです。
「~しましたハッ! 」
気息音は、帯気音 (たいきおん) 、有気音 (ゆうきおん) ともいいます。
現在では、有気音が一般的です。
ボソボソつぶやき系
論外!
何いってるかわからない。
口先とがらし系
口をとがらしてしゃべるやつ。
人は不満があるときこういうしゃべり方になりますよね。
「だって、しょうがないじゃないか」というようなときのしゃべり方。
「どぅって、しゅうぐぬいじゅぬいく」というような発音になります。
聞くに耐えません。
ナレーター、アナウンサーに個性は要らない!
自分たちのしゃべりかたが滑稽で耳障りだと気づいてください
はじめはいちぶのナレーターだけでしたが、猫も杓子も使うようになり、そのうちふつうにニュースを読むアナウンサーまでがこのしゃべり方になってしまいました。
ニュース原稿を読むアナウンサーだけでなく、現場でリポートする人も。
でも、同じ番組に出ている芸能人の声はそれぞれ違いはあるものの、「ふつう」です。
騒々しい芸人でさえ「ふつう」です。
人の脳に内容がすんなりはいることが必要
誰がしゃべっているかなど考えることもなく、しゃべっている内容だけが聞いている人の脳にはいってくるのがベストです。
それがあなたたちの務めです。
耳障りでなく、聞き取りやすい発音に徹してください。
最近、テレビを見なくなった理由
番組自体がくだらないのと、コマーシャルが多いのに加え、この「カエルが轢かれたような声」の蔓延です。
番組の内容に興味があって見はじめても、「ウェッ」「ンニャー」というような声が聞こえるのですぐチャンネルを変えます。
チャンネルを変えてもやっぱり「ウェッ」「ンニャー」と言ってるので消します😄
最近テレビを見なくなった理由
やまとことば ~ 一覧
わたしは日本語教師をしています
プロフィール・レッスン予約はこちら。
表示名はToshiです。
https://www.italki.com/teacher/8455009/japanese