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「わけだ」「わけにはいかない」「その他」
訳 (わけ)=理由
語源は「分け」とおなじ。
「訳」は「やく」とも読み、翻訳、通訳の意味です。
漢字だけだと区別できないことがあるのでひらがなで書くことが多いです。
「理由」と書いて「わけ」と読ませる人もいますが、それではこんどは「りゆう」と読むのか「わけ」と読むのかわからなくなります。
だからひらがなで「わけ」と書きましょう。
「わけ」をつかった成句はたくさんあり、外国人には脅威 (驚異) です。
「わけ」の意味
理由。道理。当然の理。論理的に正しい理屈。
成句と慣用句
定義が曖昧でどちらもつかわれますが、ここではこのように扱います。
成句:文字どおりの意味で、いくつかの単語と助詞を組み合わせた文章。定型句といってもいいかもしれません。set phrase, fixed expression
慣用句:単語の意味からは変わったとくべつな言い回し。いわゆるイディオム (idiom)。
「臍で茶を沸かす」のようなもの。
ほんとに臍で茶を沸かすわけではない。
ちなみに「バカバカしくて笑ってしまうこと (軽蔑の意味) 」
わけだ (納得)
その理由、事実、根拠に納得
合点した。ともいいます。
すでに終わったこと、完了したこと、確定したことについてつかいます。 (完了。確定)
だからしばしば頭に「道理で (どうりで) 」がつきます。
例:
「この料理、おいしいね!」
「だって田中くんはプロのコックだもん」
「どうりで、おいしいわけだ。 (なるほど、納得) 」
「鈴木さんは犬が嫌いなのかな?」
「子どものときに犬に噛まれたから」
「どうりで、犬に近寄らないわけだ (納得。そういう理由か) 」
そういうわけだ
口癖で「そういうわけだ」をよくつかう人がいますが、ちゃんとした道理や理由を説明していないのにつかうので、
「どういうわけ?」と聞き返されます😄
はずだ (自分だけの確信)
話者が主観的に強い確信をもって「それが起きる」と信じている
まだ起きていないこと、確定していないこと、起きたことでもその事実確認がまだ取れていないときにつかいます。 (未来。未確認)
客観的ではないけど話者なりの根拠があります。
だから、しばしばその「根拠」を前提として言います。
例:
「高橋くん、まだ来ないね。来るの、やめたんじゃないの?」
「いやあいつは約束を守る男だ。 (だから) きっと来るはずだ」
「働けど働けど楽にならず」
「あしたこそ、きっと良くなるはずだ」
この場合は根拠のない自信・確信です😅
このように「わけだ」と「はずだ」では意味がちがいます。
わけがない / はずがない (ありえへん。不可能だ。認めたくない)
理由がない。考えられない
理由やちゃんとした道理がないので「それは起きない」だろう。
自分のことにもつかいます。
自分のことにつかうときは否定する充分な理由があります。
「はずがない」もおなじ意味です。
自分が確信していることと事実が異なるとき (未来。未確認)
自分の確信を盲信し、事実または未確認の情報を否定しようとします😅
納得できる理由や根拠がないから「それが起きることはありえない」
言いかたを変えると「それが起きない明確な根拠がある」んです。
例:
「佐藤くんが盗んだって疑われてるみたいだよ」
「あいつがそんなこと、するわけがない」 (納得できる理由や根拠がない)
否定する根拠は、「佐藤くんは誠実な人柄なので人のものを盗むことはありえない」ということです。
「あいつがそんなこと、するはずがない」 (そういうことはありえないという確信)
言葉の成り立ちからは微妙なちがいがありますが、まったくおなじ意味とニュアンスでつかいます。
確信の否定あるいは否定の確信なのでこちらは下のようにも言いかえられます。
「あいつはそんなこと、しないはずだ」
例2:
「大変!あなたの家が火事だってよ!」
「えっ?そんなはずがない!」 (未確認。受け入れがたい。ありえない。信じがたい。いや、信じたくない。ウソに決まってる)
自分の動向につかうとき
「ねえ、こんどの同窓会、行く?」
「行くわけないだろ!」
これだけだと行かない理由がわかりませんが、たとえば
この人は
「いじめられっ子で友だちもいなくて嫌な思いしかなかったからそんな同級生に会う理由もないし、会ってまた不愉快な思いをしたくない」
という立派な理由があります。
これがただの否定文「行かないよ」とちがうところです。
口語では
「行くわきゃねえだろ😡」
くらいの言いようになります😅
「が」の省略
しばしば「が」は省略されます。
そんなわけがない → そんなわけない
そんなはずがない → そんなはずない
対比の「は」
日本語のむずかしいところで、文の構成によっては「あいつが」が「あいつは」になります。
「は」をつかうと、
「他の人はどうか知らないけど、それに対してあいつは」という暗に他との比較をしています。
だからこうも言えます。
「あいつに限って、そんなこと (は) しないはずだ」
この「は」も上の「は」とおなじで、
ここには暗に「そんなことはしない」けど、「あんなことはする」かもしれないという意味がふくまれています😄
取り立ての「は」
取り立ての「は」と考えることもできます。
言葉はちがうけど取り立ても、いろんなものがある中で「特にこのことについては」ということなので対比とおなじような感覚です。
例:
学校に行かない。 (そのまんま)
学校には行かない。 (学校に関してだけは行かないけど、遊びには行くかもしれない😄)
はずはない
これも「はずがない」に対して「はずはない」とも言えます。
やはり対比で、「他のことならともかく、それはない」という意味合いになります。
「他のことなら、あるかもしれないけど」というニュアンスです。
そこまで考えてしゃべってる人はいないけど、ちがいは何ですか?と問われればそういうことです。
「が」と「は」についてはこちらをどうぞ↓
象は鼻が長い。水が飲みたい。君が好きだ! ぼくはウナギ? ~「は」「が」は主語ではない!
