仮定法現在・過去・過去完了 could, might, should, would

subjunctive 仮定法

「仮定法」「subjunctive mood」「conditional clause」

はじめに

外国語を学ぶに当たっていちばんむずかしいのが仮定の表現です。
これは日本語も同様で、日本語には
「すると、すれば、なら、たら、だったら」などがあり、どちらでもいいものと、これしか使えないというものがあったりして、じつはとても複雑です。
もちろん日本人はだれもそんなことを考えずにつかっています。

たとえばこんなのはどうですか?

ボタンを押すとドアが開く。
ボタンを押せばドアが開く。
ボタンを押したらドアが開く。

あなたはどれをつかいますか?
このちがいを説明できますか?
できないですよね😄

英語の仮定の表現もとてもむずかしくておじさんもまだ完全に理解していません。
だから、その一部だけを書きます。

仮定の表現がむずかしいということは、取りも直さず、仮定の表現が自由に操れればその言語をマスターしたと言っても過言ではありません。

確信の度合い

could, might, may, can, should, ought to, would, will, must

左がいちばん弱く、右に行くにしたがって確信度が高くなります。
が、ネイティブでもはっきりわかってないし、人によってもつかう言葉が変わるでしょう。
あくまで目安です。

could も might も日本語では「かもしれない」になってしまいます。
日本語では仮定についてそこまで細かく分けていないからです。

if (従属節) の中の動詞の形

現在形。過去形。過去完了形のどれかです。

ふつうの仮定 (可能性がある)

ふつうの仮定の場合は悩まず現在形をつかいます。
むずかしく考えずにそのまま。
ただ、後ろの可能性の部分には could, might, should をつかいます。

If it isn’t raining, I could go for a walk.
If it isn’t raining, I might go for a walk.
If it isn’t raining, I should go for a walk.

もし雨が降っていなければ、散歩に行けるかもしれない。 (可能性)
もし雨が降っていなければ、散歩に行くかもしれない。 (可能性)
もし雨が降っていなければ、散歩に行くべきだろう。 (当然)

could, might, should はそれぞれ、can, may, shall の過去形ですが、このつかいかたの場合は過去ではなく現在・未来の可能性を表しています。

例文が全部 ing になってしまったけど、もちろんふつうの動詞の原形でかまいません。

If it is sunny tomorrow, we will have a picnic.
もし明日天気がよかったら (晴れたら)、ピクニックに行こう

英語では現在・過去・過去完了をつかっても、日本語では仮定の意味ですべて「~たら」をつかいます。
日本語の「なら」「たら」について知りたい方はこちらをどうぞ。
英語なんか屁でもないくらい難解至極です。

「なら」「たら」のちがい ~ やまとことば

事実はわからない / どうでもいい

現在形をつかうと、「今現在のじっさいの状況はわからない / どうでもいい」ということになります。
上の例文では「今、雨が降っているかどうかはわからない / どうでもいい」ということです。

そして、雨が降る「可能性はある」ということが大事です。

わかりやすく「れば」という日本語にしましたが、「たら」でもいいです。

よくある「明日、雨が降ったら、運動会は中止です」というやつ。
この場合はむしろ「降れば」をつかうと変です。
ていうか、つかいません。

日本語と英語は一対一でかならず呼応するものではありません。

ここで大事なことは「明日雨が降る可能性は現実的にありえる」ということです。

仮定法過去。不可能な仮定 (可能性はない。ありえない仮定)

すでに既成事実があり、それをひっくり返すことはできない仮定です。
現実に目を背けたむなしい仮定です😅

仮定法過去というけど、それは過去形をつかうということで、過去ではなく現在の状況について述べています。
日本語でも未来のことなのに「明日、雨が降ったら」って言うでしょう。

If it weren’t raining, I would go for a walk.

もし雨が降ってなかったら、散歩に行くだろうに。

上の例文とまったくちがうのは「今、現実には雨が降っている」ということです。

だからこの仮定は「むなしい仮定」なんです😅

べつの言いかたをすれば「ありえない仮定」です。
現実を無視した仮定です。

ほかにもいくつか例文を挙げます。

If I were you, I would do that.
もしわたしがあなただったら、それをやるだろう (やると思うよ) 。

If I were a bird, I would fly to you right now.
もし鳥だったら、いますぐ君のもとに飛んでいくだろう… (飛んでいくのに) 。

さっちゃん
キモいわ
ひげおじさん
ほっとけ。誰に言われるかじゃ!

