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「縮約形」「省略」「音韻変化」
子音落ち
ラ行のrが脱落
ござります→ございます
ri→i (rが脱落)
なさります→なさいます
ri→i (rが脱落)
拗音化
してしまう→しちゃう
tesima→tia→tya (s、mが脱落して拗音化)
それは→そりゃ (あ)
rewa→rea→rya (wが脱落して拗音化)
では→じゃ (あ)
dewa→dea→dya
(wが脱落して拗音化。現代仮名遣いでは「じゃ」と書きますが、発音としては「ぢゃ」です。舌を歯茎後部から硬口蓋につけてから破裂させています)
しなきゃ
これは3通り考えられます。
しなければ→しなけりゃ
reba→rea→rya (bが脱落して拗音化)
→しなきゃ
kerya→keya (rが脱落) →kya (eが脱落)
しなくては→しなくちゃ
tewa→tea→tya (wが脱落して拗音化)
→しなきゃ
kutya→kuya (tが脱落) →kya (uが脱落)
しなくは (しなくば) →しなきゃ
kuwa→kwa (uが脱落) →kya (wが拗音化)
音便化
かく→こう
kaku→kau→ko: (kが脱落。auがo:に)
西日本では今でも、「会う (あう) 」を「おう」と発音します。
これは珍しいことではなく、人間は洋の東西を問わずこのように発音する習性があります。
英語のauto。
アウトでなく、オートと発音します。
Australia, sauce, pauseなどもオー。
母音落ち
したのだ→したんだ
no→n (oが脱落)
だもの→だもん
no→n (oが脱落)
なにで→なんで
ni→n (iが脱落)
している→してる
i→× (iが消滅) 。eiがeになったという考えかたもできる。
しておく→しとく
teo→to (eが脱落)
じゃん
関東で語尾に「じゃん (jan) 」をつけることがあるけど、「じゃない (janai) 」の母音が落ちたものです。
もともとは否定の疑問文ですが、否定や疑問の意味は薄れて、軽い断定や相手に同意を求めるときにつかいます。
「その服いいじゃん (いいじゃない/いいじゃないですか) !」
相手に対する質問ではなく、自分の感想+相手の当然あるべき同意を表しています。
「好きにすりゃあいいじゃん!」
好きにすれば良いのではないか?いや、すれば良い。
もん
語尾の「もん」は「もの」ですね。
女性や子どもがつかいます。
「やだもん」
大人の男がつかうと気持ち悪いです。
こそあど
このような→こんな
noyo→n (oyoが脱落。というより省略といったほうがいいですかね)
そのような→そんな
noyo→n (oyoが脱落)
あのような→あんな
noyo→n (oyoが脱落)
どのような→どんな
noyo→n (oyoが脱落)
あなた→あんた
na→n (aが脱落)
「あなた」はもともと「彼方」と書きます。
「あっちの方」という意味です。
子音変化 (同化)
ラ行の撥音化「ん」
わからない→わかんない
ra→n (rがnに変化して、aが脱落)
してるの→してんの
ru→n (rがnに変化して、uが脱落)
これらはうしろの「な (na) 、の (no) 」に釣られて、「ん (n) 」に変化した可能性があります。
ranaとか、runoが、nnaやnnoに変化すると舌を動かさずにしゃべれるので楽です♫
ラ行の促音化「っ」
行ってくるから→行ってくっから
これもうしろの「か」の影響を受けて促音化したものです。
冒頭の「ござります」が「ごさいます」になるように、ラ行は消える傾向にあります。
ラ行は弾き音なので、発音がめんどくさいんですね。
外国人が苦手なのもこの「ラ行」の弾き音です。
サンスクリット語の俗語のパーリ語でも前後の子音の同化がよく起こります。
人間は怠け者なのでできるだけ楽したいんです。
だから、前後の子音をおなじにしてしまうんです。
例:)
サ putra→パ putta (子ども)
サ sutra→パ sutta (お経)
サ nirvana→パ nibbana (ニルヴァーナ。涅槃)
母音変化
よい→いい
yo→i
終止形 (辞書形) 「いい」のみで、「良かった」「良ければ」などは「yo」のまま。
例:) いい人でよかった。
いう→ゆー