わけもない (超カンタン)
このときは「訳もない」と漢字で書いたほうがいいかもしれません。
ほかの成句は「動詞・助動詞」に接続してつかいますが、この言葉だけは単独でつかいます。
この場合の「訳 (わけ) 」は
「むずかしいこと」「手間」といった意味です。
おなじ意味で「造作もない」ともいいます。
自分の能力的に充分できる → 相対的にそれは超カンタンということ。
だからできるかどうかという「可能性」で質問されて、「カンタンにできるよ」という返事でつかうことが多いです。
超カンタン。朝飯前
「ねえ、これ直せる?」
「そんなこと (カンタンすぎて) 、訳もない」
「ウィリーできる?」
「訳もない。もちろんさ」
もし
「わけがない」と答えてしまうと
「そんなむずかしいこと、できるわけがない」と
まったく逆の意味になってしまいます。
「絶対できない」「不可能」という意味になってしまいます。
わけじゃない (ということではない)
これも「わけ」を否定しているんだけど、上の「わけがない」とはまったくちがいます。
ということではない。別の理由だ
だから、しばしば頭に「別に (べつに) 」がつきます。
例:
「何でも私の言うことに反対するのね😠」
「いや、べつに君のことを否定してるわけじゃないんだよ😅」 (まあまあ怒らないで)
→わたしが言ってるのは、
「君を否定することじゃなくて」、
「別の理由で、別のことなんだよ」
上の文章を言いかえるとこうです。
「『君のことを否定している』ということではない」
例2:
「ごめん。窓ガラスを割っちゃった。キャッチボールをしてたら当たったんで、わざとやったわけじゃないんだ」
このように「言い訳めいた」ときにもつかいます😅
わけ → の / ん に置き換えられる
この「わけ」はスーパー助詞「の / ん」に置き換えることができます。
否定しているわけじゃない
→ 否定しているのではない
/ 否定しているんじゃない
やったわけじゃない
→ やったのではない
/ やったんじゃない
わけにはいかない (≒すべきでない / すべきだ、せざるを得ない)
さあ「わけ」も佳境にはいってきました。
やる / やらない理由がない
これも「理由がない」という意味の1つです。
もうすこし言うと、
「正当な理由がない」
「やる / やらない理由がない」
「道理がない」
です。
自分の気持ちに反する
これは誰かに命令されたわけじゃないし、義務でもありません。
しかたなしに。嫌々
だから「してはならない」とか「しなくてはならない」までは行きません。
けっして強制ではありません。
でも、道理や倫理や論理的に自分なりに考えてこれは「やっていいか」あるいは「やらなくていいか」判断したときに吐くセリフです。
そしてそれは自分の気持ちに反しているか、自分の気持ちに関係ない結論です。
だから、しかたなしにそうする。
嫌々そうする。
けっして自ら進んで、喜んでするわけじゃないんです。
だから枕詞には「でも」がつきます。
空気を読む。世間体
命令や義務ではないので「やってもやらなくてもいい」んだけど、「やる」または「やらないと」
白い目で見られる。
後ろ指をさされる。
嫌われる。
仲間はずれにされる。
爪弾きにされる。
だから、やりたくても我慢する。
あるいは、やりたくないのに、しかたなしにやるんです。
やる わけにはいかない
自分の気持ちは「やりたい」
でも状況から判断して我慢してやらないでいる。
例:
ここにそれはそれはおいしそうなケーキがあります。
でもこれはお姉さんのケーキです。
さっちゃんは食べたい!
でもお姉さんのケーキを食べるわけにはいかないので、食べずに我慢します😅
法律ではないので食べることはできます。
でも食べたらあとでどんな折檻をされるやら😄
ここは我慢せざるを得ません。
平たい言葉でいえば
「食べてはいけない / ならない」
堅い言葉でいえば
「すべからず」
「すべきではない」
です。
「すべからず」がただの強い禁止なのに対して、
「わけにはいかない」は、
「それをやっていいという理由・口実・正当性がない」
そして
「あくまで自分自身の判断」
というニュアンスです。
やらない わけにはいかない
自分の気持ちは「やりたくない」
でも状況から判断してしかたなしにやる。
堅い言葉でいえば「せざるを得ぬ」です。
例:
会社でトラブルが起きました。
機械が壊れたけど納期は明日なので今日中に直さなければなりません。
わたしは今日、デートの予定があるので早く帰りたいです。
残業したくないです。
あるいは今日は体調が悪くて早く帰って休みたいです。
それとも見たい映画があるかもしれません。
要するに「やりたくない」です。
でも
会社としては明日の納期に間に合わせなければならないという事情もわかります。
みんなやってます。
(日本人はこれに弱いですね😅)
自分だけ先に帰れますか?
(みんなやってるのに、やってないのはあなただけだ。日本の悪しき社会通念)
わたしがいないとこの機械は直せません。
帰りたい。
やりたくない。
でも
会社の事情や、同僚の白い目、わたしの正義感というより明日から会社に居づらくなるという打算から、
しかたなしに、しかたなく、しょうがなしに、しょうがなく、いやいや、不本意ながら、気が進まないけど、
やることにします。
わたしは帰りたい。
でも残業して機械を直さないわけにはいかないんです。
誰にも命令されてないし、強制されてないし、脅されていもいない。
でも自分で考えて判断してしかたなしにやることにした。
わたしは日本語教師をしています
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