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「2人称」「名指し」「指差し」
はじめに
以前、罵りの言葉としてていねいなはずの言葉、それもとくに2人称がつかわれていることを書きました。
2人称には、どこの国も苦労してる! 世界各国みんなオタク族!
「shit!」は「う○こ」ではない ~ 罵りのことば
今日は罵りの言葉としてではなく2人称に苦労した挙げ句、出てきた言い回しや言いかたについて書きましょう。
重複するところもあるだろうけど、どうせそんなに熱心におじさんの記事を見ている人などいるはずがないからよしとしよう😄
2人称と本来の意味
もともと1人称
己 (おのれ)
自己、自分です。
いつの間にか、2人称を罵る言葉に。
「こら!自分💢」と言ってるわけです😄
手前 (てまえ)
手前。
文字どおりこっち側。
つまり自分です。
「手前生国と発しまするは」という決まり文句に代表されるように、これは自分のことで自己紹介です。
いつの間にか2人称になり、しかも「てめー」という音になりました。
自分
おじさんがある人と話をしていて「えっ?」と思った言葉です。
自分?
自分はもちろん1人称で「わたし」ですが、どうやらおじさんのことを「自分」と呼んでいるようです。
「あなたはなんやかんや言うけど、自分はどうなの?」とか
「自分のことを棚に上げてえ」
というような文脈では「あなた自身」を指すのでその使い方もありか。
英語のyourself、相手の目線で「自分」と言っているのです。
もともと2人称
貴様 (きさま)
ほんらい「あなた様」「貴い (とうとい) お方」ですが、いつの間にか罵りの言葉に。
茨城県では「貴公 (きこう) 」という言葉もあり、これは茨城ネイティブにとっては「殺すぞ」ぐらいに聞こえるらしいです。
知らんけど。
御前 (おまえ)
「御前 (おんまえ) 」は神様に対する最大級の尊敬語です。
なのに
言葉はつかうほど劣化して価値が下がる
という世界中の言語の共通の法則には逆らえません。
そのうち殿様が調子こいて😄自分のことをそう呼ばせるようになりました。
それこそ御前は神かっ!
そしてどんどん価値は下がっていき、目上の人を呼ぶ言いかたになり、そのうち家族や友だちどうしでつかうようになりました。
さらに地位は下がっていき、自分より目下・年下の者につかうようになり下がってしまいました。
これも「おめー」になります。
まあ最近では当たりまえのことをしても神対応と呼ばれ、ちょっとうまければ、ちょっとおいしければ「神」と呼ばれ、神さまもまるで紙のごとく地位が下がってしまいました🧻

もともと3人称または人間でもない
あなた
こそあど言葉の「彼 (あ) 」は遠くの物を指します。
遠称の指示代名詞 / 事物代名詞といいます。
あれ、あの、あちら、あっち、あそこなど。
おなじ「あ」で「吾」「我」がありますがこちらは「人間」の1人称としてつかいます。
「わ」とも読みますが「彼」と区別するために音が変わったのではないかと思います。
もともと「彼方」と書いて「あなた」と読み、「あっちの方 (ほう) 」という意味です。
「かなた」じゃないの?
もちろん「かなた」とも読みます。
現代ではこちらのほうがふつうです。
現代では「あなた」もくたびれて価値が下がってきたので「あちらの方 (かた) 」という言いかたもします。
ただしこれは3人称、ここから見える人を指す言葉で、2人称には「そちらの方 (かた) 」をつかいますね。
方
このように「方 (かた) 」は「来し方 (きしかた / こしかた。ここまで来た今までの方向) 」のように、もともと「方角」「方向」を指していたのですが、「方向」には「ホウ」という音読みを、「人間」には「かた」という訓読み (やまとことば) をつかうようになりました。
彼 (か)
「彼 (か) 」も遠称の指示代名詞です。
「あ」と「か」の使い分けはよくわからないのですが、「か」のほうは「かの」「かは」という使いかたが多いようです。
現代語にすると「あの」「あれは」ですね。
現代語には「彼女 (かのじょ) 」という言葉が残っています。
現代では英語のhe, she, theyの訳語として「彼」「彼女」「彼ら」をつかいますが、「あの人」ぐらいの意味です。
日本人は「彼 (かれ) 」と言わず、「あの人」というのがふつうです。
「かの」は訓読みで「ジョ」は音読み。
いわゆる湯桶読みです。
音読み、訓読み ~ 2通りの読みかたがある熟語
じっさいおじさんは中学校で英語を習うまでは「彼 (かれ) 」という日本語は知りませんでした。
「かれって何ですか?」
「それはね。あの人っていう意味だよ」
「じゃあ、あの人でいいじゃないですか」
そなた
上の説明で、もう説明の必要はないと思いますが「其・夫 (そ) 」は中称の指示代名詞。
それ、その、そちら、そっち、そこですね。
時代劇で聞きませんか?
