方向・場所をあらわす「に」「へ」「で」のちがい ~ 日本語

ni de に と で

「方向」「場所」「ちがい」

 

ni de に と で

「に」と「へ」

動詞

行く、向かう

に (方向。目的地・終点がある)

レストランに行く。
→レストランに着いた。
今、レストランにいる。
目的地・終点にいる。

駅に向かう。
→駅に着いた。
今、駅にいる。
目的地・終点にいる。

会社に勤める。
学校に通う。
なども「行く」とおなじように「移動する」イメージがありますね。

方向を表す「に」は「へ」に置き換えることもできます。

へ (方向。目的地・終点がない)

レストランへ行く。
駅へ向かう。

「へ」に置き換えることもできますがちょっと座りが悪いです。

「へ」はどちらかというと「漠然とした方向」だけで目的地がないときにつかいます。

東へ行く。
→果てはない。終点はない。目的地はない。
東はどこまで行っても東。

西へ向かう。
→同上

駅の方へ行く。
→「~の方」なので「方向」は駅だが、目的地は駅ではない。「駅の方」にある喫茶店かもしれないし、図書館かもしれないし、ただの散歩かもしれない。

「どちらへ?」
「ちょっとそこまで」

現代では「に」と「へ」の区別はなくなっています。
おじさんは「に」をつかう派です。

外国人の初心者には「に」で統一したほうがいいでしょう。
でないと「に」と「へ」のちがいを説明しなければならなくなります。
日本人でさえわかってないのに。

また、「どっちでもいい」は初心者を困らせます。
「で、じっさい、どっち?」

外国人向けの教科書では、移動しない場合は「に」、移動する場合は「へ」をつかう傾向にあります。
外国人にとっては、おなじ「に」が両方の意味を持つのは混乱のもとになるからでしょう。

言葉とは曖昧なもので厳然たる規則があるわけではなく恣意的といわれるゆえんです。
また言語と言語は1対1ではないので、言葉の変換をするときにはそのことを理解していなければなりません。

日本人でも「に」をつかう人と、「へ」をつかう人がいるのでどちらが正解とは言えません。
でもちがいは何か?というと上で説明したようなことです。

英語では at と to はちがうものですが、面白いことにドイツ語では日本語とおなじようにおなじ前置詞 (日本では後置詞 / 助詞) で両方の意味を表します。
zu (英 to, at), in (英 in, into) など。
ドイツ語の zu は日本語とまったくおなじで移動するとき、しないときどちらにもつかいます。
文脈やつかわれる動詞と、ドイツ語の場合は3格、4格で判断します。

ドイツ語 ~ 3格=動かない。4格→動く。

「に」と「で」

場所をあらわす助詞に「に」と「で」があります。

に (存在)

「に」は「存在」「状態」を表します。

ただ、「そこにある」だけです。

動詞

いる、ある、住む
「に」をつかう動詞は少ないです。

家にいる。
そこにある。
岡山に住む。 (ただし、ふつうは「住んでいる」といいます)

で (動作)

「で」は「動作」を表します。

その場所で何かをします。

動詞

食べる、飲む、歌う、泳ぐ、勉強するなど、何でもござれ。
上の特殊な動詞をのぞいて「で」だと思っていればいいです。

レストランで晩ごはんを食べる。
バーで酒を飲む。
カラオケボックスで歌う。
プールで泳ぐ。
(なぜかカタカナ語ばかり💦)
学校で勉強する。

「住む」と「暮らす」

岡山住んでいる。

岡山暮らしている。

おなじ意味なのに「に」と「で」を使い分けます。

上の説明で「に」は「存在」と書いたけど「住む」は「存在」なんでしょうか?
「いる」に近い、または「状態」に近いとも言えないことはありませんが。

一方、「で」は「動作」をすると書いたけど、「暮らす」は「動作」なんでしょうか?
「食べる」や「泳ぐ」のように動作はしませんね。

・暮らす

強いて言うならもともと「暮らす」は他動詞なので目的語を取る。
自動詞は「暮れる」ですね。

日が暮れる (自動詞)
日を暮らす (他動詞)

この「日を」という目的語が省略されて「住む」とおなじように自動詞としてつかわれるようになったけど、その場所での動作のニュアンスが残っているという考えもできます。

つまり、もともとは
「岡山で毎日を暮らす」と言っていたということです。

・住む

ふつうは「岡山住む」ですが、副詞句がはいると「」に変わることがあります😮

例:
岡山ログハウスに住んでいる。

この場合、「住む」という動詞は「ログハウス」のほうと結びつきが強いと考えられます。
「岡山に」住むということより、「ログハウスに」住むことに視点があり重要であるということです。

