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「Carpe diem!」「今日を楽しめ!」
アリとキリギリス
キリギリスは夏のあいだずっとバイオリンを弾き人生を謳歌していました。
いっぽうアリは何のためか、誰のためかもわからず毎日エサを集めては巣に運んでいました。
エサを集めているけどそれは自分のためではなく、女王アリや子どもたちのためです。
「アリさん。まいにち遊びもせずに休みもせずに働きつづけて楽しいかい?」
「何をおっしゃるキリギリスさん。いま食べものを集めておかないと冬には食べものがなくなっちゃうよ!先のことを考えておかなきゃ」
そして冬が来る
たしかに冬がやってきてキリギリスは飢えと寒さで死んでしまいました。
いっぽうアリたちはどうでしょう。
たしかに夏のあいだせっせと貯めた食べものがあり、食べるのには苦労しなかったけど、巣の中では相変わらず女王アリと子どもたちの世話で働きづめ。
休む暇もないし、遊ぶ時間もありません。
「ぼくたち何のために生きてるんだろうね?」
「そりゃ働くために決まってるだろう!」
「冬にのんびり過ごすために働いてたんじゃないの?」
「下らないこと考えるな。『むかしから』『みんな』そうやってきたんだから。『みんな』そうしてるだろう。そんなこと考えるのは『おまえだけ』だよ!」
「春になったらまた外に出てエサを集めるんだよね」
「それが生きるってことさ!」
「ほんとにそれが生きることなのかな?」
さいしょに質問したアリは納得できませんでした。
洪水
疑問に思いながらも食べものには苦労しない。
住むところもある。
でも、働きづめのアリたちです。
ある日、巣の中に大量の水が流れこんできて、巣の中のアリたちはみんな溺れ死んでしまいました。
大量に集めた食べものを残して。
何が起きたのでしょう。
巣の上では人間の子どもがアリの巣にジュースをこぼして遊んでいました。
巣の破壊
べつのアリの家でも異変が起きていました。
とつぜんアリの巣ごと地面がほじくり返されたのです。
何が起きたのでしょう。
人間が畑をつくるために地面を耕していました。
アリたちは巣ごと全滅です。
トラクターという機械をつかう人間もいます。
あるいは畑ではなく、そこに家や道路を作るためにほじくり返す人間もいます。
もちろん彼らはそこに蟻がいることなんか微塵も知らないし、気にしたこともありません。
春になって
春になると、まえの年の秋にメスが産んだ卵がかえり、地面の中からたくさんのキリギリスが出てきました。
そして、身のまわりにあるものを食べながらまたバイオリンを弾き楽しく1年を謳歌するのでした。
イソップ寓話
だれでも知ってるイソップ寓話です。
将来のことを考えて備蓄するアリをほめて、遊び暮らして1年で死んでいくキリギリスを愚か者だという話です。
日本人にはとくに受け入れられやすい話です。
「労働は美徳である」という話です。
これは支配階級、搾取側にとっては都合のいい話です。
イソップは奴隷だったので、奴隷としての哲学、奴隷としての処世術を身につけていたのかもしれません。
Carpe diem!
ローマの詩人ホラティウスのことば
直訳すると「今日をつかめ!」
英語にはseize the dayということばがあります。
今日を楽しめ!
意味は「今日を楽しめ!」ということです。
現代の日本人の平均寿命は80歳にもなります。
室町、戦国時代のころは30歳ともいわれています。
先のことを考えてる暇はありません。
働いてるうちに人生が終わってしまいます。
蓄えてるうちに人生が終わってしまいます。
何もつかわないうちに人生が終わってしまいます。
また、ものを貯めこんでも、燃えたり、奪われたりすることも多かったでしょう。
みんな80歳まで生きると思っている
日本人はなんとなく自分は80歳まで生きると思っています。
でも、生まれてすぐ死んでしまう赤ちゃんから100歳を超える人までひっくるめて足して、人数で割っただけの数字です。
ほんとは今この瞬間に死ぬかもない
これはけっして脅しではありません。
どんなに健康な人でも、とつぜん心臓が止まるかもしれないし、強盗に襲われたり、頭のおかしい通り魔に刺されたり、あるいは地震や火事などの災害に巻きこまれて死ぬこともあります。
江戸っ子は宵越しの銭は持たぬ
いろんな説がありますが、江戸は火事が多かったので、金や物を貯めこんでも一瞬で燃えて何もかもなくなってしまうことを身にしみて知っていたからだともいわれます。
明日死なないかも知れない
そうです。
可能性としては、あなたは今この記事を読んでる瞬間に死ぬかもしれないし、100歳まで生きるかもしれません。
きょうお金をぜんぶ使い果たして明日生きてたら明日からの生活に困りますね😅
すこしの備蓄はあったほうがいいでしょう。
でも、30年も先のことを考えて、今日という日をムダに過ごすのは愚かです。
明日死なないかもしれないけど、事故や病気で入院生活を余儀なくされることはおじさんも経験済みです。
せっせとお金をためこんで、さあ海外旅行しよう、スカイダイビングしようと思ったときは、お金と時間はあっても体が動かない可能性が高いです。
心配してたことはほとんど起きない
おじさんも人間はじめてもうすぐ60年になります。
ここではかっこいいこと書いてますが人一倍心配性で、あれやこれや心配していましたが、結論から言うとこうです。
「心配していたことのほとんどは起きなかった!」
まったく予想していなかったことが起きる
その代わり、まったく予想だにしていなかったトラブル、危険、緊急事態にはなんども遭ってきました。
それは予想していないので備えもないし、予防対策もありません。
臨機応変
人生のほとんどはぶっつけ本番でその場で対処しなければなりません。
人生では、予想して準備しておく能力よりも、その場で自分の頭と体をつかって乗り切る能力が必要です。
そして、なるようにしかならん。
自分はできることしかできない、ということです。
うまく対処できなかったとしても、ほとんどの場合、死に至るほどの深刻な問題ではありません。
だから、まだこうして生きています😄
なにごとも程々に
今日お金を使い果たして明日から生活できないのも困りますが、30年、50年先のことを考えて今日という日を浪費するのはもっと愚かです。
自分のために時間をつかいましょう。
人生を楽しみましょう。
せっせと貯めこんでとつぜん災害に見舞われ生涯を閉じるアリにはならないようにしましょう。
キリギリスはバイオリンを弾いてなくても冬が来れば生涯を終えます。
でも、卵を残すのでつぎの年にはまた新しい命が生まれます。
多くの植物も1年で枯れるけど、種を残したり、春になれば地下茎や球根からまた新しい芽が出てきます。