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「お湯」「凍る」「ムペンバ」
ムペンバ効果
「お湯のほうが先に凍る」ということが都市伝説のように広がっています。
ムペンバ効果と呼ばれています。
お湯ではなくアイスクリームに入れる牛乳🍦🥛
ムペンバくんはお湯ではなく、アイスクリームをつくるときに冷たい牛乳より温めた牛乳を混ぜたほうが早く凍ることに気づいたというのです。
wikipediaでは冷ましたものより熱いまま凍らせたほうが早く凍ったと書いてあります。
食い違いがありほんとうはどういう状況で凍らせたのかわかりません。
1963年の話で、おじさんが生まれたのとほとんど同じころです。
まだ生きていれば本人に聞きたいです。
アイスクリームに入れる牛乳と、ただの水では話がまったく変わります。
これが流布する理由
常識に反するから
まず「お湯のほうが先に凍る」という常識に反したことなので人のハートを捉えやすいです💘
まちがいなく熱湯を冷凍庫に放りこんでもなかなか凍りません。
身近なこと
ふつうの人なら誰しも冷凍庫で氷をつくったことがあるでしょう。
これが相対性理論のように生活に関係なくむずかしい理論なら話題になりません。
知ったかぶりができるから
大勢が知っている今ではあまり効果がないけど、知らない人にこれを言うと「えーっ!?」て驚いてもらえます。
そもそもあなたは自分で実験したんですか?
ムペンバ効果を偉そうに語っているあなた。
自分で実験しましたか?
ふつうの家なら冷凍庫があるのでカンタンに実験できます。
してないですよね。
ネットやテレビで見たから。
ただそれだけ。
それを鵜呑みにして人に言ってるだけ。
じつはむずかしい実験
冷凍庫に常温の水と、沸かした100℃の熱湯をいっしょに入れるだけでできます。
でもじつはむずかしいんです。
だから誰もやらないでしょう。
そうでなくてもやらないか😅
だからおじさんもやっていません!
だからここに書くことも「考えられること」でしかありません。
でも、何も考えずに「ネットに書いてあったから」というだけで鵜呑みにする人とはちがいます。
むずかしい理由
中が見えない
水と熱湯を冷凍庫に入れるだけなら誰でもできます。
でも冷凍庫は透明じゃないですよね。
凍ったかどうか確認するためには何度もドアを開けなければならない。
そして、見ただけではわからない。
水も氷も透明なので触ってみて凍ったかどうか確認します。
つぎに開けたときは両方とも凍っていてどちらが先に凍ったかわからない可能性もあります😅
中まで全部凍ったか?
さらに氷はかならず表面と容器に接しているところから凍っていきます。
池や湖の氷は表面だけで中は凍っていませんね。
冷気に曝されているところから冷えて固まっていきます。
表面が凍っても中まで完全に凍ったかどうかはアイスピックなどで容器の底までつっつかないとわかりません。
条件をおなじにできない
水と熱湯をおなじ量にしておなじ容器に入れて、冷凍庫の中でも片方だけに冷気が当たらないように平等にしてやらなければなりません。
お湯のほうを冷気の吹き出し口に近づけて「先に凍りました!」というのはテレビのインチキ番組がよくやる手です。
NHKでもやってます😄
蒸発
最初はおなじ量を入れても、お湯は蒸発します。
蒸発すると量が少なくなるので早く凍りやすくなります。
それから気化熱を奪うので温度が下ります。
人が汗をかいて体温を下げるように。
沸騰させると不純物やガスが逃げる
これは次項に書くいちばん大きな要因です。
沸騰させると水に溶けている空気が逃げていくのと、消毒剤が逃げていきます。
この時点で常温の水と差ができてしまいます。
これがいちばん大きな理由だとおじさんは考えます。
考えられること
不純物は凝固点を下げる
