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「は」「が」「従属節」
はじめに
「は」と「が」は外国人にとって永遠の謎です。
もちろん日本人は文法や規則など考えずにつかっていますが、てきとうに使っているわけではなく規則性があります。
それを文法学者は探してまとめて文法と呼んでいます。
外国語を習得するにはかならず文法が必要です。
この話題がいい例で、聞いただけではけっして使い分けができないからです。
いったんまとめたつもりだったけど、また新たな疑問が湧いてきました。
初出の「が」と既出の「は」
これはすでに書きましたがおさらいしましょう。
これが新たな謎の発端です。
初出:話題にはじめて出てきたものは「が」
既出:2回めから、またはすでに知っているものは「は」
これが基本ルールです。
物の本にもえらそうに書いてあります。
わたしもえらそうに書きました。
例:
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがいました。 (初出)
おじいさんは山に柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。 (既出)
ふむふむ。
なるほど。
「が」と「は」が入り乱れる
しかし、その続きを読んで愕然とします。
続き:
おばあさんが洗濯していると、川上から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。😮
おばあさんは桃を家に持って帰りました。
おばあさんが桃を切ると、中から元気な男の子が飛び出してきました。
おじいさんとおばあさんは、男の子に桃太郎と名前をつけました。
なんでやねん。
説明とちがうじゃないか。
どうなっとんのや。
このあとも延々と「が」と「は」が出てきます。
そのときの気分でつかっているのでしょうか?
それともずっとおなじだと飽きるから変化をつけているのでしょうか?
いえいえ、ちゃんと理由があります。
子どもの昔話にかぎったことではなく、おなじ登場人物がずっと出てくる小説や物語を読むとすでに自己紹介が終わった人物が「が」になったり「は」になったりします。
そこでこの文章を分析してみました。
何がちがうのか?
従属節・副詞節の中の「が」
従属節といういいかたが適切なのかどうかわかりません。
文法というのは、じつは文法学者がかってにルールをつくって文法用語をつくるものだからです。
あるていど一般的に認知されている文法用語もありますが、学者によって文法の解釈も分類も名前もちがうことはよくあります。
ここでいちおう定義しておきます。
主節と従属節
主節:「。」で終わる1つの文章の中のメインの文章
従属節:文章の中で主節を補う「状況」「条件」「補足説明」などをする文章
従属節の中は「が」がつかわれるようにそれだけで1つの文章として成り立ちます。
条件を表すので条件節といったり、文全体を補足するので副詞節ともいいます。
英語では前置詞や接続詞、関係詞などでくくられる部分です。
名詞を説明する名詞修飾節も同様です。 (後述)
さて、すでに答えを書いてしまったんだけど、例文を見て解説していきましょう。
従属節の文章
(おばあさんが洗濯していると、) 桃が流れてきました。
必要ない部分は省略しました。
( ) 内が従属節、または副詞節です。
この文章は「と、」で主節に接続しています。
桃が流れてきたときの「付帯状況」を説明しています。
英語では前につくので前置詞といいますが、日本語は後ろにつくので後置詞といいます。
桃についての部分が主節です。
桃ははじめて現れたので「が」でOKです。
そのつぎに出てくる「が」の文章もおなじですね。
(おばあさんが桃を切ると、) 中から元気な男の子が飛び出してきました。
男の子ははじめて出てきたのでやはり「が」でOKです。
主語がおなじときは「は」
さらに変化球です。
日本語はほんとにむずかしいです。
例:
おばあさんは洗濯していると桃を見つけました。
う~ん。
なかなかトリッキー。
この文章ではあくまで「おばあさん」が主語または主題で、桃は主語ではありません。
桃は目的語です。
ここは従属節ではありません。
桃が主語の独立した文章ではありませんね。
桃を見つけたのはだれですか?
