現代中国語には清濁の区別がない!~ 日本語教師

chinese 中国語

「中国語」「清濁」「日本語」

中国人に日本語を教えるときに気をつけることで、中国語の記事ではありません。

中国人は濁点「゛」をつけない

中国人は、中国人を「ちゅうこくちん」、古代を「こたい」、10時を「ちゅうち (きゅうち) 」のように「濁点 (゛) 」をつけずに発音することがよくあります。

単なるまちがいではなさそうです。

現代中国語には清濁の区別がない!

古い時代には「清濁」の区別がありましたが現在では消えてしまいました。

区別が消えたと言い、濁音が消えたとは言わないのは条件によっては現れるからです。

濁上変去 (だくじょうへんきょ)

声母 (頭子音) が全声字が声にわったこと。
この記事は中国語の記事ではないので説明は省きます。

無声音と有声音

日本では「゛」がつかないのを清音、「゛」がつくのを濁音といいますが、無声、有声とはすこしちがうので説明しておきます。

喉に手を当てる

無声音:喉 (声帯) が振動しない
有声音:喉 (声帯) が振動する

これは自分の喉に手を当てて発音すればわかります。
ただ日本語は「ん」以外はすべて「子音+母音」の組み合わせなのでちがいがわからないかもしれません。

母音はすべて有声音、つまり声帯が振動するからです。

英語の k, p (h), t, s が無声音。
g, b, d, z が有声音です。

日本語では「か ka, さ sa, た ta, は ha,  (ぱ pa) 」が清音で無声音。
「が ga, ざ za, だ da, ば ba」が濁音で有声音です。

厳密に言えば、母音を発音する前の子音の部分です。

「ぱ」は半濁音とよばれますが無声音です。

じゃあ、濁点「゛」がつかなければ無声音かというとそうでもなくて、前述のように母音の「あいうえお」は濁点がつかないけどすべて有声音です。
それから、「な (ん) na, ま ma, や ya, ら ra, わ wa」は「゛」がつかないけど、もともと有声音です。
声帯が振動します。

だから、もともと有声音の文字には「゛」はつきません。
あ゛、な゛、ま゛、や゛、ら゛、わ゛、ん゛はありませんね😄
マンガなどでは「汚い音」「激しい音」につけることがありますが清濁の区別ではありません。

中国語の清濁

日本語とおなじように鼻音の m, n と、そのほかに側面接近音の l, ɺ (ラ行に近いがすこしちがう) は今でも濁音 (有声音) として残っています。

しかし、それ以外の g, b, d, z は無声化して、k, p, t, ts (s ではない) になりました。

語頭の無気音は濁音化 (有声化)する

中国語では声母 (頭子音) といいます。
無気音についてはあとで説明します。

せっかく無声化したのに、g, b, d, z は文字どおり発音することもあるんですね。
これが「濁音がない」のではなく「区別がない」と書いたゆえんです。
ほかにも j [tʃ] → [dʒ] になり、z は正確には [z] ではなく、[dz] になります。

日本語を学ぶ中国人が母語の中国語の規則で日本語から「゛」を取って発音してしまうのはこのためです。
とくに語頭以外の音は無意識に無声化してしまいます。

日本語でもおなじようなことが行われていて、みなさんは知らずに、語頭と「ん」の後ろの「ざ」は [dz]、それ以外は[z] で発音しているんですよ。

中国でも漢語についで話者が多い呉語では、現在でも濁音が残っているそうです。
日本でも西日本では古語の単語や音便が残っているのに似ていますね。

ただ、教育方針あるいは政策で普通話が推し進められてきたため呉語をしゃべる人が減っているようです。

拼音 (ピンイン)

中国語のローマ字表記ですが特殊です。
清音化 (無声化) が起きたことで、英語やローマ字で濁音 (有声音) であるものを無声音で発音します。
表記 [ 発音 ] です。

g [k], b [p], d [t], z [ts]

z は [s] でなくて [ts] であることに注意。

さっちゃん
なんでこんなめんどうなこと。k, p, t, ts をつかえばいいじゃん!
ひげおじさん
k, p, t はべつの音につかうし、ts より z ほうが楽じゃけえ。ドイツ語では z は ts と発音するし。

有気音

k [kh], p [ph], t [th]

変な記号が出てきました。

[h] は声門 (声帯の隙間) から声帯を振動させないで息だけが通る「風のような音」です。
みなさんが真冬の寒いとき、手に「はぁ~っ」と息を吹きかけるでしょう。
あれが h の音です。
熱いお風呂にはいるときに出る声もそうです。

pa なら、子音 p のあとにすぐ母音の a を出すんだけど、
pha だと、p のあとにすぐに a を出さずに、無声音の h を出してから a を出します。

冷たいビール🍺を飲んだときの、あるいは25m潜水したあと浮上したときの「プハ~ッ」みたいな感じです。

引き合いに出して申し訳ないけど、地球ドラマチックのナレーターをしている渡辺徹さんが、この「有気音」でしゃべります。
「~しました」が「~しましたハッ [thaʔ] 」のようになります。
[ʔ] は声門閉鎖音です。
閉鎖音というけど、じっさいには破裂しています。
気になります😅

有気音は、帯気音 (たいきおん) 、気息音 (きそくおん) ともいいます。

Japanese phonetic pronunciation 音声学的な発音 ~ 日本語

無気音

したがって、それ以外の [h] がつかないふつうの音は「無気音」です。

「ち」j, q

これがまた曲者です。
ピンインで j, q は「ち」と発音します。
厳密には j [ tʃ ], q [ tʃh ] です。

ローマ字で書かれたものをピンインのように読んで、「中国人 (chuugokujin) 」を「ちゅうん」、「10時 (juuji) 」を「ちゅ」と発音してしまうのかもしれません。
j [tʃ] は [k] の異音としても捉えられるので「きゅうち (kyuuchi) 」のようにも聞こえることがあります。