「そち」とか「その方 (ほう) 」って。
現代では「そちらの方 (かた) 」という使いかたもします。
人間に対して「そっちの方 (ほう) 」って呼んでいるんですね。
しいて言えば「そっちの方の人」の「人」が省略されている形です。
日本人は2人称をなんて呼ぶか?
相手の名前を聞くとき
英語では What’s your name? というけど、日本語では
「あなたの名前は何ですか?」とは言いません。
また辞書をつくるうえでしかたなく「you」のところに「あなた」とか「君 (きみ) 」とか書いてあるけど、日本人は「君 (きみ) 」もつかいません。
死語です。
「君の名は?」なんて口が避けても言いません😄
ふつうはこう言います。
「お名前はなんとおっしゃいますか?」
「お名前、伺ってもよろしいですか?」
このように「あなた」という2人称はつかいません。
それはわかるから単に省略しているのではなく、ていねいであるはずの「あなた」も価値が下がって、そうでなくても相手を直接指すことは失礼・無礼な感じがするからです。
言葉はつかうほど劣化して価値が下がる
という法則にしたがって「あなた」も今では失礼な雰囲気を持つようになってしまいました。
基本的に名字
名前を聞かれたとき日本人はたいてい
「田中です」
と名字しか言わないので必要であれば
「下の名前はなんとおっしゃいますか?」とか
「フルネーム で / を お願いします」とか言います。
この「で / を」の使い分けもむずかしいですね。
で:最初から聞くとき
を:相手が名字しか言わなかったとき
相手が名字しか言わなかったときに「で」をつかうと「フルネームで言うのが当然だろ💢」という怒り・苛立ちを表し、相手を叱責している雰囲気を醸し出すので気をつけましょう。
そのつもりがなくても相手には「なんでフルネーム言わないんだよ💢」というふうに聞こえてします。
日本語はむずかしいですね。
でもそれだけ奥ゆかしく洗練された言語なのです。
呼びかけ
名前 (名字) で呼ぶ
いちばんふつうの呼びかたは、相手の名前がわかっていれば「田中さん」のように名字に「さん」をつけます。
これは日本ではまちがいがない呼びかたです。
相手が顧客であれば「田中様」と「様」をつけます。
手紙に書くときもおなじです。
年下
年下なら「君 (くん) 」や「ちゃん」をつけます。
家族・友だち・恋人
もっと近い間柄では呼び捨てまたは愛称で呼びます。
「まーくん」とか「みぽりん」とか傍で聞いてるとこっちのほうが恥ずかしくて穴があったらはいりたい気分にさせられます。
首筋のあたりがなぜか痒くなってポリポリかきます。
あるいは歯が浮くような感じ。
これも人によりけりで、近い間柄でも「さん」「くん」「ちゃん」などをつけることもあります。
役職で呼ぶ
これも逃げ道としては最善。
医者や教師には「先生」といいます。
これは名前を知らなくてもいい反面、副作用があります。
「ところであの先生、名前は何だったっけ?」
「えっ?言われてみりゃあ俺も知らねえな。ずっと先生って呼んでたから」
というように6年間愛情を持ってやさしく指導してきたにもかかわらず、名前に興味がなくて覚えてもらえないこともあります😅
会社では、社長、部長、課長ですね。
名前を知っていても「田中さん」と呼んではいけません。
「友だちかっ!」と突っ込まれます。
家庭でもお父さん、お母さん、家によっては、パパ、ママ、父上?母上?お兄さん、兄ちゃん、おにい、にいにとか言います。
日本人は下の名前では呼びません。
もちろん家族の間で名字で呼ぶと全員おなじ名字なのでだれのことかわかりません。
おもしろいのは年下だけは
「おい弟 / 妹」とは言わず、下の名前で呼びます。
