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「あたらしい」「あらたしい」「あらたに」「あらためる」「乗っ取り」
新たに (あらた・に)
「新たに (あらた・に) 」ということばは今でもあります。
ナ形容詞 (形容動詞) 「新た (あらた) 」の連用形です。
もちろん「新たな (あらた・な) 」ということばもつかいます。
「改める (あらた・める) 」も「新た (あらた) 」からつくられた動詞です。
新し (あらた・し)
「新た (あらた) 」に形容詞語尾の「し」がついて「あらた・し」という形容詞ができました。
むかしの形容詞は「し」で、現在は「しい」になっています。
「美し (うつく・し) 」→「美しい (うつく・しい) 」など。
「た」と「ら」が入れかわった?
「あらた・し」の「た」と「ら」が入れかわったとよく言われますが、そんなことあるんでしょうか?
それこそ「ことばの乱れ」
当時の大人たちが目くじらを立てて「近頃の若いもんは! 」と怒ったにちがいありません。
でも、それならなぜ形容詞の「あらた・し」だけで、ほかの「あらた・に」や「あらた・める」は入れかわらなかったんでしょうか?
おかしいですね。
もともと「あたら・し」という別の意味の言葉があったから!
あたら
副詞または連体詞として
「惜しい」「惜しくも」「もったいない」「もったいなくも」という意味です。
「あたら時を過ぐさん (もったいない・もったいなくも時を過ごそう) 」というような使いかたをします。
あたら・し
これに形容詞語尾「し」がつくと、
「立派だ」「すばらしい」「惜しい」「もったいない」という意味になります。
あたら・しぶ
さらに動詞語尾「ぶ」がついて、
「惜しいと思う」「惜しがる」という意味のことばもあります。
「怪し (あやし) 」→「あやしぶ・あやしむ」
「いつくし」→「いつくしぶ・いつくしむ」などもその例です。
「バ行」と「マ行」はおなじ唇を閉じてから開くときに出る音なので両方のいいかたがあります。
「さびしい/さみしい」「煙 (けぶり/けむり) 」「眠る (ねぶる/ねむる) 」などもそうです。
古くは「バ行」をつかっていましたが、しだいに「マ行」に変わっていきました。
人は楽したい動物なので、楽な発音に変わっていくのです。
むかしの人の「近頃の若いもんは! 」という声が聞こえてきそうです💦
ちなみに鼻が詰まると鼻音の「マ行」は「バ行」になります😄
「鼻が詰まった (はながつまった) 」は「はだがつばった」になりますね=^^=
混同して「あらた・し」は消えた!
時は平安時代 (794-1185)
「あたら・し」という、意味はちがうのによく似た音の別のことばがあったために、この2つのことばは混同されてグチャグチャになりました。
本来「あたら・し」が持っていた「惜しい」という意味はあまり使われなかったため、いつの間にか「あたら・し」が「新しい」という意味に取って代わられてしまいました!
参考文献:新明解国語辞典 第2版 (三省堂)
やまとことば ~ 一覧
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