そう。
おばあさんです。
おばあさんは
洗濯して、桃を見つけたんです。
洗濯したのも、桃を見つけたのも、どちらもおばあさんです。
この文を前の例文とおなじように分解・解析してみましょう。
おばあさんは (洗濯していると) 桃を見つけました。
「洗濯していると」の部分が従属節です。
従属節の部分は取り払って、
おばあさんは桃を見つけました。
といっても文章として成り立ちます。
それはどんな状況ですか?
「おばあさんが洗濯しているとき」です。
おばあさんが洗濯していると、おばあさんは桃を見つけました。
と言えないことはないけどとても不自然です。
日本人はこんな言いかたをしません。
ほかの誰でもないおばあさんが洗濯していることはわかっているので、従属節の「おばあさんが」は省略して、
洗濯していると、おばあさんは桃を見つけました。
になります。
でも、これも日本語としては不自然です。
主題の「おばあさんは」は先頭に持ってきましょう。
これで、
おばあさんは洗濯していると桃を見つけました。
というふつうの文章になります。
おなじように「は」をつかう例文を出しておきますね。
例:
おばあさんは (お昼になったので、) 河原でお弁当を食べました。
おばあさんは (お腹が空いたので、) 河原でお弁当を食べました。
※ 従属節の中はやはり「が」をつかいます。
おばあさんは (お弁当を食べたら眠くなったので、) 河原で寝てしまいました。
(おばあさんが目を覚ますと、) いつの間にか夜になっていて星が出ていました。
※ ここでなぜ「おばあさんが」になっているかはもうおわかりですね。
やはり ( ) 内が従属節です。
これは日本語の中でトップクラスのむずかしい文法です。
むずかしいけど
「なんだかわからんけど、『が』になったり『は』になったりする」
のではなく理屈がわかっていればすっきりするでしょう。
使いこなせるかどうかは別として。
外国人生徒諸君、
これが考えずに出てくるようになったら、あなたは完璧な日本人です。
がんばってね👍️
名詞修飾節の中の「が」
さて上の内容がわかったら、これは屁でもないです😄
名詞修飾節はその名のとおり、名詞を修飾・説明する文章です。
例:
彼が指輪をくれました。
→これは、 (彼がくれた) 指輪です。
( ) 内が名詞修飾節。
後ろの指輪という名詞を説明しています。
これは指輪です。 (見りゃわかるが😄)
どんな指輪ですか?
彼がくれました。
→彼がくれた指輪です。
例:
ガウディがこの教会を設計しました。
→これは、 (ガウディが設計した) 教会です。
「の」に置き換えられる
名詞修飾節の「が」は「の」に置き換えることができます。
彼がくれた指輪です。
→彼のくれた指輪です。
ちょっと古めかしい言いかたです。
大昔の日本では「が」と「の」の役割が入れ替わっていたことがあります。
「の」を主格、「が」を所有格でつかっていました。
その名残りが「我が家 (わがや) 」などですね。
「私が家」ではなく「私の家」という意味です。
でも現代では単独でつかうとかえって不自然な感じがします。
「が」が重なるのを避ける
この言いかたを使うのはつぎのように「が」が重なって気持ち悪い、または主語がわかりにくいときです。
これが彼がくれた指輪です。
文法的にはまちがいではないけど、気持ち悪いですね。
で、どっちの「が」がこの文の主語なの?
こういうときに
これが彼のくれた指輪です。
というとすっきりするでしょう。
「が」や「の」が重なってしまうことはあって文法的にはまちがいではないし、もちろん意味も通じるんだけど、それを避けるためにべつの助詞をつかったり、文章自体の構成を変えたりすることがあります。
会話では頭に浮かんだことを口からポンポン放りだしていくのでそれはしかたありません。
文字で文章を書くときには、校正できるので助詞や構成を考え直します。


格助詞「は」と「が」と「を」のちがい ~ 日本語
「が」⇔「の」名詞修飾節
象は鼻が長い。水が飲みたい。君が好きだ! ぼくはウナギ? ~「は」「が」は主語ではない!
やまとことば ~ 一覧
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