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「間 (あいだ) に」「うちに」
はじめに
日本語教師をやっていると、外国人生徒はいろんなまちがいをしますが、中でも気になるトップクラスの言葉が「あいだに」です。
かれらはとてもよくこの言葉をつかいます。
日本人はほとんど「あいだに」はつかわず、「うちに」をつかいます。
言い換えについては煩雑になるので別の記事に書くことにして、ここでは単純にその意味と使い分けを書くことにします。
間 (あいだ)
わざわざフリガナを書いたのはおなじ漢字で「間 (ま) に」という言葉もあるからです。
意味:
ある時間内「ずっと」その動作や状態が続いている / 続いていた。
文法:
動詞 (ている形) +間
名詞の+間
例:
試合の間、ずっとテレビに釘付けだった。
お母さんが出かけている間 (は) 、家から出ないでね。
→お母さん出かけるから、その間ずっと家から出ないでね。
継続の意味でしばしば「ずっと」とセットで使われます。
英語圏の生徒がつかいたがる、いわゆる while, during です。
それはその動作や状態が続いているからです。
例:
お母さんが出かける間✕ (外国人学習者がよくつかってしまう形)
お母さんが出かけている間◯
間 (あいだ) に
意味:
ある時間内にある「出来事」「事件」が起きる / 起きた。
文法:
動詞 (ている形) +間
名詞の+間
例:
試合の間に、バイクが盗まれてた。
寝ている間に、泥棒がはいったみたいだ。
休みの間に、バイクのメンテをしておこう。
しばらく見ない間に、大きくなったね。
(ふつうは「うちに」を使いますが、それはまた別の記事で)
それはその動作や状態が続いているからです。
例:
寝る間に泥棒がはいった✕ (外国人学習者がよくつかってしまう形)
寝ている間に泥棒が泥棒がはいった◯
試合の間に、バイクが盗まれた。
ともいえますが、日本人は「ている形」のほうを使います。
単純な過去形はその時間を指すのに対して、「ている形」の過去形「ていた」はすでに動作が終わり、「その状態が続いている」ニュアンスを持ちます。
また「ていた / てた」と「ている形」の過去にすると、「今、発見した / 気づいた」というニュアンスになります。
おもちゃが壊れた。 (今、壊れた。 / あるいは過去のある瞬間のできごと)
おもちゃが壊れてた。 (使おうとしたら、壊れていることに今、気づいた)
寝ている間に泥棒がはいった。
というと単純な叙述。
寝ている間に泥棒にはいられた。
と受身にすると、いわゆる「迷惑の受身」感を醸し出せます。
うちに
漢字で書けば「内に」です。
ある時間内という意味です。
時間感覚としては「あいだに」とおなじです。
上の例文のようにどちらも使えるし、意味はおなじです。
文法:
動詞 (辞書形・ている形) +うちに
名詞の+うちに
ちがうのは次の例です。
前に、までに (タイムリミット)
「タイムリミット」があるということです。
意味:
好ましくない出来事が起きる「前に」 / 「それまでに」
例:
雨が降らないうちに出かけよう。 (=雨が降る前に。雨は嫌なこと)
=晴れてるうちに出かけよう。 (これはこの先「雨が降る」ことを暗示しています。そうでなければ「うちに」は使いません)
生きてるうちにいろんなことをやっておこう。 (タイムリミットは「寿命」「死」です)
お母さんが出かけてるうちにゲームをやろう (お母さんが帰ってくるとできないからです😄)
変化
ている+うちに→変化
これが「うちに」の特筆すべき意味と使いかたですね。
ある時間内に「動作」「出来事」「事件」があるのはおなじなんだけど、とくに前後で「変化」があるとき。
またその「変化」が瞬間的な動作ではなく「徐々に」変わっていく意味合いを出せるのは「うちに」だけです。
だから、「うちに」の前は「ている形」で動作が継続している言葉がはいります。
例:
テレビを見ているうちに寝てしまった。
(「寝た」というのは文法上は瞬間的な動作だけど、とつぜん倒れることはなく、ふつうはすこしずつ船を漕いで眠りの世界にはいっていきます)
テレビを見ているうちにだんだん眠くなってきた。
これがとてもよく使われるパターンです。
このように「だんだん」とか「すこしずつ」がセットで使われます。
