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「航空」「英語」「無線」「日常会話」
航空英語はむずかしい?
日常会話のほうがむずかしい!
航空英語はたしかに専門用語をおぼえなければなりません。
でも、やたらにむずかしい単語や文型を使ったりしません。
管制塔とはたくさんの飛行機が交信するので、できるだけ短いほうがいいのです。
そして、無線はネイティブでも聞き取りづらいので、わかりやすい単語と文がもとめられます。
単語の羅列
なので、主語や動詞が省略され、単語 (おもに名詞) の羅列になります。
カタコト英語のようです。
たとえばこんな風に
Fox Ground
Cessna 5515B
West Coast
Taxi with Hotel
専門用語はネイティブでもわからないのでいっしょ
単語自体はしごくカンタンなものですが飛行機に興味がある人でないとなんのことかわかりません。
downwind (場周経路の一部。風下ではありません)
go around (ゴー・アラウンド。着陸復航。着陸取りやめ。「そのあたりに行く」ではありません)
なので航空英語を一からおぼえるという点では英語圏の人となんら変わりはありません。
日本人なので不利ということはありません。
聞き取るのはやはり大変
ただし、それは「新しい用語と意味をおぼえる」という点だけで、読む、書く、聞く、話すはすべてにおいて不利です💦
じっさいATC (航空無線) は日本人にとってネックの1つです。
やり取りができないとEnglish limitation (ATCができる人を同乗させないとパイロットの免許をとっても1人で飛べない!) がついてしまいます!
ATC
Air Traffic Control
厳密には「航空交通管制」ですが、ここでは管制塔とのやり取りをする無線と同義でつかっています。
解説はのちほど
自分がいる場所と状況でつかうことばが決まってる!
自分が学校の駐機場で言うこと、
滑走路に向かうときに言うこと、
滑走路にはいるときに言うこと、
飛行場に降りるために接近するときに言うこと、
決まり文句
これらはぜんぶ「決まり文句」があります。
だから考える必要がないんです。
またここで決まり文句以外のことや、ちがういいかたをすると相手も戸惑い聞き取れないこともあります。
日常会話では無数の言葉がつかわれる!
日常会話では、相手が何をどんないいかたでいうかわかりません。
どんな返事が来るかもわかりません。
ありとあらゆる分野の単語がつかわれます。
いま相対性理論の話をしてたかと思うと、つぎの瞬間、スーパーの肉の値段の話になるかもしれません。
いつもぶっつけ本番みたいなものです。
航空英語では相手がかならずいう2~3の単語だけ予想していればいいんです。
着陸許可をもとめるときに管制官が今夜のごはんの話はしないから。
日常会話でいわれて困った!
traffic pattern 場周経路
フォックス飛行場はけっこう混雑する飛行場で、場周経路に5~6機もはいることがあります。
すると、管制官もどれがどのコールサインの飛行機だか区別できないことがあります。
Wing wag! Rock your wings!
ある日のことおじさんが場周経路にはいり着陸許可をもとめたところ、こういわれました。
これは着陸してから教官に聞いてはじめてわかったので、上空では最後までなんていってるかわかりませんでした。
だって、航空用語じゃないもん!
管制官はおじさんの飛行機がどれか区別できなかったので「翼を振れ」といったのです。
もちろんこんなことばも操作も習ってません。
飛行機は車とちがって路肩に停まるわけにはいかないので時間の経過とともにどんどん前に進んでいってしまいます。
場周経路内でかってに旋回したり、着陸したりすることはできません。
おじさんが後回しにされbase legにはいれないで直進してる間に、あとから場周経路にはいってきたほかの飛行機はつぎつぎに「turn base」の指示が出され着陸していきます。
おじさんは焦り「まだダウンウィンドにいるぞ」と無線でいうと、こんどは
Are you abeam a park?
parkはわかったけどabeamはまったく聞き取れませんでした。
そもそもそんな語彙はおじさんの辞書には存在しなかったし。
自分が知らない単語は聞き取れない!
だから、聞き流すだけで英語をおぼえるなんてウソです!
abeamは「横に」という意味です。
「公園の横あたりにいるのか?」
と聞いてきたんです。
わかりません💦
飛行場から2キロくらい離れてフリーウェイの上まで行ってようやく「turn base」の指示が出ました。
Very long final (とても長いファイナル・アプローチ)
いま考えればいちど場周経路から離れて、もういちどはいり直せばよかったんだけどそのときはそんな余裕はありませんでした。
Extend your downwind (ダウンウィンドをそのまま直進せよ) と指示が出ていたのでかってにそこから離れてはいけないとも思いました。
滑走路までの長かったこと!
Say again!
Please speak slowly.