これらの仮定法過去の文のうしろにはかならず「でも、現実にはできない / 不可能だ / 残念だ」という言葉がついています。

仮定法過去では基本的に be動詞はすべて were になりますが、was をつかう人も多いようです。
まあ、すべて were だと思ってたほうがカンタンです。

繰りかえしますが、
現在形:ありえる
過去形:ありえない
です。

wish

if の代わりに wish がよくつかわれます。
wish は「望む」と訳されることが多いけど、じっさいには「不可能な仮定 / 望み」で「もし~だったらよかったのに (でも、現実にはそうではない) 」という意味でつかうことが多いです。

I wish I were a bird.
鳥だったらよかったのに… (でも、現実には鳥ではない。残念だ)

If I were a bird, I would be happy, but actually I’m not a bird.
I’m sorry.
もし鳥だったら幸せだっただろう。
でも現実には鳥ではない。
残念だ。

hope

もし可能と信じて望むなら hope をつかいます。
仮定法過去ではなく直説法現在をつかいます。

直説法とは仮定法や命令法でないふつうの言いかたです。

I hope I’m a bird.
鳥であることを望む。 (ありえないけど、生まれる前なら😄)

仮定法過去完了 (過去についてのありえない仮定)

さあここからがむずかしい。
でもこれはあくまで形の問題です。

仮定法過去は過去に起きてしまったこと、既成事実つまり現在の実際の状況に反して仮定して、現在・未来について言います。

それに対して仮定法過去完了は、起きてしまったことも仮定ながら、その結果どうなったかということもすでに終わったことでどうにもならないことを言います。
つまり従属節 (条件節) と主節が両方とも過去のことです。

仮定法過去:もし~だったら、□するのに。 (~じゃなかったから、□しない / できない)
仮定法過去完了:もし~だったら、□してのに。 (~じゃなかったら、□しなかった / できなかった)

日本語では「~だったら」のところはどちらも「だったら」ですが、英語ではここも形を「古く」します。
時制の一致などが存在する言語だからですね。

現在・未来のことに仮定法過去をつかってしまったので、過去についての仮定はどうしましょう?
困りました。
過去っぽい形にしなければなりません。
現在・未来と区別しなければなりません。

じゃあ過去形より、もっと過去っぽい形をつかうしかありません。
そこで白羽の矢が立ったのが完了形です。
完了形は単純な過去形より「終わってしまった」感を出せます。

従属節 (条件節) :If ~ had done (過去完了)
主節:would have done (willの過去形+現在完了)

さっちゃん
めまいがするわ。さよなら~👋
ひげおじさん
こういうのは文法理論より例文をいくつか覚えたほうがいい

まず現在・未来の形をつくって、それを過去っぽく変形します。

主節が完了形になるので、それに合わせて従属節 (ifの中) も完了形になると考えればカンタン。

従属節 (条件節) :もし~だったら
主節:どうするか

順番が逆のようですが主節が前とはかぎりません。
日本語では、むしろ従属節 (条件節。もしも) が前で、主節は後ろの文しかつくれません。

日本語の例文:
もし鳥だったら (従属節) 、飛んだのに。 (主節) 。
英語の例文:
If I were a bird (従属節) , I would fly (主節) .

でも英語ではこれを逆にすることができます。

I would fly, if I were a bird.

意味はおなじですが日本語では不可能な語順です。
英語でどちらの語順で書いてあっても日本語では
「もし」からはじめなければなりません。

飛んだのに、もし鳥だったら。
と言ってもわからないでもないけど、日本人はそういう言いかたをしませんね。

日本語の会話では、あとから条件を付け足すときにたまにこんな言いかたをします。

「何がやりたい?」
「う~ん。海外旅行に行きたいな。もしお金があったらね」

これは従属節 (条件節) が後ろに来る形です。

さて英語にもどして例文をいくつか出しましょう。
現在・未来の仮定の形から、過去の仮定に形を変えます。

例文

現在・未来の仮定 (仮定法過去)

If I knew about the party, I would go.
もしパーティのことを知ってたら、行くのに。 (現実には知らないし、行かない) →

過去の仮定 (仮定法過去完了)

If I had known about the party, I would have gone.
もしパーティのことを知ってたら、行ったのに。 (現実には知らなかったし、その結果行かなかった)

if文 (従属節・条件節) が仮定法過去の knew から、仮定法過去完了の had known に変わります。
主節の現在形 go は、現在完了の have gone に変わります。