水はふつう0℃で凍ります。
でも、水にはいろんな物が溶け込んでいます。
純粋な人ってそうそういないんです。
何もしなくても汚れていきます😅
いちばんわかりやすい例では、海の水は0℃で凍りません。
それは塩その他いろんな物がはいっているからです。
水が凍るときは水の分子くん同士が手をつなぎます。
でも不純物 (水じゃないやつ) がいると間にはいって、手をつなぐのを邪魔するんです。
すると水の分子くんは手をつなげないので0℃になっても凍らず、マイナス5℃、10℃と低い温度でやっと凍るようになります。
裏返すと、不純物が混じっていると、氷点下でも溶けてしまいます。
経験的にみなさんはアイスクリームがほかのものに比べて溶けやすいということを知っていると思います。
消毒剤 (塩素)
水道水には消毒剤がはいっています。
いわゆるカルキと呼ばれているやつです。
厳密にはカルキはドイツ語の kalk (石灰) です。
次亜塩素酸ナトリウム
化学式:NaClO
sodium hypochlorite
hypo- は「亜」と訳されます。
亜塩素酸よりさらに酸化数が少ないので「次亜」といいます。
この ClO– が強烈な殺菌作用を持っています。
もちろん人間にも毒です。
これを塩素酸といいます。
Cl2 が逃げたあとには、NaOH (水酸化ナトリウム、苛性ソーダ) が残ります。
これは強アルカリでタンパク質を溶かします。
プールでラムネ菓子のような白い粒を投げこんでいるのを見たことがあるのではないでしょうか。
それとも潜って拾って喜んでいる人も😅
あれが次亜塩素酸ナトリウムです。
プールが塩素臭い。
塩素系の漂白剤にもはいってます。
手に直接つくとヌルヌルするのは、漂白剤がヌルヌルしているのではなく、タンパク質でできているあなたの皮膚が溶けてヌルヌルしてるんですよ😱
すぐ水で洗って保湿クリームなど塗っておきましょう。
そうならないようにかならずゴム手袋をしましょう。
メガネもしたほうがいいです。
強アルカリが目にはいると失明します。
プールから出たら目を洗う
水道水にも次亜塩素酸ナトリウムははいっていますが、プールの次亜塩素酸ナトリウムの濃度は水道水とは比較になりません。
それは理科が得意でなくても、匂いと目の痛みでわかるでしょう。
水道水には次亜塩素酸ナトリウムがはいっているから目を洗わないほうがいいという、これまた変な情報が流れていますが、プールから出たらかならず水道水または真水で洗いましょう。
あなたは水道水は飲めるけどプールの水は飲めないでしょう。
おしっことかそういうことではなくて😅
漂白剤の容器が緑色の理由はこちら↓
chloro- クロロフィル (葉緑素) とクロリン (塩素) の関係 ~ 英語
次亜塩素酸カルシウム
化学式:CaCl(ClO)・H2OまたはCa(ClO)2
calcium hypochlorite
水道水の消毒に次亜塩素酸カルシウムがつかわれているという記述もありますが、いくつかの自治体を見たかぎりでは次亜塩素酸ナトリウムをつかっているところしか見当たりませんでした。
これも塩素酸なので効果としてはおなじです。
やかんや鍋でお湯を沸かすと白いものが析出しますが、ナトリウムまたはカルシウムの化合物だと思われます。
沸かさなくても濡れたところを放っておくと白くなりますね。
水と塩素が逃げていって、空中に逃げられなかったナトリウムやカルシウムだけが取り残されてしまうんです。
不純物がまったくない純水なら何も残りません。
このように消毒剤がはいっているので、凝固点が下がり、0℃でも凍らなくなります。
つまり凍るのが遅くなるということです。
空気
これもみなさん経験があるでしょう。
ていうか今すぐ自分の家の冷凍庫を開けて製氷皿を見てください。
氷の中に白い粒粒が見えませんか?
