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「は」「が」「主題」「主語」「目的語」
英語教育の悪影響
英語で文法を勉強するために日本語がおかしなことになっています。
英語の文法はあくまで英語を勉強するためのもので、それを日本語の文法に当てはめてはいけません。
英語文法 ≠ 日本語文法です。
彼 (氏) 、彼女
そもそも日本人は「彼」「彼女」という言葉は使いません。
「あの人」とか「田中さん」というように名前で呼んだり、「課長」「先生」のように役職で呼んだりします。
英語の「he」「she」を訳すのに仕方なく引っぱり出されてきた言葉です。
それが「特定の彼、彼女」つまり「恋人」という意味で使われるようになりました。
「彼 (か、かれ、かの) 」は「こそあど」言葉の1つ。
「あの、あれ」とほぼ同じです。
「彼方」と書いて、「かなた」「あなた」と読み、「あっちの方」という意味で、「あなた」ももともとは「あっちの方」という意味でした。
「貴方」は当て字です。
『山のあなたの空遠く幸住むと人のいふ』
という有名な詩がありますが、「あなた」は「あっちの方」という意味です。
「彼岸 (ひがん) 」も「向こう岸」という意味です。
どこの国でも「2人称」を直接言うのは失礼という感覚が共通してあり、「あっちの方」という「婉曲表現」をするのです。
スペイン語でも初対面の人にはtú (君) ではなく、usted (あなた) を使い、しかも3人称の動詞活用で話します!
英語ももともとはthouを使ってたけど、「おまえ」のような響きになってきてyouを持ち出してきたんです。
詳しくはこちら↓
🐘 象は鼻が長い
一般的に「は」はふつうの主語で、「が」は強調する主語だと説明されます。
もちろんそのパターンもあります。
しかし、そうでないパターンもあるのです。
「は」「が」はかならずしも主語ではない
象の例のように「は」「が」がかならず主語なら、主語が2つあるおかしな文章ということになってしまいます。
この場合、意味上の主語は「鼻」ですね。
では、「象」は何なんでしょう?
「鼻が長い」は意味が通じるけど、
「象は長い」はおかしいですね。
ぼくはウナギ
これは有名な「ウナギ文」です。
「は」が主語なら、「ぼく」=「ウナギ」という意味になってしまいます!
「は」が主語という英語教育のせいで、日本人が英語をしゃべるときかならず「I am~」で始めてしまいます。
「ぼくはウナギ」を英訳しなさいと言われると、
「I am eel.」になってしまいます。
🐍 ウナギ文
これは日常的に使われる日本語で、もちろん「正しい」日本語です。
友だちと食堂にはいり、メニューを見てこんな会話がなされます。
「う~ん。何にしようかな? やっぱり天丼かな」
「じゃあ『ぼくはウナギ』」
「わたしはエビ天! 」
厳密な意味はこんな感じです。
「ぼくはウナギにする」
「ぼくはウナギを食べる」
「ぼくはウナギを注文する」
「わたしはエビ天にするわ」
英語にするなら、こうです。
I will eat an eel.
I will order an eel.
英語で「わたしは ~」を「I am ~」と言わないこと!
もちろん
I am Japanese.とか
I am 16 years old.なんかはいいんですよ。
レストランにはいって
“I am pork.”🐷
“Well, I am chicken.”🐔 なんて言うと
“What!? Are you a chicken?🐔 (あなたは人間でなくて鳥なの!? ) ” なんて驚かれてしまいます(^^)
食べ終わって割り勘で払うときに
“I am 9 dollars.💰 (わたしは9ドルよ) ” なんていえば喜んで買われてしまいますよ(^^)
主題 (テーマ)
日本語の「は」は主語ではなく、「主題」と言われます。
テーマ、話題、トピックですね。
英語のsubjectには、「主語」と「話題」という両方の意味があるので紛らわしいです。
外人に説明するときはsubjectという言葉を使わず、themeとかtopicとかfocusという言葉を使ったほうがいいでしょう。
「何について話しているのか? (about something) 」ということです。
ウナギ文でいえば「ぼくはウナギを注文する」と解釈することもできるけど、
「君は天丼を頼む。ぼくについて言えばウナギだ」ということです。
そうすると「象は鼻が長い」の「象は」は
「主題 (テーマ) 」だということがわかりますね。
「象についていえば、『鼻が長い』」ということです。
水が飲みたい。君が好きだ!
「水を飲む」のも、
「君が好き」なのも
「わたし」です。
「水」も「君」も対象であって「主語」ではありません。
「飲みたい」「好き」なのは「わたし」です。
これらも「正しい」日本語です。
この場合「が」は「主語」ではなくて「目的語」「対象」です。
「を」が目的語とはかぎらない
ところがこれも英語教育の弊害で「目的語」だから「を」だと解釈して、
「水を飲みたい」とか「君を好きだ」などという表現が見られるようになってきています。
はっきりいって気持ち悪いです(^_^;)
もういちど言います。
「水が飲みたい」
「君が好きだ」は正しい日本語です。
英語文法を日本語に当てはめるのはやめましょう。
「コーヒーと紅茶、どっちにする? 」
この場合も返事は「コーヒーがいいな」でしょう。
主題例
東京は3時です。
→東京 ≠ 3時で、東京の「時刻」が3時なのです。
なので英語ではこのようにいいます。
It’s 3 o’clock at Tokyo.
このitは「時刻」のことを言ってるのです。
明日は晴れ (る) でしょう。
→明日 ≠ 晴れで、明日の「天気」が晴れなのです。
そもそも「晴れる」といえば動詞です。
この場合、「明日は」は主語ではなく副詞的な役割をします。
これも英語にするとこうなります。
It will be fine tomorrow.
この場合のitは「天気」を表します。
しつこいようだけど、日本語では
「明日は晴れ (る) でしょう」が正しいのでおまちがいなく=^^=
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