君はまだあの女性を背負っていたのかい? ~現実は事実ではない。ブッダのつぶやき

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「背負う」「過去」「現実」「未来」

君はまだあの女 (ひと) を背負っていたのかい?

2人の若い修行僧が旅をしていました。

川のたもとにやってくると一人の女性が困り果てたように佇んでいました。
増水して橋が流され渡れなくなっていたのでした。

それを聞いた修行僧の1人は「それはお困りでしょう。わたしが背負って運んであげましょう」というと、女性をおんぶして川の中を歩いて向こう岸まで渡りました。

女性はたいそう喜び、感謝して別れました。

2人の修行僧はまた歩きはじめました。

しばらく歩いていると、1人が口を開きました。

「おい、修行僧が女性にふれてはいけないんだぞ」

すると、もうひとりが言います。

「おや? 君はまだあの女 (ひと) を背負っていたのかい? 」

現実世界とは人の心の中にある

現実って、人の体や心の外にある「事実」だと思いますよね。
だから、「外界」とか、自分を取り巻く「環境」ともいいます。

この話では、じっさいには背負わなかったほうの僧が、目の前に女性は「もういない」のにずっと考えていたんですね。

つまり、この僧の心、いや、この僧の世界には「まだ女性がそこにいる」んです。

現実は人の心がつくる

宇宙の誕生から、終焉。
自然界の物理現象、空気や水の流れは唯一です。
これは人智を超えたもので、人が変えることなどできません。

それを人は「現実」とか「事実」とか呼んでるんだけど、じつは自然を「ありのまま」見てはいません。

人は六感でしか、外界を把握することができないんです。

「見る」「聞く」「嗅ぐ」「味わう」「肌で感じる」の五感に、もう1つ「思考、想像」が加わります。

幽霊の正体見たり枯れ尾花

枯れ尾花とは「すすき」のことです。

ほんとうの意味での現実は「すすき」でしかないのに、人は「見た」とおりには「見てない」のです。

そこに過去の「経験」「記憶」「思考」「想像」「妄想」「判断」という心の働きがはいることで、「すすき」が「お化け」に見えてしまうのです。
この人にとっての現実は「お化けがそこにいる」のです。

同じもの、同じ現象でも人の心で違うものになる

人によっても違うし、同じ人でも日によって、場合によって同じものが「違うもの」になってしまいます。

たとえば「雪」

雪国で暮らす人にとっては「厄介なもの」「邪魔なもの」「生活に支障をきたすもの」「雪かき」「冷たい」「辛い」ものです。
ふだん、都会にいてたまにスキーしに行く人にとっては「楽しいもの」「好ましいもの」になります。
ところが同じスキーヤーでも、急にゲレンデが吹雪になったり、帰りに車がスタックして雪かきをしたり、手で車を押したりしなければならなくなると、「冷たい」「イヤなもの」場合によっては命を奪うかもしれない「恐ろしいもの」にさえなります。

雪は何一つ変わっていません。

変わるのは「人の心」です。

雨もそうですね。
たいていの人は雨は嫌いです。
でも、農作物には雨が必要です。
毎日、晴れだといいなといいながら、雨が降らないと水がめが空になり、人は「雨降らないかな」と言い出すんです(^^)

すでにないもの、はじめからないものでさえ現実になる

上の修行僧の話もそうだけど、もう目の前に女性はいないのに、「思い出す」「想像する」ことによってこの僧にとっては「今ある現実」になってしまうのです。

犬が嫌いな人、吠えられたり、噛まれたりした経験があると、「思い出すだけで」いつでも、どこでも、何度でも、恐怖感や嫌悪感がよみがえり、アドレナリンが放出され、心臓の鼓動が早くなり血管は収縮して血圧が上がり、震えたりもします。

また、はじめからいない「お化け」でさえ、いると思えば、見えたと思えば、その人にとっては現実になります。

これはうまく使えば、「楽しかったこと」「自分の好きなこと」などを想像することでリラックスして安らかな気持ちになることもできるのです。

ただこれも、すでに終わった、今はもうない「過去の思い出」に耽ったり、反対にありもしない「未来の妄想」をして、今をおろそかにしてはいけないとブッダは言ってますが。
「あの頃はよかったな」とか「あの頃にもどりたいな」とか「こうなったらいいのに」というのはむしろネガティブな考えですね。

「こうなったらいいのに」と思って、それを実現するには何をすればいいか考え、それを今「実行」するのはポジティブでいいことです。
夢見ているだけ、想像というか、妄想してるだけではダメです。

今ここ。あるがまま

「禅」とか「瞑想」とか修行した人しかできない、しちむずかしいものと思われがちですが、その心は「今ここに集中」することに他なりません。

「過去」をふりかえり嫌なこと、辛いことを思い出しては不快になり、
「未来」を案じて、不安、心配にさいなまれ、
「今ここの現在」をおろそかにするのはやめましょう。

過去は忘れ、未来を案ずることなく、今ここでできることを精一杯やる。

悩みや不安はほとんど「過去」か「未来」にある

ブッダの目指したものは、「過去」に連れ戻されては悔やみ、「未来」を想像しては不安になるのをやめて、「現在」にもどってきて「今ここ」に集中することです。

マインド・フルネス

最近はマインド・フルネスなどという言葉が聞かれるようになったけど「今ここに集中」するということです。
どうも日本人はカタカナ英語に弱いようですね(^_^;)
まあ、考え方、言いたいこと、やってることは同じなのでそれでいいんだけど…

瞑想もメディテーションというと、なんか「新しい? 」「カッコイイ? 」と思うのかもしれないけど「単なる英語」です(^^)

気づく。「今ここ」にもどってくる

ちょっと暗い気持ちになったり、否定的な感情に囚われたとき、気づいてください。

あなたは「過去」の何かを思い出しては悔やんだり、あるいは怒りがよみがえっているか、「未来」を案じて不安をいだいているかのどちらかです。
それに気づいて、何度でも「今ここ」にもどってきてください。

今、あなたの目の前に「苦痛の種」は何もないことに気づくことでしょう。

ブッダ
君はまだあの女 (ひと) を背負っていたのかい?

こちらでも瞑想、禅について書いてます↓

瞑想~禅~集中 (今ここ)。マインド・フルネス

ブッダの話は今なお「新しい」です。そして、現実的です。

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