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「教師」「資質」「必要なこと」
おじさんがオンライン日本語教師をやっていて感じたことです。
とくに中級以上でフリートークをしながら、日本語を磨きたいという生徒が対象です。
① 人の話を聞く
話し上手は聞き上手
これがすべてを物語っています。
自分が知ってることを無節操にベラベラと垂れ流すのはだれでもできます
相手の話を聞くことが大事です。
これは外国語を勉強することにかぎらず、日本人同士でも日常的に人と話をするときにもっとも大事なことです。
だから1番めに書きました。
できるだけ生徒にしゃべらせる
独り言ではないんです。
会話・対話です。
とくに語彙もまだまだ足りなくて文法も怪しい外国人の日本語学習者と話すのだから、じっくり聞くことが大事です。
この人は何を伝えようとしているのか?
すぐに訂正しない
おじさんのレビューで多いのは「patient (辛抱強い) 」です。
決まり文句かもしれないけど、相手の一字一句を取り上げて訂正していたら相手は何もしゃべれません。
またすぐ正解を言ってしまっても生徒が文章をつくる練習になりません。
相手が少ない語彙とまちがった文法で話す文章から、「相手が言いたいことを汲み取る」能力が必要になります。
メモを取る
すぐに訂正しないけど、この生徒は何をまちがって覚えているのか、直すべき単語や文法を書き留めます。
これもなかなか大変です。
話を聞きながら要所要所を書き留めていきます。
あなたが言いたいことはこういうことですか?
相手が体から絞り出した文章を自分の中で組み立て直して提示します。
その中で誤用訂正もします。
中級以上ともなれば「ちがいます」という返事もあります
違うということがわかれば、この生徒はかなり日本語がわかっています。
② 人と話すのが好き
2番めになったけどこれも重要な資質です。
外国人にかぎらず人と話すのが好きということは外せません。
もし、話すのが苦痛な人はいますぐ教師を辞めましょう。
オンライン日本語教師にかぎらず、何を教えるんでも、あなたには人に教える能力はありません。
ていうか人と話したくないんでしょう
おじさんは知らない人でも話しかけます。
日本人は知らない人に話しかけられることに慣れていないので警戒されたり、逃げられたりすることもあります。
べつに取って食やあせんけえ
ナンパでもないし
ここ岡山では知らない人でも割りと話しかけられる (受身と可能の両方) ので居心地がいいです。
③ 話題が豊富
雑談
フリートーク平たく言えば「雑談」「四方山話」「井戸端会議」などです。
気の置けない友だちや地域の知り合いならともかく、日本人は知らない人と、あるいは知らない人の前でのフリートークは苦手です。
何をしゃべっていいかわからない。
人から質問されれば答えるけど、自分から人に話しかけることはない。
好奇心旺盛
自由にしゃべりまくるには「話題」が必要です。
話題をたくさん持つのに必要なのは「好奇心」です。
いろんなことに興味を持ち調べたり、やってみたりする。
広く浅くです。
話題作りのためにするのでは苦痛になるでしょう。
もともと好奇心旺盛で「調べて正体を解き明かさないと夜、眠れない」という性格でないとダメです。
そしてほんとに自分が好きなこと、興味あることをやります。
新しいことを知るのが好き
遺伝子に「新規探索傾向」というのがあるそうです。
おじさんは多分それを持っています。
それを知っても知らなくても生きることには関係ないけど「知りたい」
そこにあるのは「知って満足する」という報酬です。
豊富な雑学と経験
深く知る必要はありません。
もちろん深く探究したい人はしてください。
いろんなことを掻い摘んで知っていて、経験もしていると、どんな相手が来ても話ができます。
音楽に興味のない人に音楽の話を滔々と話しても退屈なだけです。
これは会話ではなくただの独り言です。
くわしく知っている必要はありません。
生徒が日本の武道に興味があるのならば、それについて自分の知っている範囲で質問すれば、生徒は大喜びで説明してくれます。
自分の好きなことなので話すことも苦にならないし、知っている専門用語も多いです。
話題を引き出す能力
話題は自分が持っているだけではありません。
相手から話題を引き出す能力も必要です。
「何か話題はありますか?」
なんて愚問です
「いいえ、ありません」
と言われればそれでおしまいです。
話の中から「相手の好み・興味の対象」「相手の関心事」などを読み取ってそこをつつけば、相手はここぞとばかり饒舌になります。
あとはほっといてもベラベラしゃべってくれます。
そしてときどき相手が答えられ、話題が広がる質問をします。
臨機応変
雑談に台本はありません。
鬼が出るか蛇が出るか
しゃべる練習
つねに出たとこ勝負、アドリブの世界なので臨機応変に対応することが必要です。
事前にリハーサルもできません。
これはもう場数を踏むしかありません。
オンラインで外国人に教える以前の問題で、ふだんから日本人でいいので雑談しましょう。
自分が話したいことを一方的に話しても相手は乗ってきません。
相手が興味あること、相手が得意げに話したいことにアンテナを伸ばして相手にしゃべらせる練習をしましょう。
語学力?
