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「快楽」「苦」
人は快楽より苦を求める!
そんなはずはないって?
いや、そうなんです。
人は快楽より苦に反応する!
厳密に言うと、快楽より苦に敏感に反応するのです。
自己保存と自己複製
生き残る
生きるもののいちばん重要なことは自分ができるだけ長く生きつづけることです。
体を維持しなければならないので、燃料や体をつくる材料がなくなると「お腹が空きます」。
栄養源を取り入れます。
自分のコピーを残す
生きものの寿命は有限なので自分の寿命が尽きたあとも、自分と似たもの (コピー、複製) を残すため子どもをつくります。
生きるは快楽、死ぬは苦というプログラム
しかし、わたしたち人間をふくめて生きものは、「生きるために食べる」とか「コピーをつくるために生殖をする」とか考えてません。
そんな大義名分ならめんどくさくて誰もやりません。
だから、「生き残ること」「コピーをつくること」には「快楽」「快感」という付録をつけて、生きものが末永く生き残るようにプログラムされました。
空腹=苦痛
→食べると苦痛がなくなり、快感が得られる。
眠い=苦痛
→寝ると気持ちいい!
一方、自分の命が終わってしまう「死」は避けるようにプログラムされました。
病気やケガをすると、「痛い」「苦しい」。
それを治すように仕向ける。
ケガすると痛い。
→できるだけケガしないようにする。
→ケガしたところをかばう。
火に触ると熱い。
→火に触らないようにする。
高いところから落ちると痛い。
→高いところに登ると恐怖を感じる。
そうプログラムされたものしか生き残らなかっただけのことです。
神のような存在があったわけではなく、そのようなものしか生き残らなかったという自然の摂理です。
自然淘汰です。
火に平気で飛びこんだり、高いところから飛び降りるものは、もうこの世にいなくなってるだけのことです。
苦>快楽
✿きれいな花が咲いています。
色や形がきれいで、いい匂いがします。 (快楽)
とつぜんヘビが現れました! (危険、苦)
この瞬間、花はどこかに行ってしまいます。
あなたは、ヘビに100%注意を向けます。
それは、毒蛇かもしれない。
噛まれたら痛い (苦) かもしれない。
場合によっては死んでしまうかもしれない! (危険、苦)
ヘビに釘付けになっていたら、熊が現れました! (もっと危険、もっと苦痛)
あなたはヘビのことなど忘れ、熊にすべての注意を向けます。
熊がこっちに近づいてきたら、うしろにヘビがいても後ろに下がるでしょう。
熊に食われるより、ヘビに噛まれるほうがまだマシ。
そんなこと考えないけど、自動的にそういう比較をしています。
あなたがジリジリと下がると後ろは崖です! (かなり危険、かなり苦痛)
あなたは熊と崖とどちらがより危険か、はたまた苦痛かの判断を迫られます。
選ぶのはあなた次第です。
落ちたらまちがいなく死ぬような高さなら、熊と戦うことを選ぶかもしれません。
落ちたらまちがいなく死ぬとわかっていても、熊が恐ろしくて谷底にダイブするほうを選ぶかもしれません。
✿ところで、きれいな花はどこに行ったんでしょうか? (快楽)
快楽より苦が重要!
このように、花の匂いがよければ快楽を得られますが、なくても死にはしません。
でも、毒蛇に噛まれたり、熊に襲われたりすれば直ちに命がなくなる可能性があります。
人は✿「花」より、「熊」を選ぶのです。
つまり、「快楽」より「苦」を重視するのです。
あなたはリュックにお弁当を入れてます。
お腹が空いてもすぐに死ぬわけではありません。
でも、熊に襲われればいますぐ死ぬ可能性があります。
あなたは弁当を熊に投げつけるかもしれません。
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いつしか苦を求めるようになる
快楽を求めるより、危険や苦を避けるのが生きるために重要なので、いつの間にか苦を求めるようになっています。
また快楽は求めても手にはいりにくいし、束の間で消えてしまうので、人は勘違いして苦を求めるようになります。
花より熊をさがすようになる!
>✿
花と熊がいっしょにあったら、自分の生命の危険をともなう熊のほうに注意が向くのは自然なことなんですが、いつしか花を見ず、熊をさがすようになります。
衝撃映像に惹かれる人たち
テレビは「衝撃映像」であふれています。
ドラレコが普及したせいで事故の映像がだれでも見られるようになりました。
赤ちゃんが生まれたというよりも、人が死んだほうが人を惹きつける
「ワンちゃんの赤ちゃんが生まれました」というニュースよりも、地震や台風などの自然災害、戦争、無差別殺人などで「〇〇人が死にました」というニュースのほうが見られます。
視聴率が高いです。
じっさい「ワンちゃん番組」は「人が死んだ臨時ニュース」でかき消されます。
映画やドラマも「殺人」「流血」がお好き
うんざりします。
おじさんは「人が死ぬ」映画やドラマは大嫌いです。
「人が死ぬ」こと自体が見たくないのですが、それで「感動」に結びつける根性が気に食わんのです。
感動大作と謳う映画は、主人公やそれに匹敵する登場人物を、病気や事故や犯罪、戦争などで殺します。
人はそれを見て心を震わせ、涙しますが、感動しているのではなく、「戦慄」しているだけです。
「自分は死にたくなーい!」
「かわいそー」
と思ってるだけです。
あらゆる生きものにとって「死」がいちばん「恐れるべきもの」だからです。
より大きな苦で、いまの苦をごまかす
蚊に刺されると痒いですね。
爪で引っ掻いたり、バッテンをつけたりします。
痛いです。
本来、不快なはずの「痛み」を与えることで、「痒み」をごまかすのです。
「痒み」が消えたわけではありません。
もっと強い「痛み」でごまかしてるだけです。
人はいちばん痛いところが痛い!
これを逆手に取っているんですね。
あなたはいま虫歯があって痛いです。
ところがあなたは運の悪いことに車にはねられてしまいました。
あなたは虫歯の痛みなど忘れてしまいました。
入院してしばらくして体の傷も癒えました。
あなたは歯が痛いことを思い出します。
苦に耽るのは快楽に耽るとおなじくらい愚かである
いやむしろ、苦に耽るほうが愚かです。
まだ、快楽に耽るほうが健全です。
ブッダは王子として何不自由なく暮らし、快楽に飽き飽きしました。
それで出家して数々の苦行をするのですが、幸せは得られません。
そして、気がつきます。
「快楽」は幸せを生み出さないけど、「苦」も幸せを生み出さない。
「苦」を求めるのは「快楽」を求めるのとおなじくらいバカバカしいことだと。
「苦」に耽るのは、「快楽」に耽るのと同じくらい愚か~ブッダのつぶやき
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