iu→yu: (iが半母音yに変化)
終止形 (辞書形) 「言う」のみで、「言わない」「言えば」などは「i」のまま。
例:) そうゆーこといわないで。
厳密にいうと、もとの表記は「いふ」で発音は「iwu」です。
未然形の「わ (wa) 」だけが生き残り、「ゐ (wi) 、ゑ (we) 、を (wo) 」は、ア行と同化して「い (i) 、え (e) 、 お (o) 」になってしまいました。
「wu」にいたっては、かなり早い時期に「う (u) 」と同化したらしく、仮名も残っていません。
もっというと「いふ」と表記するようにもとは「いぷ (ipu) 」と発音していたという説があります。
ハ行転呼音といいます。
音便化
ウ音便
おはやく→おはよう yaku→yau→yo: (kが脱落して、au→o:に)
ありがたく→ありがとう taku→tau→to: (kが脱落して、au→o:に)
旧仮名遣いでは「おはやう (ohayau) 」「ありがたう (arigatau) 」です。
その他
様
さま→さん
ma→m→n
→ちゃん
san→tyan
もともと日本語には「ん[N]」の音はありませんでした。
「む[mu]」か「ぬ[nu]」でした。
時代劇を聞いてると、「行かん」「ならん」とはいわず、「行かぬ」「ならぬ」と発音していますね。
漢字の流入とともに語尾が「ん」で終わるものが大量にはいってきて「ん[N]」を発音するようになっていきました。
本、巻、件、心などなど、漢字は「ん」で終わる音がとても多いです。
「む」は「武」、「ぬ」は「奴」を崩した文字だということははっきりしているのですが、「ん」は出どころがはっきりしません。
「ん」は「无 (む) 」を崩したものといわれていますが、これについては異論もあり定説ではありません。
やはり
やはり→やっぱり→やっぱし→やっぱ
体育
たいいく→たいく
「たい・いく」と発音する人は少ないのでは?
こないだ
このあいだ→こないだ
あぶらげ
あぶらあげ→あぶらげ
漢字で書けば「油揚げ」だけど、「あぶらげ」という人のほうが多い気がします。
定着してしまったもの
ごめんなさい
「ごめんなさりませ」または「ごめんなされ」から。
「ごめんください」「行きなさい」も同様。
おはようございます、ありがとうございます
もとのことばを漢字で書くと、
御早く御座ります。
有難く御座ります。
外国語
英語
it is→it’s
I am→I’m
is not→isn’t
do not→don’t
など
チョロイもんです。
フランス語
ce est→c’est セ ≒英 it’s
c’est la vie セラヴィ それが人生。人生なんてこんなものさ。
te→t’ 君を、あなたを
Je t’aime. あなたを愛してます。
まだまだ序の口!
ドイツ語
zu der→zur
in das→ins
bei dem→beim
von dem→vom
など
しょせん日本語には敵わないですね🎌
練習問題
つぎの文章をもとの形にしなさい。
「ホラー映画こわいよ」
「見なきゃいいんじゃないの?」
「お皿割っちゃったんだけど、どうすりゃいいかな?」
「ほっときゃいいじゃん」
「もう行かなきゃ!電車乗り遅れちゃう!」
「そりゃ大変!早くしなくちゃ!」
「走りゃあ間に合うんじゃない?」
「そんなことできるわけないもん!」
「やってみなくちゃ、わかんないじゃん」
「休みの日はどんなことしてる?」
「こないだはデパートで大人買いしちゃったもんね」
「そりゃあいいねえ」
解答例
語尾はどうでもいいです。
「ホラー映画こわいよ」
「見なければよいのではないのか?」
「お皿を割ってしまったのだけど、どのようにすればよいかな?」
「ほうっておけばよいのではないか」
「もう行かなければ!電車に乗り遅れてしまう!」
「それは大変!早くしなくては!」
「走れば間に合うのではないか?」
「そのようなことは、できるわけがないもの!」
「やってみなくては、わからないではないか」
「休みの日はどのようなことをしているか?」
「このあいだはデパートで大人買いをしてしまったものね」
「それはよいな」
これを見ると格助詞 (にをは) も省略されていることがわかります。
やまとことば ~ 一覧
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