そして最後には寝てしまうのですね。
例2:
毎日、練習しているうちに、すこしずつできるようになってきた。
毎日、練習するうちに✕
毎日、練習する間に✕ (外国人生徒がよくつかう文型です)
これも変化だけど、ある日突然ではなく、「すこしずつ」上達していくのです。
「あいだに」に置き換えると、まちがいとは言い切れない、意味もわかるけど、気持ち悪いです😅
外国人生徒にはその通り言います。
「まちがいとは言えないし、意味もわかるけど、日本人はそう言いません」
「自然な日本語では、 (ている) うちにと言います」
これでだいたいかれらは納得します。
かれらは「自然な日本語」に憧れているので😄
言葉とはこういうものです。
日本人が英語を話すときもまったくおなじで、辞書にも載ってるし、文法的にも正しい。
でもネイティブはその言いかたはしない、ということがたくさんあります。
「あいだに」と「うちに」のちがい
これはほとんどおなじで、どちらを使ってもいい場合もあります。
例:
知らない間にバイクが盗まれてた。
知らないうちにバイクが盗まれてた。
これはどちらも「ある時間内」で「いつかわからない」あるいは「いつか」はこの話題では重要ではないときにその出来事があり、現場は見ていないけどあとで発見した、気づいたということです。
この例文では「バイクが盗まれた」ということが重要なので、「いつか」は補助的な意味しかありません。
だから「知らないうちに」と言ってるんです。
ほとんどの日本人は、どちらでもよければ「うちに」のほうを使うでしょう。
名詞の種類がちがう
決定的なちがいとしてこれがあります。
一般名詞の+間 (に)
例:
試合の間に◯
試合のうちに✕
日本に滞在の間に◯
日本に滞在のうちに✕→日本に滞在しているうちに
ただし、これは例文として無理やり挙げたもので不自然です。
ふつうはこう言います。
試合中 (に) ◯
日本に滞在中 (に) ◯
状態・ステータス・時を表す言葉+うちに
例:
今のうちにやっておこう
独身のうちに海外旅行へ行っておこう
学生のうちに好きなことをやっておこう
→である+うちに
これらは「である (状態) 」に言い換えられます。
独身であるうちに海外旅行へ行っておこう。 (結婚で終わる)
学生であるうちに好きなことをやっておこう。 (卒業で終わる)
やはりタイムリミットがあります。
もっと説明的な言いかたをすればこうです。
独身という状態であるうちに…
(=独身であるという状態のうちに…)
これが「試合」には使えない理由です。
「試合」は状態ではないからです。
試合のうちに✕
試合であるうちに✕
試合という状態であるうちに✕
「今のうち」も近い将来「今の状態・条件」が終わることを意味しています。
あいだに:瞬間的な出来事 / うちに:すこしずつ変化
知らない間に (いつのまにか) 大きくなっていた。
見る見るうちに (目の前で) 大きくなっていく。
ただ、
知らないうちに大きくなっていた。
とも言えます。
というより、むしろこちらのほうが自然です。
ふつうの日本人はこちらをつかいます。
だから「あいだに」の例文が出てこないんですね。
自分に関係があるかどうか
また、
「あいだに」は自分に関係ない事柄や、一般的な事柄の説明をしている。
「うちに」のほうは自分の人生や行動に直接関係があるというニュアンスがあります。
例:
知らない間に、ビルが建ってた。
知らないうちに、タンス預金がなくなっていた。
むすび
「あいだに」はかなりむずかしい問題でした。
なぜかというと、ふつうは使わないからです。
自分でも例文を考え、ネットでも探したけど、「あいだに」という例文は全然出てこないんです。
出てくるのは、日本語教師用の無理やり不自然例文ばかりです😄
つまり「使わない」ということです。
出てくるのは時間ではなく空間的な「日本とアメリカの間」というものばかり。
こんなに複雑でややこしいのに「あいだに」はN4で出てきます。
それに対して「うちに」はいろんなつかいかたと意味合いがあるので、さらに上級でN3で登場します。
ふつうは「あいだ (に) 」は使わず、ほかの言葉を使うということに関しては別の記事に書きます。
わたしは日本語教師をしています
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