これはあくまで文法用語で完了という用語にはあまり囚われないでください。
より過去っぽくしたいので、

knew→had known
go→have gone

にして階層を1つ過去に下げたと思ってください。

完了形として考えると作文に時間がかかりすぎるので、
If ~ had p.p. ,
would have p.p.~.
という定型で覚えてしまいましょう。
この部分の形は変わりません。

p.p.=past participle 過去分詞

なんで過去形の went をつかわないの?
助動詞 would は動詞の原形しか取れないので、would went とは言えないんですね。
苦しまぎれに現在完了でお茶を濁したと思ってやってください。

日本人でも英語圏の人でも文法を考えながらしゃべっていません。

あなたがふだん何気なくつかっている日本語。

「明日雨が降ったら、運動会は中止です」

明日のことなのになんで過去形なの?と悩む人はいないでしょう。
「明日雨が降るなら」という人はいません。
「明日雨が降る」という人もいません。
「明日雨が降れ」もつかいませんね。

でも外国人学習者は大いに悩みます。
Why Japanese!? なんでやねん!?

日本人も知らずに仮定法過去のようなものをつかってるんですよ。
ただ日本語の場合はありえない仮定ではなく、単純な仮定ですが。
明日雨が降る可能性はいつでもありますから。

英語圏の人もそんなことは考えてしゃべっていません。
ただ外国人学習者 (ここでは日本人) が外国語 (ここでは英語) を習得するには文法的なアプローチが必須です。
英語圏の学習者が日本語を習得するときにもおなじことが必要です。

聞いただけでただなんとなく覚えるのは不可能です。
それができるのは赤ん坊だけです。
聞き流すだけで覚えるのは不可能です。
ちなみに赤ん坊は聞き流しているのではなく、めちゃくちゃ聞いてます。
自分の世界にはいって遊んでいるようでも、耳はダンボのようになって聞いてます。
それから大人の行動を穴のあくほど見ています。
気をつけてくださいね😄

子どもが「このやろう」なんて言葉を吐いたら、それはあなたが「このやろう」という言葉をふだんからつかっているからに他なりません😅
子は親の鏡というでしょ。
オウムやインコがとんでもない言葉をしゃべることがありますが、それもすべてあなたの言葉ですから。

発音だけでなく、文法的な組み立ても、聞いただけで覚えられるのは赤ん坊だけです。

赤ん坊は言葉を覚えるのが死活問題。
そしてもう1つ、1つの母語を習得してしまうと人間はすべて母語で考えて、母語に当てはめてしまうのでそのままでは外国語を習得できないんです。
母語が外国語の習得を邪魔してしまうといえばいいでしょうか。

外国語。聞いて覚えられるのは、赤ん坊のうちだけ! (舌の位置)

ほかの例文

If he had studied harder, he would have passed the exam.
もし彼がもっと一生懸命勉強していたら、試験に合格していただろう
(現実には勉強しなかったから、合格しなかった / できなかった)

If they had left earlier, they would have avoided the traffic jam.
もし彼らがもっと早く出発していたら、渋滞を避けられただろう
(現実には早く出なかったから、渋滞を避けられなかった)

If I had brought an umbrella, I wouldn’t have gotten wet in the rain.
もし傘を持ってきていたら、雨で濡れなかったのに
(現実には傘を持ってきていなかったので、雨で濡れた)
この文だけちょっとトリッキーですね。
もとの文が wouldn’t「濡れなかった」と否定なので、現実はその反対、つまり「濡れた」んです。

If she had had more time, she would have traveled around the world.

If you had told me about the problem, I would have helped you.

If they had known about the traffic jam, they would have taken a different route.

If he hadn’t forgotten his passport, he would‘ve flown to Paris yesterday.

If I had realized it was your birthday, I would‘ve sent you a gift.

would’ve=would have

最後の例文では it was と時制の一致を忘れずに。
ただし日本語ではこう言います。

もし君の誕生日と知っていたら、プレゼントをあげたのに。

日本語では「だった」と言わないことに気をつけましょう。
最近、英語の影響で日本語がおかしくなりつつあります。
英語の文法や理論を日本語に当てはめないでください。
英語はけっして世界標準ではありません。
数ある言語のうちの1つにすぎません。
ただ、かなり変な言語ですが😄

have が過去完了になると had had です。
奇妙に見えるけど、もちろん前の had は助動詞、後ろの had は動詞です。
はじめは空で言うのはむずかしいので、紙に書いてから読みましよう。
これはもう数をこなすしかありません。

今日はここまで。

わたしは日本語教師をしています

プロフィール・レッスン予約はこちら。
表示名はToshiです。

https://www.italki.com/teacher/8455009/japanese

さっちゃん
わたしはさっちゃんです!watashi wa Sacchan desu!
ひげおじさん
わしはひげおじさんじゃ!washi wa hige-ojisan ja!

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