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「vasistas」「あれ何ですか」「勘違い」
ああ勘違い!
vasistas ヴァズィスタース
こんなものです。
「ドアについてる小窓」のことです。
フランス語です。
「ああ、なんか海外のドラマでたまに出てくるよね」というくらいの印象でしょう。
Was ist das?
しかし、この言葉。
ほんらいドイツ語の「Was ist das? (ヴァスィスト゜ダス。あれ何ですか?) 」なんです。
あれ何ですか?
侵略、略奪が日常茶飯事のヨーロッパ。
ドイツ人がフランスにやってきて聞きました。
Was ist das?
あれ何ですか?
とうぜんフランス人はドイツ語がわかりません。
それが質問だとは思わず、
「ああ、ドイツではあれをwasistdasっていうのね」
とかってに納得しました。
それをフランス語の発音で表したのが「vasistas (ヴァズィスタース) 」です。
ヨーロッパの国は、日本の県みたいなもの
ヨーロッパは陸続きなので国と国の争いというより、地域有力者の争いがむかしから連綿とつづき今もつづいています。
日本は「島国」なのであまりこのような侵略を受けてきませんでした。
日本は、そもそも陸地すら存在しなくて、東日本大震災を引き起こした太平洋プレートのたゆみない動きで海底が盛り上がり陸地ができて、そこにどこからか流れ着いた人間が定着した国です。
おそらく最初にやってきたのは南のポリネシア系の縄文人。
それから1万年後に、ユーラシア大陸からやってきた朝鮮系の弥生人。
縄文人は南北に追いやられ、北はアイヌ、南は琉球人。
そして、真ん中はヤマトンチュと呼ばれる朝鮮系とその混血の子孫です。
日本は外からの侵略はほとんどなかったけど、戦国のように狭いところで「取ったの。取られたの」という小競り合いをしていました。
でも、それとおなじことはヨーロッパでもずっと行われていました。
ヨーロッパって意外と狭くて、西ヨーロッパで日本より面積が大きいのはスペインとフランスだけなんですよね。
ほかの国は日本より小さい!
だから、ヨーロッパの国は日本でいう「県」みたいなもんなんです。
成立と派生
wiktionaryによれば、フランス語にこの言葉が現れたのは1760年ころとされています。
それまではなんて言ってたんでしょうね?
日本でも「赤」を「レッド」、「白」を「ホワイト」というように、もともと自分の国の言葉があったにもかかわらず、外来語に入れ替わってしまうことが多々あります。
かれらフランス人ももともとの言葉は消えてしまい「ヴァズィスタース (これ何ですか) 」が定着してしまったんです。
あとで「これ何ですか」というドイツ語だとわかっても今さら変えるわけにもいかない。
こんなトンチンカンな言葉はフランスだけでなく、あちこちにあります。
外来語
ほんらいの意味がわからないイタリア人やトルコ人もvasistasという言葉をつかうようになってしまいました。
無目 (むめ) transom
日本語では窓の上下の横木を「無目」といいます。
もとは溝のない「鴨居」のことをいいます。
英語のtransom (ト゜ランサム) は、「横木」から転じて、「ドアの上の明かり取りの窓」という意味もあります。
最後の授業
日本ではなぜかこの本が有名で、ドイツ人は侵略者、フランス人は被害者、という構図が浸透しています。
しかし、ヨーロッパはだれがどこにいたかわからないくらい、民族が移動して、侵略する、されるの歴史です。
ノルマン・コンクエスト
バイキングの子孫のフランス系ノルマン人は、1066年にイギリスを侵略して、ギョームがウィリアムとイギリス名に変えて、イギリスを乗っ取ってしまいました。
現代の英語の単語の45%がフランス語です!
ロマンス語 (英語とラテン語の関係)その1~ノルマン・コンクエスト
レコンキスタ
スペインではキリスト教がイスラム教から「取り戻す」という意味の「re-conquista (再 征服) 」で、国土を取り戻したということになっていますが、「これも最初にそこにいたのは誰か?」はだれにもわかりません。
英語のconquestと、スペイン語のconquistaが、同語源であることはいうまでもありません。
アルハンブラ
1492年。
グラナダのアルハンブラ宮殿が陥落して、イスラムからキリストの国へと変わります。
クラシックギターの名曲「アルハンブラの思い出」はみなさんご存知でしょう。
Al Hambla
Alはアラビア語の冠詞で、Alではじまる言葉はアラビア語起源のものが多いです。
hamblaは「赤い」という意味です。
スペイン語の発音は「アランブラ」です。
hは発音しないので。
いまだに争い
イスラムからキリストに奪い返したと偉そうにいってますが、いまだに民族の争いがあります。
スペインも一塊の国ではない。
日本の戦国のように力のあるものが、無理やり武力で支配下に治めただけです。
カタルーニャ
独立運動をしていますが賛成派も反対派もおり、いまだ国家としては独立していないようです。
バスク
フランスとの国境であるピレネー山脈の南北にまたがって、つまりスペイン側にもフランス側にもバスク人がいます。
かれらも一応スペイン人という肩書ですが、自分たちはスペイン人ではなく、バスク人だという感覚を持っています。
バスクにはいると、スペイン語とバスク語が併記されています。
バスク語はほかのどのヨーロッパの言語とも共通点がなく、発祥がわかっていません。
おじさん的には、スペインでは朝ごはんがまともに食べられず、バスクにはいったら朝からちゃんとした洋風のご飯が食べられたので、いいところです。
町の人も親切です。
ホテルを探していると「pension?」と聞いてきた人がいたので、客引きかと思ったらほんとに親切で教えてくれました。