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「黄泉」「よみがえる」「見るな! 」「3枚のお札」
黄泉帰る (よみがえる)
「黄泉」とは「あの世」「死者の国」のことです。
漢字で「蘇る」「甦る」と書いて、「よみがえる」と読みますが、「黄泉の国」から「この世に帰る」という意味なんですね=^^=
イザナギはイザナミをさがしに黄泉の国へ
さて、火の神カグツチを産んだことで死んでしまったイザナミを思いつづけ、イザナギは黄泉の国へイザナミを探しにいきます。
御殿にたどり着くと少し開いた戸口でイザナギはイザナミと再会します。
イザナギはイザナミに「いっしょに帰ろう」といいます。
黄泉戸喫 (ヨモツヘグイ)
でも、イザナミはヨモツヘグイをしてしまったので帰れないといいます。
ヨモツヘグイとは「黄泉の国のものを食べた」ということです。
とはいうもののイザナミも帰りたいので、黄泉の国の神さまにお願いすることにしました。
「黄泉戸喫」という表記が一般的なようですが、意味からすると「黄泉竈食ひ」のほうがより正確な表記のようです。
「へ」とは「竈 (かまど) 」のことで、「黄泉の国の竈で煮炊きしたものを食べる」という意味です。
「へ」だけでは短すぎて同音異義語もたくさんあるので、「へつい、へっつい」ともいいます。
「へつい」は「竈つ霊 (へつひ) 」または「竈つ火 (へつひ) 」で竈の神さま。
「つ」は「黄泉つ」の「つ」とおなじで現代語の「の」に当たります。
もちろん「竈」を食べるわけではなく、「竈で煮炊きしたもの」という意味です。
現代でも、「鍋を食べる」というけど、鍋は食べないですよね✌
見るな!
「神さまにお願いしてくるので、」
「けっして中を見ないでください! 」
といって、御殿の奥にはいっていきました。
「見るな! 」といわれると、よけい見たくなるのは人も神さまもおなじ😄
イザナミがなかなか戻ってこないのでイザナギはしびれを切らし、御殿の中にはいっていきます。
中はまっ暗なのでイザナギは髪に差していた櫛の歯を折って火をつけます。
明かりをたよりに奥にはいっていくとイザナギはついに見てしまいます!
イザナミの姿
イザナミは腐った死体となりウジがわき、体には8つの雷神が取りついています。
見たな!
「よくもわたしに恥をかかせてくれたわね! 」
イザナギは恐れおののいて逃げ出します。
黄泉醜女 (ヨモツシコメ)
ヨモツシコメという黄泉の国の恐ろしい女たちがたくさん追いかけてきます。
① 頭に巻いていたつる草を投げる。
瞬く間につる草からブドウが生えてきて、ヨモツシコメがブドウを食べてるあいだに逃げます。
でも、あっという間に食べ終わりまた追いかけてきます。
すぐ追いつかれてしまいます。
② 頭に差していた櫛の歯を折って投げる。
瞬く間にタケノコが生えてきて、ヨモツシコメがタケノコを食べてるあいだに逃げます。
でも、あっという間に食べ終わりまた追いかけてきます。
さらに、ヨモツシコメだけでなく、8つの雷神と1500の黄泉の軍勢が追いかけてくるではありませんか。
イザナギは十拳剣 (とつかのつるぎ) を後ろに振り払いながら逃げます。
十拳剣 (とつかのつるぎ) は古事記になんども出てきますが、たんに「大きな剣」という意味でおなじものではないようです。
この剣はアメノオハバリで、カグツチを切ったものです。
また、後ろ手で何かをすることは「呪う」ことで「後手 (しりえで) 」といいます。
海幸山幸の話にも出てきます。
黄泉比良坂 (ヨモツヒラサカ)
ヨモツヒラサカが見えてきました。
これを登りきれば元の世界にもどれます。
③ 桃を投げる。
坂の下に桃の木がありました。
イザナギは夢中で桃を3つ取ると後ろに投げつけました。
すると、どういうわけかみんな逃げていきました。
イザナミが追いかけてくる!
軍勢は去りましたがウジのわいたイザナミが追いかけてきます。
千引 (ちびき) の岩
イザナギは坂を登りきりこの世にもどると、1000人がかりでないと動かせない「千引の岩」という大きな岩で黄泉の国の入口をふさぎました。
人が生まれて死ぬわけ
イザナギが岩で入口をふさぐと、岩の向こうからイザナミがいいます。
「わたしは1日に1000人殺しましょう! 」
するとイザナギがいいます。
「では、わたしは1日に1500人産みましょう! 」
もう1つの人が死ぬわけ ~ イワナガヒメ (磐長姫)とコノハナサクヤヒメ (木花咲耶姫)
3枚のお札 (おふだ)
この話は「3枚のお札」の原型になっています。
「3枚のお札」はヤマンバに追われた小僧が3枚のお札をつかって逃げる話です。
- トイレに行きヤマンバが「もういいか? 」と聞くと、お札が「まだだよ! 」と答えます。
やがてヤマンバがだまされたと気づき追いかけてきます。 - 2枚めのお札を投げると大きな川になりヤマンバをさえぎります。
でも、ヤマンバは川の水を飲み干して追いかけてきます。 - 3枚めのお札を投げると火の海になりヤマンバをさえぎります。
でも、ヤマンバは川の水を吐き出して火を消して追いかけてきます。
さいごは和尚さんの知恵で、ヤマンバを小さくして食べてしまうのですが=^^=
オルペウスとエウリュディケ
ギリシャ神話にまったくおなじ話があります。
エウリュディケはオルペウスと結婚してすぐ毒蛇にかまれて死んでしまいます。
オルペウスは死者の国にエウリュディケを連れもどしに行きます。
死者の国の神さまにお願いして連れもどす許可をもらいました。
ただし、
地上にもどるまで「けっして振り返ってはならない」
という条件で。
オルペウスはもうすぐ地上にもどるというところで、思わず後ろを振り返ってしまいます。
エウリュディケは霧のように消えてしまいました。
ソドムとゴモラ
旧約聖書に出てくる話。
ソドムとゴモラは町の名前です。
「けっして振り返ってはならない」
という約束を破り、振り返ったために塩の柱になってしまいます!
黄金のリンゴ。アタランテー
これもギリシャ神話です。
アタランテーという女狩人がいたのですが、彼女と結婚するにはかけっこをして勝たなければなりませんでした。
負ければ結婚はできないばかりか殺されてしまいます。
しかしアタランテーはメチャクチャ足が速い。
まともに競争したら負けると思ったヒッポメネース(メラニオーン)はアプロディーテーに相談して「黄金のリンゴ」を3つもらいます。
そして、勝負のときリンゴを投げてアタランテーが食べてるあいだに逃げて勝ちました。
これも3枚のお札にそっくりですね。
この世にもどったイザナギは?
汚れた体を川で洗い流します。
そのとき3柱の神さまが生まれます。
アマテラスの誕生につづく。
アマテラスとスサノオの誕生 ~ 禊 (みそぎ) ~ 古事記
古事記。日本書紀 ~ 最初の入口。超かいつまんだお話