日常会話では重要でないことは聞き取れなくても適当に相槌を打って聞き流せばいいです。
でも、航空無線ではわからないのにわかったふりをしてはいけません。
それこそほかの飛行機と衝突事故になりかねません。
じっさい非英語圏のパイロット (しかもラインの) による事故が増えています。
わからなければ遠慮せずにSay again! (もう1度おねがいします)
Please speak slowly. (ゆっくり言ってください)
そして、どうしてもわからなければためらわずにいいましょう。
I don’t understand. (わかりません)
これをいうのはなかなか勇気がいるけどわかったふりよりはマシです。
そうすればほかの言いかたに言いかえたり、最終的にはほかの飛行機に待ってもらってあなたを優先的に降ろしてくれるでしょう。
ただ、あまりにも使いつづけるとそのうち「あなたは飛んでくれるな」とクレームが来ると思います。
あなたに操縦の技量がどれだけあっても教官も1人では飛ばしてくれないでしょう。
知らないことばは聞き取れない
かりにすべての音を完璧に聞き取っても意味がわからなければそれこそ「無意味」だから。
なので、まず航空用語をおぼえること。
ヒアリングはともすると耳だけで読むほうは関係ないように思われがちですが、
「単語をおぼえる」「自分が知ってる語彙を増やす」ことが不可欠です。
そして、あとは慣れしかないですね。
自分が飛ばないときも航空無線を聞きます。
そして、できれば単語レベルでもいいので紙に「書き取る」
聞き取れなかったものは、書き取れません。
また、「聞き流す」は文字どおり「聞き流している」だけで「聞いてません」
車の騒音、虫の鳴き声となんら変わらずそれは「ただの音」であって「言語」ではないからです。
「書き取ろう」とすれば必然的に耳に集中します。
航空無線入門
基本
Who are you talking to? 誰に (呼び出す相手)
Who are you? 自分の名前 (コールサイン、機体の番号)
Where are you? どこにいるか
What do you want? 何をしたいか、どこへ行きたいか
special messages 特別な伝言 (もしあれば)
まず学校の駐機場から出てtaxiway (誘導路) に向かうとき
Pilot (自分):
Fox Ground
Cessna 5515B (fife fife one fife bravo 自分が乗っている機体の番号。読みかたについてはあとで)
West Coast (おじさんが通っていた学校。いまはありません)
Taxi with Hotel (ATISのアルファベット。HはHotelといいます)
ATIS (Automatic Terminal Information Service)
高度計の設定 (気圧によって変わる) 、風向風速、使用滑走路などの情報
新しい情報に更新されるたびにつぎのアルファベットに変わります。
Ground (地上管制) :
Cessna 5515B
Fox Ground
Taxi to runway 24(two four)
Pilot:
15B (自分が了解したことを伝えるため自分のコールサインをいいます。2回めからは下3桁だけをいいます)
離陸前 (滑走路にはいる前)
Tower (航空管制) の周波数に切りかえて
Pilot:
Fox Tower
Cessna 5515B
Ready for Takeoff (離陸準備できました)
Request Northwest departure (北西方向に出発したい)
ほかに
Straight out departure (まっすぐそのまま飛行場を離れる) など。
Tower (航空管制):
Cessna 5515B
Fox Tower
Northwest departure approved
Cleared for Takeoff (離陸を許可する)
ほかに
Hold short
滑走路にはいらず手前で待て。着陸進入中の飛行機がいるとき
Taxi into position and hold
滑走路にはいってその場で待て。滑走路の前方に着陸してまだ滑走中の飛行機がいるとき。その飛行機が滑走路から誘導路に出たらCleared for Takeoffになります。
自分が無線を聞いて理解したことを伝えるためにかならず自分のコールサインと内容を復唱します。
Pilot:
15B, hold short
15B, position and hold
Cleared for Takeoff と Cleared to Land
両方とも前にYou areが隠れていて省略されています。
clearは「動詞」
「許可する」という意味です。
つまり、You are clearedで「あなたは許可された」ということです。
受身形ですね。
takeoffは名詞なのでforがついてます。
「離陸を許可された」ということです。
後ろのlandは「動詞」なのでtoがついてます。
「着陸することを許可された」ということです。
英語では受身の形がよくつかわれます (これも受身) 。
Clear!
飛行機に乗りこんでエンジンをかける前に窓を開けて外に向かって大声で「クリアー!」と叫びます。
「クリアー」というより「クイアー」と聞こえます。
おじさんははじめ「プロペラのまわりに人がいないか自分が安全確認するもの」だと思っていました。
だからべつにそこまで大声で叫ばなくても…と思いました。
でも、ちがいました。
どけ!