副詞句でもつぎの例では「に」です。

例:
岡山1人で住んでいる。

この場合、「住む」という動詞は「岡山」のほうと結びつきが強いと考えられます。
1人では省略してもあまり意味が変わりません。

・またこれらはふつう「ている」形をつかいます。

「岡山に住む/住みます」「岡山で暮らす/暮らします」とは言いません。

現在の状態ではなく、これから未来の予定の場合は、上の「勤める」「通う」のように「する / ます」でつかうこともあります。

例:
来年の春から、岡山に住みます。
(ただ、ふつうは「来年の春に、岡山に引っ越します」という言いかたをしますが)

来年の春から、岡山で暮らします。
(これもふつうは使いませんね。まちがいではないけど何かまどろっこしくて気障な感じがします)

「勤める」と「働く」

会社勤めている。

会社働いている。

両方とも、「会社の社員としてそこに属して、仕事をしている」という意味ですが、「に」と「で」を使い分けます。

学校通っている。

これも、中にふくまれる意味は「学校の生徒としてそこに属して、毎日学校に行って勉強している」ということです。

やはり「ている」形をつかいます。

ている形

ここでつかわれている「ている形」は現在進行形ではありません。

現在進行形になるのは「食べている」「飲んでいる」「歌っている」「泳いでいる」など。
文脈によってはこれらの動詞もつぎに述べる「繰りかえし」になることもあります。

習慣・毎日繰りかえすこと・ルーチン

勤めている・働いている・通っているなどは、「今まさにそれをしているところ」ではなく、「毎日繰りかえし、それをしている」ということです。

「働く」はその場所で「動作」するのに対して、
「勤める」「通う」は「方向性」があり、「行く」に近い意味があります。

平たい言いかたでは
「会社に行っている」
「学校に行っている」
となります。

だから、「に」になるんですね。
「存在・場所」の「いる」「ある」とはちがい、こちらは「方向」の「に」です。

また「会社に勤める」「学校に通う」は目的地に移動する動作よりも、「所属」「状態」を表しているニュアンスが強いです。
つまり言いかえると、こういうことです。

「〇〇会社の社員である」
「〇〇学校の生徒である」

となると特殊な動詞は「住む」にかぎられます。

ている形でない場合

会社で働きます。
→これから働く予定。就職が決まった。まだ働いていない。

学校に通います。
→これから通う予定。入学が決まった。まだ通っていない。

だからつぎのような文でつかわれます。

4月から会社で働きます。
→働くことになりました。

この春から学校に通います。
→通うことになりました。

移動と動作。自動詞と他動詞

住む、暮らす、通う / 勤める、働くのちがいはとてもむずかしいです。

「に」をつかうか「で」をつかうかの違いがどうしてあるのかもうすこし追求したいと思います。

「住む」も「暮らす」も動作ではなさそうですが、「住む」が自動詞なのに対して「暮らす」は他動詞だというちがいがあります。
「暮らす」は目的語が取れるんですね。
その日暮らす」のように「を」で目的語が取れるのに対して、「住む」は目的語が取れません。

英語ではどちらも live ですが、「暮らす」はどちらかというと pass a day「1日を過ごす」に近い感覚だと思えばわかりやすいでしょうか。
そこで食べたり、飲んだり、寝たり、家事をしたり、そういうもろもろの「動作」をふくんでいます。
「住む」はただ「家に居着いてる」「存在しているだけ」という感じでしょうか。

また「通う / 勤める (通勤する) 」が「行く」とおなじように「移動・方向」を表すのに対して、「働く」は移動ではなくその場所での「動作」を表します。
通う / 勤める、働くはみんな自動詞ですが「移動」か「動作」のちがいがあります。

「を」と「から」

出発点

「出る」ときはふつう「を」をつかいます。

家を出る。
レストランを出る。

この場合、ただ「その場所を離れる」という意味で、特定の目的地がないかその話では意識していません。
後述するように「目的地」がある場合は「から」をつかいます。

通過点

橋を渡る。
公園を通る。

のように「通過点」にもつかいます。

これらは目的語の「を」ではないことに注意。

から

「狭い空間から」外に出るときにつかいます。
また出発点があいまいなときにつかいます。

穴から出る。
どん底から這い上がる。

このときは、穴を出る、とは言いませんね。
「どん底」は出発点がはっきりしないともいえます。

また後述するように現在の状況が「目的地」と解釈することもできます。

外部の人が建物を見ているときは
「家から人が出てきた」
と言います。

あくまで「出てきた」で「家から人が出た」とは言いません。

から (出発点) →に / へ (目的地)

「から」→「に / へ」というセットはよくつかいます。

例:
学校から (家に) 帰る。

この場合、目的地は家ですが「帰る」といえばふつうは「家」なので言いません。
でも「を」ではなく「から」をつかうのは家が「目的地」だからです。

動詞とセット

意味や文法を考えるより、「動詞とセット」でおぼえましょう。

「に住む」「で暮らす」「に勤める」「で働く」のように。

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