あるに越したことはないけど、これは二の次または番外です。
だから番号をつけていません。
たとえば英語が母語の生徒ならこちらも英語に堪能であればそれに越したことはありません。
でも生徒は世界中にいます。
スペイン人ならスペイン語、ベトナム人ならベトナム語を覚えますか?
あなたはスーパーマンですか?
世界中の言語をマスターしたら、べつの仕事ができるかもしれませんね。
日本語を学問的にも実践的にも知っていること
語学力といえば「日本語」を知っていることがいちばん大事です。
そんなの母語話者ならみんな知ってますね。
でも日本人同士で日本語で会話するのと、日本語を勉強している外国人と会話して教えるのはまったくちがいます。
「なぜ」「なんで」「どうして」のちがいは何ですか?
というような日本人ではしない質問に答えられなければなりません。
日本語ではどう言いますか?自然な言いかたは?
これも生徒の質問でとても多いものです。
というか会話の途中で何度も出てきます。
学問としても日本語を理解していて、さらに大事なことは「現代の」日本で「一般大衆がつかっている言葉」を理解していることです。
アホな政治家が辞書から引っ張り出してきた誰もつかわない「忖度」とか「粛々」のような言葉を知っていても偉くもなんともないし、こんな言葉を覚えても日本で日常的につかうことはありません。
たとえば many people を「たくさんの人々」と言ってしまいますが、ふつうの日本人なら「人がたくさん」ということを理解していてすぐ出せるようにしておかなくてはなりません。
できるだけ日本語で答える
語学力がある人が陥りやすい罠
英語でぜんぶ説明してしまう。
日本語の授業なのに授業時間の90%は英語を話している。
あなたの英語力を評価する時間でも、見せつける時間でもありません
ましてやあなたが英語を勉強する時間ではありません。
生徒がわからない日本語を英語でズバッと言ってしまえばその瞬間はわかりますが、生徒はその日本語をけっして覚えていません
われわれ日本人が受けてきた英語の授業を思い出せばわかります。
先生は日本人でぜんぶ日本語で説明してくれますが英語はさっぱり覚えていません
むずかしい文法の説明などは生徒の母語で説明できればそれに越したことはありませんが、カンタンな単語などは身振り手振りも交えてできるだけ日本語で説明します。
「机」を desk って言ってしまうのはカンタンですが、
「木や鉄でできていて、足が4本あって、勉強したりパソコンを乗せたりする台」
のように説明します。
「食べる」だったら eat といわずに食べる仕草をします。
英語で eat と言われたら「食べる」のほうは忘れてしまいます。
いっぽう「食べる仕草」をしながら「食べる」といえば、動作と言葉がリンクします。
自分が外国語をおぼえる
これは結果的にです。
あくまでこちらがお金をもらって日本語を教えているので、その生徒に英語を教えてもらおうなどというのは不届き千万です
ただ日本語の表現を説明したり、英語を母語としている生徒には英語での表現にもおなじものがあったり、あるいはちがうところを示すことで理解が深まることもあります。
そういうときに結果として「英語ではこう言うんだ」ということがあります。
それは自分の得になるというより、それを覚えたことで今度べつの生徒に教えるときに役に立ちます。
④ つねに自分が勉強しつづける
日本語教育の学校で勉強したり本で勉強して日本語教育能力検定試験に合格してもそれで終わりではありません。
おじさんは日本語を勉強していて、また外国人に教えていて、「日本語って奥がとても深いな」と感じるんです。
どこの国の言語でも母語話者は文法も考えず、無意識にしゃべれます。
でも外国語として勉強するときには母語話者にはわからない「?」がたくさん出てきます。
そのとき
「日本人はそう言うんだよ」とか
「理由はないけどそのように覚えて」
はダメです。
ちゃんと文法や理由を説明しなければ「教師」ではなく「ただ日本語がしゃべれるだけの日本人」です。
あなたは教師ではありません。
もちろん理屈では説明できない部分もあります。
それも自分が研究し尽くした上でそう理解しているのと、「わからないけど何となく」ではまったくちがいます。
「ただ日本語がしゃべれるだけの日本人」とちがい
「日本語教師」は
「たら」「れば」「なら」「すると」のちがいを理解していて説明できなければなりません。
おじさんは寝ても醒めても日本語のことを考えています。
日本語にはもともと「ん」の音はないのになぜ「かんがえる」には「ん」がはいっているのか?まで考えて調べます。
これはもともと日本語じゃないんじゃないの?