日本では「じ」の清音は「し」ですが、中国語には「し」がありません😮
これが大問題です。
j は「ち」であり、有声化すると「ぢ (じ) 」になります。
裏を返すと、「じ」の無声化は「し」ではなく「ち」になります。
「じ」を「ち」と発音する理由はここにあります。

ほかの濁音も、「古代 (kodai) 」なら「こたい (kotai) 」

ただ日本人も知らずに無声化しています。
人間は楽したい生きもの。
言葉の区別ができればなるべく口や舌を動かさずに、声帯もつかわずに話すようになります。

Japanese voiceless sound 日本語の無声音 (化) ~ 日本語

そのほかの中国語の音

そり舌音
zh [ʈ͡ʂ] 「つ (z [t͡s]) 」と「ち (j [t͡ɕ]) 」の中間音。「つ」が歯茎音、「ち」が硬口蓋音でその中間くらいに舌をつける。
sh [ʂ]「す (s [s]) 」と「し ([ʃ] 」の中間音。

c [t͡sʰ] z [t͡s]) の有気音。
ch [ʈ͡ʂʰ] zh [ʈ͡ʂ] の有気音。

[t͡ɕ]=[tʃ] ≒「ち」

sh

「す」と「し」の中間音であって「し」ではありません。
ローマ字で sh と書かれていると中国人はこの音で発音してしまいます。

中国語には「し[ʃ]」の音がありません!

ch

「つ」と「ち」の中間音の有気音です。
ローマ字で ch と書かれていると中国人はこの音で発音してしまいます。
「ちぇっ!」という舌打ちに似た音ですね。

ひげおじさん
ということで中国語講座終わり!
さっちゃん
日本語の話じゃなかったの?

むすび

清濁を区別すること

ということで、中国人は「清濁の区別がない」ということを理解して、日本語の「清濁」と発音を教えます。
「か」と「が」は別の音であり、別の単語と意味になるということをしっかり意識させます。

じっさい蚊 (か) と蛾 (が) ではちがうものになってしまいます。
古代 (こだい) と固体 (こたい) もちがいます。

どちらでもいいものもある (連濁)

日本語では、頃 (ころ) 、位 (くらい) などは、連濁してそれぞれ「ごろ」「ぐらい」になることがあります。
しかし、これは言葉によって、人によって連濁しないこともあります。
「だいたいこっちのほうが使われる」というのはあるけど、規則や絶対的な決まりはありません。

「3時ころ / くらい」と言う人と、「3時ごろ / ぐらい」と言う人がいるけど、「今頃」は「いまごろ」としか言いません。

「裏返す」は「うらがえす」としか言いませんが、「ひっくり返す」は「ひっくりかえす」と「ひっくりがえす」と言う人がいます。
また、「っ」がはいると、「うらっかえす」になりますね。

「河川敷」は「かせんしき」ですが、「かせんじき」のほうが一般的になっています。
「ん」は有声歯茎鼻音なので、つづく硬口蓋音の「し」は有声破裂音「ぢ」になるのが自然です。
そのほうが発音が楽だから。
「かせんしき」とはつおんするためには「かせん、しき」と「ん」の後ろで一回切らなければなりません。

「下敷き (したき) 」などの影響もあるでしょう。
でも、「風呂敷 (ふろき) 」なので規則はありません。

日本語の「ん」の発音は5通りある! ~ やまとことば

何が正しいかは学者や辞書が決めるのではなくその言語を話す人が決めます。
「近頃の若いもんは!」と年寄りが嘆いたところで大多数がその言葉をつかえばそれが正しい言葉になります。
「言葉が乱れている!」と眉間に皺を寄せているあなた。
あなたがつかっている言葉も、すこし前に遡れば乱れていますよ😄

連濁についてはあまりかたく考えずに「どちらでもいい」「どちらでも意味は変わらない」としましょう。

「3本」は「さんん」なのに、「3分」は「さんん」ではなく「さんん」であるように規則や法則はありません。

「1本」「2本」「3本」 VS 「1分」「2分」「3分」 ~ やまとことば

ただ初心者に「どちらでもいい」は困るので、「ひっくりかえす」と教えて、そのあとで生徒が「ひっくりがえす」と言ってもスルーしましょう。

ローマ字と拼音

b が p だったり、j, ch, sh の取り扱いもちがいます。
それによる間違いがあることも知っておきましょう。

「き、ち、じ」のちがいを明確にすること

10時 (じゅうじ) にいたっては、「9時 (きゅうじ) 」といってるのだろうか?と思ってしまいます。
これはじっさいにあったことです。
なんべん聞き直しても「9時」と聞こえるので、書いてもらったら「10時」でした。

吉祥寺 (きちじょうじ) なんかいいにくいものの代表ですね。

ウチナーグチ

沖縄の言葉を「ウナーグチ」といいます。
漢字で書けば「沖縄口 (おなわぐち) 」です。

ここでも「き」と「ち」の交替が起きています。

ちばりょー

これも沖縄の言葉ですが、気張れよ (ばれよ) が「ばりょー」に変化したと考えられています。

韓国人も

韓国語についてはよく調べていないのでくわしくは書きませんが、やはり清濁の区別がないように見受けられます。

「ビビンバ」なのか「ピビンパ」なのか揉めるところです。

ユンソナ (もう知る人もいないかな?) も「~だから」を「~だら」と発音していました。

日本語では「清濁のちがい」は言葉を区別する重要な要素であることをしっかり指導しましょう。

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