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「食べられる」「受身」「可能」「尊敬」
食べられる
「食べる」という動詞を「食べられる」という形に活用するけど、意味はたくさんあります。
受身 (受動態)
直接受身
怪獣に (わたしが) 食べられる。
間接受身 (迷惑の受身)
怪獣に (わたしの) 子どもを食べられる。
お兄ちゃんにプリンを食べられた😡
過去形
受身の場合は「食べられた」と過去形で使われるのがふつうです。
なぜなら被害を受けるときに黙ってそのまま見ていることはないからです。
たとえばお兄ちゃんがプリンに手を伸ばすところを見つけたら、「食べちゃダメ!」と止めるでしょう。
気がついたら「食べられていた」というときに使われる言葉だからです。
習慣
文例としては好ましくありませんが、
「子どもが毎日食べられる」というときには「現在形」が使われますが、「現在進行形」ではなく、「毎日繰り返されること」という意味になります。
「学校に通っている」なども、現在進行形ではなく、「毎日の習慣として行っている」という意味です。
ムリヤリ現在進行形を使うなら、「今まさに学校に行きつつある」とでも言うんでしょうか😄
「どこ行くの?」
「学校に行くところだよ!」
という会話ならありますね。
まあ、時間と格好を見たらわかるので、
「学校に決まってんじゃん!」という答えになると思いますが。
可能
能力
(たくさん食べたけど、胃袋が大きいので)
まだ食べられる。
こちらは人間の能力。
許容、安全性
(賞味期限が過ぎてるけど、そんなに過ぎてないから)
まだ食べられる。
こちらは食品のほうの安全性。
まだ腐敗していない (だろう) から、食べても健康被害は起こさない (だろう) という意味です。
受身と可能の形がおなじになるのは「食べる」「見る」のような上下一段活用の動詞で、五段活用では形が変わります。
「打つ」→「打たれる」受身、 (尊敬)
→「打てる」可能、能力
尊敬、敬語
先生がお食事を食べられる。
これについては後述。
ら抜き言葉
西日本では可能の意味で使うとき「食べれる」といいます。
これはまちがいでも、言葉の乱れでもありません。
むかしからそう言ってるからです。
共通語はそもそも東京の「山の手方言」にすぎません。
おじさん的には、「食べれる」のほうが、可能と受身の区別がつきやすいし、「ら」を言わない分、省エネになっていいと思いのですが。
外国人学習者には超難関!
同じ形なのになんでこんなに意味がたくさんあるの?
どうやって、区別すればいいの?
日本人は一体どうやって区別してるの?
母語話者にはカンタン!
母語話者であるわれわれ日本人には造作もないことです。
ていうか、だれも「これは間接受身だ」とか「これは能力だ」とか考えてないですよね。
文法を知らなくてもわかります。
なぜわかるのでしょうか?
文脈と経験
「お兄ちゃんにプリンを食べられた」
というときに「能力」や「尊敬」を思い浮かべないですよね。
「お兄ちゃんに」と「に」がついてるからわかるともいえるけど、それ以前の問題です。
外国人にはこの「に」が重要なヒントになるかもしれませんが。
また尊敬の意味でつかう場合は「尊敬する相手」が主語になります。
「先生がプリンを食べられる」
直接受身か間接受身か?
いちばん最初の「怪獣に食べられる」の文例。
が⇔を
「子どもが食べられた」は
「子どもを食べられた」とも言いかえられます。
上は直接受身、下は間接受身です。
一方、直接受身の「私が食べられた」は「× 私を食べられた」とは言えません。
「私」を超える、あるいは所有する主語が存在し得ないからです。
私を食べることで迷惑を受ける誰かがいるか?ということです。
が→直接受身 / を→間接受身
「子どもが食べられた」 (直接受身)
単なる叙述。
子どもは、私の子どもかもしれないし、どこかの誰かの子どもかもしれません。
子どもが主語です。
「子どもを食べられた」 (間接受身)
「を」はけっして主語にはなりえないので、省略された主語「私は」があることがわかります。
主語になるのは「私」とはかぎらず、
「田中さんは (田中さんの) 子どもを食べられた」
という文章も成り立ちます。
盗まれた
財布がありません。
そのときあなたはたぶんこう言うでしょう。
「財布が盗まれた」
まったくおなじ状況と意味で
「財布を盗まれた」
とも言えます。
文法的には上が直接受身で、主語は財布。
下が間接受身で、主語は私。
文章としては上のほうが自然です。
象は鼻が長い。水が飲みたい。君が好きだ! ぼくはウナギ? ~「は」「が」は主語ではない!
へ、に
これも悩ましいです。
「学校へ行く」のか
「学校に行く」のか?