これは形容詞の「邪魔なものがない」ではなく、
動詞の「どけ!離れろ」という意味だったんです。
「これからエンジンをかけるぞ!プロペラが回るぞ!危ないから離れろ!」と外の人に向かって「命令」していたんです。
いや、「どいて。離れてね」くらいのニュアンスです=^^=
ちなみに岡山では「どいて」を「どけて」といいます。
東では「どける」は物にたいしてつかうのではじめはドギマギしました。
あっ、もちろん自分の目でもまわりに人がいないか見ますよ。
飛行場に降りるとき
Pilot:
Fox Tower
Cessna 5515B
10 miles Northwest (飛行場の10マイル北西にいます)
Landing with Kilo (ATISのKの情報を持っています。着陸します)
Tower:
Cessna 5515B
Fox Tower
Make right traffic (右回りの場周経路を使え)
Runway 24 (使用滑走路)
Report downwind (ダウンウィンドにはいったら報告せよ)
あなたがいる場所によっては
Right base (右のベース・レグにはいれ)
Straight-in (直進でそのままはいれ。飛行場の風下にいるとき)
Report two miles (2マイルまで近づいたら報告せよ)
Pilot:
15B (了解)
場周経路にはいった
Pilot:
Fox Tower
Cessna 15B
(Left/Right) Downwind
Full Stop (着陸して停止。滑走路の外に出る)
ほかに
Touch and Go
接地してまたすぐに離陸 (離着陸の練習)
Tower:
Cessna 15B
Fox Tower
Cleared to Land (着陸支障なし)
または
Cessna 15B
Fox Tower
You are number 2 (あなたは2番めです)
Follow the Cherokee on right base (右のベース・レグにいるチェロキーにつづいて着陸せよ)
Pilot:
15B, In sight
(チェロキーを) 確認しました。
または
15B, Looking
(チェロキーを) 探しています。
前が渋滞していると
Tower:
Cessna 15B
Fox Tower
Extend/Continue your downwind (ダウンウィンドを伸ばせ)
I’ll call you base (ベース・レグにはいるときに指示する)
Pilot:
15B, Call my base (ベース・レグにはいるときに呼んでね!)
Tower:
15B, Turn base (ベース・レグにはいれ)
Pilot:
15B, Turn base (ベース・レグにはいります)
途中で風向きが変わったとき
Wind shift (風向きが変わった)
Runway change (滑走路変更)
Make left/right 180 (左または右に180°旋回せよ)
Runway 06 in use (ランウェイ06使用)
180はone eightyと読みます。
英語では数字を2桁ずつ読む習慣があります。
1985年をnineteen (hundred) eighty-fiveというように。
hundredはつうじょういいません。
エンジン回転計も「×100」になってるものが多く、
2300回転だとtwenty-three (hundred) になります。
着陸したら
Tower:
Cessna 15B
Turn left/right next taxiway (つぎの出口で左または右に出よ)
Contact Ground Control (地上管制に周波数を切りかえて連絡せよ)
Pilot:
15B (了解)
Ground (地上管制) の周波数に切りかえて
Pilot:
Fox Ground
Cessna 5515B
Taxi to West Coast (学校の駐機場) /Fuel Pit (⛽ガソリンスタンド)
Ground:
Cessna 5515B
Fox Ground
Taxi to West Coast/Fuel Pit
Pilot:
15B
航空用語その他
変わり種
Caution coyote! コーション カヤーリ。コヨーテに注意!
さすが砂漠地帯。コヨーテが出没します。
もちろんon the runway (滑走路の上に) なんだけど、コヨーテが空を飛んでるわけはないので、ふつうはon the runwayはいいません。
Caution dust devil!
これもさすが砂漠!というもの。
dust devil (ダストデビル) は小さな竜巻、つむじ風です。
数字の読みかた
3 tree (トゥリー)
5 fife (ファイフ)
9 niner (ナイナー)
これらも無線が聞き取りづらいからです。
phonetic alphabet アルファベットの読みかた
ABCをalpha, bravo, charlie…のように読みます。
b (ビー) 、c (シー) 、d (ディー) 、e (イー) などはみんな「イー」に聞こえてしまうからです。
通話表 (日本語)
日本の「あいうえお~ん」もおなじようなものがあります。
朝日のア、いろはのイ、上野のウ…のようなものですが、無線の試験を受ける人くらいしか使いません。
つくられた時代が古いので、そもそもその日本語なに?というものもあります。
千鳥のチ、鶴亀のツあたりは「時代を感じるなあ~」レベルですが、
留守居のル、井戸のヰ、尾張のヲとかわかるかな😄
ちなみに「ん」は「おしまいのン」です。
電話でやり取りするときには、かってに個人が考えたか、なんとなく市民伝承的なことばが使われますね。
アメリカのア、イギリスのイのようにだれもが知ってる国の名前を使うことが多いようです。
アルファベットもAmericaのAのようにいいますね。
DenmarkのDとか相手が国の名前とつづりを知らないと伝わりません。
おじさんは「alpha、deltaだよ」といいたくなるのをこらえます💦
これはこれで相手が知らないと伝わりませんからね。
ラジャー (了解)
じつは飛行機ではつかいません。
もとはphonetic alphabetでRをRoger (ロジャー、ラジャー) といっていました。
received (受信した。了解) の頭文字です。
現在、RはRomeo (ロミオ) といいます。
航空無線では、相手の内容を復唱するか、自分のコールサインをいいます。
でないと誰が「了解」といったのかわからないですからね。
ちなみにJはJuliet(t)ジュリエットです。