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「破る」「裂く」「破く」「混成語」「かばん語」
破る+裂く⇒ 破く
そんなバカな、ふざけたことが、と思うけどあるんです。
この3つの言葉は意味も似ていて、お互いにほかの言葉に置き換えることもできます。
例:
紙を破る / 裂く / 破く (どれでもOK)
ボロきれを裂く。
この場合は、破る、破くはつかいませんね。
「裂く (さく) 」と「破る (やぶる) / 破く (やぶく) 」のちがい
裂く
布の例のように、「裂く」のほうは「繊維に沿ってまっすぐに」「2つに」切り離すことをいいます。
また「魚を裂く」のように鋭い刃物でやはりまっすぐに「きれいに」切り離すニュアンスです。
2人の仲を裂く。なかよしの2人を無理やり引き離す。
割く
この漢字をつかうこともありますが、何度も言うように「やまとことば」は1つです。
「時間を割く」のように物理的でない、見えない、触れないものにつかいますが、やまとことばの意味はおなじです。
破る
こちらは紙を破るように、繊維に沿ってまっすぐ2つにではなく「ビリビリに」破るイメージです。
また「壁」のような頑丈なものも破ります。
でも一応、薄いものにつかいます。
「壊す」に近いですね。
だからニコイチで「破壊」という言葉があります😄
これも物理的に物を「破壊」することではなく、「敵の防御を破って突入する」のようなつかいかたがあります。
これもニコイチで「突破」といいますね😄
「記録を破る」も物理的な「破壊」ではなく、見えないもの、触れないものにつかいます。
「100m10秒の壁を破る」なんていう比喩表現もあります。
見えない壁です。
「破る」vs「破く」
どちらもつかえる
紙を破る / 破く
破るだけ。破くはつかえない
ドアや壁を破る。破く×
約束を破る。破く×
記録を破る。破く×
敵の防御を破る。破く×
そのちがいは?
「破く」がつかえるのは紙のように「とても薄くて手で破れるもの」にかぎります。
破くと「ビリビリ」という音が出そうなもの。
もともとある「破る」が万能でどちらにもつかえますが
ドアや壁のように「厚い」もの「手で破れないもの」に「破く」はつかえません。
また「約束」や「記録」のように「見えないもの」「触れないもの」に「破く」はつかえません。
混成語。かばん語
「破く」のような言葉を混成語とか、かばん語などといいます。
portmanteau ポートマントー
ルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」で
slimy (ネバネバした) + lithe (柔軟な、滑らかな) ⇒ slithy (滑らかでネバネバした)
という言葉をつくり、それをポートマントー (両開きの四角い旅行かばん) に2つのものを1つに詰めたように例えたことから。
slithery (滑りやすい) という言葉はあるけど、slithy はありません。
このようにそれぞれの単語の一部をつなぎ合わせてつくった単語のことをいいます。
portmanteau word や blend といいます。
これを訳して「かばん語」としました。
フランス語で
port 英語とおなじ「港」
manteau 英語の coat (コート) いわゆる外来語の「マント」
portmanteau というフランス語もありません。
現代ではこのタイプの旅行かばん自体なくなってきたので死語に近いです。
例
smoke+fog → smog
breakfast+lunch → brunch
Japanese+English → Japanglish (日本語英語。これはおじさんの造語です)
捕らえる (とらえる)+捕まえる (つかまえる) → とらまえる
「やぶく」や「とらまえる」は意識してつくられた混成語ではなく、もともと単なる「まちがい」という可能性のほうが高いようです。
合成語、複合語
混成語に対して、もとの単語の形を完全に残しているものを合成語、複合語などといいます。
動詞の活用形もふくみます。
例
本箱、山桜、書き表す、読み上げる、打ち明ける
日本語にはこの合成語がとても多いです。
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