これはやはり上下関係と敬語の文化・習慣だからでしょうか。
田舎に行くとその村全員おなじ名字ということもめずらしくありません。
そういう地域ではお互いを下の名前で呼んでいます。
屋号が発達したのもむかしは名字がないか、明治の大号令のあともみんなおなじ名字だったので、川下の太郎兵衛とか、木下の太郎兵衛とかいって区別していたのですね。
そもそもむかしは物部とか刑部のように職業で名乗っていたのに、室町時代になって農民を奴隷にするために名字を取り上げたんですね。
ひどい時代でした。
そして明治を迎えて、
明治3年 (1870年) 平民苗字許容令。庶民も名字を持っていいぞよ。
しかし、
「なんで今さら?」
「名字って言われても何にすればいいんだか」
ということで名字を名乗るものはすくなかった。
明治8年 (1875年) 平民苗字必称義務令。名字をつけるのは義務じゃ!
に変わった。
それは国民に対するやさしさではなく、戸籍をつくって国民を管理するためだった。
今のマイナンバーカードとおなじ。
全国民に背番号をつけて一括管理したかったわけだ。
橋本の太郎兵衛じゃあ個人の特定ができないからね😄
で、今さら名字を名乗れと言われてもわからん。
そもそも文字の読み書きできる者などほとんどおらなんだ。
どうすべえ。
で、お寺の和尚さんとか、文字の読み書きできる人に頼んでつけらもらったので、この村全員「田中さん」になってしまったわけだ。
今、日本でいちばん多い姓が佐藤。
2位が鈴木。
しかし両方ともその由来がわからない名前だ。
田中とか、木下なんかはわかりやすいのだが。
相手目線の (人称) 代名詞をつかう
他人の子どもをつかまえて
「ぼく、いくつ?」
と聞きます。
ひげおじさんのように自分のことを「おじさんはね」と話す変なおじさんもいます😄
これは相手から見て「おじさん」だという目線で話しています。
指示代名詞をつかう
上で説明したように「あなた」はもともと遠称の指示代名詞で「あっちの方 (ほう) 」という意味なんだけど、「あなた」の価値が下落してしまったので今では名前がわからない人に対しては「そちらの方 (かた) 」という言いかたも増えてきました。
「そこな人」というと「何時代の人?」と突っ込まれます。
そのまま「そこの人」「そこにいる人」のことで「そこなる」が音変化したものですがもちろん現代人はつかいません。
オタク😄
これはもちろん「お宅」つまり「あなたの家」から来ています。
もともとおばさんたちが使っていた言葉です。
でも、2人称をどう呼ぶかは日常茶飯事のくせに毎回苦労するので「人間」の呼びかたではなく「家」という物で呼ぶと直接的に相手を呼ぶことが避けられます。
そういう繊細な機微を理解している人たちがオタクをつかうようになったのです。
「おめーよー」なんていう連中よりよほどいいじゃありませんか。
奥様、女房
番外として、これも人間ではなく「場所」を表す言葉でした。
「奥」は文字どおり城の奥のとくべつな場所。
「女房」は女官が住む部屋のことです。
独房、厨房の「房」は部屋のことですね。
心房のように小さい空間を言うこともあります。
家内 (かない) なんか「家の中」ですからね。
人間をちゃんと表している言葉として嫁、婿がありますが、どうも相手と結婚したのではなく「家と結婚した」雰囲気が醸し出されるので現代では嫌われる傾向にあります。
ただおじさんとしては自分の伴侶を「ぼくのおくさん」という人はちょっと抵抗があります。
なんというか幼稚な感じがします。
そこは大人になって「わたしの妻」と言いましょうよ。
家ではみぽりんでもかまいませんから😂
首がかいー。


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