これは気泡です。
空気がはいっているんです。
高い温度ほど砂糖や塩も溶けるけど、空気も溶けます。
そして温度が下がっていくと溶けられずに砂糖や塩が白い物体として出てきたり、空気が泡になって表面から逃げていきます。
ところが急激に冷やすと空気が逃げる前に凍ってしまうので、逃げ遅れた空気が泡となって氷の中に取り残されてしまいます。
これも水が凍るのを妨げます。
熟湯 (じゅくとう) 🍵
お茶をやっている人はよく知っていると思いますが、水道水には消毒剤ほかいろんな不純物がはいっているので10分以上沸騰させたものをつかいます。
これを熟湯といいます。
コーヒーのような香りの強い飲みものなら気がつかないかもしれないけど、お茶や味噌汁などでは、一瞬沸騰させただけのお湯だと匂いがします。
これは地域や季節によっても消毒剤の濃度が変わるので、気にならないこともあります。
一般的には夏のほうが水が悪くなりやすいので消毒剤の量が増えます。
塩素の匂いのこともあるし、なんか蒸れたような匂いもあります。
ただあまり沸かしすぎると、塩素などのガスは出ていくけど代わりにお湯の量が減って、ナトリウムやカルシウムの析出したものの濃度が相対的に高くなってしまうのでほどほどにしましょう。
沸騰させると不純物が取り除かれるので凍りやすくなる
これが結論ですね。
家でできる実験としては、ただの水道水と、熟湯を冷ましたいわゆる湯冷ましを製氷皿に入れて冷凍庫に入れてみてください。
水道水のほうに泡がたくさんあり、熟湯のほうに泡がなければ成功です。
身のまわりにある不純物と氷の関係
アイスクリームをつくるときに塩を入れる理由
今は冷凍庫があるからやったことはないでしょうね。
むかしは強力な冷凍庫がなかったので氷をつかいました。
でも氷の温度は0℃。
ここですでにアイスクリームのほうが凍りにくいということを声高に物語っています。
冷蔵庫の製氷室 (ギリギリ0℃) でアイスクリームが凍るなら問題ありません。
でも、0℃では凍らないんです。
それは不純物 (砂糖に油も) が大量にはいっているから。
そこでむかしの人は氷に塩をかけました。
海の水が0℃で凍らないように、氷に塩をかけると化学的に氷を溶かします。
塩がはいっていると凍りにくいのとおなじ理屈で、氷に塩をかけると水の分子くんの間に塩が割り込んでいって2人の関係を引き裂きます。
現象としては氷が溶けて水になっていきます。
温めて溶かしたのではなく、エネルギーを与えていないのに化学的に水を溶かすので、温度が下ります。
うまい塩加減にするとマイナス21℃まで下げられます。
現代の冷凍庫の温度がだいたいマイナス18℃なので強力な冷凍庫代わりですね。
道路に塩を撒く理由
アイスクリームのつくりかたとまったくおなじ理屈です。
よく融雪剤といわれるように、雪や氷を溶かすこともできます。
ほんらいは凍結防止剤といわれ、凍る前に凍ることを防ぐものですが、泥縄式であとから撒いても溶けます。
つかわれているものはほんとに塩、塩化ナトリウム (NaCl) もあるし、
塩化カルシウム (CaCl2 calcium chloride) 、塩化マグネシウム (MgCl2 magnesium chloride) などもあります。
じっさいには水和物ですがそれはここでは説明しません。
マグネシウムのほうは「にがり」とも呼ばれます。
にがりは豆腐を固めるのにつかいます。
海水から塩化ナトリウムを残ったものがにがりですが、塩化マグネシウムはタンパク質を固めるので大量に取るのはよくありません。
そもそも豆腐はタンパク質だからにがりで固まるんですね。
それが海水をちょくせつ料理につかわない理由です。
カリスマシェフが米ににがりを入れて炊くとうまくなるという話をしていましたが、おじさんはやってません。
豆腐を食べて大丈夫なんだから、大量に取らなければ大丈夫だとは思いますが大腸炎を患っているのでできるだけ余計なものは体に入れないようにしています。
潰瘍性大腸炎。Ulcerative Colitis (UC) , IBD ~ トップページ
塩化ナトリウムでなくても金属を錆びさせるので塩が撒かれた道路を走ったあとは、とくに車の下を真水で洗ったほうがいいけどなかなかできませんね😅
解氷剤
まったくおなじ理屈で車のフロントガラスの氷や霜を溶かす解氷スプレーなるものがあります。
これは塩ではなくアルコールです。
たしかに溶けますが、ここまで読んだ人はもうおわかりですね。
アイスクリームとおなじようにフロントガラスの温度を下げます。
→結果的に、窓がもっと凍る😂
これは経験済みです。
不純物で一時的に溶かしてもフロントガラスの温度が下がっているので、走っている途中で外側はもちろん、内側も人間の体から出る水蒸気で凍ってきます。
しかもそれは超サラサラのスベスベなのでこすっても取れません。
解氷剤ではなく、エンジンを温めて、温風で溶かしましょう。
