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「help」「助ける」「役に立つ」「おかげで」「世話になる」
助けてください!
よく日本語フォーラムの質問欄に
「助けてください!」
と投稿する人がいますが、おじさんは
「溺れてるのか!」
「ギャングに追われているのか!」
と笑ってしまいます
言語は1対1ではない!
単語レベルで1対1で変換はできないんです。
よく外国人の生徒が「”help” は日本語では何と言いますか?」というような質問をしますが、
どんな場面で、誰が誰に、どんな用件でつかうかで日本語の単語はおろか、言い回しまで変わります。
この “help” は「難訳語」の頂点に君臨するものです。
それは言葉ではなく、日本と英語圏の文化が違うからです。
日本語ではhelpをつかわない
helpの意味
辞書で引けば
助ける。救う。 (命にかかわること)
手伝う。手を貸す。力を貸す。 (重い荷物を運ぶとき、宿題など)
役に立つ。力になる。 (自分が何かをするときの便利な道具、手段)
などの言葉が出てきますが、そもそも日本人は彼ら (英語圏の人) ほどhelpという言葉をつかわないんです。
help ≠ 助ける
日本語で「助ける」というと、
溺れている、ギャングに追われている、というように命にかかわるような重大なイメージを持ってしまいます。
いっぽう英語の help は、もちろん「命を助ける」ときにもつかうけど、「ちょっと手伝って」くらいのときでもつかいます。
冒頭の例では
「ちょっと教えていただけませんか?」
「少々、お尋ねいたしますが…」
くらいの感じです。
またこの場合に
「手伝って」とか
「手を貸して」は変です。
これらは重い物を持つときなどにつかいます。
だから
「”help” は日本語では何と言いますか?」
と聞かれても一言では答えられないんです。
これは日本語だけでなく、日本語から英語に翻訳するときもおなじです。
help (助ける、役に立つ) → してくれる、おかげさまで、お世話になります
help はよくつかわれるけど、なかなか日本語に訳すのはむずかしい言葉です。
その都度、文脈や状況から言葉を選ばなければなりません。
Toshi sensei’s explanation of the definition helped me understand how Japanese grammar functions.
トシ先生の定義の説明は、日本語文法がどのように機能するか (わたしが) 理解するのに役に立ちました。
いちおうここでは「役に立つ」をつかいました。
生徒の文をなるべく忠実に訳しました。
でも日本語としてはちょっと不自然ですね。
役に立つ。便利だ
これらの言葉は褒め言葉ではあるんだけど、「物」あるいは「目下の者」につかいます。
上から目線です
「おまえは役に立つからわしの手下にしてやろう」
「おまえは便利だから使ってやろう」
というニュアンスですね
先生はもちろん目上の人に「役に立つ」とか「便利だ」というのは失礼です。
よくて同レベル、友だちレベルです。
「宿題を手伝ってくれてありがとう」
でも、やはり同レベルであって、先生にこれをつかってはいけません。
たとえ「手伝っていただいて」と謙譲語をつかっても、そもそも目上の人に「手伝わせる」こと自体が不遜なんです
「手伝っていただいて大変恐縮です」くらいのレベルですね。
自分がつかうと謙遜だが卑屈な感じになることもある
自分から
「あなたの役に立ちたい」とか
「あなたのお役に立てれば」とか
言うことはできますが、やはり目上の者 (先生や上司) が目下の者 (生徒や部下) にはつかいません。
もしつかうと先生や上司のほうが下僕 (しもべ) という感じになってしまいます。
「役に立つ」ということは「あなたの便利な道具になる」というようなニュアンスです。
言われたほうは
「いえいえ、とんでもございません」
と逆に恐縮してしまうレベルです。
ちなみに「とんでもないことでございます」が正しいという意見もありますが、言葉は変化するものです。
目上の者が言うときは
「君の力になりたい」
「あなたが〇〇する助けになればいいと思う」
というような言い回しがいいでしょう。
上の例文は複雑なのでカンタンな文にします。
His explanation helped me understand it.
超直訳するとこうです。
彼の説明はわたしが理解するのを助けた。
help は助動詞のような使いかたをして不定詞の to が省略されます。
この例では本来なら
helped me to understand
なのですが、むしろ to を入れないほうがふつうです。
まあ、日本語の
「ている」が「てる」になるくらいの軽い気持ちでむずかしく考えないでください
使役の意味
help は「助ける、手伝う、手を貸す」だけど、ここでは「わたしが理解するようにする」ということなので「使役」のような意味合いもあります。
ただの使役
His explanation made me understand it.
彼の説明はわたしをわからせた / 理解させた。
→彼の説明で (わたしは) わかった。
≒His explanation caused me to understand it.
(cause は to が必要です)
感謝の意、おかげさまで
そこに
So I thanked him.
だから、彼に感謝している。
の意味を込めると
make → help
になります。
「お陰さま」には「他人の尽力」という意味が込められています。
してもらう / くれる / いただく / くださる
ただの使役ではなく、日本語の「やりもらい」のニュアンスになります。
もちろん
help の場合は完全に受身ではなく、自分でも「そうするよう望んでいて」「そうするよう努力している」ので、
これを踏まえて訳すと、
彼の説明のおかげでわかった。
/ わかるようになった。
/ 理解することができた。
「~せいで」をつかうと「迷惑」になるので気をつけましょう
「人 / 物」 helped me do.
「人 / 物」の「おかげで」~した / するようになった / することができた。
「〇〇が、わたしが~するのを助けた」ではなく
「〇〇のおかげで、わたしは~できた」
どうしても「助ける」という言葉を盛り込みたければ、
「先生のおかげで助かりました」
「おかげさまで助かります」
のように訳すといいでしょう。
お世話になります
この言葉には「感謝」の意も込められています。
だから、お世話になってありがとうございます、とは言いません。
状況によっては「手伝ってくれてありがとう」ではなく、
「いつもお世話になっております (継続的) 」とか
「お世話になりました (完了) 」とか
これからhelpしてもらう場合は
「お世話になります (これから先、将来にかけて) 」
のように日本人は使い分けています。
よろしくお願いします
まだ「助けてもらう前」「これから手伝ってもらう」なら
「よろしくお願いします」ですね。
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