どちらでもまちがいではありませんが、おじさんは「に」のほうを使います。
「に」はゴール地点がはっきりしている場合で、「へ」は方向だけでゴールがない場合に使う傾向があります。
「東へ行く」といった場合には、ゴール地点がなく地の果てがなければ永遠に「東へ向かって行く」意味合いが強くなります。
「東の方へ」もおなじです。
外国語にもどっちでもいいがある
ドイツ語にもgernとgerneどっちでもいいというのがあって、
「じゃあどっちなの?」とおじさんは思うんだけど、どっちでもいいんです💦
ドイツ人は今「gern」と言ったか、「gerne」と言ったか覚えてないでしょう。
尊敬、敬語
あくまで文法上つくれるということで
「先生がお食事を食べられる」
という文章を作りました。
これは間違いではありませんが、どうもしっくり来ません。
じっさいには「食べる」を活用するのではなくて、べつの単語を使います。
「召し上がる」といいます。
これだけで敬語なので、「お召し上がりになる」は二重敬語ですが、一般的に使われる傾向にあります。
食事を勧めるときに「どうぞお召し上がりください」とはいっても、
「食べられてください」とは言わないように。
~されてください (けっして使わないでください)
たとえば「ご確認ください」または「確認してください」でいいのに、
「ご確認されてください」というフレーズをよく見かけるようになりました😓
けっして使わないでください!
おなじ単語や言い回しで別の意味がある訳
そりゃあもう音や言葉には限界があるということです。
人間が出せる音、聞き分けられる音の数は知れています。
だから、それ以上ちがう単語や言い回しを作れないんです。
ヨーロッパの言葉も
スペイン語をはじめとするロマンス語や、ドイツ語は1、2、3人称の単数、複数があるので、動詞が6通りに変化します。
それが現在形、過去形、その他でそれぞれ6通りずつあるので、スペイン語では1つの動詞について60通りくらいの変化を覚えなければなりません💦
しかし、じっさいには1人称と3人称が同じ形だったりします。
だって、そんなに作れないもの。
日本語なんか人称で変化しないけど、だれがしゃべってるのか、だれがしているのかわかりますよね。
たまに「それ、だれが言ってるの?」と混乱することもあるけど。
ドイツ語の冠詞は男性、女性、中性があって、日本語の「てにをは」のように変化するのですが、しょせん球数がかぎられているので同じ形が複数出てきます。
また彼らと彼女がおなじsieで、丁寧な2人称はSieとか、「あなたがたが」と「彼女の」と「彼 (彼女) らの」がおなじihrとか、そんなに単語をつくるのに困るなら、わざわざ複雑な人称変化するなよ!といいたいです。
おかげでドイツ語学習者には悩みの種です。
スペイン語の可能形 (可能法、過去未来形など学者によって呼び名がちがう) など、「過去」のことも表せば、「未来」のことも表す。
さらに「丁寧な依頼」にも使われます。
「どれなの?」と思うけど、使われる状況でわかるんですよね。
丁寧な依頼とは、
「もしかして、差し支えなかったら、嫌じゃなかったら、僕とデートしてくれたり、お食事しちゃったりなんかしてくれないかなあ~なあんちゃってえ😋」みたいな仮定の意味をふくんでる感じでしょうか。
母語話者は文法など考えていない!
これは日本人にかぎらず、世界中のあらゆる言語を話す人たちにとっておなじことで、しゃべるときに文法など考えていません。
わたしたち日本人が外国語を習うときも、おなじ単語や言い回しなのに、そのときによって意味がちがうことがあり「なんで?」と思うことがあるけど、「食べられる」とおなじだと思ってください。
わたしたち日本人にとっての外国人が話す外国語も、かれらは生まれたときから、朝から晩までその言語にどっぷり浸かって、そのときの場面や、使われる単語の組み合わせによって文法抜きに意味がわかるのです。
文法は重要
ただ、聞いて覚えられるのはせいぜい2歳くらいまで、つまり母語の言語体系が構築されるまでで、1つの母語が脳に構築されると、外国語も母語の音と単語に当てはめてしまうのでもはや聞くだけで覚えるのはムリです。
いわゆる「空耳」です。
外国語。聞いて覚えられるのは、赤ん坊のうちだけ! (舌の位置)
なのでおじさんは外国語を習得するのに、文法は必須と考えています。
それにがんじがらめになってはいけないけど、「聞き流すだけで覚えられる」なんてのはナンセンスです。
「聞き流して」いるのは、そのまま「聞き流されて」しまいます。
それは意味のある言語ではなく、ただのBGM、風や虫の声とおなじです。
敬語 honorific word ~ 日本語
やまとことば ~ 一覧
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