じっさいの経験
アイスクリームは冷凍庫の中でおなじ温度で、氷が溶けなくても溶ける
冷凍庫の中にいろんな物を詰めこみますが温度が充分に低くないと、まずアイスクリームから溶けていきます。
氷は凍ったままなのに、冷凍食品は柔らかくなる
冷凍食品も温度が充分に低くないと溶けてやわらかくなります。
溶けているということは菌が増殖しやすくなっているということなので注意が必要です。
ジュースを凍らせると濃い液だけ凍らない
おじさんは猛暑の中で草刈りをするので水が大量に必要です。
でも水だけ飲むと体液が薄くなってしまうので塩分も補給しなければなりません。
世に出回っているスポーツドリンクの成分を見れば、だいたい塩化ナトリウム (塩) と砂糖です😄
だから自分でつくることにしました。
空いた500ccくらいのペットボトルに塩、砂糖、そしてそれだけでは飲みにくいのでレモン果汁🍋を入れます。
そして冷凍庫にぶっこみます。
時間によるけど、さあ持っていこうと取り出すとペットボトルの一部だけ凍っていません。
しかも凍っていないところは黄色 (レモン果汁の色) をしています。
塩、砂糖、レモン果汁が濃いところは凍らず、水分だけが先に凍ってしまうんですね。
また完全に凍らせた場合でも外に持っていくと、不純物 (塩、砂糖、レモン果汁) の多いところから溶けていきます。
フタを開けて飲むと黄色の濃い~液体が出できます。
しょっぱいし、甘ったるいし、酸っぱい😅
そして、時間とともに透明な氷の部分が溶けてくると、水っぽい🚰
かき氷の氷にシロップを入れるとなかなか凍らない
これもジュースとおなじです。
おじさんは子どものころ、家でよくかき氷をつくって食べていました🍧
氷を削ったあとシロップをかけるのですがそのとき思ったんです。
「さいしょからシロップを混ぜとけばいいじゃん」
そう。
おじさんは横浜人なので「じゃん」をつかいます😄
そしてシロップを入れたものや、コーヒーと砂糖を混ぜたものを入れたもの、そしてただの水を入れたものを冷凍庫に入れます。
するとなんということでしょう~
ただの水は凍っているのに、シロップや、コーヒーを入れたものはなかなか凍りません。
しかもやっと凍ってかき氷をつくってみると、容器の上のほうは透明でほとんど水。
下のほうに濃い~シロップやコーヒーの液体が偏っていて実用になりませんでした。
なるほど。
さいしょから混ぜたものがないわけだ。
給湯器の水が凍る理由
ガス屋さんでさえ勝ち誇ったように?「水道より給湯器のほうが先に凍る」とドヤ顔で言います😄
ちょっと待ってください。
湯を沸かしているときに凍りますか?
凍らないですよね。
風呂の給湯器はもちろん、台所にある瞬間湯沸かし器もそうだけど、瞬間的に水を加熱するためにはそこを通る水の量をできるだけ少なくしなければなりません。
これは理科が苦手な人でもわかるでしょう。
風呂いっぱいに貯めた水を沸騰させるのはとても時間がかかります。
やかんでお湯を沸かすときも、コップ一杯の水ならすぐ湧くけど、1リットルの水を沸かすのは時間がかかります。
当たりまえです。
物理学や熱力学を持ち出すまでもありません。
おなじように冷凍庫で氷をつくりたいとき、水が少しなら早く凍るけど、製氷皿に山盛り一杯に水を入れるとなかなか凍りません。
単に水の量が少ないから
だから水を流しながら加熱するには、水が通る配管をできるだけ細くします。
1度に大量の水が流れたら温まりません。
熱しやすく冷めやすい
瞬間的に沸くくらいなので、瞬間的に冷めます😄
ふつうの水道の蛇口の太さに溜まっている水と、瞬間湯沸かし器の細い配管の中に溜まっている水を比べれば、瞬間湯沸かし器のほうが圧倒的に細く水の量も少ないです。
できるだけ効率よくガスの火の熱を伝えるために表面積を大きくしています。
熱が伝わりやすいということです。
こちらのほうが早く冷めて先に凍るのは不思議でもなんでもありません😄
熱が伝わりやすいということは、同時に熱が逃げやすいということです。
おなじように風呂の残り湯は凍らないけど、台所のたらいの中の水は凍ります。
物体が持っている熱エネルギーの量の大小によります。
人や動物が寒いときに丸くなるのはできるだけ表面積を小さくして逃げる熱を少なくしているんですね。
むすび
冒頭に書いたようにムペンバくんは、アイスクリームに入れる牛乳の話をしています。
牛乳は油と水がよく混ざって文字どおり「乳化」したものなのです。
それ以外にも砂糖その他不純物がたっぷりはいっています。
「熱いから」凍りやすいわけではなく、加熱することで成分が変化して凍りやすい状態になると考えるのが自然です。
ネットやテレビに流れていることを鵜呑みにするのはやめましょう。
自分で考えましょう。
そしてできればじっさいにやってみましょう。
それでもムペンバ効果を盲信して早く氷をつくりたい人は、どうぞ熱湯を冷凍庫に入れてください😄
おじさんは湯冷ましを入れます。