ここまで調べる人も珍しいかもしれないけど。
生徒の質問は宝の山
自分では気づかないけど外国人目線では奇妙な日本語について質問があると、それは宝の山です。
母語話者はだれも気にせず考えもせずにつかっているけど、それについて調べて研究する貴重な材料です。
その場で答えられなくても調べて後日、伝える
これが大事です。
教師はスーパーマンではありません。
わからないこともあります。
そのとき大事なことは、「テキトー」にごまかしたり、「そんなことは知らなくていい」とか「丸暗記して」などと言うのは最低です。
オンライン日本語教師にかぎらす、おじさんはこのようなクズ教師をたくさん見てきました
時間外労働?
答えられない質問について授業時間外に調べるのは「時間外労働」「タダ働き」だと思いますか?
そういう人は先生をやめてください。
もちろん必要以上にタダ働きすることはありません。
たとえばメールで質問してきて、それに対してメールで答える必要はありません。
質問はOK。
答えるのは授業時間内で。
おじさんは苦労を美化する人間ではありません。
むしろ苦労は人を腐らせる悪いものだと思っています。
苦労しても偉くも何ともありません。
だれも褒めません。
おじさんも褒めません。
好奇心と知識欲を満たす
そういうことではなくて、知らないことを調べて知ることで自分が楽しいからです。
また生徒の1つの質問を調べて理解すれば、今度べつの生徒からおなじ質問を受けたときに役に立ちます。
これはそう珍しいことではなく、外国人が引っかかるところっておなじところが多いんです。
むしろおじさんはニンマリしますね
「やっぱり来たか!その質問。用意してあるぜ」
生徒の趣味も
生徒が面白いといった趣味や好きな映画など、すべて見る必要はありません。
無理して見る必要はまったくありません。
生徒に迎合する必要はありません。
ただ「生徒のため」ではなく「自分のため」なら見てもいいと思います。
頑なに「生徒のご機嫌は窺わない!」といわずに、「ほんとに自分が興味を持ったら」それを見るのも自分の「話題」「持ちネタ」が広がるいい機会です。
教師としてではなく、人間としても、自分のプライベートな人生においてもプラスになることがあります。
映画
生徒の故郷のイベントに Groundhog day というのがあると言いました。
それは「恋はデジャ・ブ」という映画になっています。
この題名ではおじさんはけっして見ることはなかったはずですが、この動物で春の訪れを占うということに興味を持って見ました。
意外と面白かったです。
また2月2日は節分・立春に相当するので、日本の豆まきのようなことをやっているんだという発見もありました。
五輪書 (宮本武蔵)
宮本武蔵の五輪書を読みたいという超奇特な生徒がいます。
これがなかったらおじさんは生涯、この本を読むことはなかったでしょう。
いちおう現代語訳と謳っているけど1968年の翻訳なので日本語が古いです。
おじさんが生まれたころですが、その当時としても古い言葉をつかっています。
はっきりいって現代日本人には、このままでは読めません。
となるとおじさんは前もって読んでわからないところを調べなければなりません。
これをムダとか時間外労働というか、自分の修養の元と考えるかはあなた次第。
おじさんはここでも新しい発見がいろいろとあるので、五輪書を持ってきた生徒に感謝しています。
オンラインでなくても教師ならおなじこと
コミュニケーション能力
流行り言葉なのでつかうのをためらいましたが、一言でいえばこれに尽きます。
これは特別な技巧とか、知識とか言ったものではありません。
もっと集約すると「人と話すのが好き」に尽きます。
上に書いたように、「話す」というのは講談師のように1人でベラベラしゃべりまくることではありません。
「人の話を聞く」ことがとても大事です。
コミュ力なくてもいいじゃん、なんていう人もいますがあなたは教師をやらないでください。
会話はキャッチボール
これも昔からいわれているけどまったくそのとおりです。
これができない人が多いですね。
何も言葉を発しない、人から話しかけられてもろくに返事もしない人は論外。
そもそも人と話をしたくない人は、それこそ話になりません。
まあそんな人は教師をやろうと思わないでしょうが。
が、しかし、いるんですよね。
話をするのが嫌いなくせに教師になる人、なった人。
最悪の教師です。
いますぐやめてください
生徒にとって害悪以外の何物でもありません。
知識があるだけ、テストで点数が取れる人が教師になれるわけではありません。
肩書は教師でも、こういう人は教師ではありません。
ちなみに大学の教授は自分の研究が目的で、教える気はまったくないのでそのつもりで
知っていることと教えることはまったく別のこと
ベストプレイヤー≠ベストトレーナーです。
一流プレーヤーは、一流トレーナーではない!いい教師、先生とは?
あなたはすべてを知っている必要はありません。
大事なことは教えることです。
教師の役目はプレーすることではなく、教えることです。
ここまで読んだかたには説明するまでもないと思いますが「教える」とは独り言をいうことではなく、生徒の話を聞き、「何がわからないのか」「どこがまちがっているのか」「どうやって説明すれば生徒がわかるか」を汲み取り的確な情報と手段を与えることです。
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